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- 家族や大切な人の終末期を迎える方
- 介護業界で働く人・介護業界への転職を目指している人
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ターミナルケアとは?終末期医療
ターミナルケアとは、がんや難病などで回復が見込めず余命が限られた方に対して行う終末期医療を指します。
延命治療を優先するのではなく、身体的な痛みや不安、呼吸困難や倦怠感といった苦痛を和らげ、残された時間をその人らしく過ごせるように支援することが目的です。
また、患者本人だけでなく家族への精神的サポートも重視されます。医師や看護師、介護職など多職種が連携し、心身両面に寄り添う全人的ケアがターミナルケアの大きな特徴です。
出典:「人生の最終段階における医療の 決定プロセスに関するガイドライン」 における最近の動向
出典:【テーマ1】 看取り 参考資料
出典:1 【テーマ1】看取り 1 現状 (1)看取りを巡る状況 1)高齢化の進展 ○ 我が国においては
出典:人生の最終段階における医療・ケアに関する意識調査 報告書
終末期の定義
終末期とは「医学的に回復の見込みがなく、複数の医師による判断のもと、関係者が死を予測して今後の対応を検討する時期」とされています。
医師の独断ではなく、患者本人、家族、医療チームで合意を形成し方針決定を行うことが重視されています。全日本病院協会の『終末期医療に関するガイドライン』では、以下のように定義されています。
- 複数の医師が客観的な情報を基に、治療により病気の回復が期待できないと判断すること
- 患者が意識や判断力を失った場合を除き、患者・家族・医師・看護師等の関係者が納得すること
- 患者・家族・医師・看護師等の関係者が死を予測し対応を考えること
この定義には以下の重要な視点が含まれています。
観点 | 内容 |
---|---|
医学的根拠に基づいた判断 | 複数の医師が客観的なデータや臨床経過をもとに「回復の見込みがない」と判断することが前提。医師一人の主観や独断を避けるために設けられている。 |
関係者間の合意 | 患者本人(意思決定が可能な場合)、家族、医師、看護師など医療チーム全体が「終末期である」との認識を共有することが求められる。 |
死を予測した準備と対応 | 終末期の判断は「死を見据えた医療・ケア」をどう進めるかを考える契機であり、治療方針や療養の場(病院・在宅など)の具体的検討が始まる段階を意味する。 |
終末期とはいつから?ターミナル期とは?
「終末期」とは、医学的に治療による回復が期待できず、死が近いと予測される段階を指します。
全日本病院協会のガイドラインでは、①複数の医師が回復不能と判断すること、②患者・家族・医療チームが終末期であると合意すること、③死を見据えた対応を検討すること、の3つの条件が挙げられています。
一方「ターミナル期」は、余命がおおむね数か月から数週間とされる段階を指し、終末期の中でも特に死期が迫った時期を意味します。
両者を正しく理解することで、患者本人や家族が今後の医療・介護の選択を考えるうえでの指針となります。
終末期医療の方針決定プロセス
終末期医療では、医師や医療チームだけでなく、患者本人や家族を含めた合意形成の流れが重要です。以下のステップで進められます。
ステップ | 内容 |
---|---|
1. 医学的判断 | 医師が「治療による回復が見込めない」と判断する。 |
2. 終末期かどうかの確認 | 医療チーム・患者・家族が「終末期である」との認識を共有する。 |
3. 患者の意思確認 | 意思表示が明確であれば尊重し、文書化されている場合は内容を参照。判断能力があれば再度意思を確認する。 |
4. 協議による方針検討 | 患者の意思が不明確な場合は、医療チームと家族で協議し、推定意思を尊重する。 |
5. 合意形成 | 関係者で合意が得られればその方針に従い、合意が得られない場合は倫理委員会などで議論し決定する。 |
このように、終末期医療の方針は一方的に決まるのではなく、患者の尊厳を守りながら多職種・家族で合意形成を行うプロセスが大切にされています。
ターミナルケアと緩和ケアの違い
「緩和ケア」と「ターミナルケア(終末期医療)」はしばしば混同されますが、その役割や始まる時期、目的は異なります。
緩和ケアは、疾病の診断時から治療と並行して取り入れられ、身体的・精神的苦痛の軽減を目的としています。
ターミナルケア(終末期医療)は、がんや難病等で回復が難しい段階(余命おおむね数週間~数ヶ月)から導入され、延命よりも痛みの緩和やQOL維持に重点が置かれます。
項目 | 緩和ケア | 終末期医療 |
---|---|---|
開始時期 | 治療初期から並行して導入されることが多い | 延命が困難と判断された段階で開始される |
ケアの方法 | 治療による副作用や痛みを和らげ、心身の負担を軽減する | 積極的な延命治療は控え、生活の質を保つためのケアを行う |
目的 | 治療の継続を支え、患者の身体的・精神的な安定を図る | 患者が自分らしい最期を迎えられるように支援する |
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ターミナルケアと看取り介護の違いは?
