この記事がおすすめな人

高齢者や家族の嚥下機能が気になる方食べ物や飲み物をうまく飲み込めない、むせやすいといった症状の原因や対策を知りたい方
介護や医療の現場で働く方利用者の嚥下状態を理解し、安全な食事介助や嚥下食の提供方法を学びたい介護士・看護師・リハビリ職の方
嚥下障害の予防や改善に関心がある方日常的にできるトレーニングや食べ方の工夫、適切な食事形態を取り入れたい方
管理栄養士・調理スタッフを目指している方嚥下機能に合わせたメニュー作成や嚥下食の調理ポイントを理解し、現場で活かしたい方

嚥下とは?意味や仕組み、読み方をわかりやすく解説
嚥下(えんげ)とは、食べ物や飲み物を口に入れて噛み、飲み込みやすい形にしてから食道を通り、胃へ送るまでの一連の動作を指します。
多くの筋肉や神経が連携して行われるため、どこかが弱ると飲み込みにくさが生じます。介護や医療の現場では、この働きを理解することが支援の基本になります。
嚥下の定義:飲み込みの一連動作
嚥下は、口から喉、食道を通って胃に運ぶまでの流れです。自分の意識で行う部分と、反射的に気道を閉じる部分が組み合わされています。
どの段階でもうまく働かないと、むせや食べこぼしなどが起こります。
「摂食嚥下」は、食べ物の認識や姿勢の準備など、食べ始めから飲み込むまでの全過程を指します。
摂食嚥下と嚥下の違い
「摂食嚥下(せっしょくえんげ)」と「嚥下(えんげ)」は似ていますが、指している範囲が少し異なります。
摂食嚥下は“食べる動作のすべて”を、嚥下は“飲み込む部分”を中心に表します。どちらに課題があるかを理解することで、支援の方向性が明確になります。
項目 | 摂食嚥下 | 嚥下 |
|---|---|---|
範囲 | 食べ物の認識から飲み込むまでの全体 | 口から食道を通る「飲み込み」の動作 |
内容 | 姿勢、咀嚼、食形態の調整など | 嚥下反射や気道の閉鎖など |
支援の例 | 食具調整・姿勢介助・食事環境づくり | 嚥下訓練・とろみ調整・食後の姿勢保持 |
噛めない場合は摂食面の支援、むせる場合は嚥下面の支援が中心になります。両者を区別して考えることで、ケア方針の共有や記録もより的確になるでしょう。

嚥下の5つのプロセス(摂食嚥下の5期モデル)
嚥下は、専門的には『嚥下の5つのプロセス(摂食嚥下の5期モデル)』として5つの段階に分けて理解されています。
それぞれの段階には異なる働きがあり、どこでつまずいているかを見極めることで、適切なケアやリハビリにつなげられます。ここでは5段階の特徴と観察のポイントを整理します。
先行期・準備期:食べる前の準備と噛む動作
先行期は、食べ物を見たり、においを感じたりして「食べたい」と認識する段階です。
注意力や認知機能の影響を受けるため、認知症の方ではこの段階からサポートが必要なこともあります。
準備期は、食べ物を咀嚼し、唾液と混ぜて飲み込みやすい形(食塊)に整える段階です。
歯や舌、唾液の働きが重要で、これらが弱まると時間がかかります。
食べ始めが遅い、こぼすなどのサインがあるときは、姿勢・食具・食事形態の見直しが効果的です。
口腔期:舌で食べ物を喉へ送る
この段階では、舌が主な役割を担い、食塊を喉の奥(咽頭)へ送ります。
舌の力や動きが弱いと、食べ物が口の中に残ったり、飲み込みが途中で止まったりすることがあります。
とろみをつけたり、あんかけなどのまとまりやすい料理を選ぶとスムーズです。
また、「舌を出す・上下に動かす」などの舌トレーニングが、嚥下力の維持に役立ちます。
咽頭期・食道期:反射で気道を守り胃へ送る
咽頭期は、飲み込む瞬間に反射が起こり、喉頭蓋(こうとうがい)が倒れて気道を閉じます。この働きが遅れると、むせたり、声がかすれることがあります。
食道期では、食べ物が食道を通り、蠕動運動によって胃まで送られます。ここでつかえ感や逆流が続く場合は、耳鼻咽喉科や消化器内科での検査(嚥下内視鏡・嚥下造影など)が必要です。
嚥下は「反射」と「筋力」の両方がかかわる繊細な動作です。日常的な観察と専門的な評価の組み合わせが大切です。

