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精神保健福祉士とは?年収や仕事内容!向いている人や資格取得の方法も紹介

さわやかな笑顔を向ける介護職員たち

精神保健福祉士とは何かを簡単に解説し、年収や仕事内容、受験資格や向いている人の特徴も紹介します。社会福祉士との違いや「やめとけ」と言われる理由にも触れ、不安を解消できる内容になっています。資格取得を目指す方におすすめです。

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介護支援専門員(ケアマネジャー)とは
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精神保健福祉士とは

ここでは、精神保健福祉士の定義・役割・他の関連職種との違いについて、公的資料に基づいて分かりやすく解説します。

精神保健福祉士の定義と役割

厚生労働省の「精神保健福祉士について」によると、精神保健福祉士は、精神保健福祉士法(平成9年法律第131号)に基づく国家資格であり、精神障がい者に対する相談援助を行う専門職です。

主に精神科病院や福祉施設、行政機関などで働き、精神に障害のある方やその家族からの相談に応じながら、社会復帰や地域生活への移行を支援します。支援内容は多岐にわたり、就労支援や生活支援、制度利用の案内、入退院の調整、地域関係機関との連携などが含まれます。

このように精神保健福祉士は、地域で自立した生活を営むために必要な環境づくりを専門的に支える職種として、現代の精神保健福祉分野において不可欠な存在となっています。

出典:精神保健福祉士について | 厚生労働省

出典:2.業務内容 | 厚生労働省

精神保健福祉士の歴史と国家資格の位置づけ

精神保健福祉士は、1997年12月に成立した精神保健福祉士法により制度化され、1998年4月に施行されました。

当時、長期入院が一般的だった精神科医療から、地域での生活を重視する福祉政策へと大きく舵が切られ、精神障がい者の社会復帰を専門的に支援する職種が求められたことが背景にあります。

1999年には第1回国家試験が実施され、その後も制度やカリキュラムは時代のニーズに応じて見直されてきました。近年では、2022年の法改正により相談援助の範囲が拡大され、2024年4月1日から施行されました。これにより、精神保健福祉士の役割は医療機関内にとどまらず、地域全体へと広がっています。

国家資格としての専門性と公的信頼性は年々高まりを見せており、今後もその社会的ニーズは増加していくと考えられます。

出典:第14回精神保健福祉士国家試験の施行について | 厚生労働省

出典:精神障害者の「地域移行」について | 厚生労働省

出典:9 第1回精神保健福祉士国家試験の実施結果について | 厚生労働省

出典:【報告】「精神保健福祉士」の定義が改正されました-2024(令和6)年4月1日から施行- | 日本精神保健福祉士協会

社会福祉士・心理職との違い

精神保健福祉士と混同されやすい専門職に、社会福祉士と心理職(主に公認心理師など)があります。

それぞれが担う支援の対象や役割には明確な違いがあり、連携の場面ではお互いの専門性を理解して補完し合うことが大切です。以下の表に、3職種の主な違いをまとめました。

項目

精神保健福祉士

社会福祉士

心理職(公認心理師など)

主な対象

精神障がい者・精神保健課題を抱える人

高齢者・障がい者・生活困窮者・児童など

心理的支援が必要な人全般

主な業務

相談援助、社会復帰支援、入退院調整

生活相談、制度利用支援、福祉サービス調整

心理検査、カウンセリング、心理療法

活躍の場

精神科病院、福祉施設、行政機関

福祉施設、医療機関、地方自治体など

学校、医療機関、心理相談室など


精神保健福祉士は、制度調整や地域移行支援に特化した専門性を持ち、精神障害を抱える人々の社会参加を後押しします。

社会福祉士は対象が幅広く、福祉制度全般の支援を担当する職種です。一方、心理職は心理的ケアやメンタルヘルスの分野で活動し、精神状態の評価や改善を目的とした支援を行います。

これらの職種は現場で密に連携することが求められ、それぞれの専門領域を尊重したチーム支援によって、より効果的で継続的な支援が実現されます。

出典:精神保健福祉士について|厚生労働省

出典:社会福祉士・介護福祉士等|厚生労働省

出典:公認心理師|厚生労働省

笑顔で会話しながら散歩する高齢者と職員
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精神保健福祉士の仕事内容と働く場所

