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福祉・医療・教育などの専門職の方
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介護福祉におけるアドボカシーとは?
介護福祉におけるアドボカシーとは、介護を受ける人が本来持っている権利を守り、その行使を支援する取り組みを指します。
高齢者や障がい者は、体調や環境の制約から自分の希望を十分に伝えられないことが少なくありません。その際、第三者が声を代弁したり情報を提供することで、本人の意思決定を支えるのがアドボカシーの役割です。
厚生労働省は入院者訪問支援の意義と目的において「本来その人が持っている権利を、状況によって行使できないときに、その権利を擁護し、行使を支援すること」と定義しています。
介護現場では、権利擁護の観点からアドボカシーの実践がますます重要となっています。
アドボカシーの語源と意味
アドボカシー(advocacy)の語源はラテン語の「advocare」で、「ad(〜へ)」と「vocare(呼ぶ)」に由来し、「声を上げて訴える」「助けを求めて呼ぶ」という意味が込められています。
この語から派生した「advocatus」は古代ローマで弁護士を指す言葉として使われました。
現代では「擁護」「支持」「弁護」「唱道」など幅広い意味を持ち、弱い立場の人の声を代弁したり、制度や政策の改善を求める活動を指します。
医療や福祉では専門職が患者や高齢者、障がい者の意思を支え、子どもの権利保障では「子どもアドボカシー」としても活用されています。
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介護福祉におけるアドボカシーとアドボケイトとの違い
介護福祉の現場では「アドボカシー」とともに「アドボケート」「アドボケイト」という言葉も使われます。両者は混同されがちですが、意味には違いがあります。
アドボカシー(advocacy)は「権利擁護そのものの活動・概念」を指すのに対し、アドボケート(advocate/アドボケイトとも表記)は「その活動を担う人」を意味します。
つまり、介護を受ける人が自分の希望を伝えにくいときに、代わりに声を届けたり、情報を整理して自己決定を支えるのがアドボケートです。
介護福祉の分野では、相談員や支援員、家族、あるいは第三者の専門職がアドボケートとして機能し、利用者の権利を守る重要な役割を果たしています。
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なぜ今、アドボカシーが注目されているのか?
近年、アドボカシーが注目される背景には、人権意識の高まりや社会の多様化、さらにSDGsといった国際的な潮流があります。
子どもや高齢者、障がい者などには、自分の思いを十分に表現できない人も多くいます。その声を社会に届ける仕組みを整えることが不可欠です。
2022年に改正され、2024年4月に施行された児童福祉法では、子どもアドボカシーを担う専門人材の配置が進み、学校や児童相談所で実践が広がりつつあります。
高齢化の進展に伴い、認知症高齢者や障がい者など、自己の意思を表明しにくい人々が増加しており、彼らの権利を守る仕組みが求められています。
令和5年度 老人保健事業推進費等補助金による研究(九州大学 二宮利治教授)では、2022年の認知症高齢者数は443.2万人(高齢者における有病率12.3%)であり、今後も増加が見込まれています。
2025年:471.6万人(高齢者における有病率12.9%)
2030年:523.1万人(高齢者における有病率14.2%)
2040年:584.2万人(高齢者における有病率14.9%)
また、軽度認知障害(MCI)の高齢者も2022年時点で558.5万人に達しており、こうした方々への権利擁護支援の必要性が高まっています。
こうした動きは「声を上げにくい人の権利を守る」重要性を社会全体に再認識させ、制度や政策の改善にもつながっています。
出典:令和4年6月に成立した改正児童福祉法について|こども家庭庁
出典:認知症及び軽度認知障害の有病率調査並びに将来推計に関する研究|国立大学法人 九州大学
【2025年最新動向】成年後見制度の利用状況
近年、高齢者の権利擁護が重視される中で、成年後見制度の役割がますます重要になっています。
最高裁判所の統計によれば、成年後見制度の利用者数は増加傾向にあり、2024年(令和6年)12月末時点で253,941人に達しています。
内訳は以下の通りです。
成年後見:179,373人(約70.6%)
保佐:54,916人(約21.6%)
補助:16,857人(約6.6%)
任意後見:2,795人(約1.1%)
2019年(令和元年)に改正された児童福祉法で「子どもが自由に意見を表明する権利」が明記され、2022年(令和4年)の改正でアドボケイトの配置等が努力義務化されました。
市民後見人の養成も進んでおり、厚生労働省の調査では、養成研修の修了者数は2024年(令和6年)4月時点で累計25,607人に上ります。
