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老老介護の実態やリスクを正しく理解したい方
家族や配偶者を介護している高齢者の方
「認認介護」との違いを知りたい方
介護支援や介護保険サービスの利用を検討している方

老老介護とは?定義と現状をわかりやすく解説
老老介護とは、高齢者が高齢者を介護することを指します。具体的には、高齢の夫婦や高齢の親子、または高齢の兄弟などが、どちらかが介護者となり、もう一方が介護される側となるケースです。
内閣府の「令和6年版高齢社会白書」によれば、要介護者等と同居している主な介護者のうち、男性では75.0%、女性では76.5%が60歳以上であり、「老老介護」のケースが相当数存在していることが分かっています。
老老介護の現状と増加傾向
少子高齢化が進む日本において、老老介護の割合は年々増加し、深刻化しています。
厚生労働省の国民生活基礎調査によると、65歳以上の高齢者を介護する同居の家族のうち、63.5%が同じく65歳以上の高齢者であり、これは過去最高の割合です。
さらに、介護する側・される側ともに75歳以上の後期高齢者であるケースも35.7%と、こちらも過去最高を記録しています。
2025年には、人口のボリュームゾーンである「団塊の世代」がすべて75歳以上の後期高齢者となるため、現役世代の介護の担い手が不足するなかで、老老介護の割合はさらに高まると予想されています。

認認介護とは?老老介護との違い
認認介護とは、認知症の高齢者が、同じく認知症を抱える家族を介護する状態を指します。
老老介護と共通するのは、どちらも介護者の体力・判断力の低下が進んでいる点です。
一方で、認認介護は、双方の記憶・判断能力が低下するため、転倒・火の不始末・服薬ミスなどのリスクが高まります。認知症予防や見守り体制の強化が欠かせません。
※認認介護の全国的な統計データは公表されていませんが、地域包括支援センター等を通じた個別ケースの把握と早期支援が求められています。認知症予防や見守り体制の強化が欠かせません。
項目 | 老老介護 | 認認介護 |
|---|---|---|
定義 | 高齢者が高齢者を介護する状態 (主に65歳以上同士) | 認知症の高齢者が、認知症を抱える家族を介護する状態 |
主な原因 | 高齢化・核家族化・介護期間の長期化 | 認知症患者数の増加・家族介護者の高齢化 |
主な問題 | 体力・精神力の限界、共倒れリスク | 判断力・記憶力の低下による事故・火災・服薬ミス |
必要な支援 | 訪問介護・家事支援・介護者へのレスパイトケア | 見守り・認知症カフェ・地域包括支援センターの活用 |
対応のポイント | 介護負担を減らし、外部支援を早期に利用する | 認知症の進行に応じて医療・介護の連携を強化する |

老老介護の現状と割合【最新データで見る実態】
厚生労働省「令和4年国民生活基礎調査」によると、要介護者と主な介護者がともに60歳以上の世帯は77.1%に上り、65歳以上同士は63.5%、75歳以上同士は35.7%と年々増加しています。
いわゆる「老老介護」「超老老介護」が進行しており、介護者の高齢化が深刻な課題となっています。
また、同居して介護を行う世帯は45.9%で、前回(令和元年)の54.4%から減少。主な介護者の続柄では「配偶者」が22.9%、「子」が16.2%を占め、家族内介護の負担が依然として大きい現状がうかがえます。
区分 | 割合(2022年) |
|---|---|
同居の主な介護者が60歳以上かつ要介護者も60歳以上 | 77.1% |
65歳以上同士 | 63.5% |
75歳以上同士(超老老介護) | 35.7% |
要介護者と同居の主な介護者が同居 | 45.9% |
主な介護者の続柄:配偶者 | 22.9% |
主な介護者の続柄:子 | 16.2% |
出典:Ⅳ 介護の状況

