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- 地域包括支援センターを利用したい身近な地域で高齢者やその家族の生活を支える拠点として、地域包括支援センターは様々な相談に応じています
- どんな相談ができるのか、誰が対象なのかを知りたい方地域包括支援センターは、介護保険の利用相談や介護予防の支援だけでなく、認知症や権利擁護など幅広いテーマに対応しています
- 高齢者支援の仕事に関心がある現場での具体的な業務や支援の流れを知ることで、高齢者支援分野の職業理解が深まります。
- 介護や福祉の分野で働きたい、地域と関わる仕事に興味がある方福祉や介護の資格を活かし、地域のネットワーク作りに関わるやりがいある働き方を目指す方に向いています。
- 制度や役割について理解を深めたい制度理解を通じて、自分や家族の将来設計にも役立てられます。
- 地域包括ケアシステムやセンターの4つの役割を学びたい方「総合相談支援」「介護予防ケアマネジメント」「権利擁護」「ケアマネ支援」」の4つの役割をまなぶことで地域全体で高齢者を支える仕組みの全体像を把握できます。
地域包括支援センターとは
地域包括支援センターは、高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らせるよう支援する公的な相談窓口です。
ここでは、その設立背景や目的、設置・運営の仕組み、地域包括ケアシステムとの関係性について解説します。
地域包括支援センターの設立背景と目的
地域包括支援センターは、2005年の介護保険法改正によって創設されました。高齢化の進展により、医療・介護・福祉などの複合的な課題に対応する包括的支援体制が必要とされたことが背景です。
センターの主な目的は、高齢者が住み慣れた地域で可能な限り自立した生活を送れるよう支援することです。 介護予防、権利擁護、地域との連携、総合相談など、多様な支援業務を担います。
これにより、早期の課題発見や重度化の防止が図られ、地域包括ケアシステムの実現に貢献しています。
市町村による設置と運営形態
厚生労働省によると、地域包括支援センターは、市町村が設置主体となる公的機関で、直営または委託により運営されます。
委託先は、社会福祉法人、医療法人、NPO法人などが中心で、地域特性に応じた体制が構築されています。
センターには、ケアマネジャー(介護支援専門員)、保健師(または看護師)、社会福祉士の3職種の配置が義務づけられており、多職種連携による包括的な支援が可能です。運営費は、介護保険の保険料および公費(国・都道府県・市町村)によって賄われています。
域包括ケアシステムとの関係性
地域包括支援センターは、地域包括ケアシステムの中核を担う機関として位置づけられています。
厚生労働省によると、地域包括ケアシステムとは高齢者ができる限り住み慣れた地域で、医療・介護・予防・住まい・生活支援を一体的に受けながら、継続して生活できる体制を指します。
センターは、介護保険サービスにとどまらず、地域の見守り活動やボランティア、民間サービスとも連携し、必要な支援を調整・提案することも特徴の1つです。
さらに、行政や医療機関、地域住民との橋渡し役として、課題の共有やサービスの最適化を図る「地域のハブ」としての役割も担っています。

地域包括支援センターの4つの役割
地域包括支援センターは、高齢者が安心して暮らせるよう、相談対応や介護予防、権利擁護など多面的な支援を行う拠点です。
ここでは、センターが担う4つの主要な役割について詳しく解説します。
【地域包括支援センターの4つの役割】
- 総合相談支援による悩み相談対応
- 介護予防ケアマネジメントの実施
- 高齢者の権利擁護と被害防止支援
- ケアマネジャー(介護支援専門員)への支援と地域連携の強化
役割1. 総合相談支援による悩み相談対応
地域包括支援センターは、高齢者やその家族からの幅広い悩みに対応する「総合相談支援」の機能を担っています。相談内容は介護だけでなく、医療・福祉・暮らしに関する不安など、多岐にわたります。
