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要介護5の介護内容を詳しく知りたい介護度の中で最も重度な「要介護5」の状態や日常生活の支援内容を理解したい方
在宅介護を検討している家族自宅で介護を続ける際の必要なサポートや負担軽減の方法、利用できるサービスを知りたい方
介護保険の給付・自己負担額を把握したい要介護5で利用できる介護保険サービスや費用の目安、支援制度を理解したい方
介護職としてスキルアップしたい重度介護の実情を学び、専門的なケアやキャリア形成に役立てたい方

要介護5とは?
厚生労働省の介護保険制度において、最も介護が必要な段階である「要介護5」。ここでは、区分の位置づけや認定基準となる「要介護認定等基準時間」について整理します。
介護保険制度における位置づけ
介護保険制度では、支援や介護の必要度に応じて「要支援1・2」「要介護1〜5」の7段階に区分されています。
分類 | 要介護認定等基準時間の範囲 |
|---|---|
要支援 | 25分以上32分未満、またはこれに相当する状態 |
要介護1 | 32分以上50分未満、またはこれに相当する状態 |
要介護2 | 50分以上70分未満、またはこれに相当する状態 |
要介護3 | 70分以上90分未満、またはこれに相当する状態 |
要介護4 | 90分以上110分未満、またはこれに相当する状態 |
要介護5 | 110分以上、またはこれに相当する状態 |
なかでも要介護5は最も重度で、日常生活のすべてに介助が必要とされる状態です。
立ち上がりや歩行、排せつ、食事、入浴などの基本動作も自立が困難であり、常時見守りや介助を要します。この区分は、厚生労働省が定める全国統一の基準に基づいて判定されます。
要介護認定等基準時間
介護の必要度を数値化した指標が「要介護認定等基準時間」です。これは、調査項目(74項目)に基づいて算出されるもので、介護に要する時間を分単位で評価します。
要介護5の場合、この基準時間がおおむね110分以上とされ、身体・精神・生活の各面で総合的な介助が求められることを示します。
この指標は全国共通で用いられ、介護サービス利用限度額の算定にも影響します。
出典:要介護認定|厚生労働省
出典:要介護認定について
要介護5に該当する主な要因
要介護5となる原因はさまざまですが、厚生労働省の調査によると、脳血管疾患(脳梗塞・脳出血)や認知症、骨折・転倒、衰弱などが上位を占めます。
これらの疾患は身体機能や認知機能の低下を伴い、複数の介助を同時に必要とする状態を引き起こします。
また、複数疾患の併発や長期入院による筋力低下も要介護度を上げる要因となります。
出典:IV介護の状況|厚生労働省
出典:令和6年度介護給付費等実態統計の概況(令和6年5月審査分~令和7年4月審査分)|厚生労働省

要介護5はどのような状態?(身体・認知・日常生活)
「要介護5」と認定される方が、どのような身体機能・認知機能・日常生活動作の支援を必要とするかを、具体例を交えてご紹介します。
身体機能の状態
要介護5の方は、立ち上がりや歩行といった基本的な動作が自力ではほぼ不可能です。
1日の多くをベッド上で過ごし、姿勢の保持や寝返りにも介助が必要なケースが多くみられます。
また、筋力の低下や関節の拘縮(動きの制限)により、褥瘡(床ずれ)の発生リスクが高まります。介護者は、体位変換や皮膚ケアを含めた細やかな介助を行う必要があります。
認知機能の状態
要介護5では、思考力や理解力の低下により、意思疎通が困難になることがあります。自分の置かれた状況や時間・場所の把握が難しく、会話による反応が乏しくなることも珍しくありません。
認知症の進行を伴うケースが多く、介護者は表情や反応を丁寧に観察してサポートすることが求められます。
感情表現や非言語的な反応を手がかりに、安心感を持てる関わり方を工夫することが重要です。
日常生活動作(ADL)の特徴