嚥下障害とは?原因と主な症状
嚥下障害とは、飲み込みのどこかの段階がうまく働かない状態を指します。
加齢や病気、薬の副作用などさまざまな要因が関係します。早期に気づくことで、誤嚥や低栄養を防ぐことができます。
主な原因:脳血管・神経疾患/加齢/口腔要因/薬剤
- 脳血管障害・パーキンソン病・筋疾患・認知症
- 加齢による筋力・感覚・唾液分泌の低下
- 歯や入れ歯の不具合、口腔乾燥
- 薬剤の副作用(眠気・口渇)
多疾患併存や多剤併用ではリスクが高まります。特に薬の影響は、主治医への相談で改善につながる可能性があります。
出典: 高齢者の摂食嚥下(せっしょくえんげ)機能に影響する要因 | 健康長寿ネット
出典: 高齢者の 医薬品適正使用の指針
【よくあるサイン】むせ以外も見逃さない
- 食事に時間がかかる
- 声がガラガラする、痰が増える
- 微熱が続く、体重が減る
- 胸つかえや逆流感がある
- 水分やパサついた食品を避ける
これらは「むせない誤嚥(不顕性誤嚥)」のサインでもあります。症状が続く場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
誤嚥には、むせを伴う『顕性誤嚥』と、むせを伴わない『不顕性誤嚥』があります。不顕性誤嚥は、本人も周囲も気づきにくいため、以下のようなサインに注意が必要です。

加齢で嚥下機能が低下する理由【高齢者の介護者向け】
年齢を重ねると、飲み込む力に関わる筋肉や神経の働きが少しずつ弱まり、食べ物を喉へ送る動きが鈍くなります。
さらに、唾液の分泌低下や歯のトラブル、薬の副作用なども重なって、「むせやすい」「食事に時間がかかる」といった変化が現れます。
こうした兆候に早く気づき、適切に対応することが大切です。
筋力・感覚の低下とオーラルフレイル
加齢により舌や喉、頬などの筋肉が衰えると、食べ物をうまくまとめて飲み込むことが難しくなります。
また、口の中の感覚も鈍くなるため、食べ物が喉に残っていても気づきにくくなります。
こうした状態が続くと、「オーラルフレイル(口の虚弱)」と呼ばれる段階に進行する可能性があり、体重減少や筋力低下など全身のフレイル(虚弱)にもつながります。
オーラルフレイルの危険度チェック
まずは、どのくらいオーラルフレイル(口の虚弱)に近づいているかを確認してみましょう。次の表で「はい」「いいえ」のどちらかに○をつけ、該当の数を合計してください。
質問項目 | はい | いいえ |
|---|---|---|
自分の歯の数は20本以上ですか?(※さし歯や金属冠は自分の歯として数えます。インプラントは含めません。) | 0点 | 1点 |
半年前と比べて、固いものが食べにくくなりましたか? | 2点 | 0点 |
お茶や汁物などで、むせることがありますか? | 2点 | 0点 |
口の渇きが気になりますか? | 1点 | 0点 |
普段の会話で、言葉をはっきり発音できないことがありますか? | 1点 | 0点 |
チェック結果の見方
5つの項目のうち、合計点数が3点以上の場合、オーラルフレイルのリスクがあると判定されます。該当項目が多いほど、口腔機能の低下が進んでいるサインと考えられます。早めにかかりつけの歯科医や歯科衛生士に相談しましょう。
口腔機能を維持するためには、以下のような日常ケアが大切です。
- 毎食後の歯磨きと舌の清掃
- よく噛む食習慣を意識する
- 口や舌の体操を続ける
出典: Oral frailty five-item checklist to predict adverse health outcomes in community-dwelling older adults: A Kashiwa cohort study - PubMed
出典:オーラルフレイル|国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター
歯科・口腔の影響と多剤併用
歯を失ったり、入れ歯が合わなかったりすると、食べ物を噛み砕いて飲み込みやすい形に整える力が弱まります。
また、高齢者では複数の薬を併用していることが多く、抗うつ薬や利尿剤などの副作用による口の乾燥が、唾液の減少を引き起こします。
これにより、食べ物が喉に張り付きやすくなり、誤嚥のリスクが高まるといわれています。
【主な工夫】
- 定期的に歯科で口腔状態をチェックする
- 入れ歯やブリッジの調整を行う
- 医師や薬剤師に薬の影響を相談する
小さな違和感を放置せず、口腔環境を整えることが大切です。