ここでは精神保健福祉士がどのような職場で、どのような業務を行っているのかについて解説します。勤務先によって求められる役割や対応ケースは異なるため、具体的な働き方を知ることが大切です。

医療・障害福祉・行政での仕事内容

精神保健福祉士が最も多く従事しているのが、医療、障害福祉、行政の分野です。

勤務先によって支援内容は異なりますが、いずれも精神に障害のある方の生活を支えるための重要な業務を担っています。以下は、分野別の主な仕事内容の一覧です。

分野

主な業務内容

医療機関

入退院支援、治療と生活の調整、家族面談、退院後の福祉サービス導入、地域との連携など

障害福祉施設

就労支援、生活訓練のサポート、支援計画作成、日常支援のモニタリング

行政機関

精神保健相談、精神障がい者保健福祉手帳・各種制度の申請支援、ケースワーク、地域支援会議への参加

医療機関では、医師や看護師、作業療法士などと連携し、治療と社会生活の橋渡しをする役割を果たします。

障害福祉施設では、利用者の自立や社会参加を目指して日常的な支援に携わります。

行政機関では地域の支援体制づくりや制度活用の調整を行い、コーディネーター的な役割が求められます。

出典:精神保健福祉士について|日本精神保健福祉士協会

学校・企業・司法・地域での活躍例

精神保健福祉士は、医療・福祉分野だけでなく、教育、労働、司法、地域支援といったさまざまな現場で活躍の場を広げています。

対象者の多様化や制度改革により、求められる対応力も年々高まっています。主な分野ごとの活動内容は以下のとおりです。

分野

主な活動内容

学校

スクールソーシャルワーカーとして、不登校・家庭問題・教員支援などに対応し、教育現場と福祉をつなぐ

企業

メンタルヘルス対策として、従業員の相談支援、休職・復職支援、研修の企画・運営などを担う

司法

保護観察所や矯正施設において、更生支援や社会復帰支援を行い、福祉的な視点から支援を提供

地域

地域包括支援センターなどで、高齢者・障がい者の相談支援、制度案内、福祉サービスの紹介などを実施


  • 【学校】スクールソーシャルワーカーとして、不登校・家庭問題・教員支援などに対応し、教育現場と福祉をつなぎます。
  • 【企業】メンタルヘルス対策の一環として、従業員の相談支援、休職・復職支援、研修の企画運営などに関与します。
  • 【司法】保護観察所や矯正施設に勤務し、福祉的支援を通じた更生支援や社会復帰支援を担います。
  • 【地域】地域包括支援センターや福祉拠点で、高齢者や障がい者などの相談支援、福祉サービスの紹介、制度案内を行います。


これらの領域では、精神保健福祉士が「専門職としての調整力」と「柔軟な支援対応力」を活かし、多職種や地域との連携を通じて利用者の社会参加や生活安定に貢献しています。

出典:精神保健福祉士について|日本精神保健福祉士協会

出典:教育委員会 SSWer 本採用の流れとメリット(取り組み例紹介)|日本精神保健福祉士協会

精神保健福祉士の一日のスケジュール

パソコンを操作する女性の手元

精神保健福祉士の一日は、勤務先の施設によって大きく異なりますが、「相談対応」「関係機関との調整」「記録整理」が共通する主要業務です。

たとえば精神科病院に勤務する場合、朝は患者本人や家族との面談から始まります。入院中の生活環境、今後の支援方針、退院後の住まいや福祉サービスの利用について、具体的な相談を受けるのが一般的です。

その後、医師・看護師・作業療法士など多職種によるカンファレンスに参加し、チームで支援方針を共有・確認します。

午後は、地域の福祉施設や相談機関と連携して退院後の生活支援の調整を行ったり、行政機関と連絡を取り合い、各種制度の申請・利用手続きを進めたりします。

終業前には、その日に実施した支援内容を記録し、各ケースの進捗を整理します。これらの記録は、今後の支援計画において重要な資料となります。

精神保健福祉士の業務は、多くの関係者との連携によって成り立っており、柔軟な対応力と正確な情報整理が求められる専門性の高い仕事です。

出典:精神保健福祉士に求められる役割について|厚生労働省


精神保健福祉士の一日のスケジュール(病院勤務の例)