要介護5では、食事・排せつ・着替え・入浴など、生活のほぼすべての行為に介助が必要です。摂食動作も自立が難しいため、介護者がスプーンで食事を口に運ぶ、嚥下(飲み込み)を見守るなどの支援を行います。
また、排せつはおむつ交換が中心で、入浴はストレッチャー浴などを利用する場合があります。ADL支援には、複数の介護者が連携して24時間体制でのケアを行うことが一般的です。
出典:要介護認定|厚生労働省

要介護5と要介護4の違い
「要介護4」と「要介護5」は、どちらも常時介助が必要な重度区分ですが、支援の必要度や自立度には明確な差があります。
ここでは、厚生労働省の基準時間や生活動作の観点から両者の違いを整理します。
介助量・自立度の差
要介護4は「立ち上がりや歩行が一部介助で可能」な場合もありますが、要介護5では「すべての基本動作に全介助が必要」とされます。
食事・排せつ・入浴・移乗・着替えなど、日常生活のほぼ全般にわたって介護者の支援が不可欠です。
また、身体の可動域が狭まり、拘縮が進むことで自力での体位変換も困難になります。このため、要介護4よりも24時間体制の見守りや複数介助が求められるケースが多くなります。
認定基準時間の違い
要介護度は、介護に要する時間をもとにした「要介護認定等基準時間」で区分されます。
要介護4はおおむね90分以上110分未満とされるのに対し、要介護5は110分以上が目安です。
つまり、要介護5では介護の必要時間が最も長く、身体・認知・生活面で常時介助が求められる状態を意味します。
この数値は全国共通基準として定められ、介護報酬やサービス上限額の算定にも反映されています。
出典:要介護認定の仕組みと手順
生活・ケア上の主な違い
要介護4では、トイレや車椅子移動を介助付きで行えるケースがありますが、要介護5では寝たきりに近く、自力での移動や姿勢保持も困難になります。
そのため、褥瘡予防・口腔ケア・経口摂取管理など、医療的ケアと介護が密接に連携する必要があります。
また、要介護4ではデイサービス中心の支援が多い一方、要介護5は施設入所や訪問看護などの医療依存度が高い支援形態が主流となります。

要介護5に認定されるまでの流れと基準
要介護5に認定されるまでの手続きは、市町村への申請から始まります。
一次判定・二次判定の2段階で総合的に審査され、主治医意見書や認定調査票をもとに「要介護認定等基準時間」が算出されます。
要介護認定の申請手続きの流れ
介護保険の要介護認定を受けるには、まず本人または家族が市区町村の介護保険担当窓口へ申請します。
申請後、市町村の職員(認定調査員)が自宅や施設を訪問し、74項目に及ぶ「認定調査票」に基づき心身の状態を確認します。
この調査内容と主治医の意見書をもとに一次判定が行われ、さらに介護認定審査会による二次判定で最終的な要介護度が決定されます。
一次判定・二次判定の仕組み
一次判定は、全国共通のコンピュータ判定システムで行われます。
訪問調査で得られたデータをもとに、「要介護認定等基準時間」が自動的に算出され、介護の必要度が数値で示されることが特徴です。
二次判定では、介護認定審査会が主治医意見書や調査結果を総合的に判断し、介護度を確定します。この二段階審査により、地域差のない公平な認定を実現しています。
認定結果の見直し・更新のポイント
要介護認定の有効期間は、初回が原則6か月、更新後は12か月が基本です。状態が変化した場合は、途中で「区分変更申請」を行うことも可能です。
たとえばリハビリで回復した場合や、逆に寝たきり状態が進行した場合には再審査が行われます。
更新申請を忘れるとサービスが一時停止するため、ケアマネジャーと連携し、期限を把握しておくことが大切です。

要介護5の方が利用できる介護サービスと制度
要介護5の方は、介護保険制度の中で最も多くの支給限度額が設定されています。
訪問介護や訪問看護、通所リハビリ、特別養護老人ホームへの入所など、さまざまなサービスを組み合わせて利用できます。
利用できる主な介護保険サービス