誤嚥性肺炎と嚥下障害の関係
嚥下障害が進行すると、食べ物や唾液が誤って気道に入る「誤嚥(ごえん)」が起こりやすくなります。
誤嚥によって口の中の細菌が肺へ入り込むと、炎症が起きて「誤嚥性肺炎」になることがあります。
高齢者では一度発症すると再発しやすい傾向があり、命に関わるケースも少なくありません。日常的な予防と早めの受診が何より大切です。
誤嚥の仕組みとリスク管理
誤嚥は、嚥下反射の遅れや喉頭(こうとう)の閉鎖が不十分な場合、また食べ物が喉に残ったまま再度息を吸うときなどに起こります。
特に、眠っている間に唾液を誤って吸い込む「不顕性誤嚥」も多く見られます。
誤嚥を防ぐためには、以下のような工夫を心がけましょう。
項目 | 内容 |
|---|---|
口腔ケア | 歯磨きや舌の清掃を行い、口の中の細菌を減らします。口内を清潔に保つことで、誤嚥性肺炎の予防につながります。 |
正しい姿勢 | 食事のときは顎を軽く引き、背筋を伸ばして座ります。喉の通りがよくなり、誤嚥を防ぎやすくなります。 |
食事ペース | 一口の量を少なくし、ゆっくりと飲み込みます。急いで食べるとむせやすくなるため、落ち着いたペースを意識しましょう。 |
食後の姿勢保持 | 食後30分ほどは座ったまま過ごし、横にならないようにします。食べ物や液体の逆流を防ぎ、誤嚥のリスクを下げます。 |
これらを続けてもむせや湿った声が続く場合は、嚥下内視鏡検査(VE:Videoendoscopic Examination of Swallowing)や嚥下造影検査(VF:Videofluoroscopic Examination of Swallowing)で状態を確認しましょう。
嚥下内視鏡検査(VE)は鼻から内視鏡を挿入して嚥下状態を観察する検査、嚥下造影検査(VF)はX線透視下で造影剤を含んだ食品を飲み込んでもらい嚥下動作を評価する検査です。
言語聴覚士(ST:Speech-Language-Hearing Therapist)などの専門職の評価を受けることで、より適切なケアにつながります。