専門職が丁寧に状況を聞き取り、必要な制度や関係機関につなぐことで課題の早期発見と対応が可能になります。相談は原則無料で、電話や訪問など柔軟な対応も行われています。
対応できる主な相談内容
- 介護保険の申請方法や制度の仕組み
- 一人暮らしの高齢者の見守り体制
- 認知症高齢者への支援や対応方法
- 退院後や施設入所後の生活支援の調整
- 地域で利用できる生活支援サービスの紹介
役割2. 介護予防ケアマネジメントの実施
厚生労働省によると、介護予防ケアマネジメントは、高齢者が要介護状態になるのを防ぐ目的で行われる支援です。
地域包括支援センターでは、保健師や主任介護支援専門員が中心となり、対象者の生活状況や健康状態を把握したうえで介護予防サービスの利用計画を作成します。
計画の実施後も、支援の有効性を確認するため定期的なモニタリングを実施し、必要に応じて見直しが行われます。
介護予防ケアマネジメントの概要
項目 | 内容 |
---|---|
対象者 | 要支援1・2、または基本チェックリスト該当者(事業対象者) |
実施者 | 地域包括支援センターの保健師・主任介護支援専門員など |
主な内容 | アセスメント、ケアプラン作成、サービス調整、モニタリング |
支援の目的 | 要介護化の予防、生活機能の維持・向上、自立支援の促進 |
出典:介 護 保 険 最 新 情 報 Vol.1099 令和4年 9 月 13 日 厚 生 労 働 省 老 健 局 | 厚生労働省
役割3. 高齢者の権利擁護と被害防止支援
厚生労働省「地域包括支援センター業務マニュアル」によると、地域包括支援センターは、高齢者の権利擁護にも重要な役割を果たします。虐待や消費者被害、認知症に伴う金銭管理の困難などに対応し、必要に応じて適切な機関と連携します。
具体的には、虐待の早期発見と通報、成年後見制度の活用支援、消費生活センターや法律相談窓口への橋渡しなどを行います。本人の意思と尊厳を尊重しつつ、安全で安心できる生活環境の確保を目指しています。
役割4. ケアマネジャー(介護支援専門員)への支援と地域連携の強化
地域包括支援センターは、地域のケアマネジャー(介護支援専門員)を支える「包括的・継続的ケアマネジメント支援」の役割を担っています。
これは、ケアマネジャー(介護支援専門員)が適切な支援を行えるよう、主任介護支援専門員が中心となって専門的な助言や支援を提供する取り組みです。日々の相談対応に加え、地域ケア会議の運営や、研修・勉強会の開催などを通じて、ケアマネジメントの質の向上を目指しています。
また、医療・福祉・行政など多職種との連携体制を構築し、特に複雑な支援が必要なケースには同行支援や関係機関との調整も行います。こうした活動は、地域全体で高齢者を支える「面的支援」の土台を形成するものであり、地域包括ケアシステムの実現には欠かせない機能です。

域包括支援センターを構成する専門職
地域包括支援センターでは、高齢者の生活を多面的に支援するために、複数の専門職が連携して活動しています。
厚生労働省は、地域包括支援センターに「社会福祉士」「保健師(または看護師)」「主任介護支援専門員」の3つの職種を配置することを義務づけています。
ここでは、それぞれの専門職が果たす役割と支援内容について詳しく解説します。
【社会福祉士】地域包括支援センターにおける総合相談支援
社会福祉士は、地域包括支援センターにおける総合相談支援の中心的な存在です。
高齢者やその家族が抱える生活上の不安や困りごとに耳を傾け、介護保険制度の申請や利用方法の説明だけでなく、経済的な困窮、家族間のトラブル、地域での孤立といった複雑な課題にも対応します。
必要に応じて、地域の医療・福祉機関や行政との連携を図り、本人の意思を尊重しながら適切な支援につなげます。
社会福祉士は、制度の狭間で支援が届きにくい人にも寄り添う存在であり、高齢者が安心して暮らせる地域づくりに不可欠な役割を担っています。
【保健師(または看護師)】健康・医療相談
保健師は、高齢者の健康や医療に関する課題に対応する専門職であり、地域包括支援センターにおいては医療と介護をつなぐ役割を果たしています。