時間帯

主な業務内容

8:30〜9:00

出勤・メールチェック・スケジュール確認

9:00〜10:00

患者本人または家族との面談(生活状況や支援方針、退院後の相談など)

10:00〜11:00

カンファレンス(医師・看護師・作業療法士など多職種との支援方針共有)

11:00〜12:00

必要に応じて追加面談・関係職種との情報共有

12:00〜13:00

昼休憩

13:00〜15:00

地域の福祉施設や相談機関との連絡・調整(退院後の受け入れ支援など)

15:00〜16:30

行政機関への連絡・制度申請などの事務対応

16:30〜17:30

記録整理(面談・支援内容の記録、ケースの進捗確認)

17:30〜18:00

翌日の準備・退勤

精神保健福祉士のやりがいと大変さ
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精神保健福祉士のやりがいと大変さ

ここでは、精神保健福祉士として働く中で得られるやりがいや、業務の中で直面する難しさについて解説します。支援を通じた達成感や社会的意義に加え、精神疾患など「こころの問題」に向き合う専門職ならではの困難についても紹介します。

支援の達成感と社会的意義

精神保健福祉士は、精神疾患や障害を持つ方が自立した地域生活を送れるよう支援する国家資格職です。

支援によって対象者が少しずつ社会とのつながりを回復し、自分らしい生活を取り戻す過程に寄り添えることは、この職業ならではの大きなやりがいといえます。

また、精神疾患への偏見をなくす啓発活動や、制度・支援体制の改善に関わる機会もあり、社会的意義も非常に高い職種です。

【精神保健福祉士の仕事で感じられる主なやりがい】

  • 社会復帰を果たした利用者の変化や成長を実感できる
  • 入院から地域生活への移行に関わり、安心した生活を支援できる
  • 就労や通所、日常生活支援などの成果が形になる
  • 利用者や家族からの感謝の言葉が励みになる
  • 社会的偏見や差別をなくす啓発活動に貢献できる

こうした積み重ねが、精神保健福祉士としての専門性や使命感、社会的貢献への実感につながります。

心の問題に向き合う難しさ

精神保健福祉士は、精神障害、依存症、発達障害など、さまざまな「こころの問題」を抱える方への支援を行います。こうした支援においては、一筋縄ではいきません。

本人の病状が安定しないと意思疎通が困難になることがあり、支援に対して拒否的な反応がみられる場合もあります。また、長期的な支援が前提となるケースも多く、目に見える成果がすぐには現れないことも珍しくありません。

さらに、家族関係や生活困窮、虐待歴など複雑な背景が重なるケースでは、調整力や判断力、他機関との連携力も求められます。


精神保健福祉士は、こうした困難な状況に対しても、対象者の意思と尊厳を尊重しながら、粘り強く支援を続ける姿勢が求められます。

計算機と現金で費用を計算しているイメージ
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精神保健福祉士の年収と待遇

ここでは、精神保健福祉士の年収や待遇について解説します。平均的な傾向や勤務先による違い、資格手当や福利厚生の実態を知ることで、働き方を考える上での参考になります。

平均年収と年代・性別別の年収比較

令和2年度の調査によれば、精神保健福祉士全体の平均年収は約404万円です。年齢や性別によって収入に差があり、男性のほうが女性より高い傾向が見られます。

年代

男性平均年収

女性平均年収

20代

約325万円

約311万円

30代

約420万円

約351万円

40代

約492万円

約399万円

50代

約541万円

約451万円

60代以上

約407万円

約321万円


年齢を重ねるごとに昇給が見込める職場もあり、安定した雇用環境が整備されているケースも少なくありません。

一方で、性別や雇用形態によって給与や待遇に差が生じることもあります。これは、担当業務の内容や勤務時間、人事制度の違いなどが影響している可能性があります。

こうした点は一概に比較できないため、就職や転職を検討する際には、各職場の勤務条件や支援制度を十分に確認することが重要です。

職場別の年収と待遇の違い

精神保健福祉士は、医療機関や福祉施設、行政機関、教育機関など、さまざまな場所で活動しています。勤務先によって給与水準や福利厚生の内容に違いがあり、働き方の柔軟性や支援体制もそれぞれ異なります。