ターミナルケアと看取り介護は、いずれも人生の最終段階に関わるケアですが、その対象や目的には明確な違いがあります。
ターミナルケアは「がん末期や回復が望めない疾患の患者に対する医療的支援」を指し、疼痛コントロールや精神的ケアを含む包括的な医療行為です。
一方、看取り介護は「最期の数日〜数週間に、介護施設や在宅で行われる生活支援」を中心とするケアを意味します。つまり、ターミナルケアは医療的ケアを広く含み、看取り介護は生活や心の支えに重点を置く点で区別されます。
項目 | ターミナルケア | 看取り介護 |
---|---|---|
対象 | がん末期など治癒が困難な患者 | 死期が近づいた高齢者や要介護者 |
主な内容 | 痛みの緩和、精神的サポート、医療的処置 | 生活支援、食事介助、家族へのサポート |
場所 | 病院、ホスピス、自宅 | 特養・老健・在宅など介護の場 |
目的 | 苦痛を和らげ、残された時間をより良く過ごす | 安らかな最期を迎えられるよう支援する |
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ターミナルケア・緩和ケア・看取り・ホスピスケアとの違い
「緩和ケア」「ターミナルケア」「看取り」「ホスピスケア」は、いずれも終末期の支援に関わる用語ですが、対象時期や目的、実施体制に違いがあります。以下の表にそれぞれの特徴をまとめました。
用語 | 対象時期 | 主な目的 | 実施場所 | 特徴 |
---|---|---|---|---|
診断時~終末期まで | 痛みや不安の軽減 | 病院・在宅・施設など | 治療と並行して受けられる | |
余命が限られた終末期 | QOLの向上と尊厳ある最期の支援 | 病院・在宅・施設など | 延命よりも本人の意思尊重を重視 | |
臨終の瞬間前後 | 安らかな最期を迎える見守り | 自宅・病院・施設など | 医療・介護職や家族が立ち会うことが多い | |
終末期 | 全人的ケアによる苦痛緩和 | 専門施設・在宅ホスピスなど | 多職種によるチーム支援、精神・宗教的配慮も含む |
出典:緩和ケア|厚生労働省
出典:厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」(2018年3月改訂)
出典:看取りの現状・課題・検討の視点|厚生労働省
出展:ホスピスってなあに|日本ホスピスケア協会
これらの違いを理解することで、患者本人や家族が納得してケアを選択する手助けになります。
がん・認知症・老衰による開始時期の違い
ターミナルケアの開始時期は、疾患の種類により大きく異なります。
疾患名 | 終末期の特徴 | 判断のしやすさ | 主な判断指標 |
---|---|---|---|
がん | 比較的急激に状態が悪化する | 高め | 余命予測、画像検査、疼痛の進行など |
認知症 | 徐々に進行し、判断が難しい | 低め | 摂食障害、意識レベル、ADL低下など |
老衰 | 加齢による全身的衰弱が中心 | 中程度 | 体重減少、食事量の減少、活動低下など |
いずれの場合も、日常生活動作(ADL)の低下や食事摂取量の減少、体重の著しい減少などがターミナル期を判断する重要な指標となります。
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ターミナルケアの目的
ターミナルケアの主な目的は、治癒や延命を追求する医療から、本人ができる限り自分らしく生活できることを支える医療・ケアへと移行することとされています。
身体的・精神的・社会的・スピリチュアルの苦痛を総合的に軽減し、患者本人と家族の意思に沿った過ごし方を実現します。
心身の苦痛の緩和
痛み、呼吸苦、倦怠感、吐き気などの身体症状を薬物・非薬物療法でコントロールし、同時に不安やせん妄、孤独感など心理面の負担を和らげます。
症状の経時的評価と迅速な調整で「いま困っている苦痛」を最小化します。
QOLの維持・向上
食事・清潔・睡眠・排泄など日常の快適さを整え、本人の価値観や目標(会いたい人、行きたい場所、したいこと)に沿ったケア計画を多職種で支援します。
環境調整やリハビリ、コミュニケーション支援を重ね、残された時間の満足度を高めます。
延命治療からの転換
人工呼吸器や侵襲的処置などの延命を原則とせず、利益と負担のバランスを検討して中止・非施行も選択肢とします。
事前指示や家族・医療チームとの合意形成を通じて、過度な医療を避け、生活の質を優先した方針へ移行します。
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ターミナルケアの内容
ターミナルケアは、余命が限られた患者がその人らしく最期まで過ごせるよう、多面的に支援するケアです。
身体的な苦痛の緩和だけでなく、心理的・社会的側面にもアプローチし、患者と家族双方の負担を和らげることを目的としています。
ここでは、日本終末期ケア協会の情報を整理し、3つの側面から内容を紹介します。
身体的ケア
痛み、呼吸困難、倦怠感、吐き気、浮腫など、終末期に起こりやすい症状を緩和します。
薬物療法に加え、体位調整、マッサージ、温罨法、清潔保持などを組み合わせ、できる限り快適に過ごせるよう支援します。
代表的な身体的ケアの例
