この記事がおすすめな人

- 親の介護が必要になった方
- 介護は初めてで何から始めればよいかわからない方
- 一人っ子で介護を一人で担うことに悩んでいる方
- 介護と仕事・家庭の両立に悩んでいる方
- 介護施設を検討しているが、費用や選び方に不安がある方
- 親の介護費用が心配で、経済的な対策を知りたい方
- 介護による精神的ストレスを感じている方
.webp&w=1920&q=75)
親の介護が始まるタイミングときっかけ
ここでは、親の介護が始まる年齢や主な原因、早期に変化を察知する方法について解説します。
介護は予期せず始まることも多いため、事前の心構えが重要です。日常生活の小さな変化を見逃さず、早めの対応につなげる工夫を紹介します。
何歳から?親の介護が突然始まる原因
厚生労働省「令和4年国民生活基礎調査」によると、主な介護が始まる年齢は70代後半から80代前半が多いと報告されています。
ただし、年齢に関わらず、病気や事故などにより突然介護が必要になる場合もあります。
脳卒中や転倒による骨折、心疾患、認知症の進行は、急激に生活を変えるきっかけとなります。特に一人暮らしや高齢者世帯では、体調変化が周囲に気づかれにくく、発見が遅れることがあります。
こうしたリスクを理解し、定期的な健康診断や連絡、生活状況の把握を行うことで、介護開始の突然化を防ぎやすくなります。
突然介護が必要になる主な原因
- 脳卒中(脳梗塞・脳出血など)による身体機能の低下
- 転倒や骨折による長期入院・歩行困難
- 心疾患や呼吸器疾患の急変
- 認知症の進行による日常生活の支障
- 慢性疾患の悪化(糖尿病・腎不全など)
早期に気づくためのチェックポイント
介護が必要となる兆候は、日常生活の細かな変化に表れます。たとえば、服装や身だしなみの乱れ、食事や掃除の回数減少、病院通いの回避などは注意が必要です。
また、物忘れや同じ話の繰り返し、金銭管理や買い物の困難化も見逃せません。歩行の不安定化、外出の減少、体重の急変なども心身の自立度低下を示す可能性があります。
これらの兆候を早期に察知できれば、必要な支援や介護サービスの導入が円滑になり、生活の質を維持しやすくなります。定期的な会話や訪問、客観的なチェックリストの活用が有効です。
観察ポイント | 具体的な変化 | 介護が必要になる可能性 |
---|---|---|
衣類・身だしなみ | 汚れた服を着続ける、洗濯物が溜まる | 自力での家事が困難になっている可能性 |
言動・記憶 | 同じ話を繰り返す、日付を間違える | 認知機能の低下が進行している可能性 |
生活習慣 | 食事の欠食、外出減少 | 心身の健康維持が困難になりつつある可能性 |
.webp&w=1920&q=75)
介護に向けた準備と心構え
ここでは、介護が必要になる前に行っておきたい準備と心構えについて解説します。親の希望や資産状況を事前に確認し、家族間で役割を明確にすることは、介護を円滑に進めるための重要なステップです。
親の希望や資産状況を聞いておくべき理由
介護方針を決めるには、親が望む生活や介護の形を事前に確認することが不可欠です。自宅介護か施設入所かで、必要な準備や費用は大きく異なります。
加えて、資産や年金受給額、保険の加入状況を把握しておくことで、介護費用の目安や利用可能な公的制度(介護保険、特定入所者介護サービス費など)を早期に検討できます。
こうした情報がないまま介護が始まると、経済的負担や家族間の意見対立が生じやすくなります。
元気なうちに率直な話し合いを行い、希望や資産情報を共有しておくことが、安心して介護に臨むための第一歩です。
親の希望 | 必要な準備・確認項目 |
---|---|
自宅介護を希望 | 介護用ベッドや手すり設置、訪問介護の契約、家のバリアフリー化 |