日常的な健康管理や生活習慣病の予防、フレイル(加齢による虚弱)の対策などを通じて、地域での自立生活の維持を支援します。また、入退院に伴う健康不安への対応や、在宅療養を続ける高齢者への助言も重要な業務です。
保健師は、医師やケアマネジャー(介護支援専門員)と連携しながら、継続的な支援体制を構築し、高齢者本人と家族の両方を支える立場として、地域における包括的な健康支援を実践しています。
【主任ケアマネジャー】地域のケアマネジャー(介護支援専門員)に対する支援と育成
主任ケアマネジャー、いわゆる主任介護支援専門員は、地域のケアマネジャー(介護支援専門員)に対する支援と育成を担う重要な役割を持っています。
地域包括支援センターでは、ケアマネジメントの質を高めるために、困難ケースへの対応方法の助言や支援、地域ケア会議の運営、研修の企画・実施などを行います。
また、医療・福祉・行政といった多職種との連携体制の調整にも関わり、個別支援だけでなく地域全体の支援体制の強化に貢献しています。
主任ケアマネジャーは、自身の専門性を生かしながら、地域包括ケアシステムの中核として、支援者同士をつなぐ調整役を果たしているのです。

地域包括支援センターと他機関の違い
地域包括支援センターは、高齢者の生活支援を包括的に行う中核的な公的機関です。ただし、他にも似た名称や機能を持つ相談窓口が存在し、混同されやすいのが実情です。
ここでは、特に誤解されやすい「居宅介護支援事業所」および「高齢者あんしん相談センター」との違いについて、制度的な観点から解説します。
居宅介護支援事業所との違い
地域包括支援センターと居宅介護支援事業所は、いずれもケアマネジメントを担いますが、対象者や目的、設置主体に明確な違いがあります。
居宅介護支援事業所は、主に要介護認定を受けた方に対して、ケアプランの作成と介護サービスの調整を行う機関で、多くは民間の事業者によって運営されています。
一方、地域包括支援センターは市区町村が設置主体であり、要支援者や介護予防が必要な高齢者、さらには介護保険の対象外であっても生活支援が必要な人を含め、広く支援を提供します。
また、公的機関として中立性が高く、制度を横断した包括的支援や地域連携を推進する役割を担っています。
地域包括支援センターと居宅介護支援事業所の主な違い
項目 | 地域包括支援センター | 居宅介護支援事業所 |
---|---|---|
主な対象者 | 要支援者、事業対象者、介護予防対象の高齢者など | 要介護認定を受けた高齢者 |
設置主体 | 市区町村(直営または社会福祉法人等への委託) | 主に民間事業者(営利・非営利含む) |
主な業務 | 総合相談、介護予防ケアマネジメント、地域連携等 | ケアプラン作成、介護サービス調整 |
出典:地域の身近な相談窓口「地域包括支援センター」| 目黒区
出典:居宅介護支援事業者・高齢者なんでも相談室(地域包括支援センター)| 流山市
出典:地域包括支援センターの設置運営について | 厚生労働省
高齢者あんしん相談センターとの違い
高齢者あんしん相談センターは、自治体が地域包括支援センターの機能をより身近な形で提供するために設置している窓口です。
「あんしん相談センター」という名称は法令上の正式名称ではなく、自治体によっては地域包括支援センターのサテライト機能や相談窓口として使われています。そのため、両者は別機関ではなく、あんしん相談センターが包括支援センターの一部業務を担っているケースが多いのが実態です。
ただし、設置場所や業務範囲、配置職種などは自治体により異なり、住民が利用しやすいように地域に応じた柔軟な運営がされています。
基本的には、高齢者が気軽に相談できる入り口としての機能を重視しており、包括的な支援が必要な場合は地域包括支援センター本体につながるよう設計されています。
地域包括支援センターと高齢者あんしん相談センターの主な違い
項目 | 地域包括支援センター | 高齢者あんしん相談センター |
---|---|---|
正式名称 | 介護保険法に基づく法定機関 | 自治体が設定した愛称または分室名 |
主な役割 | 包括的支援(相談、介護予防、権利擁護、連携) | 相談機能を前面に出した地域密着型の窓口 |