要介護5では、日常生活のほぼ全てに支援が必要となるため、在宅・施設いずれの場でも多様なサービスが利用可能です。主な対象サービスは次の通りです。
- 訪問系サービス:訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護など
- 通所系サービス:デイサービス、通所リハビリテーション
- 居住系・施設系サービス:特別養護老人ホーム、介護老人保健施設など
利用者の心身状態に合わせて、ケアマネジャーがケアプランを作成し、複数のサービスを組み合わせて支援体制を整えます。
支給限度額と利用上限の目安
要介護度に応じて、介護保険で利用できるサービス費用には月ごとの上限(支給限度額)が定められています。
要介護5の支給限度額はおおむね36万2,170円/月(全国平均)で、自己負担は原則1〜3割です。
この範囲内であれば介護保険が適用されますが、超過分は全額自己負担となります。
ケアプランを策定する際には、必要な介助量と費用のバランスを考慮することが重要です。
福祉用具・住宅改修などの制度活用
要介護5の方には、生活環境を整えるための福祉用具や住宅改修制度も利用可能です。代表的な支援内容は以下の通りです。
区分 | 内容 | 上限金額(自己負担1〜3割) |
|---|---|---|
福祉用具貸与 | 車いす・特殊ベッド・床ずれ防止用具など | 月額レンタル費用 |
特定福祉用具購入 | ポータブルトイレ・入浴補助具など | 年額10万円 |
住宅改修 | 手すり設置・段差解消・スロープ設置など | 1件20万円まで |
これらの制度は、介護保険内で認定を受けた事業者を通じて申請する必要があります。

要介護5における在宅介護と施設入所の違いと選択のポイント
要介護5でも在宅介護を続けるケースはありますが、医療的ケアや24時間介助が必要になるため、介護者への負担が大きくなります。
ここでは、在宅と施設のそれぞれの特徴や選択時のポイントをまとめます。
在宅介護を続ける場合のポイント
在宅介護では、訪問介護・訪問看護・福祉用具貸与などのサービスを組み合わせ、生活環境を整えることが重要です。
介護者の身体的・精神的負担を軽減するためには、デイサービスやショートステイの活用が効果的です。
また、医療的ケアが必要な場合は、主治医や訪問看護師との連携が欠かせません。介護者の孤立を防ぐためにも、地域包括支援センターなどの相談窓口を定期的に利用することが推奨されます。
施設入所を検討するタイミングと種類
介護者の負担が限界に達した場合や、医療的処置を常時必要とする場合は、施設入所を検討する時期です。代表的な選択肢は、特別養護老人ホーム(特養)、介護老人保健施設(老健)、介護医療院などがあります。
特養は長期入所が可能で費用も比較的抑えられ、老健は在宅復帰を目指す中間施設として機能します。
入所を希望する際は、要介護度・入所要件・費用を確認し、複数施設の見学を行うことが重要です。
医療・介護連携の重要性
要介護5の方は、嚥下障害・褥瘡・感染症など医療管理を伴うことが多く、医療と介護の連携体制が不可欠です。
訪問診療・訪問看護・薬剤師連携によるチームケアを構築することで、状態の悪化を防ぎ、生活の質を維持できます。
また、終末期のケアを含む「ACP(人生会議)」の実施も厚生労働省が推進しています。家族・医師・ケアマネジャーが方針を共有し、安心して生活を続けられる体制を整えましょう。
出典:在宅医療・介護連携推進事業の手引き|厚生労働省
出典:「人生会議」してみませんか|厚生労働省
出典:地域包括ケアシステム|厚生労働省

要介護5で利用できる介護サービス
要介護5の認定を受けた方は、日常生活のほぼすべてにおいて他者の介助が必要なため、介護保険制度の中でも最も多くのサービスを利用できる区分に該当します。
ここでは、自宅での生活を支える「在宅介護サービス」の概要と主な内容を紹介します。
訪問介護(ホームヘルプサービス)
ホームヘルパーが自宅を訪問し、食事・排せつ・入浴などの身体介護や、掃除・洗濯・買い物代行などの日常生活支援を提供します。