老老介護が共倒れを引き起こす主な原因
老老介護で共倒れが起こる背景には、介護者自身の高齢化による体力・気力の衰え、介護負担の長期化、そして社会的な孤立が挙げられます。
高齢の介護者は持病を抱えていることも多く、十分な休息が取れないまま介護を続けることで、心身に限界が生じやすくなります。
また、要介護者の症状が重度化すると介護の負担はさらに増し、外出や社会的交流が減ることで孤立やうつ傾向を招くケースもあります。
これらの要因が重なり、介護者と被介護者がともに健康を損ねる「共倒れ」を引き起こすのです。
介護が必要になる主な原因
要介護状態となる原因を把握することは、介護予防や早期支援の準備に役立ちます。
厚生労働省の「令和4年(2022年)国民生活基礎調査」の結果によると、65歳以上の要介護者が介護を必要とする主な原因は次の通りです。
順位 | 原因 | 割合 |
|---|---|---|
1位 | 認知症 | 23.6% |
2位 | 脳血管疾患(脳卒中) | 19.0% |
3位 | 骨折・転倒 | 13.0% |
これらの疾患や衰弱は、運動不足や生活習慣、社会的つながりの減少とも関連しており、予防には日常生活での活動性の維持と健康管理が欠かせません。

老老介護が増える原因と背景
日本では高齢化が急速に進み、介護の担い手も高齢化しています。平均寿命が延びても、健康寿命との間には大きな差があり、その期間に介護を必要とする高齢者が増えています。
さらに、核家族化や単身世帯の増加により、若い家族による介護が難しくなり、介護者と要介護者の双方が高齢という構造が一般化しています。
制度設計や社会構造の変化が、老老介護を増やす大きな要因となっています。
平均寿命と健康寿命のギャップ
厚生労働省「令和6年簡易生命表」によると、2024年の日本人の平均寿命は男性81.09年、女性87.13年です。
一方で、日常生活に支障がなく自立して過ごせる「健康寿命」は、2024年時点で男性72.57年、女性75.45年とされています(厚生労働省「第4回健康日本21(第三次)推進専門委員会」令和6年12月)。
つまり、男性では約8.5年、女性では約11.6年の期間に介護が必要となる可能性があります。
この「寿命の差」が拡大していることが、介護を必要とする高齢者を増加させ、結果として老老介護を促進する要因になっています。
核家族化と単身高齢世帯の増加
令和6年版「高齢社会白書」によると、2022年時点で65歳以上の者のいる世帯は全世帯の50.6%を占めており、そのうち単独世帯は増加傾向にあります。
三世代で暮らす世帯は減少傾向にあり、かつての「家族で支える介護」モデルは成り立ちにくくなっています。
子世代が別居または遠方に住むケースも多く、介護を担うのは同居する高齢の配偶者や兄弟が中心です。この社会構造の変化が、老老介護の拡大に直結しています。
介護保険制度が想定する「若い介護者モデル」との乖離
現行の介護保険制度は、介護者が比較的若く、体力や時間に余裕があることを前提に設計されています。
しかし現実には、介護者自身が高齢であるケースが一般的になり、この前提と現実の乖離が問題となっています。
介護サービスの中には「軽易な家事援助」を対象外とするものもあり、高齢者介護者にとっては負担が大きいのが実情です。
実際には、介護よりも炊事・洗濯などの家事のほうが困難という声も多く、制度の見直しが求められています。
2025年問題(団塊世代が後期高齢者になる影響)
2025年には、いわゆる団塊の世代(1947〜49年生まれ)が全員75歳以上の後期高齢者となります。これにより、医療・介護の需要が急増し、介護人材や家族介護者の不足が一層深刻化すると見込まれています。
高齢夫婦のみ・高齢親子による同居世帯が増えることで、老老介護の割合はさらに拡大する見通しです。行政や地域が連携し、支援体制を早期に整備することが求められます。