設置主体 | 市区町村(直営または委託) | 市区町村(委託先が地域包括支援センターと同一のことも) |
実態 | 3職種配置(社会福祉士、保健師、主任ケアマネジャー)義務 | 職種構成や対応範囲は自治体ごとに異なる |
出典:地域の身近な相談窓口「地域包括支援センター」| 目黒区
出典:八王子市高齢者あんしん相談センター(地域包括支援センター)| 厚生労働省
出典:地域包括支援センターの設置運営について | 厚生労働省

地域包括支援センターの利用方法と流れ
地域包括支援センターは、高齢者やその家族が気軽に相談できる公的窓口として、全国の市区町村に設置されています。
ここでは、どのような人が利用できるのか、相談から支援につながるまでの手続きの流れ、連携される主な支援サービスについて解説します。
利用対象者と対応可能な相談内容
地域包括支援センターの対象は、原則として市区町村内に住む65歳以上の高齢者とその家族・関係者です。
特に、介護が必要になる前の段階(いわゆる「介護予防」)での相談や、介護保険の利用を検討している人、生活面で不安を感じている人が主な利用対象です。
相談内容は、介護や認知症、健康、生活支援、経済的困窮、権利擁護、孤立など多岐にわたります。必要に応じて医療・介護・福祉の関係機関と連携し、適切な支援につなげる体制が整っています。
相談は無料で、電話・来所・訪問など柔軟に対応可能です。
来所からサービス利用までの流れ
地域包括支援センターの利用は、電話または窓口での相談予約から始まります。
面談では、保健師・社会福祉士・主任ケアマネジャーなどの専門職が、本人または家族から詳しく話を聞き、生活状況や健康状態を確認します。
その上で、必要な支援内容を整理し、介護保険の申請や地域サービスの紹介などにつなげていきます。
支援内容は介護保険サービスに限らず、地域の見守り支援や相談機関の紹介なども含まれます。支援開始後も、状態の変化に応じて継続的なフォローが行われるのが特徴です。
相談から支援までの流れ
- 電話や来所で相談予約を行う
- 専門職による面談・状況の把握
- 必要な支援内容の整理と支援方針の提案
- 必要に応じて介護保険申請やケアマネジャー(介護支援専門員)の紹介
- 支援サービス開始と継続的なフォロー
紹介・連携される支援サービスの種類
地域包括支援センターは、相談内容に応じて介護保険サービスだけでなく、地域資源や他機関とも連携して支援を行います。
たとえば、訪問介護や通所介護、福祉用具貸与といった介護保険サービスのほか、介護予防教室、認知症カフェ、配食サービス、見守り活動、地域ボランティアとの協力といった保険外の生活支援も紹介対象です。
また、高齢者虐待や金銭管理の問題に関しては、成年後見制度や消費生活センター、弁護士会などの機関との連携も行われます。こうした包括的支援によって、高齢者が安心して地域で暮らし続けることを支えています。

地域包括支援センターの相談事例
地域包括支援センターでは、高齢者本人や家族などからさまざまな相談が寄せられます。
ここでは、介護保険申請や生活支援、孤立やうつ、認知症、虐待、遠距離介護といった具体的な事例を通して、センターが実際にどのような支援を行っているのかを紹介します。
介護保険申請や日常生活支援に関する相談
介護保険の申請や生活支援に関する初歩的な相談は非常に多く寄せられます。特に、介護が必要になる前段階で「生活に不安を感じ始めた高齢者」からの相談が重要だと言えるでしょう。
地域包括支援センターでは、介護保険制度の仕組みや申請手続き、地域の生活支援資源に関する情報を提供しています。
よくある相談内容
- 介護保険の申請手続きについて知りたい
- 家事や買い物が一人で難しくなってきた
- 通院の付き添いが必要だが手段がない
- 配食サービスや見守り支援を利用したい
- 介護予防プログラムについて教えてほしい
こうしたケースでは、制度の案内だけでなく、地域の支援機関やボランティア団体との連携による継続支援も行われます。
孤立やうつ状態への気づきと対応
一人暮らしの高齢者や、配偶者を亡くしたばかりの方などは、孤立や抑うつ状態に陥りやすくなります。