ただし、養成研修を修了したすべての市民後見人が実際に後見活動を行っているわけではなく、令和6年の成年後見人等の選任状況を見ると、親族(配偶者、親、子、兄弟姉妹及びその他親族)が成年後見人等に選任されたケースは7,077件(全体の約17.1%)、親族以外の第三者(弁護士、司法書士、社会福祉士、市民後見人等)が選任されたケースは34,245件(全体の約82.9%)となっています。
このうち、司法書士が約36%、弁護士が約27%を占めており、専門職後見人の役割が大きいことがわかります。
こうした現状は、高齢者が自己決定できる環境をつくるための社会的なニーズが高まっていることを示していると言えるでしょう。
出典:成年後見制度の現状|厚生労働省
出典:令和6年度成年後見制度利用促進施策に 係る取組状況調査結果(概要版)
出典:最高裁判所「成年後見関係事件の概況-令和6年1月~12月-」

介護福祉におけるアドボカシーの特徴
介護福祉におけるアドボカシーとは、高齢者や障がい者など介護を受ける人が持つ「自己決定の権利」や「人としての尊厳」を守り、その行使を支援する取り組みを指します。
加齢や病気により自分の希望を十分に伝えられない場合、介護職や相談員、家族などが声を代弁し、本人の意思に基づいた生活を実現するよう働きかけることが求められます。
権利擁護
介護福祉における権利擁護とは、利用者が本来持っている自由や選択の権利を、不当な制約や差別から守ることを意味します。
高齢者や障がい者は、施設や制度のルールによって希望が制限されやすい立場にあります。例えば、外出や食事の選択が「安全性」や「効率性」を考慮し、制限されることもあるでしょう。
アドボカシーの視点では、こうした場面で「本人の意向が尊重されているか」を問い直し、必要に応じて調整および改善を図ります。
権利擁護は単にトラブルを防ぐだけでなく、利用者が自分らしく暮らせる基盤を整える役割を果たします。
エンパワメント
エンパワメント(empowerment、権限付与・能力開花)とは、利用者が本来持っている力や可能性を引き出し、自分の人生を主体的に生きられるよう支援することを指します。
介護福祉の分野では、利用者が自分の思いや希望を自ら表現し、意思決定できるように力を引き出す支援として実践されています。
具体的には、以下のようなアプローチがあります。
わかりやすい情報提供:利用者が理解しやすい形で選択肢を提示
自己表現の促進:安心して希望を伝えられる雰囲気づくり
意思決定の尊重:本人の選択を最優先し、実現に向けてサポート
自己効力感の向上:「自分でできる」という実感を持てるよう支援
このプロセスにより、利用者は受け身ではなく「人生の主体」として介護サービスに関われるようになります。
そこでアドボケートは、分かりやすい情報提供や選択肢の提示を通じて、本人が主体的に決められるよう促します。
この過程は、本人の自尊心や自己効力感を回復させる働きも持ちます。エンパワメントを重視することで、利用者が受け身ではなく「人生の主体」として介護サービスに関われるようになるのです。
当事者主導
当事者主導とは、介護の方向性や具体的な支援内容を「本人の意思」を軸に進める姿勢を指します。
介護の現場では、介護者や家族の都合で物事が決まる傾向にありますが、アドボカシーでは利用者自身を「意思決定の中心」に据えることが求められます。
例えば、食事の内容や生活リズムを決める際も、専門職の判断や効率性より本人の希望が優先されるべきです。
この考え方は、中立ではなく「利用者の側に立つ」ことを前提にしており、支援者は代理で決めるのではなく、あくまで本人が選べるように支える役割を担います。
結果として、利用者の満足度と生活の質の向上につながります。
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介護福祉におけるアドボカシーの担い手の種類
介護福祉におけるアドボカシーは、状況に応じてさまざまな担い手によって実践されます。
利用者本人による自己表明から、家族や専門職、仲間、そして中立的な第三者まで、多様な立場が関わることで、権利擁護と自己決定の実現が支えられています。
種類 | 担い手 | 特徴・役割 |
|---|---|---|
セルフアドボカシー | 利用者本人 | 自ら意思を表明し、自己決定を行う 支援者は情報提供や環境調整で後押しする |
ピアアドボカシー | 同じ経験を持つ仲間 | 共感や経験の共有を通じて支援 孤立感を和らげ、自己肯定感を高める効果が期待できる |
フォーマルアドボカシー | 介護職・相談員・専門職 | 制度や知識を活かして代弁や調整を行う 本人の希望を介護計画やサービスに反映させる |
インフォーマルアドボカシー | 家族・友人など身近な人 | 本人の思いや生活スタイルを伝える 寄り添いやすい反面、家族の意向が強まるリスクも |
独立アドボカシー | 利害関係を持たない第三者 | 中立的立場から権利を守る 本人が言いづらい要望を代弁し、制度や環境に働きかける役割を担う |
セルフアドボカシー
セルフアドボカシーとは、介護を受ける本人が自らの意思や希望、権利を直接表明することを指します。