老老介護で起こりやすい問題とリスク
老老介護は、介護を行う側も高齢であるため、身体的・精神的・経済的な負担が大きくなりやすい状況です。
介護を続けるうちに共倒れやうつ、孤立といった深刻な問題が生じることも少なくありません。ここでは、老老介護で特に起こりやすい4つのリスクについて、厚生労働省や内閣府のデータをもとに整理します。
共倒れ(介護者の体力・精神の限界)
高齢の介護者は、自身の健康状態を抱えながら介護を続けるケースが多く、長期的な負担によって心身ともに限界を迎えやすくなります。
厚生労働省の「令和4年国民生活基礎調査」および関連調査では、介護者の多くが身体的・精神的な負担を感じていることが報告されており、体力の低下や睡眠不足から持病の悪化を訴える人もいます。
また、介護時間が長くなるほど抑うつ症状を示す割合も上昇する傾向があります。
体調不良を我慢し続けることで、介護者・被介護者の双方が倒れる「共倒れ」状態に陥る危険があります。
経済的・家事面での負担
介護によって仕事を辞めたり、時短勤務になることで収入が減る一方、医療費や介護サービス費が増えるため、家計が圧迫されやすくなります。
特に、年金のみで生活している高齢世帯では、経済的な余裕がなく、介護用品や交通費を削るケースも見られます。
また、家事の多くを担ってきた配偶者が要介護状態になると、介護者は炊事・洗濯・買い物など日常的な家事に対応できず、生活全体が不安定になりやすいと言われています。
介護だけでなく家事負担の増大が、老老介護のストレスを大きくしてしまうのです。
出典:老老介護・認認介護とは | 健康長寿ネット
出典:家族介護者の負担を軽減するための支援方策 に関する調査研究事業報告書 平成 26 年 3 月
社会的孤立・認知症リスク
介護のために外出の機会が減ると、介護者・被介護者の双方が地域とのつながりを失い、孤立しやすくなります。
家族介護者支援マニュアルでは、「相談できる相手がいない」と回答した高齢者世帯が多いことが分かり、孤立がストレスや認知機能の低下を招く要因になるとされています。
外部からの刺激や人との交流が減ることで、介護者自身が認知症を発症するリスクも指摘されています。
こうした状況を防ぐためには、地域包括支援センターやボランティア活動など、外部とのつながりを持つことが重要です。
出典:Ⅳ 介護の状況|厚生労働省
出典:令和6年版高齢社会白書(全体版)(PDF版) - 内閣府
出典:家族介護者支援マニュアル
介護うつ・虐待・介護離職などの連鎖
過度な介護負担が続くと、介護者の精神的ストレスが限界に達し、いわゆる「介護うつ」や「介護離職」につながる恐れがあります。
また、心身の疲弊から介護者が感情を抑えられなくなり、被介護者への言葉や態度が暴力的になる「介護虐待」も社会問題化しています。
こうした連鎖を防ぐためには、定期的なレスパイト(介護休息)や外部相談の活用が重要です。
出典:老老介護・認認介護とは | 健康長寿ネット
出典:2 介護予防事業におけるうつ予防の意義 2.1 高齢者のうつ対策の重要性
出典:介護者の抑うつ 状態や介護負担感と 『介護
出典:仕事と介護の両立 ~介護離職を防ぐために~ |厚生労働省
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老老介護を防ぐ・軽減するための対策と支援
老老介護の深刻化を防ぐには、介護を一人で抱え込まない仕組みづくりが欠かせません。
介護保険サービスや地域の支援を活用し、介護者の負担を分散させることで「共倒れ」を防げる可能性があります。ここでは、具体的な支援策や予防のポイントを紹介します。
介護保険サービスの活用
介護保険制度には、在宅介護を支援するための多様な公的サービスが整備されています。
代表的なのは、ホームヘルパーが自宅を訪問して支援する「訪問介護」、入浴やリハビリなどを受けられる「通所介護(デイサービス)」、一時的に施設で介護を受ける「短期入所(ショートステイ)」です。
介護者が休息を取れる時間を確保することは、長期的な介護継続に重要だといえます。介護度や家庭状況に応じて、複数のサービスを組み合わせることが推奨されています。
地域包括支援センターへの相談
地域包括支援センターは、介護・医療・福祉を総合的に支援する公的な窓口です。
介護保険の申請やケアマネジャーの紹介、認知症や虐待などの相談にも対応しています。
老老介護では、問題を早期に共有し、専門職と連携することが重要です。
介護者が限界を迎える前に、地域包括支援センターや自治体の福祉課へ相談することで、必要な支援制度や一時的な介護サービスを活用できます。
家族内での役割分担・外部支援の活用
介護を家族の一人に任せきりにせず、親族やきょうだいで負担を分担することが大切です。
仕事をしている家族も、休日の送迎や買い物、電話連絡など、できる範囲で協力できます。
また、地域のボランティアやNPOによる「見守り支援」「配食サービス」などを組み合わせることで、介護者の孤立を防ぎ、精神的な余裕を保てます。
行政だけでなく、地域・家族・民間の連携体制を意識することが、老老介護の軽減につながるでしょう。
介護予防・健康維持の取り組み
老老介護を防ぐためには、介護が必要になる前段階での「介護予防」が最も重要です。
厚生労働省は、フレイル(加齢による心身の虚弱)予防として、「運動」「栄養」「社会参加」の3要素を重視しています。
週2〜3回の軽い運動や、たんぱく質を意識した食事、地域サロンや趣味活動への参加は、要介護リスクを下げる有効な手段です。
こうした取り組みを続けることで、健康寿命を延ばし、介護が必要となる期間を短縮できると言われています。