たとえば、公的機関では安定した雇用や制度が整っている傾向があり、福祉施設などでは現場との距離が近く、多様な支援経験が積める環境があるといえます。

どの職場にもそれぞれの特色があり、自身のライフスタイルや希望する働き方に合った選択が大切です。雇用形態や待遇面については、事前に確認することが安心につながります。

資格手当・昇進機会・福利厚生の実態

精神保健福祉士として働くにあたっては、資格手当が支給される職場も多く見られます。また、経験を積むことで昇任のチャンスがあり、管理職や専門職としてのキャリアを築いていくことも可能です。

福利厚生については、職場によって制度の充実度が異なります。住居手当や育児支援、休暇制度などが整っている職場もあれば、小規模事業所では最小限の制度にとどまることもあります。

働きやすさは待遇だけでなく、職場環境や人間関係、業務負担のバランスにも関係するため、総合的な視点で検討することが大切です。

介護支援専門員(ケアマネジャー)になるには
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精神保健福祉士になるには

ここでは、精神保健福祉士になるための流れを解説します。国家試験の受験資格を得るためのルートや試験の内容、合格率の傾向、社会人が目指す際の注意点について、制度に基づいてわかりやすくまとめています。

受験資格と養成ルートの種類

精神保健福祉士国家試験を受験するには、厚生労働省が指定する養成課程を修了する必要があります。

取得ルートは学歴や資格の有無、実務経験などに応じて複数あり、自身に合った進路選択が重要だと言えるでしょう。

区分

受験資格を得るための主なルート

福祉系大学卒業(指定科目修了)

卒業と同時に受験資格を取得可能

一般大学卒業(福祉系以外)

指定の養成施設(1年課程)を修了し受験資格を取得

社会福祉士の資格を有する者

精神保健福祉士短期養成施設(6か月〜1年)を修了

実務経験者(福祉関連職等で一定年数)

指定養成施設を修了し、実務経験に基づいて受験資格を取得

養成課程は通学制のほか、夜間・通信制を設けている施設もあります。学歴や就労状況に応じて柔軟に選べるよう制度が整備されています。

出典:[精神保健福祉士国家試験]受験資格(資格取得ルート図):福祉系大学等:公益財団法人社会福祉振興・試験センター

国家試験の概要と合格率・難易度

精神保健福祉士国家試験は、原則として毎年1月末~2月初旬の2日間に実施されます。

試験は筆記のみで、精神医学や心理学、社会福祉制度、相談援助技術など複数科目から出題されます。実技試験はありませんが、幅広い専門知識と倫理的な判断力が問われる構成です。

合格基準は、全体の得点率および科目群ごとの基準を満たす必要があります。合格率は年度によって異なりますが、近年は約70%前後で推移しています。

受験者には、福祉系学部の学生だけでなく、社会人経験者も多く含まれます。安定した学習時間の確保と、試験範囲に沿った準備が合格に繋がるでしょう。

出典:[精神保健福祉士国家試験]試験概要:福祉系大学等:公益財団法人社会福祉振興・試験センター

出典:[精神保健福祉士国家試験]合格基準:福祉系大学等:公益財団法人社会福祉振興・試験センター

出典:精神保健福祉士国家試験科目別出題基準|公益財団法人社会福祉振興・試験センター

出典:第27回精神保健福祉士国家試験合格結果を公表します|厚生労働省

社会人が目指す場合のルートと注意点

社会人から精神保健福祉士を目指す場合も、指定された養成課程を修了すれば受験資格を得ることができます。

多くの養成施設では、働きながら学べる通信制や夜間課程を提供しています。ただし、在職中に学ぶには計画的な準備が必要です。

【社会人が目指す際の主な注意点】

  • 養成課程によっては実習やスクーリング(通学)が必要になる場合がある
  • 学習時間や試験対策の確保が課題になりやすい
  • 学費や学習期間は施設によって異なるため、事前に要確認
  • 短期課程の対象には職歴や保有資格など一定の条件がある
  • 家族や職場の理解・協力が学習継続の支えとなる

