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- 親の介護費用が気になる家族将来の経済的負担を把握しておきたい方に役立ちます。
- 自分の老後資金を考えている高齢者本人老後の生活設計を見直すきっかけになります。
- 介護施設への入所を検討している人費用だけでなく申込の流れや待機者数なども理解でき、入所準備をスムーズに進められます。

特別養護老人ホーム(特養)の費用とは
ここでは、特別養護老人ホーム(特養)の費用について解説します。特別養護老人ホーム(特養)の特徴や利用が多い理由、さらに入居時にかかる費用の有無など、基本的な費用構造をわかりやすく説明します。
特別養護老人ホーム(特養)の特徴と人気の理由
特別養護老人ホーム(特養)は、要介護度が比較的高い高齢者を主な対象とする公的介護施設です。医療依存度がある程度高い方も入居でき、長期間にわたり介護や日常生活支援を受けられることが特徴です。
介護保険制度により、利用料金の負担が軽減されています。待機者が多いことから入居までに時間を要する場合がありますが、手厚い介護サービスや安心できる環境が利用者に支持されています。
- 要介護度が高い高齢者向けの公的施設
- 医療依存度のある方も受け入れ可能(※一定の条件あり)
- 長期入居が基本
- 介護保険適用により費用負担が比較的軽減される
- 待機者多数の人気施設
入居時費用がかからないメリット
特別養護老人ホーム(特養)の大きな特徴のひとつは、一般的に入居時に高額な初期費用が不要な点です。多くの民間の介護施設では敷金や入居一時金が必要ですが、特別養護老人ホーム(特養)では基本的に介護保険のサービス費用と居住費・食費のみの負担となります。
これにより、経済的に安定しない高齢者や家族の負担が軽減されるメリットがあります。
ただし、一部の施設では保証金やその他の費用を求める場合もあるため、入居前に必ず確認することが大切です。
- 入居時の一時金・敷金は原則不要
- 支払いは基本的に介護保険サービス費・居住費・食費のみ
- 初期費用を抑えられるため、低所得者でも利用しやすい
- 一部施設では保証金が必要なケースもあるため、事前確認が必要
- 民間施設と比べて経済的負担が大幅に軽減される場合がある
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特別養護老人ホーム(特養)の月額費用の内訳
ここでは、特別養護老人ホーム(特養)でかかる月額費用の内訳について詳しく解説します。
介護サービス費や各種加算、さらに居住費・食費・日常生活費の目安を把握し、収入に応じた減免制度も含めて、利用前に必要な費用イメージを整理しましょう。
介護サービス費・加算の仕組み
特別養護老人ホーム(特養)では、介護保険が適用される基本的な介護サービス費のほか、個別のサービス内容や利用者の状態に応じた「加算」が上乗せされます。主な加算には夜間看護体制加算、認知症加算、機能訓練加算などがあります。
これらの加算は施設の体制やサービスの質に基づいて適用され、月額費用に変動をもたらします。なお、介護度が高い利用者ほど負担割合は低くなる仕組みとなっており、経済的に配慮された制度です。
- 基本介護サービス費(要介護度により異なる)
- 夜間看護体制加算(看護師の24時間配置など)
- 認知症加算(認知症ケアを提供する場合)
- 機能訓練加算(リハビリや機能維持訓練の実施)
- 介護度に応じた負担割合の違い
居住費・食費・日常生活費の目安
特別養護老人ホーム(特養)の月額費用には、居住費(部屋代)・食費・日常生活費が含まれます。居住費は居室のタイプによって異なり、多床室のほうが比較的安価です。
食費は1日あたり約700〜1,000円が目安とされており、日常生活費には紙おむつ・衣類・理美容・レクリエーション等の費用が含まれることもあります。
低所得者や非課税世帯の場合は、「特定入所者介護サービス費」制度によって費用の上限が設けられることがあります。
費用項目 | 目安(月額) | 備考 |
---|---|---|
居住費 | 3万円~7万円程度 | 個室か多床室で変動 |