介護度や家族の支援状況に応じて、サービス内容や回数を柔軟に調整できるのが特徴です。
訪問看護
看護師などの医療専門職が自宅を訪問し、服薬管理や健康チェック、医療的処置などを行います。医療ニーズが高い方にも対応でき、在宅療養の継続が可能な重要なサービスです。
訪問入浴介護
看護師と介護職員が専用浴槽を持参し自宅を訪問、入浴前の健康チェックから全身浴や部分浴、清拭までサポートするサービスです。自力入浴が難しい方も、適切な支援により自宅でお湯に浸かることができます。
通所介護(デイサービス)
日中に施設へ通い、入浴や食事、機能訓練などのサービスを受けられる介護サービスです。他の利用者との交流やスタッフによる見守りもあり、心身の活性化や家族の負担軽減にも役立ちます。
短期入所生活介護(ショートステイ)
要介護者が一定期間施設に宿泊し、入浴・食事・排せつなど日常生活の介護や機能訓練を受けられるサービスです。家族の休養や急な用事の際にも利用でき、心身機能の維持や家族の負担軽減に役立ちます。
このように、要介護5では在宅と施設のサービスを柔軟に組み合わせることが可能であり、本人や家族の希望・状態に合わせたケアプランが重要です。

要介護5の方が入所できる介護施設の種類と選び方
要介護5の方が入所できる介護施設には、公的施設と民間施設があり、それぞれに特徴や目的、費用の違いがあります。
利用者本人の状態や家族の状況、将来的な希望に応じて、最適な施設を選ぶことが重要です。
公的施設の主な種類
施設名 | 特徴 | 対象 | 滞在期間 |
|---|---|---|---|
特別養護老人ホーム(特養) | 日常生活全般の介護を受けながら終身利用可能 | 原則要介護3以上 | 長期 |
介護老人保健施設(老健) | 医療とリハビリ中心、在宅復帰を支援 | 要介護1以上 | 原則3〜6か月(平均約10か月) |
介護医療院 | 医療的ケアと生活支援を一体提供 | 医療ニーズの高い要介護1〜5 | 長期可 |
公的施設は比較的費用が抑えられ、看護師や医師による医療支援体制が整っているのが特長です。
特養は終身利用も可能で、老健は自宅への復帰を目指す一時的な施設、介護医療院は高度な医療的ケアが必要な方に適しています。
民間施設の主な種類
施設名 | 特徴 | 対象 |
|---|---|---|
介護付き有料老人ホーム | 24時間体制の介護と医療的ケアが受けられる | 要介護1〜5 |
住宅型有料老人ホーム | 生活支援が中心、介護サービスは外部と契約 | 自立〜要介護 |
健康型有料老人ホーム | 家事支援や交流が中心、介護サービスなし | 自立した高齢者 |
グループホーム | 認知症の高齢者が少人数で共同生活 | 要支援2〜要介護5(認知症の診断要) |
民間施設は、サービスの質や設備が充実している一方で、費用が高くなる傾向があります。個別対応がしやすく、柔軟なサービスを希望する方に向いています。
特にグループホームは認知症の方に適しており、家庭的な雰囲気の中で落ち着いた生活が送れます。

施設選びのポイント
- 医療ニーズが高い場合:介護医療院・介護老人保健施設(老健)を検討
- 終身利用を希望する場合:特別養護老人ホーム(特養)・介護付き有料老人ホームがおすすめ
- 認知症ケアが必要な場合:グループホームが適している
- 費用負担に制限がある場合:公的施設を優先的に検討
- 家族との距離や面会のしやすさ:立地やアクセスも重要なポイント
施設ごとに入所要件や提供サービスが異なるため、ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談し、見学や情報収集を行ったうえで選ぶことが推奨されます。
特定施設入居者生活介護とは?特徴と費用
特定施設入居者生活介護とは、介護付き有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)など、介護サービスを提供する施設に入居して受ける介護保険サービスです。