自身の生活環境やキャリアと照らし合わせながら、無理のないスケジュールで学習を進めることが合格につながるでしょう。

学びの場に参加する白衣姿の女性スタッフたち
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精神保健福祉士に向いている人

ここでは、精神保健福祉士に求められる資質や適性について解説します。人と深く関わる支援職であるため、性格的な向き不向きや、職場環境との相性が大切です。

自身の特性を理解し、適した職場や支援スタイルを見きわめるための参考情報を提供します。

求められる資質・適性の特徴

精神保健福祉士は、精神疾患や心理的な課題を抱える方の支援を行う専門職であり、高い対人援助能力と倫理観が求められます。


特に、相手の立場に立って考える「共感力」や、感情をコントロールし冷静に対応する「安定性」は重要な資質です。さらに、時間をかけて信頼関係を築く粘り強さや、福祉制度や地域資源に対する理解・応用力も必要とされます。

これらの能力は養成課程や実務経験を通じて伸ばすことができ、継続的な学習姿勢が重視されます。

求められる主な資質

  • 傾聴力 相手の話を丁寧に受け止める力
  • 共感力 相手の立場を理解し、尊重する姿勢
  • 安定性 感情に左右されず冷静に対応できる力
  • 忍耐力 長期的な支援を継続できる粘り強さ
  • 制度理解 社会資源・制度を活用する知識と実行力

※上記は一般的な適性の例であり、個々の能力や経験によって発揮される形は異なります。

職場別(医療・福祉・就労支援など)の向き不向き

精神保健福祉士の職場は多岐にわたり、それぞれで求められる能力や適性が異なります。医療機関では、医師や看護師との連携の中で退院支援や地域移行支援を行うため、調整力や迅速な判断力が求められます。

福祉施設では、日常生活の支援や家族との連携を通じた長期的な支援が中心で、継続的に寄り添う姿勢が大切です。

就労支援事業所では、働く意欲を引き出す対話力や、キャリア形成を支える提案力が求められます。

行政機関では、法制度の理解と正確な事務処理能力も必要です。


職場別に求められる適性

職場区分

求められる資質

主な業務内容

医療機関

判断力・調整力

退院支援、地域移行支援

福祉施設

寄り添う力・継続的支援力

生活支援、家族との連携

就労支援機関

対話力・動機づけスキル

就労支援、職場定着支援

行政機関

制度理解・書類処理能力

ケースワーク、制度説明、相談対応

出典:日本精神保健福祉士協会|厚生労働省

出典:2.業務内容 | 厚生労働省

出典:精神保健福祉士について|日本精神保健福祉士協会

頼れる印象の爽やかな女性スタッフ
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精神保健福祉士の将来性とキャリアパス

ここでは、精神保健福祉士の将来性や活躍の場の広がり、テクノロジー時代における役割について解説します。時代の変化とともに求められるスキルや専門性を把握し、今後のキャリア形成に役立てましょう。

精神疾患の増加とニーズの高まり

精神的な健康への関心が高まる中で、精神保健福祉士の役割にも注目が集まっています。

ストレスや不安を抱える人は年々増加傾向にあり、医療や福祉の現場に加えて、学校や職場、地域など、さまざまな場面で支援が求められるようになっています。

こうした背景から、精神的な課題を抱える方々に対して、継続的かつ柔軟に対応できる専門職としての重要性が増しているといえるでしょう。

今後は、多様な対象者や支援環境に適応できる力が、精神保健福祉士にとってますます重要になると考えられます。

活躍の場の広がりと就職先の選択肢

精神保健福祉士の活躍の場は、従来の医療機関や福祉施設にとどまらず、教育、司法、企業、地域支援など多岐に渡ります。

たとえば学校では不登校や発達障害のある児童生徒への支援、企業ではメンタル不調による職場復帰支援に関与する場面もあります。さらに、地域包括支援センターや自治体の相談窓口など、行政分野でも配置が進んでいます。