食費 | 2.1万円~3万円程度 | 1日約700~1,000円 |
日常生活費 | 数千円~1万円程度 | 消耗品代、レクリエーション等 |

【要介護度・居室タイプ別】特別養護老人ホーム(特養)の費用シミュレーション
ここでは、特別養護老人ホーム(特養)の居室タイプや要介護度に応じた月額費用の違いについて解説します。
多床室・個室・ユニット型といった居室形態ごとの費用差や、要介護度の上昇による費用変化、注意すべき加算や制度のポイントをまとめました。
多床室・個室・ユニット型の費用比較表
特別養護老人ホーム(特養)では、居室タイプにより月額費用が大きく異なります。多床室は複数人で1部屋を使用するため、居住費は比較的低額です。一方、個室はプライバシー性が高く快適な生活環境を確保できますが、費用は高くなります。
ユニット型個室は、10名程度を1つのグループ(ユニット)として分け、その中で家庭的な雰囲気で生活できるように設計された方式です。各ユニットには共同生活室があり、入居者同士の交流や日常生活の支援が行われます。以下の表は、それぞれの目安金額を示しています。
【費用比較表例】
居室タイプ | 居住費(月額目安) | 食費(月額目安) | 備考 |
---|---|---|---|
多床室 | 約3万円〜5万円 | 約2万円 | 最も安価 プライバシーは限定的 |
個室 | 約5万円〜10万円 | 約2万円 | プライバシー重視 やや高額 |
ユニット型 | 約4万5千円〜8万円 | 約2万円 | 家庭的環境でケアを受けられることが特徴 |
※金額は厚生労働省の基準額をもとにした目安であり、施設や地域により異なります。
要介護度による差と注意点
要介護度が高くなるほど、必要なサービスが増えるため介護サービス費も上昇します。ただし、自己負担割合は所得に応じて1〜3割に区分されており、要介護度によって必ずしも軽減されるわけではありません。
また、介護報酬には加算(例:認知症加算、夜勤体制加算など)が複数あり、利用者の状態や施設の提供体制に応じて費用が増減します。介護度が上がることで、これらの加算が適用されるケースもあるため注意が必要です。さらに、要介護認定の更新時には費用が見直されることがあるため、制度変更にも留意しましょう。
- 要介護度が上がると介護報酬が増え、費用も増加
- 自己負担割合は所得区分で決定(1〜3割)
- 各種加算により費用が変動
- 費用は施設の体制や認定更新時に見直される場合あり

【年金や所得別】特別養護老人ホーム(特養)の自己負担シミュレーション
ここでは、年金や所得水準に応じた特別養護老人ホーム(特養)の自己負担額シミュレーションについて解説します。
年金のみでの入居が可能か、収入別の実例をもとに費用感を把握できるようにし、さらに自己負担割合(1〜3割)の判定基準についても制度に基づいて説明します。
年金だけで入居できる?収入別の実例紹介
特別養護老人ホーム(特養)の費用は介護保険制度により一部が公費負担されているため、年金収入のみでの入居が可能なケースもあります。例えば、年金月額が15万円前後であれば、多床室の利用や減免制度の活用により生活費をまかなえる場合があります。
ただし、介護度や加算内容、居室の種類によって費用が変動するため、詳細な試算には各施設との相談が必要です。資産や収入に応じて「特定入所者介護サービス費」などの軽減制度が適用されることもあります。
自己負担割合(1〜3割)とその判断基準
特別養護老人ホーム(特養)における介護サービス費の自己負担割合は、利用者の所得状況に応じて1割・2割・3割のいずれかに設定されます。
具体的には、以下のように前年の合計所得金額や年金収入等をもとに判定され、市区町村が通知を行います。
たとえば、年間の合計所得が280万以上340万未満になる場合や夫婦で年金収入+その他の所得額が346万以上463万未満になる場合は2割、年金収入が340万円以上などの場合は3割負担に分類されます。
また、「高額介護サービス費」制度により、所得に応じた月額負担上限が設定されています。負担割合が高くても、実際の負担が一定額で止まる仕組みがある点は重要です。