施設入所を希望 | 入所候補施設の見学・費用比較、入居申込み手続き |
短期利用を希望 | ショートステイやデイサービスの空き状況確認 |
親族での役割分担・話し合いの進め方
介護は一人で抱え込むと心身の負担が大きく、介護者の生活にも影響します。そのため、親族間で役割を明確に分担することが重要です。
例えば、日常的な介護や通院付き添いは近居家族が担当し、費用負担や契約手続きは遠方在住の家族が行うなど、生活環境に応じた分担が有効です。
話し合いでは感情的対立を避けるため、ケアマネジャーや地域包括支援センター職員など第
三者を交えるのも有効です。
さらに、役割や費用負担は口頭ではなく文書で明確化することで、将来の誤解やトラブルを防げます。定期的な情報共有は、協力体制を維持するうえで欠かせません。
役割分担の具体例
- 近居・同居の家族:日常介護・食事・通院付き添い
- 遠方在住の家族:費用負担・介護用品の手配・行政手続き
- 親族全員:定期的なオンライン会議や情報共有
- 第三者(ケアマネジャーなど):介護計画の作成・制度利用の調整
.webp&w=1920&q=75)
親の介護と自分の生活の両立
ここでは、親の介護と自分の生活を両立する際の課題と対策について解説します。介護は生活や仕事に影響を与えるため、負担を軽減しつつ継続する方法や、公的・民間の相談先を知っておくことが重要です。
介護による生活・仕事への影響と離職リスク
介護は時間的・精神的な負担が大きく、生活や仕事に影響する場合があります。厚生労働省「令和4年就業構造基本調査」によると、介護や看護を理由に離職した人は年間約10万人にのぼります。
特に通院や入浴介助など定期的な支援は勤務時間との両立が難しく、残業・出張の制限や昇進機会の減少につながることもあります。
さらに、介護が長期化すると医療費や介護用品購入などで経済的負担が増し、やむを得ず離職するケースもあります。
こうしたリスクを抑えるには、早期に勤務先へ相談し、介護休業制度や短時間勤務制度、高額介護サービス費制度などを活用することが有効です。
介護が仕事や生活に与える主な影響
- 勤務時間の制限(残業・出張が難しくなる)
- 昇進やキャリア形成の機会減少
- 介護関連費用の増加(医療費・交通費・介護用品など)
- 休暇取得の増加による収入減少
- 精神的ストレス・健康悪化のリスク
一人で抱え込まない工夫と相談先
介護を一人で背負うと、心身の疲労や孤立感から健康を損なうおそれがあります。負担軽減のためには、家族や親族との役割分担と公的サービスの利用が不可欠です。
訪問介護やデイサービスを組み合わせれば、自分の時間を確保できます。地域包括支援センターでは、介護に関する総合相談やケアマネジャーの紹介が可能です。
また、勤務先の人事部門や産業医に相談すれば、勤務時間調整や社内制度利用が検討できます。
介護経験者と交流できる家族会やオンラインコミュニティも、精神的な支えになります。複数の相談先を持ち、状況に応じて使い分けることが、長期的な両立の鍵です。
相談先 | 主なサポート内容 |
---|---|
地域包括支援センター | ケアマネジャー紹介、介護サービス情報提供 |
ケアマネジャー | ケアプラン作成、サービス調整 |
勤務先(人事部・産業医) | 勤務時間調整、介護休業・時短制度の案内 |
家族会・支援団体 | 介護経験者との交流、情報交換 |
.webp&w=1920&q=75)
介護にかかる費用と経済的な備え
ここでは、介護に必要な月々の費用や一時的な出費の目安、そして総額の傾向について解説します。
さらに、費用が不足する場合に利用できる公的支援や保険制度も紹介し、経済的負担を軽減する方法を整理します。
月々・一時金の平均費用と総額の目安
介護費用は、在宅か施設か、要介護度やサービス内容によって大きく異なります。