地域包括支援センターでは、地域住民や民生委員からの情報提供、または定期的な訪問活動などを通じて、早期にその兆候を把握することが重要です。
必要に応じて医療機関への受診を促すほか、地域活動や介護予防プログラムへの参加を働きかけ、社会的つながりの維持・回復を支援しています。
特に、気づきにくい心の不調に対しては、保健師や社会福祉士が連携して継続的な見守りと心理的サポートを実施します。
認知症による見守り支援や成年後見制度の活用
「最近物忘れが多くなった」「生活の変化に気づいた」といった家族からの相談を受け、センターでは認知症の可能性を早期に察知します。
必要に応じて、医療機関との連携や認知症初期集中支援チームの介入を行うことも特徴です。
また、判断能力の低下により財産管理や契約が困難な場合には、成年後見制度の活用も提案します。
家庭裁判所への申立て手続きについても支援し、本人の権利擁護と生活安定を図ります。こうした対応により、尊厳を保ちながら地域で暮らし続けるための支援が行われています。
虐待が疑われる高齢者への対応事例
近隣住民や医療関係者などから「暴言が聞こえる」「身体にあざがある」といった通報があった場合、センターでは直ちに家庭訪問を行い、事実確認を実施します。
高齢者虐待には身体的・心理的虐待、経済的搾取、介護放棄など複数の形態があり、事案の内容に応じて市町村、警察、地域包括支援ネットワークなどと連携しながら対応します。
まずは高齢者の安全確保を最優先とし、介護者への支援や環境調整を含む再発防止の体制を整えます。
遠距離介護・帰省後の家族相談への対応
帰省時に高齢の親の様子に不安を感じた子ども世代からの相談も増えています。地域包括支援センターでは、電話相談や面談を通じて状況を整理し、今後の支援方針を一緒に検討します。
遠方に住む家族にも適宜状況報告を行い、必要に応じてケアマネジャー(介護支援専門員)の紹介や医療機関と連携を図ることも特徴です。
また、地域内での見守り体制を整えることで、離れて暮らす家族が安心して支援を継続できるようサポートしています。高齢者本人と家族の双方に寄り添った支援が大切です。
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地域包括支援センターのメリット!無料で専門的な支援が受けられる
地域包括支援センターは、市区町村が設置する公的機関であり、介護や福祉に関するさまざまな相談を無料で受けられる点が大きなメリットです。
特に、複数の分野にわたる専門職(保健師、社会福祉士、主任ケアマネジャー)が連携して支援を行うため、幅広い課題に対応できます。
無料で受けられる主な支援内容の例
- 介護保険制度に関する説明と申請支援
- 認知症や身体機能の変化に関する相談
- 地域サービス(配食、見守り、家事援助など)の紹介
- 成年後見制度や権利擁護に関する支援
- 孤立・虐待などの早期発見と対応
利用者の負担なく、必要に応じた支援につなげてもらえるため、困りごとの「最初の相談先」として活用価値が高い窓口です。

地域包括支援センターの対応が悪い・ひどいと言われる理由と実態
ネット上などの一部では、「地域包括支援センターは対応が遅い」「ひどい」「親身に感じられない」といった声が聞かれますが、そこにはいくつかの背景があります。
地域包括支援センターは、中立性を保ちながら制度に基づいた支援を行うことが求められるため、即時の介入や感情的な対応は控える傾向があります。
さらに、地域差や人員不足により、一人あたりの対応時間が限られているケースもあります。
一方で、制度に則った正確かつ丁寧な対応を行っている現場も多く、利用者側の制度への理解不足が誤解を生んでいることも少なくありません。
センターの役割や支援の仕組みを理解したうえで相談することが、円滑な支援につながります。

地域包括支援センターを利用する前に知っておきたい注意点
地域包括支援センターを円滑に利用するには、制度上の特徴や相談時のポイントをあらかじめ理解しておくことが大切です。
特に、相談が複雑になるほど継続的な対応が前提となるため、1回の相談で解決しない場合もあります。
相談時に注意したいポイント