- 疼痛緩和(モルヒネやフェンタニルなどの投与)
- 栄養補給(経口・経管・点滴など)
- 水分補給や排泄支援(導尿、おむつ交換など)
- 清拭・口腔ケア・爪切りなどの衛生管理
- 褥瘡(床ずれ)予防の体位変換・クッション使用
これらの支援は医師・看護師・介護職が連携して実施し、本人の状態や希望に応じた対応が求められます。
社会的ケア
療養環境の調整や介護サービスの導入、在宅か病院かの選択支援など、社会資源を活用した支援を行います。
医師、看護師、介護職、ソーシャルワーカーなど多職種が連携し、生活基盤を整えることで、患者と家族が納得して過ごせる体制を作ります。
制度・サービス名 | 支援内容 | 担当窓口 |
---|---|---|
介護保険制度 | 訪問介護・福祉用具レンタルなどの支給 | 市区町村の介護保険課 |
高額療養費制度 | 医療費の自己負担上限を超えた分の還付 | 健康保険組合/協会けんぽ |
訪問看護ステーション | 自宅での医療的ケアの提供 | 地域の訪問看護事業者 |
地域包括支援センター | 相談対応・制度案内・支援者紹介などの総合支援 | 各市区町村の設置窓口 |
医療ソーシャルワーカー支援 | 入退院時の調整、制度申請の相談・援助 | 病院・在宅医療機関 |
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ターミナルケアを行う場所
ターミナルケアは病院だけでなく、本人や家族の希望に応じてさまざまな場所で受けることができます。選択肢には、自宅・医療機関・介護施設・ホスピスがあり、それぞれに特徴やメリットがあります。
大切なのは「どこで最期を過ごしたいか」という本人の意思を尊重し、家族や医療チームと相談して最適な場を選ぶことです。
自宅
自宅で行うターミナルケアは、住み慣れた環境で家族と一緒に過ごせることが最大の魅力です。在宅医療や訪問看護、訪問介護を活用し、医師や看護師が定期的に訪問して体調管理や必要な処置を行います。
患者が住み慣れた環境でご家族とともに過ごせることが「自宅でのターミナルケア」の特徴です。多くの方にとって、希望する環境で最期まで時間を過ごすことは精神的な支えになるとされています
ただし、家族の介護負担が大きくなるため、介護保険サービスやレスパイト入院など外部の支援をうまく組み合わせることが大切です。
医療機関
医療機関でのターミナルケアは、緩和ケアチームのある病院や一般病棟で行われます。
身体の症状が急に悪化した際も、専門スタッフによる迅速な医療処置が受けられる点が安心材料です。
特に、呼吸困難や強い疼痛など、在宅では対応が難しい症状が想定される場合に選ばれることが多いです。
一方で、病院という環境は家庭のような安らぎに欠けることもあるため、本人や家族の希望を尊重しながら療養場所を検討する必要があります。
介護施設
介護施設でのターミナルケアは、特別養護老人ホームや有料老人ホームなどで行われます。日常生活の支援に加え、医療機関と連携しながら症状の緩和や看取りまで対応できる体制が整っている場合があります。
医療ケアが必要になった際には、施設内の看護師や提携病院の医師が関与し、入所者が安心して生活できる環境を支えます。
家族の介護負担を軽減できるメリットもありますが、施設ごとに医療対応力が異なるため、事前に確認して選ぶことが重要です。
ホスピス
ホスピス(緩和ケア病棟・在宅ホスピス)は、身体的・精神的な苦痛を和らげ「その人らしい最期」を迎えることを目的とした専門施設です。
医師・看護師・ソーシャルワーカー・ボランティアなど多職種が連携し、患者と家族の双方を支えます。治療を目的とせず、生活の質(QOL)を重視したケアが中心となる点が特徴です。
入院型ホスピスは平均在院日数が限られる傾向がありますが、在宅ホスピスを選ぶことで住み慣れた環境でのケアも可能です。
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ターミナルケアの費用
ターミナルケアにかかる費用は、入院・在宅・介護施設といった環境によって異なります。いずれの場合も医療保険や介護保険の対象となり、自己負担は原則1〜3割に抑えられます。
さらに「高額療養費制度」を利用することで、ひと月(一か月)の負担上限を超えた分は払い戻しが受けられる仕組みです。以下では、代表的な費用の目安を表にまとめました。
ケアの場所 | 内容 | 費用・加算(自己負担1〜3割) | 補足制度 |
---|---|---|---|
在宅(訪問看護ターミナルケア加算) | 自宅での看取りに訪問看護師が対応 | 死亡日当日・前日:2,500単位/死亡日前2〜14日以内:650単位 | 介護保険適用/高額介護サービス費の対象 |
緩和ケア病棟(ホスピス) | 医療保険での入院ケア | 1日約3.3万〜5万円(健康保険適用で1〜3割負担) | 高額療養費制度で自己負担限度額あり |
一般病院での緩和ケアチーム | 外来・入院での緩和ケア | 外来:1回数千円/入院:医療保険で1日数万円程度 | 高額療養費制度の対象 |
介護施設(特養・有料老人ホーム等) | 看取り介護加算 | 死亡日当日:1,280単位/死亡日前日・前々日:680単位/死亡日以前4〜30日:144単位 | 介護保険適用/1〜3割負担 |