こうした職域の拡大により、自身の興味や適性に応じた働き方を選びやすくなっており、キャリア形成の幅も広がっていることが特徴です。

就職先によって求められるスキルや支援スタイルが異なるため、自分に合った環境を見きわめることが重要だと言えるでしょう。

AI時代でも必要とされる理由

AI技術が医療・福祉分野に導入されつつありますが、精神保健福祉士のような対人援助職は今後も人による支援が必要とされます。

AIは事務処理やデータ分析に有効である一方、相談者の気持ちや背景に寄り添い、信頼関係を築くといった「関係構築力」は人間にしかできない領域です。特に精神的に困難な状況にある方の支援では、個別対応や状況判断、共感的コミュニケーションが不可欠です。

こうした特性から、AI時代においても精神保健福祉士の役割は揺るがず、むしろより専門性が求められることが予測されます。

フレッシュな印象の若手スタッフたち
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精神保健福祉士の略称と呼び方について

精神保健福祉士には、法律で定められた正式名称のほかに、職場や日常会話で使われる略称や通称があります。ここでは、正式名称と略称の違い、および現場で使われる呼称の例について解説します。

正式名称と略称の違い

精神保健福祉士は、精神保健福祉士法に基づく国家資格であり、正式名称は「精神保健福祉士」です。これは、法律上および公的書類上で使用される名称です。

英語表記は、Mental Health Social Worker(MHSW)であり、2021年4月から公益社団法人日本精神保健福祉士協会により公式採用されています。

以前は「PSW(Psychiatric Social Worker)」という略称が一般的でしたが、現在は「精神保健福祉士(MHSW、旧PSW)」のように併記されることが増えています。

略称の使用は日常的なやりとりを簡潔にする目的で使われますが、公的な文書や履歴書などでは正式名称を使用するのが望ましいです。また、「精神福祉士」といった誤記も見られるため、正確な表記を心がけましょう。

項目

内容

正式名称

精神保健福祉士

英語表記

Mental Health Social Worker(MHSW)

一般的な略称

MHSW(旧:PSW)

誤記の例

精神福祉士(誤り)

使用上の注意点

履歴書や申請書類では正式名称を使用することが望ましい

出典:精神保健福祉士について|日本精神保健福祉士協会

現場で使われる呼び名・俗称の実例

精神保健福祉士の呼び名は、勤務先や関係者によって異なります。医療機関では「PSW」と呼ばれることが多く、職種の区別が重要な場面で使われます。地域や福祉の現場では「相談員さん」「福祉の方」など、より親しみのある呼び方をされることもあります。

こうした呼称の違いは、対象者との関係性や環境によって自然に使い分けられており、精神保健福祉士としての柔軟な対応力も問われる場面です。自らの役割をわかりやすく伝える姿勢も、信頼関係の構築につながります。

現場で使われる呼び名の例

  • PSW(ピーエスダブリュー)
  • メンタルソーシャルワーカー
  • 相談員さん(利用者・家族からの呼称)
  • 福祉の人(地域住民からの呼称)
  • ケースワーカー(混同されることもあるため注意が必要)

呼称にとらわれすぎず、相手の理解や安心感を優先した柔軟な姿勢が大切です。

フレッシュな印象の若手スタッフたち
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精神保健福祉士と社会福祉士の違い

ここでは、精神保健福祉士と社会福祉士の違いについて解説します。どちらも福祉系の国家資格ですが、対象とする支援分野や職務内容には明確な違いがあります。自身の関心や将来的なキャリアに応じた資格選択の参考にしてください。

資格取得ルート・対象領域の違い

ここでは、精神保健福祉士と社会福祉士の資格取得ルートや支援対象の違いについて解説します。いずれも厚生労働大臣指定の養成課程を経て国家試験に合格する必要がありますが、学ぶ内容や活躍分野には違いがあります。

精神保健福祉士は、精神障害のある方への支援を専門とし、医療・地域福祉・就労支援などの分野で活動します。社会福祉士は、より幅広く高齢者、障がい者、生活困窮者などを対象に、日常生活に関する相談援助を行います。

