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扶養親族とは?扶養控除と配偶者控除の違いや条件を分かりやすく解説

車いすでお花束を持っているおばあちゃん

介護を担う家庭や介護職で働く方にとって、「扶養親族」の仕組みは生活設計に直結する重要なテーマです。

扶養控除や配偶者控除といった税制優遇はもちろん、健康保険や年金における扶養の判定基準、いわゆる「収入の壁」も知っておく必要があります。

また、高齢の親を扶養に入れる条件や、介護施設に入所している場合の扱いなど、介護特有のケースも少なくありません。


この記事では、令和7年(2025年)の改正を反映しつつ、介護と扶養親族の関係をわかりやすく整理しました。扶養親族の定義や扶養控除と配偶者控除の違い、具体的な条件や注意点についてわかりやすくまとめたのでぜひ参考にしてみてくださいね。

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小さい木造の家がたくさん
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扶養親族とは?定義と国税庁による基準

扶養親族とは、所得税や住民税の計算で「扶養控除」の対象となる親族のことです。

2025年(令和7年)からは、配偶者以外の6親等内の血族・3親等内の姻族を指し、「生計を一にしている」「合計所得金額55万円以下(給与のみの場合は年収123万円以下)」などの条件を全て満たす必要があります。

【主な要件(令和6年(2024年)までの基準)】

・配偶者を除く親族(6親等内の血族・3親等内の姻族)、里子・養護老人も対象

・納税者と生計を一にしていること(同居でなくても仕送り等でOK)

・合計所得金額が48万円以下(給与収入のみの場合は103万円以下が目安)

・青色・白色申告者の事業専従者として給与を受けていないこと

※上記は令和6年分(2024年分)までの基準です。令和7年(2025年)12月1日施行の税制改正により令和7年分(2025年分)からは「合計所得金額55万円以下(給与収入のみの場合は123万円以下)」に改正されるため、記事をご覧の時期や申告年度に応じて最新の国税庁情報を確認することが重要です。

出典:令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について

条件として、納税者と「生計を一にしている」こと、年間の合計所得金額が55万円以下(2025年分からは合計所得金額55万円以下。給与のみの人は年収約123万円以下が目安)であることが必要です。

また、青色申告者の事業専従者として給与を受けていない、白色申告の専従者でないことも要件となります。

つまり、同居の有無にかかわらず、生活費の仕送りや実際の扶養関係があれば対象となり得ます。

出典:◆扶養親族|国税庁

出典:扶養家族(扶養親族)とは?認定の条件と控除額をわかりやすく解説! | 東京ライフ×キャリア

出典:令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について

契約書にサインしている
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扶養親族の条件

ここでは、扶養親族と認められるための条件について解説します。

対象となる親族の範囲や「生計を一にする」とはどういう意味か、所得制限や専従者の扱いなど、年末調整や確定申告で必ず押さえておきたい基準をわかりやすく解説します。

対象となる親族の範囲

扶養親族に含まれるのは、配偶者を除いた6親等内の血族と3親等内の姻族です。例えば、両親や祖父母、兄弟姉妹、子ども、孫、甥姪などがこれに当たります。

さらに、都道府県知事から養育を委託された児童(里子)や、市町村長から養護を委託された老人も対象になります。つまり、直系の親族だけでなく広い範囲が認められている点が特徴です。

生計を一にしていること

「生計を一にする」とは、同居しているだけでなく、別居していても生活費や学費、仕送りで生活を支えている場合も含みます

例えば、遠方で暮らす大学生の子どもに仕送りをしている場合や、老人ホーム(介護施設)に入所している親に生活費を負担している場合でも、実態として生活を共にしていると認められれば扶養に該当します。

所得要件(合計所得金額55万円以下)

扶養親族になるには、1年間の合計所得金額が55万円以下(2025年分からは合計所得金額55万円以下。給与のみの人は年収約123万円以下が目安)である必要があります。