出典:いずれ緩和ケア病棟への入院を考えている。入院費用がどのくらいになるか知りたい。
出典:高額な医療費を支払ったとき | こんな時に健保 | 全国健康保険協会
入院してケアを受ける場合
緩和ケア病棟(ホスピス)などの医療機関で入院する場合、1日あたり数万円規模の入院費が設定されています。これには食事や医療処置の費用が含まれ、実際の自己負担は保険適用により1〜3割です。
さらに、月ごとの上限額を超えた分は高額療養費制度の対象となり、払い戻しが受けられます。
ただし、個室を利用する場合の差額ベッド代や特別サービス料は保険適用外で、全額自己負担となる点に注意が必要です。
在宅でケアを受ける場合
自宅でのターミナルケアでは、往診料や訪問看護の費用が中心です。
往診は1回あたり数万円、訪問看護は1回1万円前後が目安ですが、これも医療保険が適用されるため実際の負担は1〜3割です。
また、介護ベッドや車椅子のレンタル、訪問介護などの生活支援には介護保険が使えます。
ただし、事業所によっては交通費や書類作成料など追加費用がかかる場合があるため、利用前に確認しておくことが大切です。
介護施設で過ごす場合
有料老人ホームや特別養護老人ホームなどの介護施設でも、ターミナルケアが行われます。
介護保険が適用されるため自己負担は1〜3割で済みますが、施設によってサービス内容や加算の有無により金額が変わります。
特に「看取り介護加算」が算定される場合、死亡日前日や当日に加算が大きくなる仕組みがあります。施設の医療体制や追加料金の有無を事前に確認しておくと安心です。
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終末期に家族ができること
終末期における家族の役割は、患者の尊厳を守りながら心身を支えることです。
直接的なケアに加え、意思の尊重や医療者との調整、支援制度の活用など多面的な支えが求められます。
患者に寄り添うコミュニケーション
穏やかな会話やスキンシップを通じ、孤独や不安を和らげることができます。
例えば、意識が低下しても耳は聞こえているとされるため、声をかけ続けることは大切です。写真を一緒に眺める、思い出話をするなど、患者が安心できる時間を作りましょう。
本人の意思を尊重するサポート
患者が望む療養場所や治療方針を尊重し、必要に応じて家族が代弁者となります。
例えば、「自宅で過ごしたい」「延命治療は望まない」といった意思を医療チームに伝える役割を担います。これにより、本人の希望に沿った最期を迎えやすくなります。
家族自身のケアと支援活用
介護負担を抱え込みすぎると、家族の心身が疲弊してしまいます。
在宅医療の訪問看護やレスパイト入院を活用すれば、介護者が一時的に休養を取ることも可能です。支援制度を積極的に使うことで、家族も安心してケアを続けられるでしょう。
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ターミナルケアを提供するうえで大切なこと
ターミナルケアは身体的な痛みだけでなく、心理的・社会的な側面を含めて支える包括的なケアです。患者が「自分らしく」最期を迎えられるよう、環境や体制づくりが欠かせません。
身体的苦痛の緩和
疼痛や呼吸困難、倦怠感などを薬物療法やリラクゼーションで和らげます。
例えば、モルヒネなどの鎮痛薬、酸素投与、体位変換、温罨法(おんあんぽう)などが用いられます。食欲不振がある場合には、少量でも摂取しやすい工夫を行い、生活の質を保ちます。
心の支えと尊厳の尊重
死への恐怖や孤独感を軽減するため、傾聴や精神的サポートが大切です。
患者が語りたいことに耳を傾ける、宗教的・スピリチュアルな支援を取り入れることも有効です。
本人が大切にしてきた習慣や価値観を尊重することで、最後まで自分らしく過ごせる環境を整えます。
多職種連携による包括的支援
医師・看護師・介護職・ソーシャルワーカーなどが連携し、医療・介護・生活の側面を総合的にサポートします。
例えば、在宅で過ごす場合は訪問診療や訪問看護を組み合わせ、必要に応じてケアマネジャーが介護サービスを調整します。多職種で協力することで、安心できる体制が整います。
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ターミナルケアにおけるQOL向上の考え方
ここでは、ターミナルケアにおけるQOL(Quality of Life/生活の質)の向上について解説します。
病気の治癒が難しい状況でも、本人が最期まで尊厳をもって自分らしく過ごせるよう、「快適さ」「意思の尊重」「心の支え」など、医療・介護の両面から支援することが重視されています。
QOLとは?終末期における尊厳ある生活の意味
QOL(Quality of Life/生活の質)とは、身体の健康状態にとどまらず、心理的・社会的な満足度、自分らしさ、価値観の尊重などを含む包括的な概念です。
ターミナルケアにおいては、延命ではなく「どう生きるか」「どう過ごすか」に焦点が置かれます。たとえば、痛みを最小限に抑えた穏やかな時間、好きな場所での療養、家族との時間、信仰や人生観への配慮などが、QOLを高める要素となります。
患者が「自分らしい生活を送っている」と感じられることが最も重要であり、そのために医療職や介護職は、本人の意思を丁寧にくみ取り、尊厳を保ちながら支援を行う必要があります。