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特別養護老人ホーム(特養)の費用を軽減できる制度一覧
ここでは、特別養護老人ホーム(特養)の利用に際し、費用負担を軽減できる制度を紹介します。
介護保険に基づく負担限度額認定、高額介護サービス費、社会福祉法人による軽減策、さらには税制上の控除など、多面的な支援制度を理解し、経済的な備えに役立てましょう。
特定入所者介護サービス費(負担限度額認定)とは
特定入所者介護サービス費とは、低所得の方を対象に、特別養護老人ホーム(特養)や短期入所生活介護(ショートステイ)などで発生する居住費・食費の自己負担額に上限を設ける制度です。要件を満たせば「負担限度額認定証」が市区町村から交付され、定められた上限までの負担で済みます。
対象者は主に住民税非課税世帯や生活保護受給者で、申請には所得・資産に関する証明書の提出が必要です。制度は年1回の更新制で、対象施設も指定されていますので、事前に確認が必要です。
高額介護サービス費・合算療養費制度の概要
高額介護サービス費制度は、1か月あたりの介護保険サービス費(1〜3割負担分)が所得に応じた上限を超えた場合、超過分が払い戻される制度です。令和3年8月の利用分から負担限度額が見直されており、所得区分に応じて上限額が改定されています。年収により上限額は異なりますが、過度な負担を防ぐ仕組みとして有効です。
また、高額医療・高額介護合算療養費制度では、医療保険と介護保険の自己負担額を合算して、年間で一定額を超えた場合に払い戻しを受けることができます。いずれも申請手続きが必要で、詳細は市区町村や保険者の窓口で確認してください。
社会福祉法人の利用者負担軽減制度
社会福祉法人が運営する特別養護老人ホーム(特養)では、独自の負担軽減制度が用意されている場合があります。内容としては、食費・居住費の一部減免、生活用品の無償提供、利用料の分割支払いなどが挙げられます。
これらは法人の経営状況や地域支援方針によって異なるため、利用前に詳細を問い合わせることが大切です。申請には、収入証明や住民票の提出が求められるケースが多く、対象者や条件も施設ごとに異なります。
- 食費や居住費の一部減額(例:ユニット型個室の差額負担を軽減)
- 生活必需品の無償提供(寝具、タオル、日用品など)
- 入居一時金や利用料の分割払いへの対応
- 一部負担金の免除(緊急入所者、災害被災者等)
- 施設独自の生活支援金の給付
- 収入状況に応じた減免スライド制度の導入
生活保護受給者への特別制度
さらに、厚生労働省が推進する 「社会福祉法人等による生計困難者に対する介護保険サービスに係る利用者負担額軽減制度事業」 により、生活保護受給者や低所得高齢者を対象にした特別な利用者負担軽減も行われています。
従来は生活保護を受けている高齢者の場合、従来型の多床室を中心に入居が認められていましたが、制度の拡充により ユニット型特養への入居も可能 となりました。これは「生活保護受給者だから環境面で不利になる」といった制約を減らし、より安心できる住環境の中で介護を受けられるようにすることを目的としています。
出典:社会福祉法人等による生計困難者に対する介護保険サービスに係る利用者負担額軽減制度事業について
制度を利用するには、生活保護受給証明や収入状況を示す書類の提出が必要です。対象となる負担軽減の範囲や申請手続きは、各施設や自治体の判断で異なるため、事前に確認しておくことが重要です。
医療費控除・扶養控除などの税制メリット
特別養護老人ホーム(特養)の入居費用の一部は、所得税控除の対象となる場合があります。例えば、介護費用のうち医療的ケアと見なされる部分(食費・居住費を除く)は医療費控除の対象になります。
また、親などを扶養している場合には扶養控除や特定扶養控除が適用されることがあります。これらの制度を活用するには、確定申告が必要です。控除対象の範囲や条件は複雑なため、事前に税務署や専門家に相談しましょう。

特別養護老人ホーム(特養)の入居条件と注意点
ここでは、特別養護老人ホーム(特養)への入居条件や、入所にあたっての注意点を解説します。原則として要介護3以上の方が対象ですが、例外も認められる場合があります。