都道府県の指定を受けた「特定施設」が対象で、介護職員が常駐し、入浴・排せつ・食事などの介助や、日常生活支援、機能訓練などが一体的に提供されます。
特徴
- 施設内で完結する介護:外部サービスを個別に手配する必要がなく、施設スタッフによる包括的なケアが受けられます。
- 生活支援と医療連携:介護サービスだけでなく、日々の生活支援や医療機関との連携体制も整っているため、長期入居に対応しています。
- 要介護1以上が対象:要支援の方は対象外で、一定の介護度が必要になります。
費用の目安(全国平均)
特定施設入居者生活介護を提供する施設の利用料金は、施設の種類や立地、提供されるサービス内容によって大きく異なります。令和6年度のPwCコンサルティング合同会社の調査による平均月額費用は以下のとおりです。
2024(令和6)年実績データ
- 介護付き有料老人ホーム:261,510円
- 住宅型有料老人ホーム:118,020円
- サービス付き高齢者向け住宅(サ高住):153,962円
ただし、実際の費用は施設の種類や立地、提供されるサービス内容によって大きく異なります。都市部では平均を上回るケースが多く、設備が充実した民間施設では月額30万円を超えることもあります。
一方で、公的施設などでは比較的低価格で入所できる場合もあります。
利用を検討する際は、施設ごとの料金体系をよく比較し、自身の介護度や希望するサービス内容に見合った施設を選ぶことが重要です。
出典:「有料老人ホームの現状と課題について」|厚生労働省
出典:高齢者向け住まいにおける運営実態の多様化に関する実態調査研究|PwCコンサルティング合同会社

要介護5の費用と自己負担額
ここでは、要介護5の方がかかる介護費用の自己負担額や、それを軽減する助成制度について解説します。
要介護5の介護費用と自己負担額の目安
介護保険サービスの自己負担割合は、利用者の所得によって1割・2割・3割のいずれかに設定されています。
一般的な高齢者の多くは1割負担となりますが、現役並みの所得がある場合は2割または3割の負担が必要です。
令和6年度(2024年度)の厚生労働省公表データでは要介護5の区分支給限度額は36,217単位(約362,170円)です。これに基づく自己負担の上限額は、以下のとおりです。
負担割合 | 月額自己負担上限(目安) |
|---|---|
1割負担 | 約36,200円 |
2割負担 | 約72,400円 |
3割負担 | 約108,600円 |
この限度額の範囲内であれば、訪問介護や通所リハビリ、訪問看護など、必要な在宅サービスを組み合わせて利用できます。
要介護5の介護保険の給付・助成制度の申請手順
要介護5の方が介護保険の給付や助成を受けるには、要介護認定の取得とケアプランの作成が必要です。以下のような流れで手続きを行います。
- 市区町村の介護保険担当窓口へ相談
- 本人または家族が要介護認定を申請
- 市区町村が認定調査を実施・主治医が意見書を作成
- 介護認定審査会により要介護度が決定
- 認定結果に基づき、ケアマネジャーとケアプランを作成
※申請から認定通知までには通常およそ30日程度かかります。認定には有効期間があり、継続して利用するためには更新申請が必要です。早めの手続きがスムーズな介護サービス利用につながります。
要介護5で利用できる主な助成制度一覧
要介護5の方やその家族が利用できる、代表的な助成制度は以下の通りです。各制度は条件や手続きが異なるため、詳細は自治体に確認しましょう。
高額介護サービス費制度
介護保険サービスの自己負担額が月額上限(一定額)を超えた場合、その超過分が払い戻されます。上限額は所得に応じて異なり、低所得者ほど上限が低く設定されています。
所得区分 | 負担上限額(月額) |
|---|---|
課税所得690万円以上 | 140,100円(世帯) |
課税所得380万円以上690万円未満 | 93,000円(世帯) |
市町村民税課税世帯 | 44,400円(世帯) |