終末期におけるQOLの主な要素
- 痛みや身体的苦痛の緩和
- 好きな場所・安心できる環境での療養の選択
- 家族や大切な人との時間の確保
- 不安・恐怖を和らげる精神的サポート
- 宗教・信条・人生観への配慮
- 意思決定への参加と自己選択の尊重
本人の価値観を尊重するケアの実例
QOLを重視したターミナルケアでは、本人の価値観や希望をくみ取った柔軟なケアが求められます。
本人の希望とそれに基づくケア実例
本人の希望例 | 実施されたケア内容 | 支援した職種 |
---|---|---|
自宅で最期を迎えたい | 訪問看護・訪問診療・在宅酸素導入 | 医師、看護師等 |
家族と最後に旅行に行きたい | 医師同伴での一泊旅行、移動用ストレッチャーを用意 | 医師、看護師、介護職 |
好きなものを食べたい | 嚥下機能に応じた調理・少量提供 | 管理栄養士、看護師 |
音楽を聴きながら過ごしたい | 好きなCDや音楽機器を病室に設置 | 家族、病棟スタッフ |
マニュアル通りではなく、その人にとって何が「幸せ」かを基準に支援を考えることが、QOL向上につながります。
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患者と家族がたどる心理的プロセス
ここでは、患者とその家族が終末期に直面する心理的な変化について解説します。
死を意識したとき、多くの人は一定の感情のプロセスをたどるとされており、それを知ることで適切な支援や心の準備につながります。本人と家族それぞれの心理状態とサポート方法について整理します。
死の受容プロセス「否認〜受容」までの5段階
「死の受容プロセス」は、スイスの精神科医エリザベス・キューブラー=ロスが著書『死ぬ瞬間』
(1969年)で提唱した理論です。
彼女は、終末期の患者が死を受け入れるまでの心理的反応を5段階に分類しました。段階は以下の通りです。
段階 | 特徴・反応の例 |
---|---|
否認 | 「まさか自分が…」と病気や死を認められず、否定する状態 |
怒り | 「なぜ自分だけが…」と他者や環境に怒りを向ける |
取引 | 「あと半年でいいから…」と願いや希望を抱く |
抑うつ | 深い悲しみや絶望に包まれ、沈黙や落ち込みが強くなる |
受容 | 状況を受け入れ、自分らしい過ごし方を選ぼうとする |
このプロセスは直線的ではなく、人によっては段階を前後したり、繰り返したりすることもあります。医療者や家族は、本人のペースに合わせた寄り添いが大切です。
家族の心構えと精神的なサポート
家族にとっても、終末期の患者を支えることは大きな精神的負担となります。不安や悲しみ、無力感、葛藤などが交錯し、「何が正しい対応なのか」と悩むことも少なくありません。
そのため、家族自身が感情を抑えすぎず、必要に応じて支援を受けることが重要です。
医療ソーシャルワーカーや心理士によるカウンセリング、家族会、地域包括支援センターなどが相談窓口となります。
また、患者の話に耳を傾け、否定せずに気持ちを受け止める姿勢が、本人にとって大きな安心につながります。家族が「支える側」であると同時に、「支えられる側」としてケアされることも大切です。
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ターミナルケアを支える職種とチーム体制
ここでは、ターミナルケアに関わる職種やチーム体制について解説します。
終末期の支援は一人の医療者だけでは成り立たず、複数の専門職が連携する「チーム医療」が基本です。各職種の役割と、チームでどのように支援が行われているのかを紹介します。
医師・看護師・介護士の役割分担
ターミナルケアでは、医師・看護師・介護士がそれぞれ専門的な役割を担い、患者の生活と尊厳を支えます。
医師は、疼痛管理や症状緩和、治療方針の説明などを担当し、看護師は、日常的な健康管理に加え、精神的ケアや家族支援、緊急時対応も含めて多面的に関わります。
介護士は、入浴・排泄・食事などの身体介助を通じて、患者のQOL(生活の質)向上を支えます。
主な職種とその役割
職種 | 主な役割 | 補足説明 |
---|---|---|
医師 | 疼痛・症状の管理、治療方針の決定 | 予後説明や本人・家族との面談も担当 |
看護師 | 健康観察、服薬管理、精神的ケア | 緊急時の対応や多職種との連携も担う |
介護士 | 食事・排泄・入浴などの日常生活の身体介助 | QOLの維持と本人の快適性を重視 |
それぞれの職種が単独で動くのではなく、常に情報を共有しながら連携することで、患者本人の意向や状態に即した支援が可能となります。役割の違いを尊重し合う姿勢が、質の高いケアの基盤となります。
多職種連携による支援の仕組み
多職種連携とは、医師・看護師・介護士だけでなく、薬剤師、管理栄養士、リハビリ職(PT・OT)、医療ソーシャルワーカー、ケアマネジャーなどが連携して支援にあたる体制を指します。
これらの職種は定期的にカンファレンスを行い、患者本人と家族の希望に応じてケアの方向性を共有します。
たとえば、薬剤師は副作用の軽減や薬剤管理、栄養士は摂取困難に応じた食事提案、ソーシャルワーカーは制度利用や在宅移行の相談を担当します。
ターミナルケアを支える多職種の例