給与収入だけでみれば、おおよそ年収123万円以下が目安です。

なお、年金収入の場合は公的年金等控除が適用されるため、65歳以上なら155万円以下、65歳未満なら108万円以下であれば所得要件を満たします。

この金額を超えると扶養親族から外れるため、注意が必要です。

出典:令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について

専従者でないこと

青色申告者の事業専従者として給与を受け取っている人や、白色申告の事業専従者となっている人は、扶養親族の対象外です。

これは、専従者が事業主の所得計算にすでに反映されているため、「二重控除」を適用できない仕組みになっているからです。

家族経営で働いている場合には特に、この点を確認しておく必要があります。

出典:配偶者控除を考える

出典:2以上の所得者がいる場合の扶養親族等の所属|国税庁

マルとバツの札が椅子に置いてある
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扶養控除と配偶者控除・社会保険の扶養の違い

ここでは、「扶養」という言葉が使われる場面ごとの違いについて解説します。

税法上の扶養控除や配偶者控除と、健康保険・年金における扶養(被扶養者)は基準が異なり、誤解しやすい部分です。

家計や働き方に直結するため、それぞれの仕組みを正しく理解しておきましょう。

税法上の扶養と社会保険上の扶養は別物

「扶養」という言葉は広く使われていますが、税法と社会保険では基準が異なります。

税法上の扶養は、所得税や住民税の負担を軽減するための仕組みで、扶養控除や配偶者控除の対象となるかどうかがポイントです。

一方、社会保険における扶養は「被扶養者」と呼ばれ、健康保険や年金に加入している本人の収入で生活しているかどうかが判断されます。

つまり、税法で扶養に入れたとしても、社会保険では認められないケースがあり、それぞれを混同せずに理解することが大切です。

所得税での控除(扶養控除・配偶者控除)

税法上の控除には、大きく「扶養控除」と「配偶者控除・配偶者特別控除」があります。扶養控除は16歳以上の子どもや親族を対象とし、年齢や所得に応じて控除額が変わります。

例えば23歳未満の子どもは「特定扶養親族」として控除額が大きく設定されていることが特徴です。

一方、配偶者控除は所得が一定以下の配偶者を扶養している場合に適用され、配偶者特別控除は収入が一定額を超えても段階的に控除が残る仕組みです。

いずれも年末調整や確定申告で適用され、結果的に世帯全体の税負担を軽減する効果があります。

健康保険や年金における扶養の基準(130万円の壁など)

社会保険における被扶養者は、被保険者の収入によって生活を維持しているかどうかで判断され、原則として年間収入130万円未満(60歳以上や障害者は180万円未満)であることが条件とされています。

ただし、19歳以上23歳未満(その年の12月31日時点)の子どもについては、2025年10月1日以降は年間収入150万円未満であれば被扶養者として認められる特例が設けられます。さらに、税法上の「103万円の壁」(配偶者控除の基準)や、社会保険加入義務が生じる「106万円の壁」も依然として存在し、後者は従業員51人以上の事業所に適用されてきましたが、2026年10月からは企業規模要件が撤廃される予定です。

加えて、2025年からは一定の要件を満たす親族に対する税負担を軽減する「特定親族特別控除」が新設されることになっており、このように複数の収入基準が重なり合うため、働き方や収入の見通しを立てる際には、社会保険と税法の両面から基準を総合的に把握することが一層重要となります。

介護職員などパート・アルバイトで働く方にとって、これらの基準は手取り収入や将来の年金額に直結するため、短期的な負担と長期的な保障のバランスを踏まえて働き方を選ぶことが重要です。


出典:令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について

控除て書いてある小さい箱
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扶養控除の控除額(所得税の場合)

扶養親族の状況により控除額は以下のとおりです。(※令和7年現在、控除額は改正前後で変更ありません)

区分

控除額(万円)

一般の控除対象扶養親族(16歳以上)

38

特定扶養親族(19歳以上23歳未満)

63

老人扶養親族(70歳以上で同居していない親族)

48

同居老親等(70歳以上で納税者または配偶者の直系尊属と同居)

55

※住民税の扶養控除額は別基準(一般33万円など)となります。

出典:国税庁 扶養控除の金額の概要

これらの控除額は、所得税の課税所得から直接控除されるため、控除金額が大きいほど税負担が軽減されます。

出典:国税庁 | No.1180 扶養控除

同居の判断基準

同居老親等に該当するかどうかの判断では、「同居」の解釈が重要です。病気の治療のために一時的に入院しており、その期間が1年以上に及んだとしても、納税者と生活の基盤を共有していると認められる場合には「同居」として取り扱われます。