- 来所前に電話で予約すると、スムーズに対応してもらえる
- 状況をできるだけ具体的に伝える(いつから、どんな困りごとか)
- 介護や支援の希望は現実的な内容にまとめておく
- 感情的にならず、冷静に話すことで正確な支援につながる
- 継続的なフォローが必要になる可能性もある
これらを押さえておくことで、支援を受ける側としてもストレスが少なく、制度を利用しやすくなるでしょう。

地域包括支援センターの業務内容と実態
地域包括支援センターでは、高齢者が住み慣れた地域で安心して生活を続けられるよう、さまざまな支援業務が行われています。
介護・医療・生活支援に関する相談対応をはじめ、関係機関との連携や訪問活動、記録・報告業務など、現場の職員は多岐にわたる業務に日々対応しています。
ここでは、実際の業務スケジュールや相談件数、現場職員の声をもとに、地域包括支援センターの実態を解説します。
業務スケジュールと対応件数の実態
地域包括支援センターでは、午前中に電話・来所相談への対応や訪問準備を行い、午後は高齢者宅への訪問支援、多職種連携会議への出席、ケアマネジメント記録の作成などを実施するのが一般的な流れです。
1日の相談件数はおおむね3〜10件程度とされ、繁忙期には1人の職員が複数の案件を並行して担当することもあります。(※件数は地域や時期により差があります)また、以下のような突発的な対応も少なくありません。
- 虐待通報に基づく緊急訪問
- 医療機関からの急な支援依頼
- 家族からの夜間相談への対応 など
相談内容は、介護保険制度に関するものに加え、医療・認知症・経済的困窮・権利擁護など多岐にわたり、迅速かつ丁寧な対応が求められる現場です。
職員が感じる課題とやりがい
地域包括支援センターで働く専門職は、日々の支援活動の中で多くのやりがいを感じる一方、さまざまな課題にも直面しています。以下に、主な課題と感じられているやりがいを対比形式で整理します。
主な課題 | 感じられるやりがい |
---|---|
人員不足による業務の偏りや長時間労働 | 支援を通じて高齢者の生活の質(QOL)が向上したとき |
制度上の制限により柔軟な対応が難しい場合がある | 家族から感謝の言葉や信頼を得られたとき |
高齢者本人と家族間の意見対立 | 多職種と連携し、包括的な支援体制を構築できたとき |
支援の拒否や信頼関係の構築に時間を要するケースがある | 専門性を活かして地域に密着した支援ができると実感できたとき |
関係機関との連携がスムーズに進まないことがある | 地域全体で高齢者を支える仕組みづくりに携われる点 |
これらの課題は、センター機能の強化や人材確保、支援体制の見直しが求められている背景ともいえます。一方で、地域に貢献するやりがいを感じられることは、働く職員にとって大きなモチベーションとなっています。
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地域包括支援センターに相談すべきか迷った場合
地域包括支援センターは、高齢者やその家族が抱える不安や課題に幅広く対応できる公的窓口です。ただし、「どのような内容なら相談していいのか分からない」と感じる人も少なくありません。
相談の目安となる内容や、センター以外の支援機関との使い分けについて解説します。
地域包括支援センターで対応できる相談内容の目安
地域包括支援センターでは、介護保険の申請に関することに限らず、健康・生活・心理面の不安など、多岐にわたる相談を受け付けています。
たとえば「最近物忘れが増えてきた」「家にこもりがちで孤独感がある」「通院や買い物が負担になってきた」といった日常の困りごとも相談対象です。
要介護認定を受けていない段階でも相談は可能であり、「まだ大丈夫かもしれない」と迷う状態でも、早期に話をすることで適切な支援へとつながる可能性があります。
地域包括支援センターへの相談は無料で匿名でも可能なため、気軽に利用できます。
他の相談機関との役割分担と使い分け
地域包括支援センターは、幅広い相談に対応できる「最初の窓口」として機能していますが、すべての課題を単独で解決できるわけではありません。