職種(専門職) | 役割例 |
---|---|
医師 | 疾患管理、緩和医療の判断、家族への説明 |
看護師 | 日常的な体調管理、精神的サポート、状態変化の報告 |
介護士 | 入浴・排泄・食事介助、生活支援 |
薬剤師 | 処方内容の確認、副作用への配慮、服薬指導 |
管理栄養士 | 栄養バランスの調整、食事形態の提案 |
リハビリ職(PT・OT) | 身体機能の維持・改善、自立支援 |
医療ソーシャルワーカー | 制度利用支援、退院調整、心理的支援 |
ケアマネジャー | ケアプランの作成と進行管理、サービス調整の中心役 |
こうした横断的なチームの支援体制により、パーソン・センタード・ケア(本人中心のケア)が実現されます。
出典:職種紹介|中部地区医師会 在宅ゆい丸センタ
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ケアの実施場所と選び方
ここでは、ターミナルケアをどこで受けるかという選択肢と、それぞれの特徴について解説します。
自宅、介護施設、病院・ホスピスなど、実施場所によって支援内容や体制が異なります。本人や家族の希望、医療ニーズ、介護体制に応じた選び方のポイントを整理します。
自宅で行うターミナルケアの特徴と注意点
自宅でのターミナルケアは、住み慣れた場所で家族に囲まれて過ごせる点が特徴です。
訪問診療・訪問看護・訪問介護など在宅サービスを活用すれば、医療や介護の支援も受けられます。ただし、24時間対応の体制が求められる場合もあり、家族の身体的・精神的負担が大きくなることがあります。
また、在宅酸素療法や点滴管理といった医療的支援には、医師やケアマネジャーとの連携が不可欠です。希望を実現するためには、制度内容と利用可能な支援資源を把握しておくことが重要です。
自宅でターミナルケアを行う際のポイント
- 訪問診療・訪問看護・訪問介護の利用が可能
- 24時間対応できる支援体制の構築が必要
- 医療機器(酸素、点滴など)の設置要否を確認
- 家族の介護負担が大きくなる可能性がある
- ケアマネジャーや主治医との連携が重要
介護施設で受けるケアの利点と条件
病院やホスピスでのターミナルケアは、医療体制が整っており、緊急時の対応や高度な医療処置が必要な方に適しています。緩和ケア病棟では、がんなど治癒が困難な疾患に対して、身体的・精神的苦痛を和らげるケアが中心となります。
ただし、ホスピスは原則として末期がん患者や後天性免疫不全症候群患者などが対象であり、入院には医師の判断と診断書が必要です。病院での看取りを希望する場合でも、入院期間や費用の条件を確認しておくことが重要です。
区分 | 主な特徴 | 対象者の条件 |
---|---|---|
一般病院 | 急変対応が可能、医療機器が整備されている | 医師の判断により入院 |
緩和ケア病棟 | 身体・精神の苦痛緩和に特化、専門職が対応 | がんなどで治癒困難、余命6か月程度の方 |
ホスピス | 全人的ケア、宗教的・精神的支援も含む | 施設によって異なるが、主に末期がん患者、医師の診断書が必要 |
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ターミナルケアと家族の役割・心構え
ここでは、ターミナルケアにおいて家族が果たす役割と、心の準備について解説します。
本人の尊厳を守りながら最期の時間を支えるためには、家族自身の感情との向き合い方やケアへの関わり方が重要です。
「寄り添うケア」に必要な心の準備とは
ターミナルケアにおいては、「何かをしてあげる」よりも「そばに寄り添う」ことが、本人にとって大きな支えになります。しかし、死を目前にした状況では、焦りや不安から無理に何かをしようとすることも少なくありません。
「ありのままの時間を共に過ごす」姿勢が重要であり、本人の言葉や表情に耳を傾けること、静かにそばにいることも立派なケアです。
必要以上に励まさず、本人の気持ちを尊重する姿勢を大切にしましょう。事前に本人の希望や意思を共有しておくことも、後悔の少ない看取りに繋がります。
家族が陥りやすい感情と対処法
ターミナル期において、家族は強いストレスと複雑な感情に直面することが多くあります。
「もっと支えられたのではないか」「見ているのがつらい」といった思いは自然な感情であり、自責の念を抱きやすくなります。以下は、よく見られる感情とその背景、対処法の一例です。
家族が抱えやすい感情と対処法
感情 | 背景・原因 | 対処法・心がけ |
---|---|---|
罪悪感 | ケアに十分関われなかったという思い | 「できたこと」に目を向ける |
無力感 | 症状が改善しないことへの歯がゆさ | 医療者との連携で適切な役割を確認し、整理する |
怒り・苛立ち | 疲労や感情の蓄積、他の家族との認識の違い | 感情を言葉にして信頼できる相手と共有する |
悲しみ | 別れが迫っている現実への苦しさ | 悲しみを抑えず受け止める姿勢を持つ |
これらの感情を「間違ったもの」と捉えず、自然な反応として認めることが大切です。医療者や相談支援員に思いを話すこと、家族同士で想いを共有することで、孤立感や不安は大きく軽減されます。
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ターミナルケアの過程で家族ができること・すべきこと