また、空室不足による待機期間の実態や、入所を早めるための対策についても整理します。
要介護3以上が原則だが例外もあり
特別養護老人ホーム(特養)は、原則として要介護3以上の方が対象とされています。これは、介護保険法に基づく施設入所基準によるものです(※平成27年4月以降適用)。
ただし、特例として、要介護1または2の方でも、やむを得ない事情がある場合には入居が認められることがあります。例としては、認知症による著しい行動障害や、在宅介護が極めて困難な事情がある場合などです。
さらに、医療的ケアが必要な場合や緊急的な保護が必要なケースについては、自治体の判断により入居が許可されることがあります。
入居希望者は、自身の介護認定区分と施設側の受け入れ方針、地域の運用状況を確認し、必要に応じて地域包括支援センターや市町村の介護保険担当課に相談することが大切です。
空き状況や待機期間の現実と対策
特別養護老人ホーム(特養)は、介護保険施設の中でも費用負担が少ないことから利用希望者が多いですが、待機者数は年々減少傾向にあります。待機期間は地域差が大きく、地方では半年〜1年程度で入所できるケースもある一方、東京都などの都市部では5年以上待つ場合も少なくありません。
このため、入所希望者は1施設のみに絞るのではなく、複数施設に同時に申込みをすることが望ましいとされています。
また、待機中の対応としては、以下のような対策が考えられます。
- 地域包括支援センターやケアマネジャー(ケアマネ)に相談し、優先度の高い施設を把握する
- 短期入所生活介護(ショートステイ)などの在宅支援サービスを活用する
- 特別養護老人ホーム(特養)以外の介護施設(介護老人保健施設(老健)、サービス付き高齢者向け住宅など)の併用を検討する
いずれの場合も、早期の情報収集と介護認定の取得が入居の準備において非常に大切です。
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特別養護老人ホーム(特養)の費用が払えないときの対処法
特別養護老人ホーム(特養)の費用が支払えなくなった場合でも、すぐに退去になるわけではありません。
ここでは、公的な軽減制度の利用や費用を抑えられる施設への転居、生活保護・融資・資産活用など、代表的な5つの対処法を解説します。
① 減免・軽減制度を利用する
特別養護老人ホーム(特養)の費用が重く感じる場合は、まず公的な負担軽減制度を確認しましょう。
代表的なのは「特定入所者介護サービス費(補足給付)」で、所得区分に応じて居住費や食費が安くなります。2024年8月からは基準費用額の見直しにより、居住費の負担限度額が一部日額60円引き上げられましたが、低所得者への支援は継続されています。
そのほか、自己負担額が一定額を超えると払い戻される「高額介護サービス費」や、医療と介護を合算して負担を軽減できる制度もあります。
市区町村によっては社会福祉法人の独自軽減や、確定申告での医療費控除も活用可能です。利用できる制度は市区町村の窓口やケアマネジャー(ケアマネ)に相談して確認しましょう。
② 費用の安い施設へ転居する
特別養護老人ホーム(特養)の費用が払えない場合は、より費用の低い施設へ転居するのも一つの方法です。ユニット型個室よりも多床室(相部屋)の方が月額費用を抑えられる傾向があります。
また、都心部の施設は立地条件から費用が高額になりやすいため、郊外や地方の施設を検討すると費用を下げやすくなります。
さらに、空室が多い施設では、入居時に費用面での調整や値引きが可能なケースもあります。
見学時には「立地・居室タイプ・空室状況」を確認し、無理なく継続できる施設を選ぶことが重要です。
③ 生活保護を受給する
収入や資産が基準を満たしている場合は、生活保護の申請を検討できます。
生活保護を受給すると、介護サービス費や食費・居住費が保護費から支給され、原則として自己負担は発生しません。
ただし、資産や収入が一定以下であること、扶養義務者からの支援を受けられないことなど厳格な条件があり、必ず認められるわけではありません。