一方で、老人ホーム(介護施設)に入所している場合は、その施設が居所とみなされるため、「同居」とは認められません。この点は扶養控除を申請する際に誤解が生じやすいため、注意が必要です。

出典:国税庁 | No.1180 扶養控除

適用手続き

扶養控除を受ける方法は、働き方によって異なります。会社員(給与所得者)の場合は、年末調整の際に勤務先へ「扶養控除等(異動)申告書」を提出し、扶養親族の状況を申告します。これにより、会社が源泉徴収で税額を調整してくれます。

一方、自営業者やフリーランスは、毎年の確定申告で扶養親族の情報を申告します。申告内容によっては、住民票や所得証明などの書類を添付する必要がある場合もあります。

いずれの場合も、要件を正しく満たしていなければ控除は受けられません。特に、学生のお子さんや高齢のご両親を扶養している場合は、所得基準をよく確認し、漏れのないように手続きを行うことが大切です。

AとBの違い
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配偶者控除との違い

扶養控除は、配偶者以外の親族(子ども、高齢の親、兄弟姉妹など)を対象とする所得控除です。一方、配偶者を対象とする場合には「配偶者控除」または「配偶者特別控除」が適用されます。これらは扶養控除とは別制度であり、要件や控除額も異なります

配偶者控除は、配偶者の合計所得金額が55万円以下(給与収入のみの場合は年収123万円以下)の場合に適用され、控除額は38万円(老人控除対象配偶者の場合は48万円)です。

配偶者特別控除は、配偶者の合計所得金額が55万円超〜133万円以下(給与収入換算で123万円超〜201万円以下)の場合に、段階的に適用されます。

このように、扶養控除は「配偶者以外」、配偶者控除は「配偶者のみ」と対象が明確に分かれています。最新の税制改正や所得要件を確認し、自分の家庭がどちらの制度に該当するかを正しく理解して申告することが大切です。

扶養控除と配偶者控除の比較

比較項目

扶養控除

配偶者控除

対象

配偶者以外の親族

民法上の配偶者のみ

主な条件

・納税者と生計を一にしている・親族の合計所得 55万円以下(給与収入123万円以下)・16歳以上

・納税者と生計を一にしている・配偶者の合計所得 55万円以下(給与収入123万円以下)・納税者本人の合計所得1,000万円以下

控除額

38万円~63万円(特定扶養親族・老人扶養親族など年齢や同居の有無により異なる)

38万円(老人控除対象配偶者は48万円)

年齢要件

原則16歳以上(16歳未満は控除対象外)

年齢要件なし

出典:国税庁 扶養親族に該当する人の範囲

出典:国税庁「配偶者控除」

なお、配偶者の所得が55万円超〜133万円以下(給与収入換算で123万円超〜201万円以下)の場合は『配偶者特別控除』が段階的に適用されます。

扶養控除は「配偶者以外」が対象となり、配偶者については「配偶者控除」または「配偶者特別控除」が適用されます。

出典:国税庁 | No.1180 扶養控除

出典:国税庁 | No.1191 配偶者控除

手をつないでる2人
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介護と扶養親族の関係

ここでは、介護と扶養親族の関係について解説します

高齢の親を扶養控除に入れる条件や、老人ホーム(介護施設)に入所している場合の扱い、さらに介護職員がパート・アルバイトで働く際に直面する「扶養の壁」問題まで、生活に直結する重要なポイントを整理しました。

高齢の親を扶養に入れるケース(介護費用を負担している場合)

介護を必要とする高齢の親を扶養親族にできるかどうかは、多くの家庭にとって重要な問題です。税法上は、親の所得が一定額以下(合計所得金額55万円以下、年金収入のみなら65歳以上で155万円以下)であれば、扶養控除の対象となります。