資格取得における基礎科目は共通する点もありますが、実習の内容や重点領域が異なる点に注意が必要です。

比較項目

精神保健福祉士

社会福祉士

主な支援対象

精神障害のある人

高齢者、障がい者、生活困窮者など

活動領域

医療、地域支援、就労支援など

福祉行政、地域包括支援など

資格取得ルート

指定養成課程修了+国家試験

指定養成課程修了+国家試験

法的根拠

精神保健福祉士法

社会福祉士および介護福祉士法

出典:精神保健福祉士について|厚生労働省

出典:03 資料1 社会福祉士について|厚生労働省

出典:精神保健福祉士について|日本精神保健福祉士協会

出典:ソーシャルワーク専門職である社会福祉士に求められる役割等 について|厚生労働省

出典:地域包括支援センターについて|厚生労働省

出典:[精神保健福祉士国家試験]受験資格(資格取得ルート図):福祉系大学等:公益財団法人社会福祉振興・試験センター

出典:[社会福祉士国家試験]受験資格(資格取得ルート図)

就職先・業務内容の違いと選び方のポイント

ここでは、精神保健福祉士と社会福祉士の就職先や業務内容の違い、キャリア選択のポイントを解説します。両資格は支援の手法や考え方に共通点がありますが、主に関わる対象者や機関には違いがあります。

精神保健福祉士は、精神科病院や就労支援事業所などで、社会復帰や生活支援に特化した役割を担います。

一方、社会福祉士は、福祉事務所や地域包括支援センターなどで、生活全般に関する相談や制度活用の支援を行います。希望する支援分野や働き方に応じて、自身に適した資格を検討するとよいでしょう。

精神保健福祉士の主な活躍分野

  • 【精神科病院】退院支援、地域移行支援
  • 【就労移行支援事業所】就労準備、職場定着支援
  • 【地域生活支援センター】 相談対応、日常生活の支援

出典:精神保健福祉士について|日本精神保健福祉士協会

社会福祉士の主な活躍分野

  • 【福祉事務所】 生活保護の相談・支援
  • 【地域包括支援センター】 高齢者支援、介護予防
  • 【障害福祉施設】 計画相談支援、日常生活の支援

出典:障害福祉のお仕事図鑑|厚生労働省

両資格の専門性と就職先を把握し、自分が支援したい対象者や分野に合わせたキャリア形成を意識することが大切です。

パソコンの横でコーヒーブレイクする様子
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精神保健福祉士を目指すのはやめたほうがいい?

ここでは「精神保健福祉士はやめとけ」と言われる理由、向いていない人の特徴、そしてそれでも目指すべき人の特性について解説します。

後悔のないキャリア選択のために、自分の適性や職業の実情をしっかり把握することが大切です。

「やめとけ」と言われる理由

「精神保健福祉士はやめとけ」と言われる理由には、業務内容の複雑さや精神的負担の大きさが挙げられます。

支援対象となるのは、精神疾患をはじめ依存症、発達障害、家庭問題、経済的困窮など、複雑な課題を抱える人々です。そのため、表面的な対応ではなく、長期的な視点で信頼関係を築き、個別の課題に合わせて関係機関と連携しながら支援計画を立てていく必要があります。

こうした業務は、専門知識に加え、高いストレス耐性や状況判断力が求められ、感情労働の要素も強く含まれます。ときには本人や家族との価値観の衝突、支援がうまくいかない無力感を抱えることもあるため、精神的にタフでないと継続が難しいという意見が出やすいのです。

ただし、これらはあくまで業務の厳しさに起因するものであり、支援にやりがいを感じている専門職も多く存在します。一面的なイメージにとらわれず、実情を知ることが大切です。

向いていない人の特徴と見きわめポイント

精神保健福祉士は、対人支援に加えて、法制度の理解や書類業務、関係機関との調整をこなす専門職です。そのため、以下のような傾向が強い方は、業務にストレスを感じやすい傾向があります。

向いていない可能性のある傾向

  • 感情の切り替えが苦手で、人の悩みを引きずりやすい
  • 話を聴くよりも自分の意見を優先しがち
  • 精神保健福祉制度や行政手続きに関心が持てない
  • デスクワークや記録作成が苦手
  • 長期的な支援より短期的成果を重視する


見きわめの際には、自分の性格やストレス耐性、支援への価値観を振り返ることが大切です。また、養成校での実習や施設見学を通じて、実際の業務を体感し「継続できそうか」を判断するのも有効です。