申請の窓口は市区町村の福祉課です。スムーズに進めるためには、ケアマネジャー(ケアマネ)や地域包括支援センターに相談しながら手続きを行うと安心です。最後のセーフティーネットとして覚えておくと役立つかもしれません。
④ 融資や援助を利用する
一時的に費用が支払えないときは、公的融資や家族からの援助を頼る方法もあります。代表的なのは、各市区町村の社会福祉協議会が窓口となる「生活福祉資金貸付制度」です。
不動産を担保に借りられる長期生活支援資金のほか、緊急小口資金や総合支援資金なども状況に応じて利用可能です。
また、親族に資金援助をお願いするケースも多く、兄弟で費用を分担したり、経済的に余裕のある家族が多めに負担するなどの工夫が取られています。
短期的な資金繰りに困った場合には、まず融資制度や家族内の話し合いで解決できないか検討しましょう。
⑤ 資産を現金化する
長期的な費用確保には、所有資産を現金化する方法もあります。代表例が「リバースモーゲージ」で、自宅を担保に融資を受け、本人の死亡後に売却して返済する仕組みです。
さらに、一般社団法人移住・住み替え支援機構(JTI)が運営する「マイホーム借り上げ制度」を利用すれば、自宅を第三者に貸し出して安定収入を得られます。
ただし、築年数や立地条件、手数料などの制約があるため、必ず利用できるわけではありません。
資産活用は有効な手段ですが、金融機関や専門機関と相談し、リスクも理解したうえで検討することが大切です。
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特別養護老人ホーム(特養)費用に関する誤解
ここでは、特別養護老人ホーム(特養)にかかる費用の基本と、「公的施設=無料」という誤解について解説します。
介護保険制度に基づき一部費用は補助されますが、実際には自己負担も生じます。他の施設との違いや自己負担の構造を正しく理解することが大切です。
「無料」と誤解されやすい理由
特別養護老人ホーム(特養)は「公的施設だから無料」と誤解されることがありますが、実際には多くの費用を自己負担します。
介護保険の対象となるのは介護サービス費の一部(原則1〜3割)であり、食費・居住費・日用品費・理美容代・医療費等は自己負担です。
特に住民税課税世帯では、月額で5〜15万円程度の費用が発生することもあります。
なお、一定の条件を満たす方には、「補足給付」などの軽減措置もありますが、完全に無料になるケースは生活保護世帯など一部に限られます。入所前には施設の費用内訳を必ず確認しましょう。
項目 | 自己負担の有無 | 備考 |
---|---|---|
介護サービス費 | 一部負担 | 所得に応じて1〜3割 |
居住費 | 原則負担あり | 補足給付により軽減される場合あり |
食費 | 原則負担あり | 補足給付により軽減される場合あり |
日用品・理美容代等 | 全額自己負担 | 施設により別途費用がかかる場合あり |
特別養護老人ホーム(特養)と有料老人ホームの費用構造の違い
特別養護老人ホーム(特養)と有料老人ホームでは、費用構造と対象者、サービス内容に明確な違いがあります。
特別養護老人ホーム(特養)は介護保険施設として公費で運営されており、月額5~15万円前後で利用できます。入居一時金も基本的に不要です。
一方、有料老人ホームは民間事業者が運営しており、入居一時金(数十万~数百万円)と月額15〜30万円程度の利用料が必要となるケースが一般的です。
また、特別養護老人ホーム(特養)は原則要介護3以上の方のみが対象ですが、有料老人ホームでは要支援や自立の方でも入居が可能です。
- 特別養護老人ホーム(特養):月額5〜15万円程度、入居一時金不要、要介護3以上対象
- 有料老人ホーム:月額15〜30万円超、一時金数百万円の場合あり、要支援・自立でも入居可能
- 特別養護老人ホーム(特養)は公的施設、有料老人ホームは民間運営が中心

【非課税世帯・低所得者向け】特別養護老人ホーム(特養)の利用における制度・支援
ここでは、住民税非課税世帯や低所得者の方が特別養護老人ホーム(特養)を利用する際に活用できる制度や支援について解説します。
補足給付や高額介護サービス費制度、生活保護などの仕組みにより、自己負担の軽減や支援を受けることが可能です。