以下のように、相談内容に応じて他機関と役割分担をしながら連携対応を行っています。
相談内容 | 主な対応機関 |
---|---|
医療・健康に関する相談 | かかりつけ医、地域の医療機関 |
精神的な不調や認知症の対応 | 保健所、精神保健福祉センター、認知症初期集中支援チーム |
法律相談や財産管理 | 弁護士会、司法書士会、家庭裁判所(成年後見制度) |
虐待・緊急対応 | 地域包括支援センター(初期対応)、警察、福祉事務所 |
障害者福祉に関する支援 | 障害者相談支援事業所、障害福祉課 |
まずは地域包括支援センターに相談し、必要に応じて適切な専門機関へ紹介してもらうのが一般的です。「どこに相談すればよいか分からない」ときも、センターが相談の“入り口”としての役割を果たしてくれます。

認知症支援における地域包括支援センターの役割
地域包括支援センターは、認知症の初期対応から日常生活の支援、成年後見制度の案内までを担う中核的な相談機関です。
ここでは、認知症支援における対応の流れや、医療・介護機関との連携体制について具体的に解説します。
初期対応から見守り・法的支援までの支援体制
認知症の兆候が見られる段階から、早期に支援へつなげることが重要です。
地域包括支援センターでは、家族や地域住民からの相談を受け、必要に応じて訪問や面談を実施し、状況を把握します。そのうえで、医療機関での受診を促したり、認知症初期集中支援チームへ連携を行います。
生活面では、ケアマネジャー(介護支援専門員)と連携し、介護予防や訪問介護などのサービス利用を支援することが特徴です。
また、認知機能の低下により財産管理や意思決定が困難になった場合には、成年後見制度の利用について情報提供し、家庭裁判所への申立て支援も行います。
認知症支援の基本的な流れ
- 家族や地域から「認知症の疑い」に関する相談が入る
- 地域包括支援センターが訪問・面談し状況を把握
- 医療機関での診断や、初期集中支援チームに連携
- ケアプラン作成と介護予防・生活支援の開始
- 成年後見制度の利用提案と申立て支援(必要に応じて)
出典:令和7年度地域包括支援センター_パンフレット_見開き.pdf | 練馬区
認知症支援における医療・介護との連携体制
認知症の進行や生活環境に応じた支援には、多職種による綿密な連携が欠かせません。たとえば、医師の診断内容をもとに、介護保険サービスの開始時期や支援内容を地域包括支援センターが調整します。
必要に応じて、グループホームや小規模多機能型居宅介護などの施設紹介を行い、本人が無理なく生活できる環境を整備します。
また、支援方針の検討には「地域ケア会議」が活用され、医療・福祉・介護の各専門職が情報共有を行う体制が整えられています。これにより、本人の尊厳を尊重しつつ、家族の介護負担の軽減にもつながるでしょう。

まとめ
地域包括支援センターは、高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らせるよう支援する公的な相談窓口です。介護や認知症、権利擁護などの課題に対し、保健師・社会福祉士・主任ケアマネジャーが連携して対応します。
地域包括支援センターへの相談は無料で、家族や近隣住民も利用可能です。医療・法律など複雑な相談にも対応しており、高齢者支援の「入り口」として重要な役割を果たしています。困りごとがあれば、一人で抱え込まずに早めに相談することを推奨します。
また、地域福祉に関心があり、保健師・社会福祉士・ケアマネジャー(介護支援専門員)などの専門性を活かして地域の高齢者を支援したい方にとって、地域包括支援センターはやりがいのある職場だといえるでしょう。
よくある質問
Q.地域包括支援センターで相談できる内容の具体例は?
介護、認知症、健康、生活の不安など、幅広い内容に対応しています。地域包括支援センターは、高齢者の生活全般に関する相談窓口です。
介護保険の申請、認知症への対応、独居高齢者の見守り、虐待の疑い、生活費や住まいの不安など、医療・福祉・法律に関わる多様な相談に応じています。深刻な問題でなくても、早めの相談が推奨されます。
Q.地域包括支援センターへの相談は家族や近隣住民でも可能?