生命保険文化センターの「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査」によれば、在宅介護の月々の自己負担額は平均約9.0万円、施設介護では約13.8万円です。
加えて、住宅改修や介護用ベッドの購入、入居一時金などの初期費用が発生し、その平均は約9万円とされています。
実際の負担額は、公的介護保険の自己負担割合(原則1〜3割)や利用するサービスの種類によって変動します。事前に費用の目安を把握し、将来に備えて資金計画を立てておくことが重要です。
費用が足りない場合の対処法(生活保護・保険)
介護費用が不足する場合は、公的支援や保険制度を活用できます。生活保護制度では、資産や収入が一定以下の場合に「介護扶助」が適用され、介護サービス費用も補助対象となります。
また、公的介護保険制度には「高額介護サービス費制度」があり、1か月の自己負担額が所得区分ごとの上限を超えた分が払い戻されます。
さらに、民間の介護保険や医療保険に加入していれば、一時金や月額給付によって自己負担を補えます。
自治体によっては、介護用品の購入助成や住宅改修補助など独自の支援もあります。
複数の制度を組み合わせ、経済的負担を最小限に抑えることが、長期的に介護を継続するための重要なポイントです。
制度・保険 | 内容 | 利用条件 |
---|---|---|
生活保護(介護扶助) | 介護サービス費用を生活保護で賄う | 所得・資産要件あり |
高額介護サービス費制度 | 月額自己負担の上限超過分を払い戻し | 公的介護保険加入者 |
民間介護保険 | 介護状態になった場合に一時金・年金形式で給付 | 契約条件に基づく |
自治体助成 | 介護用品購入や住宅改修の補助金 | 自治体規定による |
出典:生活保護制度|厚生労働省
.webp&w=1920&q=75)
親の介護義務と法的な位置づけ
ここでは、親に対する介護の義務や、その法的根拠について解説します。民法に定められた扶養義務の内容や、罰則が適用される場合、さらに義務が免除される条件や家庭裁判所の関与についても整理します。
扶養義務と罰則のあるケースとは
民法第877条では、直系血族および兄弟姉妹は互いに扶養義務を負うと定められています。
この扶養には生活費や医療費に加え、介護費用の負担が含まれる場合があります。通常は自主的な履行が前提ですが、自治体が介護保険料や介護費用を立て替えた場合、扶養義務者に求償することがあります。
罰則が適用されるのは、介護を直接行わなかったこと自体ではなく、著しい虐待や放置(ネグレクト)などで高齢者の生命・健康を害した場合です。
このような場合、刑法の傷害罪(第204条)や保護責任者遺棄罪(第218条)などが適用される可能性があります。
介護義務は道義的責任にとどまらず、状況によっては法的責任を伴う点に注意が必要です。
行為 | 適用される可能性のある罪名 | 刑罰の例 |
---|---|---|
身体的虐待 | 傷害罪(刑法第204条) | 15年以下の懲役または50万円以下の罰金 |
放置・介護放棄 | 保護責任者遺棄罪(刑法第218条) | 3か月以上5年以下の懲役 |
重度の放置により死亡 | 保護責任者遺棄致死罪(刑法第219条) | 3年以上の有期懲役 |
出典:民法|e-Gov法令検索
出典:刑法|e-Gov法令検索
義務を免れる条件と家庭裁判所の役割
扶養義務は原則として免除されませんが、民法第878条により「特別の事情」がある場合、免除や減額が認められることがあります。
具体例として、親からの虐待、長期間の養育放棄、著しい浪費などがあります。これらの判断は当事者間の合意だけでは成立せず、家庭裁判所への審判や調停の申し立てが必要です。
家庭裁判所は、生活状況、経済力、過去の親子関係、親の健康状態などを総合的に判断して、扶養義務の範囲や金額を決定します。