生活保護受給者の入居実例とサポート制度
生活保護受給者も、一定の要件を満たせば特別養護老人ホーム(特養)に入居できます。
介護サービス費・食費・居住費などは、原則として介護扶助・生活扶助により自治体から支給されるため、自己負担は原則ありません。
実際の入所にあたっては、福祉事務所のケースワーカーやケアマネジャー(ケアマネ)と連携して申請・調整を進めます。
また、地域によっては特別養護老人ホーム(特養)への優先入所枠が設けられているケースもあります。入居に向けた準備や相談は、各自治体の福祉課または地域包括支援センターで行いましょう。
- 生活保護対象者も特別養護老人ホーム(特養)の入居は可能
- 原則、自己負担なし(生活扶助・介護扶助で対応)
- 福祉事務所やケアマネジャー(ケアマネ)が手続き支援
- 自治体によっては優先入所枠がある

特別養護老人ホーム(特養)入所前に確認すべき費用以外の注意点
ここでは、特別養護老人ホーム(特養)に入所する前に注意すべき「待機期間中の費用」や「短期入所との違い」など、見落としやすい実務的なポイントを解説します。あらかじめ把握しておくことで、予期せぬ出費や介護体制の混乱を防ぎ、スムーズな入所準備につながります。
待機中の費用シミュレーションと対策
特別養護老人ホーム(特養)は人気が高く、入所まで数か月〜1年以上の待機期間が必要となるケースもあります。その間は、自宅での介護や介護老人保健施設(老健)・グループホームといった仮住まい施設での生活が必要となる場合があります。
自宅介護の場合は、訪問介護(ホームヘルプ)や通所介護(デイサービス)などの介護保険サービスを利用できますが、1〜3割の自己負担が生じます。一方、介護老人保健施設(老健)やグループホームなどを一時的に利用する場合、月額8〜15万円程度の費用が発生することもあります。
こうした期間の費用や介護負担を想定し、あらかじめケアマネジャー(ケアマネ)や地域包括支援センターに相談して、介護プランを組み立てておくことが大切です。
待機期間中の選択肢 | 想定月額費用 | 補足 |
---|---|---|
在宅介護+訪問介護 | 1〜3万円 | 要介護度により変動 |
介護老人保健施設(老健)などの仮住まい | 8〜15万円 | 一時入所が可能な場合も |
出典:訪問介護|厚生労働省
短期入所生活介護(ショートステイ)との違いと併用方法
特別養護老人ホーム(特養)と混同されやすいサービスに短期入所生活介護(ショートステイ)があります。短期入所生活介護(ショートステイ)は、要介護者が数日から1〜2週間程度一時的に入所し、家族の介護負担を軽減する目的で活用されます。
一方、特別養護老人ホーム(特養)は長期入所を前提とした施設であり、基本的に空きが出ない限り新規入所はできません。入所待機中の方でも、短期入所生活介護(ショートステイ)を介護保険サービスの一環として計画的に利用することができます。
特別養護老人ホーム(特養)の空きが出るまでの間に、短期入所生活介護(ショートステイ)を活用しながら在宅介護を補完することで、精神的・身体的な負担を抑えながら介護環境を整えることが可能です。利用にはケアマネジャー(ケアマネ)との連携が必要で、ケアプランに基づく利用であれば介護保険が適用されます。
- 特別養護老人ホーム(特養):長期入所前提、空きが出るまで待機が必要
- 短期入所生活介護(ショートステイ):短期間の一時利用、在宅介護者の支援向け
- 待機期間中は短期入所生活介護(ショートステイ)の併用が可能
- ケアマネジャー(ケアマネ)と連携して保険内での利用計画を立てることが重要

まとめ
特別養護老人ホーム(特養)の費用は、介護保険の適用により比較的抑えられていますが、介護サービス費、居住費、食費、日常生活費などの自己負担が発生します。
住民税非課税世帯や低所得者は、負担限度額認定や補足給付、高額介護サービス費制度の活用で費用を軽減できます。
年金のみでも多床室なら入居可能なケースもあり、預貯金や扶養家族の有無も制度適用に影響します。入居前には制度の確認と施設との相談が欠かせません。
よくある質問
Q.預貯金があると制度は使えない?