同居や仕送りで生活費を負担している場合には「生計を一にしている」とみなされやすく、扶養控除の適用が可能です。

控除額は親の年齢によって変わり、70歳以上の親は「老人扶養親族」として控除額が大きくなる点も特徴です。

介護費用が家計に重くのしかかる家庭では、この扶養控除を活用することで税負担を軽減できます。

出典:No.1180 扶養控除|国税庁

出典:No.1182 高齢者を扶養している人が受けられる配偶者控除や扶養控除|国税庁

出典:令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について

施設入所していても扶養にできる場合がある

親が介護施設に入所している場合でも、生活費の一部を子どもが負担しているなら「生計を一にしている」と認められるケースがあります

具体的には、仕送りや施設利用料の支払いを子どもが継続して行っている場合、同居していなくても扶養控除の対象となる可能性があります。

ただし、親自身の年金収入や貯蓄で費用を賄っている場合は、扶養と認められないこともあるため注意が必要です。

実際の判断は収入状況や生活実態に基づくため、年末調整や確定申告の際には仕送りの記録や支払い証明を残しておくと安心です。


出典:No.1180 扶養控除|国税庁

介護職員がパート・アルバイトで働く際の「扶養の壁」問題(103万・106万・130万)

介護職としてパート・アルバイトで働く場合、「扶養の壁」と呼ばれる収入基準が大きな影響を与えます。まず税法上は、配偶者の扶養に入っているときに年収103万円を超えると配偶者控除の対象外となり、配偶者の所得税・住民税の負担が増える可能性があります。

さらに、年収106万円を超えると社会保険への加入義務が生じます。従来は従業員数51人以上の職場に限られていましたが、令和7年度以降は企業規模要件が撤廃される予定で、より広い範囲で社会保険加入が必要となります。

また、年収130万円を超えると勤務先の規模にかかわらず被扶養者から外れ、自分で国民年金・国民健康保険に加入しなければなりません。その結果、手取りが一時的に減少する「逆転現象」が起きることもあります。

ただし、社会保険に加入すれば将来の年金受給額や医療・保障制度が充実するため、短期的な負担と長期的な安心を比較して働き方を選ぶことが重要です。

出典:被扶養者とは? | こんな時に健保 | 全国健康保険協会

出典:No.1180 扶養控除|国税庁

出典:令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について

費用と計算機
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介護費用と税控除の関係

介護にかかる費用は家計への負担が大きいため、税控除の仕組みを理解しておくことが重要です。

ここでは、介護保険サービスの自己負担が医療費控除の対象になるかどうか、おむつ代を控除に含めるための要件、さらに障害者控除や同居特別障害者控除の適用可否について整理します。

介護保険サービスの自己負担と医療費控除

介護保険サービスの自己負担分は、原則として医療費控除の対象になりません

ただし、医師の指示に基づき療養上必要とされるもの、例えば訪問看護ステーションのサービスや通所リハビリでの医療行為など、一部は控除対象に含められる場合があります。

一方で、生活支援中心のデイサービスや家事援助などは医療費控除の対象外です。利用しているサービスが「治療目的かどうか」を確認し、領収書を整理しておくことが大切です。

出典:No.1122 医療費控除の対象となる医療費|国税庁

出典:医療費控除の対象となる医療費

おむつ代の要件(医師の意見書が必要)

要介護者が失禁などでおむつを使用する場合でも、すべてが医療費控除の対象となるわけではありません。

国税庁では、「医師によるおむつ使用証明書(おむつ使用が必要である旨の証明)」を添付することを条件としています

初年度は医師の証明が必須ですが、2年目以降は自治体によって、介護保険の主治医意見書の写しや確認書で代替できる場合があります。制度の扱いは自治体によって異なるため、事前に確認することをおすすめします。領収書の保存も確定申告時に必須です。