ここでは、ターミナルケアの過程で家族が果たす役割について解説します。
本人の意思や価値観を尊重しながら、残された時間を安心して過ごせるよう、事前の意思確認や医療・介護チームとの協力が求められます。
本人の意思確認と終活のサポート
ターミナル期において最も重要なのは、本人の「どう過ごしたいか」という意思を尊重することです。治療方針や延命措置、療養場所(自宅・施設・病院)などについて、早い段階で話し合うことが望まれます。
また、財産や遺言、葬儀の希望など「終活」に関することも、本人の意思が明確なうちに共有しておくと安心です。
意思を文書化する手段としては「事前指示書(アドバンス・ディレクティブ)」の作成があり、本人の希望を医療・介護現場で尊重する際の判断材料となります。家族が本人の意思に基づいた対応を取れるよう、冷静かつ丁寧に準備を進めましょう。
出典:アドバンス・ディレクティブとリビング・ウェル(総論)|日本老年医学会
本人と話し合いたい主なテーマ例
- 延命治療の希望(例:心肺蘇生、人工呼吸など)
- 看取りの場所(自宅・病院・施設など)
- 葬儀やお墓に関する意向
- 財産管理・遺言書の有無と内容
- 介護や医療に関する希望(事前指示書の作成など)
思い出作りと最期まで寄り添う姿勢
ターミナル期は、悲しみだけでなく「一緒に過ごせる最後の時間」でもあります。特別なことをする必要はなく、日常の中に小さな思い出を重ねていくことが大切です。
たとえば、昔話をしたり、音楽を聴いたり、アルバムを見たりする時間は、ささやかでも深い意味を持つ瞬間です。言葉が少なくなっても、手を握る、そばにいるなどの行動で安心感を伝えられます。
本人の反応やタイミングを尊重し、自然体で寄り添うことが望ましいケアにつながります。最期の時間を後悔なく見送るためにも、「今できること」を大切にする気持ちを持ち続けましょう。
医療・介護チームとの連携と相談のコツ
ターミナルケアでは、医師・看護師・訪問介護職・ケアマネジャーなど、複数の専門職が連携して支援にあたります。家族もその一員として、相談や連携を円滑に行うことが重要です。
特に、不安や異変を感じたら早めに伝え、状況を具体的に説明することが適切な対応に結びつきます。
相談の内容と伝え方の例
相談内容 | 伝え方の工夫 |
---|---|
食事を拒否している | 「〇日から食欲がなく、水分も取りづらい状況です」 |
夜間に不安が強くなる | 「夜になると落ち着かず、不眠が続いています」 |
痛みを訴えている | 「表情がつらそうで、体をさすっていることが多いです」 |
家族が対応に困っている | 「どう声をかけたらよいか分からず悩んでいます」 |
定期的なカンファレンスや訪問時の会話の中で、気軽に相談できる雰囲気を保つことも大切です。信頼関係が築かれることで、本人にも家族にも精神的な安定がもたらされます。
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ターミナルケアにかかる費用と支援制度
ここでは、ターミナルケアに必要となる費用の目安や内訳、利用できる公的支援制度について解説します。療養場所によって費用構成は大きく異なるため、事前に確認し、制度を上手に活用することが重要です。
病院・施設・在宅別の費用目安と内訳
ターミナルケアにかかる費用は、療養する場所によって異なります。
療養場所別の費用(推測)
療養場所 | 月額費用の推測 | 主な内訳 | 備考 |
---|---|---|---|
病院 | 10万~30万円 | 入院費、診察料、薬剤費、検査、差額ベッド代など | 高額療養費制度の対象になる可能性あり |
介護施設 | 15万~25万円 | 居住費、食費、介護サービス費、生活費など | 施設種類により費用差あり |
在宅 | 5万~20万円 | 訪問診療、訪問看護、介護サービス、消耗品等 | 交通費や介護用品など実費が発生 |
費用は医療保険・介護保険の対象範囲や、サービスの利用頻度によって変動するため、個別の見積もりが重要です。入院費用は高額療養費制度の対象にもなりますが、在宅では交通費や備品購入などの実費も想定されます。
医療保険・介護保険・公的制度の活用方法
ターミナルケアでは、医療保険や介護保険などの公的制度を活用することで、経済的な負担を軽減できます。医療保険では、末期がんなどを対象に訪問診療や在宅緩和ケアが1~3割負担で利用できます。
介護保険は、要介護認定を受けることで訪問介護や福祉用具のレンタルなどが原則1割(一定以上の所得者は2~3割)で利用可能です。
さらに、高額な医療費や介護費が発生した場合には、それぞれ「高額療養費制度」や「高額介護サービス費制度」があります。生活困窮世帯については、生活保護制度の医療扶助・介護扶助の対象になることもあります。
活用できる主な制度
- 医療保険:訪問診療・在宅医療・緩和ケア(1~3割負担)
- 介護保険:訪問介護・福祉用具・ショートステイ(1~3割負担)
- 高額療養費制度:医療費が自己負担限度額を超えた場合に払い戻し
- 高額介護サービス費制度:介護費用が一定額を超えた場合の補助
- 生活保護制度:生活困窮世帯向けの医療・介護費用の公的支援