介護をめぐる紛争を避け、円滑に解決するためにも、法的手続きを適切に利用することが重要です。
判断項目 | 内容 |
---|---|
過去の親子関係 | 虐待や養育放棄の有無 |
経済状況 | 扶養義務者の収入・資産・生活状況 |
親の状況 | 健康状態、介護の必要度 |
その他特別の事情 | 扶養を強いることが著しく不当かどうか |
出典:民法|e-Gov法令検索
.webp&w=1920&q=75)
介護を巡る家族間トラブルを防ぐ方法
ここでは、介護の現場で起こりやすい家族間のトラブルと、その予防方法について解説します。兄弟姉妹や親戚間での役割分担や費用負担、情報共有の重要性など、実践しやすい対策を紹介します。
兄弟姉妹・親戚間でよくある揉めごとと対策
介護に関する家族間のトラブルで多いのは、役割分担や費用負担の不公平感です。近居の
兄弟が主に介護を担い、遠方のきょうだいがほとんど関与しないケースや、金銭的援助が一部に偏るケースがあります。
また、介護方針や施設入所の是非をめぐって意見が分かれることもあります。こうしたトラブルを防ぐには、介護開始前から役割や費用負担の方針を話し合い、全員が合意した内容を文書で残すことが重要です。
第三者としてケアマネジャーや地域包括支援センター職員を交えると、感情的対立を減らし、客観的な視点から合意形成を進めやすくなります。
よくある揉めごとの例
- 介護負担の偏り(近居家族がほとんどを担う)
- 費用負担の不公平(支払い割合が不均等)
- 介護方針や施設入所の判断をめぐる意見対立
- 遠方の家族の関与不足による不満
- 連絡不足から生じる誤解や不信感
トラブルを防ぐ「記録」「情報共有」のすすめ
介護に関する記録と情報共有は、誤解や不信感を防ぐ有効な手段です。記録には、介護内容、担当者、費用、利用したサービス、医師の指示などを簡潔にまとめます。
これらを共有フォルダやグループチャットで全員が確認できるようにすると、「聞いていない」「知らなかった」といった行き違いを減らせます。
また、定期的な家族会議やオンラインミーティングで近況や今後の方針を話し合うことも効果的です。
記録や情報共有の習慣化は、介護をスムーズに進めるだけでなく、家族の信頼関係維持にもつながります。小さな変化でも記録を残す意識がトラブル予防の第一歩です。
記録に残すべき項目
- 介護内容(日時・担当者・作業内容)
- 費用の内訳(領収書・支払い日)
- 医師の診断・指示内容
- サービス利用履歴(訪問介護・デイサービスなど)
- 今後の予定や方針
.webp&w=1920&q=75)
一人っ子・頼れる人がいない場合の介護
ここでは、一人っ子や親族の支援が得られない場合の介護方法について解説します。地域包括支援センターの活用法や、公的サービス・支援制度の種類と使い方を知ることで、介護の負担を軽減できます。
地域包括支援センターの活用法
地域包括支援センターは、高齢者や家族の生活を総合的に支える公的窓口で、介護・福祉・医療・生活支援など幅広い相談に無料で対応します。
社会福祉士、保健師、主任ケアマネジャーなどの専門職が在籍し、一人っ子や近くに頼れる人がいない場合でも、介護事業者との連絡調整やケアマネジャーの紹介、介護保険申請のサポートを受けられます。
地域の見守り活動やボランティア情報も提供可能です。相談は電話や窓口訪問から始められ、状況や希望を伝えることで適切な支援プランを作成してもらえます。
早期に連絡を取っておくことで、急な介護にも対応しやすくなります。
地域包括支援センターでできること
- 介護・福祉・医療・生活支援に関する総合相談(無料)
- ケアマネジャーや介護事業者の紹介・連絡調整
- 介護保険や公的支援制度の申請サポート
- 地域のボランティア・見守り活動の情報提供