それでも目指すべき人の特徴

精神保健福祉士は、精神疾患や依存症、社会的孤立など多様な困難を抱える人々に対して、福祉・医療・法律の視点から支援を行う専門職です。難しさの中にも、やりがいや成長の機会があります。

以下のような特徴を持つ人は、この職に適性があるといえるでしょう。

精神保健福祉士に向いている人の特徴

  • 人の話に耳を傾け、相手の立場を尊重できる
  • 複雑な課題にも粘り強く対応できる
  • 社会的弱者や制度上の困難に関心がある
  • 精神保健医療福祉制度について学ぶ意欲がある
  • ストレスを自己管理し、冷静に対応できる

上記の資質があれば、現場で求められる「専門性」「共感力」「調整力」を発揮し、対象者にとって信頼できる支援者となることが可能です。

いたわりや寄り添いの気持ちを表現したハートのイラスト
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まとめ

精神保健福祉士は、精神疾患や依存症などの課題を抱える人々を支援する国家資格職です。医療・福祉・教育・司法など多様な分野で活躍し、社会復帰や生活の安定を支えています。

資格取得には養成課程の修了と国家試験の合格が必要で、実践的な相談援助力も求められます。支援の難しさや精神的負担もありますが、大きなやりがいがある仕事です。

自分に合った働き方を見つけ、長く活躍できる道を考えてみましょう。

精神保健福祉士を目指す方や関心を持つ方からは、資格の取得方法や仕事内容、活躍の場などについて多くの質問が寄せられます。 ここでは、精神保健福祉士に関して特によくある疑問を厳選し、わかりやすく解説します。進路選びや学習の参考にしてください。

よくある質問

Q.精神保健福祉士は簡単になれる?
A.

簡単ではありません。国家資格であり、指定の養成課程修了と国家試験の合格が必要です。福祉・医療の専門知識が問われます。

Q.精神保健福祉士と社会福祉士、どちらを先に取得すべき?
A.

社会福祉士の取得が先でも構いません。分野が異なるため、目指す業務や職場に応じて選ぶのが適切です。

Q.精神保健福祉士はやめとけと言われる理由とは?
A.

業務が多岐にわたり、精神的な負担も大きいため「精神保健福祉士を目指すのはやめとけ」という声も聞かれます。しかし、やりがいを感じる人も多く、一概には言えません。

Q.精神保健福祉士の略称や呼び名は?
A.

MHSW(Mental Health Social Worker)」と呼ばれることが一般的です。「精神保健福祉士」も正式名称として使われます。

Q.資格取得にかかる費用と期間は?
A.

精神保健福祉士の資格取得には、大学や専門学校などでの1〜4年間の養成課程を修了する必要があります。課程の年数は、学歴や取得済みの資格により異なります。

国家試験の受験料は24,140円(令和7年度)です。なお、社会福祉士との同時受験の場合は19,520円となります。また、すでに社会福祉士の資格を有する場合など、共通科目の免除対象者は、受験料が18,820円に軽減されます。


出典:[精神保健福祉士国家試験]試験概要|公益財団法人 社会福祉振興・試験センター

出典:第27回精神保健福祉士国家試験を実施します|厚生労働省

豊富な臨床経験と高度な専門資格を活かし、医療・介護分野における正確で信頼性の高い情報監修を行っています。
監修者

海野 和看護師

この記事の監修者情報です

2006年に日本消化器内科内視鏡技師認定証を取得し、消化器系疾患の専門的な知識と技術を習得。2018年にはNCPR(新生児蘇生法専門コース)の認定を取得し、緊急時対応のスペシャリストとしての資格を保有。さらにBLS(HeartCode®BLSコース)を受講し、基本的生命維持技術の最新知識を習得。豊富な臨床経験と高度な専門資格を活かし、医療・介護分野における正確で信頼性の高い情報監修を行っています。

【保有資格】

日本消化器内科内視鏡技師認定証(2006年取得)
NCPR(新生児蘇生法専門コース終了認定証)(2018年取得)
BLS(HeartCode®BLSコース)受講済み

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