嚥下機能を保つトレーニング・食事法
嚥下機能を維持するためには、姿勢・一口量・食形態・口腔ケア・運動を組み合わせて行うことが大切です。
特別な器具や環境がなくても、日常の工夫で無理なく続けることができます。ここでは、介護現場でも家庭でも実践しやすいポイントを紹介します。
姿勢と一口量:むせにくい準備を整える
食事中の姿勢や一口の量を整えることで、誤嚥を大きく減らすことにつながります。次のような姿勢・食べ方を意識してみましょう。
ポイント | 内容 |
|---|---|
椅子に深く座る | かかとをしっかり床につけ、安定した姿勢を保ちます。 |
顎を軽く引く | 喉の通りがよくなり、誤嚥を防ぎやすくなります。 |
一口を小さく | 飲み込みを確認してから次の一口へ。焦らずゆっくり食べましょう。 |
食後の姿勢保持 | 食後30分は座位を保ち、逆流や誤嚥を防ぎます。 |
ベッド上での食事 | 背もたれを45〜60度に起こし、あごを引いた姿勢で摂取します。 |
これらの工夫を習慣化することで、嚥下時の負担を軽減し、むせや誤嚥を防ぎやすくなります。
トレーニングと食形態:日常で続けるコツ
嚥下機能の維持には、口の周りの筋肉を動かすトレーニングと、飲み込みやすい食形態の工夫が欠かせません。無理なく続けるためのコツをまとめました。
ポイント | 内容 |
|---|---|
「パ・タ・カ・ラ」体操 | 口周りと舌を動かす発声体操。「パ」「タ」「カ」「ラ」を5回ずつ、食前に練習します。それぞれの音は、異なる口や舌の動きを伴い、摂食嚥下機能の向上に効果があります。 『パ』は唇の閉鎖、『タ』は舌先の動き、『カ』は舌の奥の動き、『ラ』は舌全体の動きを鍛えます。これらの動きは、食べ物を口に取り込み、喉へ送り込むために必要な筋肉を強化します。 |
食べやすい食品 | ムース・プリン・ゼリーなど、まとまりやすい柔らか食が適しています。 |
水分補給の工夫 | 水やお茶は「とろみ剤」を使うと、むせにくくなります。 |
口腔ケア | 歯磨きや舌の清掃を毎食後に行い、口内の細菌を減らします。 |
これらを継続することで、嚥下機能の低下をゆるやかにし、食事を楽しむ時間を長く保つことができます。

嚥下リハビリの相談先と専門職
むせや体重減少、繰り返す肺炎などが見られる場合は、医療機関で嚥下機能の評価を受けましょう。
早めに検査や専門的な支援につなげることで、誤嚥性肺炎の予防や栄養状態の改善が期待できます。
地域には、医療・介護・福祉の専門職が連携して支援する体制があります。身近な相談先を知っておくことで、生活の中でより適切なサポートを受けやすくなるでしょう。
受診の流れと多職種連携
嚥下障害の対応には、複数の専門職が関わります。それぞれの役割を理解しておくことで、必要な支援につながりやすくなります。
専門職・機関 | 主な役割・支援内容 |
|---|---|
耳鼻咽喉科・リハビリ科・消化器内科 | 嚥下機能の検査(嚥下内視鏡〈VE〉/嚥下造影〈VF〉)や原因疾患の診断を行います。 |
言語聴覚士(ST) | 医師または歯科医師の指示の下に嚥下機能の評価を行い、飲み込みや発声のリハビリを実施し、個人に合った食形態や姿勢を提案します。 |
歯科・歯科衛生士 | 口腔ケアや義歯の調整を担当し、誤嚥性肺炎の予防につなげます。 |
管理栄養士 | 食事の栄養バランスや水分量を調整し、低栄養や脱水を防ぎます。 |
地域包括支援センター | 介護保険や医療連携の相談窓口として、制度利用や在宅支援の案内を行います。 |
このように、医療・介護・福祉の専門職が連携することで、「食べる力」を支える継続的なサポートが可能になります。状態に応じて関係機関と協力しながら、適切なリハビリや支援を受けていきましょう。