市町村民税非課税世帯 | 24,600円(世帯) |
年金収入等80.9万円以下 | 15,000円(個人)・24,600円(世帯) |
生活保護受給者等 | 15,000円(世帯) |
食費・居住費の減額制度(施設入所者向け)
特別養護老人ホームなどの公的施設では、市町村民税非課税世帯などを対象に、食費や居住費の負担軽減が適用されます。
申請により「介護保険負担限度額認定証」が交付され、施設への支払いが減額されます。
高額療養費制度(医療費負担の軽減)
入院や医療的ケアが必要な場合は、医療保険の高額療養費制度が利用できます。自己負担限度額を超える医療費について、後日払い戻しを受けることが可能です(食費・差額ベッド代等は対象外)。
福祉用具貸与と住宅改修支援
・福祉用具貸与:車いすやベッド、歩行器など、要介護者の身体状態に応じた用具をレンタル。使用前には専門スタッフの説明と調整もあります。
・住宅改修費支給:手すり設置や段差解消など、住環境の整備に対し最大20万円(自己負担1~3割)が支給されます。
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要介護5の生活実態と医療ケア
ここでは、要介護5に認定された方が直面する日常生活の実態や、必要となる医療的ケアについて詳しく解説します。
特に一人暮らしの限界、医療処置の種類、回復の可能性、介護期間と寿命に関する現実的な情報を整理し、ご本人や家族が介護生活を見通すための参考にしていただけます。
一人暮らし・在宅介護は本当に無理?
要介護5は、排せつ・食事・入浴・移動といった日常生活のほぼすべてにわたって全面的な介助が必要な状態です。
そのため、一人暮らしを継続するのは現実的に極めて困難です。
実際、厚生労働省の調査でも、単独世帯の総数を100とした場合、要介護5の方の単独世帯割合は3.3%と極めて低く、一人暮らしを続けることは現実的に難しい状況です。
要介護5の重度な介護状態においては、専門的なケアや日常的な見守りが不可欠であり、単身での生活継続は非常に難しいことを示しています。
在宅介護を可能にする条件
ただし、以下のような条件が整えば、在宅での介護を続けることも一部可能です。
- 24時間対応の訪問介護・訪問看護の導入
- 医療処置に対応可能な家族の同居
- 緊急通報装置や見守り機器などの活用
- 地域包括支援センターによる支援体制が充実していること
それでも、介護者への負担や安全面のリスクが非常に大きいため、実際には施設入所が現実的な選択となることが多くなっています。
医療ケアが必要なケース
要介護5の方では、以下のような高度な医療的ケアが日常的に必要となることが多いです。
医療ケアの種類 | 内容・目的 | 対応可能な施設 |
|---|---|---|
褥瘡(じょくそう)処置 | 寝たきりによる皮膚の損傷を防ぐための処置 | 特養・介護医療院など |
胃ろう | 自力での食事が困難な場合の経管栄養 | 介護医療院・有料老人ホーム(医師配置型) |
吸引(痰・鼻腔) | 呼吸機能低下に伴う痰の除去など | 訪問看護・特定施設 |
インスリン注射・複数の服薬管理 | 糖尿病・複雑な疾患管理 | 看護師常駐施設 |
これらの医療処置が必要な場合、介護医療院や医療連携型施設の選択が現実的となります。
また、自宅で対応する場合には訪問看護師の24時間体制や、医療的ケア児対応資格を持つヘルパーなどの確保が重要です。
要介護5の方が歩ける・回復できる可能性
要介護5の状態からの大幅な改善は非常に限られているものの、リハビリによって部分的な機能回復が期待されるケースはあります。
回復の可能性があるのは以下のようなケースです。
- 脳卒中後の早期リハビリによるADL(ActivitiesofDailyLiving:日常生活動作)改善
- 転倒・骨折後の可動域訓練により立ち上がりが可能になる
- 認知症による廃用症候群の改善により生活反応性が上がる