- 高齢者虐待や権利擁護に関する相談
公的サービスと支援制度の種類と使い方
公的介護サービスには、訪問介護(ホームヘルプ)、通所介護(デイサービス)、短期入所(ショートステイ)などがあります。
介護保険制度を利用する場合、まず市区町村で要介護認定を申請し、認定後にケアマネジャーがケアプランを作成します。
これに基づき、必要なサービスを組み合わせて利用します。また、介護用品購入費や住宅改修費の助成、高額介護サービス費制度など、自己負担を軽減する仕組みもあります。
制度や助成内容は自治体によって異なるため、事前に最新情報を確認することが重要です。一人での介護負担を減らすため、複数の制度を組み合わせて活用しましょう。
制度名 | 内容 | 利用条件 |
---|---|---|
高額介護サービス費制度 | 自己負担上限超過分の払い戻し | 所得区分ごとに上限設定 |
福祉用具購入費支給 | 指定品目の購入費を一部補助 | 年度上限10万円まで |
住宅改修費支給 | 手すり設置や段差解消などを補助 | 上限20万円まで |
生活保護(介護扶助) | 介護費用を生活保護で賄う | 所得・資産要件あり |
出典:特定福祉用具を購入したとき (介護保険福祉用具購入費支給申請)|品川区
出典:住宅を改修するとき (介護保険住宅改修給付申請・自立支援住宅改修給付申請)|品川区
出典:生活保護制度|厚生労働省
.webp&w=1920&q=75)
施設介護を選ぶときの判断軸
ここでは、親の介護において在宅と施設のどちらを選ぶべきかの判断基準と、施設の種類・入居条件・費用について解説します。家族の負担や親の生活の質を考慮し、最適な介護形態を選ぶための情報を整理します。
在宅と施設、どちらが親にとって最適か
在宅介護と施設介護にはそれぞれ利点と課題があります。
在宅介護は、住み慣れた環境で過ごせる安心感や生活の自由度が高い一方、介護者の身体的・精神的負担が大きくなりやすく、緊急時対応が課題となります。
施設介護は、専門スタッフによる24時間のケアが受けられ、医療的管理や安全面のサポートが整っていますが、生活環境やリズムが変化するため本人の適応が必要です。
選択時は、親の健康状態・認知機能・介護度、家族の介護力や距離的条件、経済的負担などを総合的に比較しましょう。短期利用(ショートステイ)で試してみるのも有効です。
項目 | 在宅介護 | 施設介護 |
---|---|---|
環境 | 住み慣れた自宅 | 新しい居住環境 |
介護負担 | 家族が中心で負担大 | 専門職が中心で負担軽減 |
費用 | サービス利用分のみ | 月額固定費+初期費用 |
医療体制 | 外部機関と連携 | 常駐または提携医療機関 |
介護施設の種類と入居条件・費用
介護施設には、公的施設と民間施設があり、代表例として特別養護老人ホーム(特養)、介護老人保健施設(老健)、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)があります。
特養は費用は比較的低額ですが待機期間が長い傾向です。
老健は在宅復帰を目的とし、医療やリハビリに重点を置いています。
有料老人ホームやサ高住は施設ごとに条件や費用が異なり、設備やサービスも多様です。
選ぶ際は、介護度や医療ニーズ、予算、立地、サービス内容を比較し、必ず現地見学や説明を受けたうえで契約しましょう。
施設名 | 特徴 |
---|---|
特別養護老人ホーム(特養) | 公的施設、費用が安い、待機者多い |
介護老人保健施設(老健) | 在宅復帰目的、医療・リハビリ充実 |
有料老人ホーム | サービス・設備が多様 |
サ高住 | バリアフリー住宅+生活支援 |
.webp&w=1920&q=75)
親の介護によるメンタルへの影響と対処法