老老介護の相談窓口と支援先一覧
老老介護は、家族だけで抱え込むと心身ともに大きな負担となり、共倒れにつながる危険があります。
早い段階で公的機関や専門家に相談することが、介護を続けるうえでの支えになります。
以下の相談窓口では、介護サービスの利用方法や介護保険申請の手続き、介護者の心身ケアまで幅広くサポートを受けられます。
【老老介護の主な相談窓口】
・地域包括支援センター
市町村が設置する高齢者の総合相談窓口。保健師、社会福祉士、主任ケアマネジャーなどの専門職が常駐し、介護に関する相談全般に対応します。
・各自治体の高齢者福祉課
介護保険制度の申請窓口。介護認定や各種サービスの案内を行います。
・介護保険相談窓口・ケアマネジャー
介護サービス利用計画(ケアプラン)の作成や、適切なサービス事業者の紹介を行います。
・民間の介護相談・電話相談サービス
24時間対応の電話相談など、緊急時にも利用できる民間支援サービスもあります。
老老介護を防ぐためには、介護者自身の健康維持と同じくらい「早めに相談すること」が大切です。支援先に早期にアクセスし、無理のない介護体制を整えましょう。

まとめ|老老介護を「一人で抱えない」社会へ
老老介護は、高齢化の進行と家族構造の変化により、今や多くの家庭で直面する現実的な課題となっています。
介護する側も高齢であるため、身体的・精神的な負担が蓄積しやすく、共倒れを防ぐには早期の支援が欠かせません。
地域包括支援センターや自治体の福祉課、ケアマネジャーなど、頼れる支援窓口は多く存在します。
介護を「家族だけの問題」とせず、社会全体で支える仕組みを利用することが大切です。老老介護を一人で抱え込まず、周囲や専門機関に相談することが、持続可能な介護の第一歩となります。
よくある質問
Q.老老介護とは何ですか?
老老介護とは、65歳以上の高齢者が同じく65歳以上の高齢者を介護する状態を指します。
近年では、75歳以上同士の「超老老介護」も増加しており、介護者・被介護者ともに体力や判断力が低下することで、共倒れのリスクが高まっています。
背景には平均寿命と健康寿命の差、核家族化、介護人材不足などがあり、社会全体の課題とされています。
Q.老老介護と2025年問題とは?
2025年には、団塊の世代(約800万人)が75歳以上の後期高齢者となり、老老介護が急増すると見込まれています。
介護を担う世代も高齢化し、介護保険制度や地域支援体制の見直しが急務とされています。地域包括ケアシステムの構築を通じて、在宅生活を支える仕組みづくりが進められています。
Q.老老介護の基準は?
明確な法的基準はありませんが、一般的に「介護者と被介護者の双方が65歳以上であること」を指します。特に75歳以上同士の場合は「超老老介護」と呼ばれ、身体的・精神的負担が大きく、支援が必要なケースが多くみられます。
実態としては、介護者の約6割が60歳以上というデータもあります。
Q.老老介護の相談窓口はどこですか?
老老介護に関する相談は、地域包括支援センターが最も身近な窓口です。
介護保険の利用申請、介護サービスの紹介、心身の負担軽減策などを包括的に支援します。
ほかにも、各自治体の高齢者福祉課や、民間の介護電話相談サービスも活用可能です。早めの相談が負担軽減につながります。
Q.要介護1で毎月もらえるお金はいくらですか?
要介護1の場合、介護保険の支給限度額は16,765単位(約167,650円相当)です。
利用者の自己負担は原則1割のため、限度額まで利用した場合の自己負担は約16,765円程度が目安です。所得に応じて2割・3割負担となる場合もあります。
なお、この金額は「現金として受け取る」のではなく、介護サービスを利用できる上限額を示しています。実際のサービス内容(訪問介護・通所リハビリなど)に応じて金額が変動します。
[介護サーチプラス]編集部
この記事の執筆者情報です
介護業界に特化した情報を発信するオウンドメディア。
介護や福祉に関する制度、転職・キャリアに役立つトピック、スキルアップのヒントなど、幅広いテーマを取り上げ、誰にとっても読みやすいメディア運営を目指しています。
転職活動のヒントや資格取得、介護スキルの向上に役立つ知識まで、専門性と信頼性の高いコンテンツを目指して日々更新中です。









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