ただし、要介護5からの大幅な改善は限定的であり、改善がみられても介助なしの歩行や日常生活の自立には至らないことが多いため、QOL(QualityofLife:生活の質)の維持を目的とした支援が現実的です。

要介護5と家族の生活設計
要介護5の介護は、本人だけでなく、家族の生活にも大きな影響を及ぼします。身体介助だけでなく、精神的な負担や生活全体の変化に備える必要があるため、家族も含めた「生活設計」が不可欠です。
ここでは、家族としてどのような支援ができるのか、そして共倒れを防ぐためにどのような備えや相談先があるのかを解説します。
家族ができる支援と心構え
要介護5の状態では、ほぼすべての生活動作に他者の介助が必要になります。そのため、家族が担う役割は大きく、介助・見守り・医療機関との連携・手続き・感情のケアなど多岐にわたります。
家族ができる主な支援
- ケアマネジャーや医療職との連絡調整
- 本人の尊厳を守る声かけや配慮
- 食事・排せつ・清拭などの補助(訪問介護と分担)
- 医療的ケアが必要な場合の情報収集と判断サポート
介護うつ・共倒れを防ぐ支援先と対策
介護に全力を注ぎすぎると、心身ともに疲弊しやすくなります。介護者自身が疲弊し、うつ状態や体調不良に陥る「介護うつ」や「共倒れ」は深刻な課題です。
特に要介護5のような重度介護の場合、24時間体制で気が抜けず、孤立や慢性的なストレスを抱える人も少なくありません。
家庭内だけで抱え込まず、地域資源(地域包括支援センター、訪問看護、ショートステイなど)を積極的に活用する視点が大切です。
共倒れを防ぐための対策
- 公的サービス:ショートステイ、一時入所、訪問介護・看護、デイサービスなどで介護の負担を分散
- 相談支援:地域包括支援センター、家族会、精神保健福祉センターで心理的サポートや制度利用の相談
- 経済的支援:介護休業制度、傷病手当金、障害者控除の活用など働きながら介護する人の支援策
また、家族間での分担や話し合いも重要です。一人で背負わず、状況を共有することで精神的な負担を軽減できます。介護は「一人で頑張らないこと」が長期的に支える秘訣です。早期に支援を得て、持続可能な介護体制を整えましょう。
成年後見制度・任意後見制度の活用
高齢の親が認知症などにより判断力を失った場合、財産管理や介護サービスの契約、施設入所の手続きが困難になるケースがあります。こうした事態に備える法的制度が「成年後見制度」です。
制度名 | 開始時期 | 主な目的 | 利点 |
|---|---|---|---|
成年後見制度(法定後見) | 判断力の低下後に家庭裁判所が選任 | 財産管理・身上監護の保護 | 裁判所が後見人を監督するため信頼性が高い |
任意後見制度 | 判断力があるうちに契約で指定 | 将来の備えとして柔軟に設計可能 | 本人の意向に基づき後見人を指定できる |
たとえば「親が認知症になった後、口座が凍結されて施設費が払えない」といった事態は成年後見人がいないと対応が難しくなります。
特に任意後見制度は、元気なうちに信頼できる家族や知人を「将来の後見人」として契約できる点が特徴です。公正証書での契約が必要となりますが、判断力が低下したときにスムーズに支援を開始できるため、リスクに備えた現実的な手段といえるでしょう。
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まとめ
要介護5とは、介護保険制度における最も重度の区分で、日常生活のほぼすべてに介助が必要な状態を指します。身体・認知機能の低下により、立ち上がりや歩行、食事、排せつなども自力では困難です。
利用できるサービスは幅広く、支給限度額も最大区分に設定されています。
無理のない範囲で介護を継続していくためには、在宅・施設の両面から支援体制を整えることが重要だといえるでしょう。
厚生労働省の制度や地域包括支援を活用し、家族と専門職が連携して生活の質を維持していくことが求められます。
よくある質問
Q.要介護5になると寝たきりになる?