ここでは、親の介護がもたらす心理的負担や、介護うつ・燃え尽き症候群などのサインについて解説します。さらに、心の健康を保つためのセルフケア方法や、相談できる公的・民間の支援先についても紹介します。
介護うつ・燃え尽き症候群のサインとは
介護うつは、長期間の介護による慢性的なストレスや孤立感から心身のエネルギーが低下し、気分の落ち込みや意欲の減退が続く状態を指します。
燃え尽き症候群は、過度な責任感や努力のしすぎによって心が疲弊し、無力感や達成感の喪失が見られる状態です。
主な兆候として、睡眠障害(寝つきの悪さ・早朝覚醒)、食欲不振や過食、慢性的な疲労感、頭痛や肩こりなどの身体症状、家族や友人との交流回避が挙げられます。
また、介護への興味や関心が薄れ、以前楽しめていた活動に喜びを感じられなくなる場合も注意が必要です。
これらの兆候に早く気づき、必要に応じて専門家に相談することが悪化防止につながります。
主なサイン
- 睡眠障害(寝つきが悪い、早朝覚醒)
- 食欲不振や過食
- 慢性的な疲労感、頭痛、肩こり
- 家族や友人との交流を避ける
- 介護への興味や関心の低下
- 以前楽しめたことへの喜び喪失
心の負担を軽減するためのセルフケアと支援先
介護を長く続けるためには、自分の健康を守るセルフケアと適切な支援先の活用が欠かせません。
セルフケアの基本は、十分な睡眠と栄養バランスの取れた食事、定期的な軽い運動やストレッチ、趣味・友人との交流など、心身をリフレッシュさせる時間を持つことです。
また、訪問介護・デイサービス・ショートステイなどの介護サービスを利用し、介護から離れる時間を確保することも重要です。
相談先としては、地域包括支援センター、自治体の介護相談窓口、医療機関(精神科・心療内科)、家族会や介護者支援団体があります。
早めに支援を受け、必要に応じて専門家の助言を活用することで、介護の継続と自身の健康維持を両立しやすくなります。
セルフケア方法
- 十分な睡眠を確保する
- 栄養バランスの取れた食事
- 軽い運動やストレッチ
- 趣味や友人との交流
- 介護サービスを活用し休養日を作成
.webp&w=1920&q=75)
親の介護にかかるお金がないときの選択肢
ここでは、親の介護費用が不足する場合に利用できる公的支援や減免制度、生活保護や成年後見制度の活用方法について解説します。
経済的な理由で介護を断念することがないよう、利用可能な制度と申請の流れを整理します。
無理なく利用できる支援制度・減免措置
介護費用が家計を圧迫している場合は、介護保険制度内の支援や自治体の減免措置を検討しましょう。
代表的な制度に「高額介護サービス費制度」があり、1か月の自己負担額が所得区分ごとの上限を超えた分が払い戻されます。
また「介護保険料の減免制度」では、所得が一定以下の場合や災害・失業など特別な事情がある場合に保険料の軽減が可能です。
さらに、福祉用具購入費助成(年間上限10万円)や住宅改修費助成(上限20万円)を活用すれば、一時的な出費を抑えられます。
これらの制度は市区町村が窓口のため、最新の条件や必要書類を事前に確認し、期限内に申請することが大切です。
制度名 | 内容 | 利用条件 |
---|---|---|
高額介護サービス費制度 | 月額自己負担上限超過分を払い戻し | 所得区分ごとの上限設定あり |
介護保険料の減免制度 | 保険料を軽減または免除 | 所得制限、特別事情あり |
福祉用具購入費助成 | 年間上限10万円まで購入費補助 | 要介護・要支援認定者 |
住宅改修費助成 | 上限20万円まで改修費補助 | 要介護・要支援認定者 |
生活保護や成年後見制度の活用ポイント
生活保護は、世帯の収入や資産が国の定める最低生活費を下回る場合に受給でき、介護扶助によって介護サービス費用も支給対象となります。
申請は市区町村の福祉事務所で行い、収入・資産・扶養義務者の状況確認が必要です。