出典:おむつ代の医療費控除|東京都小平市公式ホームページ

出典:おむつに係る費用の医療費控除 | 世田谷区公式ホームページ

出典:寝たきりの者のおむつ代|国税庁

出典:おむつに係る費用の医療費控除の取扱い(「おむつ使用証明書」に代えた簡易な証明手続等)について(法令解釈通達)|国税庁

障害者控除・同居特別障害者控除の適用可否

要介護高齢者が障害者区分に該当する場合、所得税の障害者控除(27万円・40万円など)が受けられることがあります

さらに、特別障害者に該当し同居して介護している場合には、「同居特別障害者控除」(所得税で75万円、住民税では別基準)が適用されるケースもあります。

対象は、身体障害者手帳や療育手帳を持つ方だけでなく、自治体が「障害者に準ずる」と認定した65歳以上の高齢者も含まれる場合があります。

ただし認定基準は自治体により異なるため、確認が必要です。施設入所の場合は「同居」とみなされないことが多いため事前に確認しておきましょう。


出典:No.1160 障害者控除|国税庁

人形が施設の前で集まってる
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まとめ

扶養親族の仕組みは、税法上の扶養控除・配偶者控除と、社会保険上の被扶養者で要件が異なるため、混同しやすい点に注意が必要です。

特に介護を伴う家庭では、親の年金収入や施設入所の有無によって扶養判定や控除額が変わり、手取りや税負担に大きく影響します。

なお、介護職員がパート勤務を選ぶ際には「収入の壁(103万・106万・130万)」を意識することが欠かせません。


最新の基準を確認し、介護施設の領収書(利用料や介護費用)や、仕送りの振込明細書(親や子どもに送金した証拠)、医師の意見書やおむつ使用証明書(医療費控除の対象にするために必要)などをきちんと保管しておけば、節税と将来の安心につながるでしょう。

扶養親族に関するよくある質問

よくある質問

Q.子どもは何歳まで扶養にできますか?
A.

税法上の扶養控除の対象となる「控除対象扶養親族」は、16歳以上の子どもや親族です。16歳未満の子どもは扶養控除の対象外ですが、児童手当などの支援制度が設けられています。

さらに、19歳以上23歳未満の子どもは「特定扶養親族」として区分され、控除額が拡大されます。23歳以降も年齢に制限はなく、所得要件(合計所得金額55万円以下など)を満たせば「一般の扶養親族」として控除の対象になります。

出典:No.1180 扶養控除|国税庁

出典:令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について

Q.親が年金を受給していても扶養にできますか?
A.

親が公的年金を受け取っていても、所得要件を満たせば扶養控除の対象になります。基準は「合計所得金額55万円以下(2025年分からは合計所得金額55万円以下。給与のみの人は年収約123万円以下が目安)」であり、これは年金収入に公的年金等控除を適用した後の金額です。

一般的な目安として、65歳以上なら年金収入155万円以下、65歳未満なら108万円以下であれば、この所得要件を満たすケースが多いとされています。

また、「生計を一にしている」ことが必要で、同居に限らず仕送りで生活を支えている場合も対象になります。

出典:No.1180 扶養控除|国税庁

出典:No.1600 公的年金等の課税関係|国税庁

出典:令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について

Q. 親が施設に入所していても扶養にできますか?
A.

親が老人ホーム(介護施設)に入所していても、子どもが生活費や施設利用料を負担している場合は「生計を一にしている」と認められ、扶養控除を受けられることがあります

ただし、親が自己の年金や資産で費用を賄っている場合には扶養の対象外となる可能性があります。

なお、「同居老親等」に該当するかどうかで控除額が変わるため、施設入所している場合は「常に同居とみなされるわけではない」点に注意が必要です。仕送りや支払いの記録を残しておくことが大切です。


出典:No.1180 扶養控除|国税庁

Q.扶養親族の変更はどのように手続きしますか?
A.

扶養親族の変更は、年末調整や確定申告で手続きします。会社員であれば「扶養控除等申告書」を勤務先に提出することで年末調整に反映されます。

一方、自営業者や確定申告を行う場合は、扶養親族の人数や情報を申告書に記入して控除を受けます。

年の途中で結婚や出産、親の死亡など家族構成が変わった場合でも、原則はその年の12月31日時点の状況で判断されます。証明書類が必要になることもあるため、早めに準備しておくと安心です。


出典:No.1180 扶養控除|国税庁

Q.扶養親族の判定はいつの時点で行われますか?
A.

扶養親族の判定は、その年の12月31日時点の状況で決まります

例えば、途中で結婚や出産、就職など家族構成が変わっても、最終的にその年の大晦日に扶養の要件を満たしていれば控除が適用されます。年の中途で死亡した場合は、その死亡日の現況で判断されます。


出典:No.1180 扶養控除|国税庁

Q.パート収入がある配偶者は扶養親族に入りますか?
A.