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介護保険における訪問看護ターミナルケア加算
訪問看護ターミナルケア加算とは、自宅などで療養している要介護者が亡くなった際、訪問看護師が看取り対応を行った場合に算定できる介護保険上の加算です。
2024年度の介護報酬改定で単位数が見直され、より現場に即した運用となっています。2025年9月時点では、この改定内容が最新の基準として有効です。以下では、費用や要件をわかりやすく整理します。
加算の単位数(2024年度改定後)
- 訪問看護・定期巡回・看護小規模多機能型居宅介護:2,500単位/死亡月
- 算定要件:死亡日および死亡日前14日以内に2日以上ターミナルケアを実施
この単位に応じて、自己負担割合(1〜3割)を掛けた金額が利用者の負担額となります。
算定要件
- 医師の指示に基づく訪問看護であること
- 訪問看護計画書・同意書が整備されていること
- 死亡時の看護記録や経過記録が作成されていること
- 訪問看護ステーションが「ターミナルケア加算」の届け出をしていること
利用の注意点
加算は看取り対応を行った場合に限り算定可能です。在宅での看取りを希望する場合は、事前に担当医・ケアマネジャー・訪問看護ステーションと連携して準備する必要があります。地域や事業所によって運用に差があるため、詳細はしっかりと確認しておきましょう。
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ターミナルケアの提供に役立つ資格や研修
ターミナルケアは、医学的知識だけでなく、高度な判断力や全人的なケアスキルが求められます。
そのため、看護師や介護職員を対象とした研修・資格制度が整備されており、現場でのケアの質を高める取り組みが進んでいます。
特定行為研修
特定行為研修は、厚生労働省が定める制度で、一定の臨床経験を持つ看護師が受講することにより、医師の包括的指示のもとで診療の一部を実施できるようになる研修です。
終末期においては、呼吸管理や栄養管理など迅速な対応が必要な場面で大きな役割を果たします。
厚生労働省の統計によれば、特定行為研修を修了した看護師は累計で約2万6千人に達し、そのうち在宅や緩和ケア領域での活躍が増えています。
終末期ケア専門士
一般社団法人日本終末期ケア協会が認定する「終末期ケア専門士」は、臨床におけるスペシャリスト資格です。エビデンスに基づいた終末期ケアを学び、患者や家族の心身の苦痛に寄り添う全人的ケアの実践を目指します。
医療職だけでなく介護職も受験可能であり、多職種連携の中核を担う人材育成を目的としています。2025年10月には第6回認定試験が予定されており、臨床現場での需要が高まっています。
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まとめ
ターミナルケア(終末期医療)は、余命が限られた方とそのご家族がご納得のうえで、その人の価値観や希望を尊重しながら、医療・看護・介護の多職種が連携して心身の苦痛を緩和し、最期まで自分らしい時間を過ごせるように支えるケアです
本人や家族の希望に寄り添い、穏やかな時間をできるだけ長く過ごせるよう、早めの話し合いや制度の活用も重要とされています。医師や看護師、介護職、ケアマネジャーなどが協力し、身体的ケアだけでなく、精神的・社会的な支援も総合的に提供します。
また、日々の細やかな対話や観察を通じて、本人の気持ちの変化に柔軟に対応する姿勢も欠かせません。自宅や施設で自分らしく過ごしたいと願う方にとって、ターミナルケアは大切な選択肢のひとつとなるでしょう。
よくある質問
Q.ターミナルケアと看取りの違いは?
ターミナルケアは「人生の最終段階のケア全般」、看取りは「最期の時間の付き添い」です。
ターミナルケアは苦痛緩和やQOL維持などを含む広範な支援で、数週間〜数か月に及びます。看取りは死の直前の対応を指し、期間や内容に違いがあります。
Q.誰がターミナルケアの開始を決める?本人の意思確認が難しい場合は?
医師の判断をもとに、本人または家族の意思で開始されます。
本人の意思確認が難しい場合は、過去の希望やアドバンス・ケア・プランニング(ACP)に基づき、家族と医療チームが話し合って決定します。
Q.家族だけで在宅ケアは可能?支援サービスは?
在宅ケアは公的支援を活用すれば家族だけで抱える必要はありません。
訪問診療・看護・介護・薬剤管理などの支援サービスがあり、医療保険や介護保険のもとで利用可能です。ケアマネジャーの調整で負担も軽減されます。

海野 和(看護師)
この記事の監修者情報です
2006年に日本消化器内科内視鏡技師認定証を取得し、消化器系疾患の専門的な知識と技術を習得。2018年にはNCPR(新生児蘇生法専門コース)の認定を取得し、緊急時対応のスペシャリストとしての資格を保有。さらにBLS(HeartCode®BLSコース)を受講し、基本的生命維持技術の最新知識を習得。豊富な臨床経験と高度な専門資格を活かし、医療・介護分野における正確で信頼性の高い情報監修を行っています。
【保有資格】
・日本消化器内科内視鏡技師認定証(2006年取得)
・NCPR(新生児蘇生法専門コース終了認定証)(2018年取得)
・BLS(HeartCode®BLSコース)受講済み