必ずしも全員が寝たきりではありませんが、身体機能の著しい低下により、ベッド上で過ごす時間が長くなる傾向があります。
拘縮や褥瘡の予防を行いながら、必要に応じてリハビリや福祉用具の活用を行うことが重要です。
Q.要介護5に認定されたらどんな施設に入所できる?
要介護5の方が利用できる主な施設は、特別養護老人ホーム(特養)、介護老人保健施設(老健)、介護医療院などです。
特養は長期入所向け、老健は在宅復帰を支援する中間施設、介護医療院は医療管理が必要な方向けに設けられています。
入所要件や費用を比較し、本人の状態と希望に沿った選択を行いましょう。
Q.要介護5でもらえるお金はいくらですか?
要介護5の支給限度額は約36万2,170円で、その範囲内の介護サービス費用が保険給付の対象になります。
自己負担は原則1〜3割で、残りは介護保険から支給されます。限度額を超えた分や食費・居住費は自己負担となります。
Q.要介護4と要介護5の違いは何ですか?
要介護4では一部動作に介助を要する程度ですが、要介護5は生活全般にわたって全介助が必要です。
認定基準時間も要介護4が90〜110分未満、要介護5が110分以上とされ、介護量・医療的ケアの必要性がより高い状態を示します。
Q.ケアプランはどのように作る?
ケアプランとは、要介護者がどのような介護サービスを、どの頻度・内容で受けるかを具体的にまとめた計画書です。原則として居宅介護支援事業所のケアマネジャーが、本人や家族と面談しながら作成します。
ケアプラン作成の流れは以下のとおりです。
- 要介護認定後、ケアマネジャーと契約
- 生活状況や希望を聞き取り
- 医療・介護職とも連携してサービスを設計
- 定期的な見直しと評価を実施
要介護5の場合、訪問介護・訪問看護・デイサービス・ショートステイなどを組み合わせた複合的なケアプランになることが多いです。
利用者本人の尊厳を守りつつ、家族の介護負担軽減にも配慮した内容であることが重要です。
Q.特養(特別養護老人ホーム)と介護付き有料老人ホームの違いは?
「特養(特別養護老人ホーム)」と「介護付き有料老人ホーム」は、どちらも要介護高齢者が入所して生活できる施設ですが、以下のような違いがあります。
項目 | 特別養護老人ホーム(特養) | 介護付き有料老人ホーム |
|---|---|---|
運営主体 | 社会福祉法人・自治体 | 民間企業 |
対象者 | 原則要介護3以上 | 要支援〜要介護5 |
入居要件 | 申込順、空き待ちあり | 比較的柔軟 |
サービス内容 | 終身介護・生活支援 | 介護職常駐+生活支援 |
月額費用(目安) | 約10〜15万円程度 | 約20〜30万円程度 |
特徴 | 公的で低料金・入居待ち長め | サービス充実・費用高め |
要介護5の方にとっては、医療的ケアや終身利用が可能な特養が適している場合が多いですが、待機期間や施設の空き状況をふまえて、民間施設との比較検討も重要です。
Q.障害者控除などの控除制度も活用できる?
要介護認定を受けただけでは自動的に障害者控除の対象にはなりません。要介護5の方が障害者控除を受けるには、市町村に『障害者控除対象者認定書』の交付を申請し、身体障害者または知的障害者に準ずる者として認定を受ける必要があります。認定基準は市町村により異なりますが、多くの自治体では要介護4〜5を特別障害者控除相当として認定する傾向があります。詳細は居住地の市区町村窓口にご確認ください。
多くの市町村では要介護1〜3を障害者控除、要介護4〜5を特別障害者控除の基準としています。
また、医療費控除や介護保険サービスにかかる費用の一部も、確定申告で申告することで税額が軽減される可能性があります。控除の詳細や必要書類は、税務署または市区町村の窓口で確認することをおすすめします。
[介護サーチプラス]編集部
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