嚥下食(えんげしょく)とは?
嚥下食(えんげしょく)とは、嚥下機能が低下した人のために、やわらかさやとろみを調整して飲み込みやすくした食事のことです。
日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2021(学会分類2021)では、食事として提供することを想定したものを『嚥下調整食』と呼び、訓練場面における導入目的のものを『嚥下訓練食品』と区別しています。
市販の嚥下調整食品には、特別用途食品(えん下困難者用食品)の許可を受けたものや、ユニバーサルデザインフード(UDF)の区分表示があるものがあります。これらは学会分類2021との対応が示されているため、選択の参考になります。
嚥下食は、食材をやわらかく調理したり、ペースト状やゼリー状に加工するなど、嚥下状態に応じて段階的に調整されます。
一方で、水分が多くなりやすく栄養価が下がるため、エネルギー補強やたんぱく質の追加などの工夫が必要です。
施設や病院では「嚥下食ピラミッド」などの基準を用い、客観的な分類に基づいて適切な食形態を提供しています。

嚥下食の分類
嚥下食(嚥下調整食)の分類は、食形態のイメージの違いによる混乱を防ぐため、明確なコード番号で段階的に定められています。
学会分類2021(食事)では、コード0~4の5段階に分類されます。コード0はゼリー状の0jととろみ状の0tに、コード2は2-1と2-2に細分化されています。
コード0j(嚥下訓練食品)は、誤嚥時の組織反応や感染リスクを考慮し、たんぱく質含有量が少ないことが求められます。一方、コード1j以降の嚥下調整食は、栄養補給を目的とするため、たんぱく質含有量の制限はありません。
なお、学会分類2021では、『嚥下調整食』は食事として提供するものを指し、『嚥下訓練食品』は訓練場面で導入目的に使用するものと定義されています。
この分類を用いることで、利用者の嚥下機能やリハビリの進行度に合わせた適切な食事提供が可能になります。
施設や病院では、これらの基準をもとに、誤嚥を防ぎつつ栄養バランスにも配慮した嚥下食が提供されています。

嚥下食の調理ポイント
嚥下食は、「おいしさ」と「飲み込みやすさ」、そして「十分な栄養補給」を両立させることが重要です。
調理では、やわらかさ・まとまり・粘度・味付けのバランスを意識しましょう。ここでは、食材選びから調理方法、食べ方までのポイントを紹介します。
食材選び・下処理の工夫
嚥下食に使う食材は、やわらかく均一な食感に仕上げることが基本です。皮や筋を丁寧に取り除き、下茹でや隠し包丁などで繊維を断つと、飲み込みやすくなります。
脂身やひき肉などの柔らかい部位を使うのも効果的です。さらに、バターやマヨネーズなどの油脂類、卵や山芋、牛乳といった「つなぎ」を加えると、口当たりがなめらかになり、まとまりやすくなります。
こうした下処理や組み合わせが、嚥下しやすくおいしい食事づくりの基本です。
形態・食感の調整
食材は、ミキサーやフードプロセッサーで細かくし、ペースト状やゼリー状に加工します。
とろみやあんを加えることで、口腔内や喉に留まりにくくなり、スムーズに飲み込めます。汁物やお茶などの液体は誤嚥しやすいため、とろみ調整食品を使って粘度を調節しましょう。
市販のとろみ剤は安定性が高く、少量でも効果的に粘度を保てます。ペースト・ムース・ゼリーなど、嚥下機能の段階に応じて食感を変えることで、食べやすさと栄養摂取を両立できます。
食材ごとのポイント
ご飯や穀類は、雑炊やリゾット、ゼラチン粥など汁気を多く含ませてやわらかくします。肉や魚は脂身やひき肉を中心に使い、下味やあんを加えてまとまりやすく調理します。
卵や豆腐は扱いやすい食材ですが、固ゆで卵や高野豆腐はパサつきやすいため、とろみや汁を足して滑らかに整えましょう。
野菜はかぼちゃやじゃがいも、にんじんなどを煮てピューレ状に。繊維の多いごぼうやれんこんは細かく刻み、とろみを加えて使います。
果物はつぶしてヨーグルトなどと和えると摂取しやすくなります。
嚥下しにくい食品の回避・工夫
嚥下障害がある場合、食べにくい食品を避ける工夫が必要です。具体的には、サラサラした液体、パサつくもの、バラバラに崩れるもの、硬いもの、繊維質の多いものなどが該当します。
これらは誤嚥や窒息の原因になるおそれがあります。調理の際は、水分を含ませたり、とろみを加えたりして滑らかにまとめるとよいでしょう。
例えば、パサつく肉や魚にはあんをかけ、バラバラになりやすい野菜や豆類には卵やとろみ剤を加えて一体感を出します。こうした工夫で、嚥下しやすい状態に調整できます。
食べ方・食器の工夫
嚥下食を摂るときは、少量ずつゆっくり食べることが基本です。急いで食べたり大きく口に入れたりすると、誤嚥やむせ込みの原因になります。
一口量を守り、落ち着いて食事を進めましょう。食器は、すくいやすい深皿や持ちやすいスプーンを選ぶと、こぼしにくく扱いやすくなります。
また、滑り止めマットを使用すると安定して食事ができます。食事姿勢は背筋を伸ばし、顎を軽く引いた状態が望ましいです。姿勢と環境の工夫が、嚥下動作を助けます。
栄養補給の工夫
嚥下食は調理工程が多く、栄養バランスが偏りやすいため、効率的に栄養を補う工夫が大切です。
市販の嚥下食や冷凍弁当を活用すると、調理の負担を減らしながら必要な栄養を摂取できます。特にエネルギーやたんぱく質を補える補助食品、栄養強化ゼリー、流動食などを取り入れるのも有効です。
医師や栄養士に相談し、摂取量や組み合わせを調整することで、継続的な栄養管理がしやすくなります。嚥下食は「やわらかさ」「まとまり」「とろみ」「栄養」「おいしさ」を意識して作ることが大切です。