特別養護老人ホーム(特養)利用時の費用軽減制度(例:補足給付や負担限度額認定)では、預貯金などの資産額が審査基準の一つとなります。ただし、一定額以下であれば制度の対象となることが可能です。
たとえば、2025年8月時点での基準では、利用者の所得段階により資産上限が分かれており、単身者の場合、おおよそ500万円〜1,000万円以下、夫婦の場合は約1,500万円〜2,000万円以下の範囲で段階的に設定されています。ただし、これはあくまで基準の一つであり、詳細な適用条件は市区町村により異なります。
制度利用可否の判断は資産だけでなく所得・住民税課税状況など総合的に判断されるため、預貯金があるからといって必ずしも制度が使えないわけではありません。
Q.住民税が課税されているとどうなる?
住民税の課税状況は、介護サービス費の自己負担割合(1〜3割)や減免制度の適用可否に直接影響します。
一般的に、住民税が課税されている方は、1割よりも高い自己負担(2割または3割)に分類される傾向があります。また、「補足給付」や「高額介護サービス費制度」などの支援制度においても、課税者は対象外となることが多く、自己負担額が相対的に増える可能性があります。
一方、住民税が非課税の世帯は、制度の対象となりやすく、費用負担を軽減できる可能性があります。自治体により判定基準が若干異なるため、市区町村の介護保険課に確認することが必要です。
- 住民税課税者
→ 自己負担割合が2〜3割に
→ 負担軽減制度の対象外になる可能性が高い - 住民税非課税世帯
→ 自己負担1割になるケースが多い
→ 補足給付や高額介護サービス費制度の対象になりやすい
Q.扶養家族がいる場合の負担はどう変わる?
扶養家族の有無は、本人の負担割合に間接的に影響を与える場合があります。特に、扶養義務者(例:子や配偶者など)の収入状況が問われる場面では、家族構成が制度の適用可否に関与することがあります。
たとえば、補足給付を受ける際には、本人の資産や所得に加えて扶養義務者の所得も確認されるため、家族に高所得者がいる場合は支給対象外となる可能性もあります。
また、介護保険制度とは別に、税制上の「扶養控除」や「医療費控除」などで税負担が軽減される可能性もあります。こうした控除制度を正しく活用することで、家計全体の負担軽減につながることがあります。

海野 和(看護師)
この記事の監修者情報です
2006年に日本消化器内科内視鏡技師認定証を取得し、消化器系疾患の専門的な知識と技術を習得。2018年にはNCPR(新生児蘇生法専門コース)の認定を取得し、緊急時対応のスペシャリストとしての資格を保有。さらにBLS(HeartCode®BLSコース)を受講し、基本的生命維持技術の最新知識を習得。豊富な臨床経験と高度な専門資格を活かし、医療・介護分野における正確で信頼性の高い情報監修を行っています。
【保有資格】
・日本消化器内科内視鏡技師認定証(2006年取得)
・NCPR(新生児蘇生法専門コース終了認定証)(2018年取得)
・BLS(HeartCode®BLSコース)受講済み