また、認知症や障害などで判断能力が低下し、契約や財産管理が難しい場合は「成年後見制度」を利用できます。
家庭裁判所に申し立て、選任された後見人が介護サービスの契約や費用管理を行うため、不利益な契約や金銭トラブルを防ぎやすくなります。
いずれも生活や介護の継続に直結する制度で、早期相談が利用の第一歩です。
生活保護のポイント
- 最低生活費を下回る場合に受給可能
- 介護扶助による介護サービス費用も支給対象
- 申請は市区町村の福祉事務所で実施
成年後見制度のポイント
- 認知症や障害などで判断能力が低下した人を支援
- 後見人が財産管理・契約手続きなどを代行
- 家庭裁判所への申し立てが必要
.webp&w=1920&q=75)
後悔しない介護の終わらせ方と看取りの考え方
ここでは、介護の最終段階である看取りに向けて、自宅と施設の選択基準や、終末期ケアの方法、エンディングノートの活用法について解説します。本人と家族が納得できる形で最期を迎えるために、事前準備のポイントを整理します。
自宅か施設か?看取りの場所を決める基準
看取りの場所は、自宅か施設かによって環境や支援体制が大きく異なります。
自宅での看取りは、住み慣れた環境で過ごせる安心感がありますが、家族の介護負担や緊急時の医療対応に限界があります。
訪問診療や訪問看護の利用で在宅医療は可能ですが、24時間対応には制約があります。
一方、施設での看取りは、専門職による24時間体制や緊急時の医療連携が確保されやすい
反面、生活環境が本人の希望と異なる場合があります。
選択の際は、本人の意向、家族の介護力、必要な医療処置、費用、アクセスのしやすさを総合的に検討し、早期に話し合うことが重要です。
項目 | 自宅看取り | 施設看取り |
---|---|---|
環境 | 住み慣れた家 | 専用設備・介護環境 |
医療体制 | 訪問診療・訪問看護 | 24時間体制の医療連携 |
家族負担 | 高い | 低い |
費用 | サービス利用料のみ | 月額利用料+初期費用 |
緊急対応 | 制限あり | 即時対応可能 |
終末期ケアとエンディングノートの活用法
終末期ケアとは、余命が限られた時期に、身体的苦痛や精神的負担を和らげ、尊厳を保ちながら生活を支える医療・介護の総称です。
ホスピスや緩和ケア病棟、訪問看護などが選択肢に含まれます。この時期には、延命治療の有無や介護方針を明確にしておくことが重要です。
エンディングノートは、医療・介護・財産・葬儀に関する希望を自分で記録し、家族や関係者と共有するためのツールです。
法的効力はありませんが、本人の意思を尊重した対応を促し、家族の判断負担を軽減します。
終末期を迎える前からノートを作成・更新し、関係者全員が内容を把握することで、後悔の少ない介護の終結につながります。
終末期ケアの種類
- ホスピス・緩和ケア病棟
- 訪問看護・在宅緩和ケア
- 介護施設での看取り
- 在宅医療と併用するデイサービス
.webp&w=1920&q=75)
まとめ
親の介護は突然始まることも多く、70代後半〜80代前半が多いとされますが、病気や転倒などで早まる場合もあります。
いざというときに慌てないためには、親の希望や資産状況を把握し、家族間で役割分担を話し合っておくことが大切です。
介護と仕事を両立させるには、介護休業や短時間勤務制度、高額介護サービス費制度などの支援制度を活用しましょう。費用が心配な方も、生活保護や自治体の助成制度で支援が受けられます。
一人で抱え込まず、地域包括支援センターやケアマネジャーに相談することが介護の第一歩です。
「今できる準備が、未来の安心につながります」。前向きな気持ちで、一歩ずつできることから始めていきましょう。
よくある質問
Q.親の介護、何歳から始まるのが一般的ですか?