嚥下食の調理方法
おいしく飲み込みやすい嚥下食を作るには、形態・味・栄養の3点を意識することが重要です。
食材の加工や温度、盛り付けまで工夫することで、無理なく食事を楽しめるようになります。以下に具体的な調理のポイントを紹介します。
形態についてのポイント
嚥下しやすい食事づくりの基本は、食材の形態を適切に調整することです。液体には片栗粉や市販のとろみ調整食品を使い、粘度を保ちましょう。片栗粉は加熱が必要ですが、とろみ剤は加熱不要で手軽に使えます。
ジュースやお茶類はゼラチンやゲル化剤でゼリー状に加工すると、誤嚥のリスクを減らしつつ摂取しやすくなります。
ミキサーや裏ごし器で均一なやわらかさに整えることも大切です。水分が多い場合は、粘度を再調整し、見た目にも配慮して盛り付けを工夫しましょう。
味や温度の工夫
味付けや温度の工夫は、食欲を維持するうえで欠かせません。酸味の強い食材はむせやすいため、だしや砂糖を加えて酸味を和らげます。
香りづけにはゆずやごま、三つ葉などを使うと風味が豊かになります。彩りの良い野菜をトッピングすれば、見た目にも楽しめる一皿になります。
また、温かい料理は温かく、冷たい料理は冷たいまま提供することで、味覚を刺激しやすくなり、食欲の向上にもつながるでしょう。
盛り付け・メニューの工夫
嚥下食でも“見た目”は大切な要素です。すべてを混ぜ合わせず、食材ごとに色や形を残すことで、食事への意欲が高まります。
例えば、主菜・副菜・汁物をそれぞれ別皿に盛る、または彩りのコントラストを意識した配膳を行うと効果的です。
トッピングや飾り切りで変化をつけるのもおすすめです。
見た目の工夫は「食べたい」という気持ちを引き出し、食事リハビリの継続にもつながります。嚥下機能に合わせながら、楽しめる食卓づくりを意識しましょう。
栄養面のポイント
嚥下食は水分量が多く、栄養価が下がりやすいため、意識的に栄養補給を行うことが大切です。
たんぱく質源として卵・乳製品・豆腐などを取り入れ、エネルギー補給には中鎖脂肪酸(MCTオイル)やバターを適量加えると効率的です。
調味料やとろみ剤で味を整えつつ、栄養強化ゼリーや流動食などの補助食品を活用するとバランスがとりやすくなります。
医師や管理栄養士に相談しながら、個々の状態に合った栄養管理を行いましょう。