相談は本人に限らず、家族やご近所の方、地域の支援者など、どなたでも可能です。
「気になる」「困っていそう」と感じた時点で相談できます。必要に応じて、専門職が訪問や医療機関との連携など、迅速な対応を行います。
Q.地域包括支援センターはどこにある?センターの探し方
市区町村にほとんどの場合設置されており、自治体のホームページなどで検索できます。地域包括支援センターは、全国のすべての市区町村に1か所以上設置されています。
多くは社会福祉協議会、医療法人、社会福祉法人などが運営し、身近な場所にあります。お住まいの自治体のホームページで「地域包括支援センター」と検索するのが確実です。
Q.将来に備えて今できることは?
早めに相談し、自分や家族の状態を把握しておくことが重要です。将来的な介護や認知症に備えるには、現時点での心身の状態や生活課題を確認し、必要な支援制度を知っておくと良いでしょう。
地域包括支援センターでは、介護予防や将来設計に関するアドバイスも可能で、不安の軽減や事前準備に役立ちます。
Q.地域包括支援センターの役割は?
高齢者の生活全般を支える総合相談・支援拠点です。センターでは、介護、医療、福祉、生活支援、権利擁護などに関する相談を受け付け、必要に応じて他機関と連携して支援を行います。
高齢者が地域で自立して生活を続けられるよう、総合的な支援を提供することが主な役割です。
Q.地域包括支援センターのブランチの役割は?
センター機能を補完し、より身近な場所で支援を行います。ブランチ(分室)は、交通の便が悪い地域などで本所に代わる役割を果たします。
中学校区などに設けられ、地域住民が気軽に相談できるよう、相談受付や介護予防支援などを行っています。地域密着型の支援が可能です。
Q.地域包括支援センターは何をするところ?
高齢者の「困りごと」を受け止め、専門職が支援へつなぐ場所です。
介護保険の相談にとどまらず、健康、住居、生活費、金銭管理、虐待など、複雑な課題にも対応します。社会福祉士、主任ケアマネジャー、保健師などの専門職が在籍し、他機関と連携して必要な支援につなげます。
Q.地域包括支援センターでできることは何ですか?
介護予防や申請支援、サービス調整、権利擁護など多岐にわたります。具体的には、介護保険の申請手続き、ケアマネジャー(介護支援専門員)の紹介、認知症の初期対応、介護予防教室の開催、虐待防止、成年後見制度の紹介などがあります。一人ひとりの状況に合わせた支援が可能なことが特徴です。
Q.地域包括支援センターとケアマネジャー(介護支援専門員)の違いは何ですか?
地域包括支援センターは、高齢者を地域全体で支えるための総合窓口で、相談対応や介護予防、権利擁護などの支援を担います。
一方、ケアマネジャー(介護支援専門員)は、個別の要介護者に対してケアプランを作成し、サービスの調整を行う専門職です。包括支援センターは地域単位、ケアマネジャー(介護支援専門員)は個人単位で支援を行う点が大きな違いです。
Q.地域包括支援センターの職員は公務員ですか?
地域包括支援センターの職員は必ずしも公務員ではありません。センターの運営は自治体が直接行う場合と、社会福祉法人などに委託されている場合があります。
職員は保健師、社会福祉士、主任介護支援専門員などの専門職で構成され、公務員のケースもあれば、民間法人に雇用されている場合もあります。

海野 和(看護師)
この記事の監修者情報です
2006年に日本消化器内科内視鏡技師認定証を取得し、消化器系疾患の専門的な知識と技術を習得。2018年にはNCPR(新生児蘇生法専門コース)の認定を取得し、緊急時対応のスペシャリストとしての資格を保有。さらにBLS(HeartCode®BLSコース)を受講し、基本的生命維持技術の最新知識を習得。豊富な臨床経験と高度な専門資格を活かし、医療・介護分野における正確で信頼性の高い情報監修を行っています。
【保有資格】
・日本消化器内科内視鏡技師認定証(2006年取得)
・NCPR(新生児蘇生法専門コース終了認定証)(2018年取得)
・BLS(HeartCode®BLSコース)受講済み