親の介護が始まる年齢は、厚生労働省の調査では多くが70代後半から80代前半です。
ただし、介護の開始は年齢だけでなく、病気や事故の発生時期に左右されます。脳卒中や骨折、認知症の進行などがきっかけとなり、突然介護が必要になるケースも少なくありません。
早めに健康診断や生活習慣の見直しを行い、変化に気づけるよう家族間で定期的に近況を共有しておくことが重要です。
年齢を基準に構えるだけでなく、日々の体調や行動の変化を観察し、必要に応じて介護サービスの情報収集や手続き準備を進めておくと、急な介護にも対応しやすくなります。
Q.親を介護施設に任せるのはかわいそうですか?
施設介護を「かわいそう」と感じる背景には、家族が直接介護することが理想という考え方や、周囲の視線があります。
しかし実際には、施設では専門職が24時間体制でケアを行い、医療や安全管理も整っています。
家族が無理をして在宅介護を続けることで、介護者が心身を壊し、結果的に親の生活の質が下がることもあります。
大切なのは、どこで介護を行うかではなく、本人が安心して過ごせる環境を確保することです。
施設見学や職員との面談を通じて雰囲気やサービス内容を確認し、本人と家族の双方にとって負担の少ない選択をすることが望ましいでしょう。
Q.親の資産が少ないときの対応策はどうすればいいですか?
親の資産が少ない場合でも、介護サービスの利用は可能です。
公的介護保険の自己負担は原則1〜3割で、所得に応じて軽減制度があります。さらに、高額介護サービス費制度を使えば、月の自己負担額が所得区分ごとに上限を超えた分は払い戻されます。
生活保護を受給している場合は、介護扶助によって費用が支給されます。また、自治体独自の助成制度(福祉用具購入費や住宅改修費の補助)もあります。
資産や収入に応じた制度を活用するためには、まず市区町村の介護保険窓口や地域包括支援センターに相談し、条件や必要書類を確認することが重要です。
Q.兄弟と費用をどう分担すべきですか?
兄弟姉妹間での介護費用分担は、法律上の明確な割合は定められていません。
一般的には、介護サービスの利用料や生活費を、兄弟の収入や生活状況に応じて話し合いで決めます。
不公平感を防ぐためには、最初に費用項目を整理し、月額いくら負担するか、突発的な費用(入院費や福祉用具購入費)をどう分担するかを明文化しておくとよいでしょう。
話し合いは感情的になりやすいため、ケアマネジャーや地域包括支援センター職員など第三者を交えて行うとスムーズです。
後々のトラブルを避けるためにも、合意内容は書面に残し、定期的に見直しを行うことが望まれます。
Q.介護離職を避けるにはどうすればいいですか?
介護離職を防ぐためには、職場と早めに相談し、介護と仕事を両立できる制度を活用することが大切です。
介護休業制度を使えば、最大93日間(通算)の休業が可能で、雇用保険から介護休業給付金が支給されます。
また、短時間勤務制度や時差勤務制度を導入している企業も増えています。加えて、訪問介護やデイサービス、ショートステイなどの介護サービスを組み合わせ、在宅介護の負担を軽減しましょう。
地域包括支援センターやケアマネジャーに相談すれば、サービス利用の調整や助成制度の案内も受けられます。早期の準備と支援の活用が、離職回避の鍵となります。
出典:介護休業とは|厚生労働省

海野 和(看護師)
この記事の監修者情報です
2006年に日本消化器内科内視鏡技師認定証を取得し、消化器系疾患の専門的な知識と技術を習得。2018年にはNCPR(新生児蘇生法専門コース)の認定を取得し、緊急時対応のスペシャリストとしての資格を保有。さらにBLS(HeartCode®BLSコース)を受講し、基本的生命維持技術の最新知識を習得。豊富な臨床経験と高度な専門資格を活かし、医療・介護分野における正確で信頼性の高い情報監修を行っています。
【保有資格】
・日本消化器内科内視鏡技師認定証(2006年取得)
・NCPR(新生児蘇生法専門コース終了認定証)(2018年取得)
・BLS(HeartCode®BLSコース)受講済み