配偶者は「扶養親族」には含まれませんが、「配偶者控除」や「配偶者特別控除」の対象になる場合があります。

  • 配偶者控除:配偶者の合計所得金額が55万円以下(給与収入のみなら年収123万円以下)の場合に適用
  • 配偶者特別控除:配偶者の合計所得金額が55万円超〜133万円以下(給与収入のみなら年収123万円超〜201万円以下)の場合に段階的に適用

したがって、配偶者を扶養親族として扱うことはできませんが、所得税上の「配偶者控除・配偶者特別控除」で税負担を軽減できる仕組みがあります。

出典:No.1191 配偶者控除|国税庁

出典:令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について

Q.学生アルバイトは扶養から外れますか?
A.

大学生や専門学校生などの学生アルバイトでも、年収123万円以下であれば税法上の扶養親族として扱われます。23歳未満の学生は「特定扶養親族」として、一般よりも控除額が大きくなります。

ただし、年収が106万円(従業員規模による社会保険加入義務)や130万円を超えると、社会保険上は扶養から外れて自分で保険料を負担する可能性があるため注意が必要です。

出典:被扶養者とは? | こんな時に健保 | 全国健康保険協会

出典:年収の壁・支援強化パッケージ|厚生労働省

出典:No.1180 扶養控除|国税庁

Q.国外に住む親族も扶養親族になりますか?
A.

国外居住親族でも、16歳以上で所得要件55万円以下(2025年分からは合計所得金額55万円以下。給与のみの人は年収約123万円以下が目安)など、国内と同じ条件を満たせば扶養控除の対象になります。ただし、確認書類の提出が必須です。

具体的には、親族関係書類(戸籍謄本・出生証明書など)と送金関係書類(金融機関の送金証明書等)が必要で、これらを提出できない場合は扶養控除を受けられません。

出典:No.1180 扶養控除|国税庁

出典:令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について

Q.老人ホーム(介護施設)に入所している親や祖父母は「同居老親等」となりますか?
A.

原則として、老人ホーム(介護施設が生活の本拠とみなされるため「同居老親等」には該当しません

この場合は「老人扶養親族」として控除が適用されます。控除額は令和6年分までは48万円、令和7年分(2025年分)からは55万円です。

一方で、病気治療のための入院は、長期でも「同居」と扱われる場合があります。

(※70歳以上で同居している場合は「同居老親等」となり、令和6年分までは55万円、令和7年分からは63万円)


出典:No.1180 扶養控除|国税庁

Q.夫婦で同じ親族を扶養控除に入れることはできますか?
A.

扶養親族は1人の納税者にしかつけられません。夫婦がそれぞれ生活費を一部ずつ負担していても、両方で重複して扶養控除を受けることはできません

どちらが扶養するかは、実際の生活費の負担状況などを踏まえて選ぶ必要があります。


出典:No.1180 扶養控除|国税庁

Q.年末調整後に家族構成が変わった場合はどうなりますか?
A.

扶養親族の判定基準は12月31日です。年末調整の後に人数が増減した場合でも、再年調(年末調整のやり直し)が可能です。

増えた場合は還付、減った場合は追加徴収になります。再年調をしない場合は、本人が確定申告で調整することも可能です。


出典:No.2671 年末調整の後に扶養親族等の人数が異動したとき|国税庁

豊富な臨床経験と高度な専門資格を活かし、医療・介護分野における正確で信頼性の高い情報監修を行っています。
監修者

海野 和看護師

この記事の監修者情報です

2006年に日本消化器内科内視鏡技師認定証を取得し、消化器系疾患の専門的な知識と技術を習得。2018年にはNCPR(新生児蘇生法専門コース)の認定を取得し、緊急時対応のスペシャリストとしての資格を保有。さらにBLS(HeartCode®BLSコース)を受講し、基本的生命維持技術の最新知識を習得。豊富な臨床経験と高度な専門資格を活かし、医療・介護分野における正確で信頼性の高い情報監修を行っています。

【保有資格】

日本消化器内科内視鏡技師認定証(2006年取得)
NCPR(新生児蘇生法専門コース終了認定証)(2018年取得)
BLS(HeartCode®BLSコース)受講済み

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