まとめ
嚥下は、食べ物を安全に飲み込むための大切な機能であり、日々の健康維持に直結します。
加齢や疾患によって筋力や感覚が低下すると、むせやすさや食欲低下、体重減少につながることがあります。
しかし、正しい姿勢での食事や一口量の工夫、舌や口周りのトレーニング、口腔ケアを継続することで、嚥下機能の維持・改善が期待できます。
また、誤嚥や声のかすれ、食後の咳込みが続く場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
言語聴覚士(ST)や歯科、栄養士といった地域の専門職と連携し、生活に合った支援を受けることが、「食べる力」を長く保つための重要なポイントです。
よくある質問
Q.嚥下障害は治療できますか?
はい、嚥下障害は治療が可能です。リハビリテーションや言語療法によって、嚥下機能の改善が期待できます。
症状に応じて、食事内容の調整や医療的な治療法を取り入れることもあるため、早期の診断が重要です。
Q.嚥下に問題があるとどうなりますか?
嚥下に問題があると、誤嚥(食べ物や飲み物が気管に入ること)を引き起こし、肺炎などの呼吸器感染症につながる恐れがあります。
さらに、食事がうまく摂れず、栄養不足や体重減少を招くこともあります。
Q.嚥下に関する早期のサインと対策はなんですか?
早期のサインには、食事中のむせ、飲み込みの遅れ、食後の異物感などがあります。これらの症状が見られた場合は、早めに医師へ相談し、嚥下機能の評価を受けることをおすすめします。早期発見・早期対応が回復につながります。
Q.嚥下障害はどう予防するんですか?
日常的な口腔ケアや、正しい食事姿勢を保つことが予防につながります。
食事の際は少量ずつ、ゆっくりと食べることが大切です。加齢や疾患による機能低下を防ぐために、定期的な検査や嚥下訓練を受けるのも有効です。
Q.嚥下障害がある場合、食事制限はなんですか?
はい。嚥下障害がある場合は、食材の柔らかさや飲み物のとろみを調整する必要があります。
個々の状態に合わせた食事形態を工夫することで、無理なく摂取できるようになります。医師や栄養士と相談し、最適な食事内容を決めましょう。
Q.嚥下障害のリハビリにはどんな方法がありますか?
嚥下障害のリハビリは、言語聴覚士(ST)による嚥下訓練が中心です。
嚥下に関わる筋肉を鍛えるトレーニングや、飲み込みやすい姿勢の指導、嚥下のタイミング調整などが行われます。継続的なリハビリを通じて、機能の回復を目指します。
言語聴覚士(ST)は、医師又は歯科医師の指示の下に、嚥下機能の評価や嚥下訓練を実施し、個人に合った食形態や姿勢の提案を行います。
[介護サーチプラス]編集部
この記事の執筆者情報です
介護業界に特化した情報を発信するオウンドメディア。
介護や福祉に関する制度、転職・キャリアに役立つトピック、スキルアップのヒントなど、幅広いテーマを取り上げ、誰にとっても読みやすいメディア運営を目指しています。
転職活動のヒントや資格取得、介護スキルの向上に役立つ知識まで、専門性と信頼性の高いコンテンツを目指して日々更新中です。









.webp&w=1920&q=75)
.webp&w=1920&q=75)

.webp&w=1920&q=75)