介護現場では「どうせ聞いてもらえない」と感じ、声を上げることをためらうケースも少なくありません。しかし、本人による自己表現こそが、最も理想的な権利擁護の形といえます。
支援者は、本人が理解しやすい情報や選択肢を提供し、自己決定を支える姿勢が求められます。
セルフアドボカシーは、利用者が受け身にならず、自らの生活を主体的に選び続けるために欠かせない考え方だといえるでしょう。
項目 | 内容 |
|---|---|
担い手 | 本人 |
特徴 | 自分の意思や要望を直接表明する |
留意点 | 「どうせ聞いてもらえない」と諦めないよう支援が必要 |
ピアアドボカシー
ピアアドボカシーは、同じ立場や経験を持つ仲間同士で支援し合う方法です。
たとえば、同じ病気や障害を持つ人が体験を共有することで、深い共感や安心感が生まれ、孤独感の解消や自己肯定感の向上にもつながります。
介護の現場でも、同じ境遇の人の言葉には大きな力があり、利用者の気持ちを代弁する存在となります。ただし、自分の経験を押しつけず、あくまで本人の意思を尊重することが重要です。
項目 | 内容 |
|---|---|
担い手 | 同じ境遇を持つ仲間 |
特徴 | 体験共有による深い共感と安心感 |
留意点 | 経験の押し付けを避け、本人の意思を尊重する |
フォーマルアドボカシー
フォーマルアドボカシーとは、介護職員、相談員、ソーシャルワーカーなどの専門職が担うアドボカシーです。彼らは日常的に利用者の声に耳を傾け、介護計画への反映や制度利用の手続き支援などを行います。
専門的な知識と制度理解を活かして、権利擁護の実現を後押しすることができます。
ただし、組織の方針や業務上の制約との間で板挟みになることもあるため、利用者の意思を最優先にする姿勢が求められます。
項目 | 内容 |
|---|---|
担い手 | 介護職・相談員・医療福祉専門職 |
特徴 | 介護計画への反映や制度利用の支援 |
留意点 | 組織のルールに流されず、本人の意向を優先する必要がある |
インフォーマルアドボカシー
インフォーマルアドボカシーは、家族や友人など身近な存在による支援を指します。介護サービスでは専門用語や制度が複雑で、本人がすべてを理解するのが難しい場合もあります。
そうした際に、家族が一緒に説明を聞き、本人の希望や生活スタイルを代弁することが、意思表明の補完になります。
身近な存在だからこそ寄り添いやすい利点がありますが、家族の意向が強くなりすぎないよう、本人の意思を尊重することが何よりも大切です。
項目 | 内容 |
|---|---|
担い手 | 家族・親族・友人 |
特徴 | 本人の生活習慣や希望を代弁できる |
留意点 | 家族の意向が強く出すぎ、本人の意思が埋もれるリスクがある |
独立アドボカシー
独立アドボカシーとは、本人や介護サービス提供者と利害関係を持たない第三者が担うアドボカシーです。中立的な立場から利用者の側に立ち、本人の意思を尊重しながら支援を行います。
施設や家族には言いづらいことでも、独立した立場の支援者なら安心して相談できるケースもあるでしょう。
また、必要に応じて制度や環境への働きかけも担います。独立性があるからこそ利用者の本音を引き出しやすく、権利擁護の最後の砦として重要な役割を果たします。
項目 | 内容 |
|---|---|
担い手 | 利害関係を持たない第三者(例:訪問支援員) |
特徴 | 中立的に本人の立場に立ち、言いづらい要望も代弁できる |
留意点 | 本人に無理強いせず、可能な範囲で寄り添うことが大切 |

【アドボカシー】介護職が高齢者の権利を擁護するための具体的な支援方法とは?
介護職には権利擁護の視点から、利用者が尊厳を持って暮らせるように支援する役割が求められます。ここでは、介護職が実践できる具体的な方法を解説します。
インフォームドコンセントを徹底する
インフォームドコンセントとは、医療や介護の現場で、患者・利用者が十分な説明を受け、納得した上で同意することを指します。
介護福祉の分野では、提供するサービスの内容、期待される効果、費用、選択肢などについて十分な説明を行い、利用者本人の同意を得ることが権利擁護の基本となっています。
分かりやすい言葉や視覚資料を用いることで、意思決定の主体が本人であることを示すことができます。
自己表現を促す環境づくり
「どうせ聞いてもらえない」と諦めさせないために、安心して希望を伝えられる雰囲気をつくる・環境を整えることが重要です。
小さな希望でも耳を傾け、実現に向けて働きかけることで信頼関係が深まるでしょう。
第三者へのつなぎや情報提供
必要に応じて相談窓口や権利擁護機関へつなぐのも介護職の役割です。
制度やサービスの情報を提供することで、高齢者が自ら選択できる力を取り戻す支援になります。
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【第37回】介護福祉士国家試験におけるアドボカシーの要点と過去問
第37回(令和6年度)介護福祉士国家試験では、「人間の尊厳と自立」の領域でアドボカシーの理解が問われました。利用者の意思を尊重し、権利を守る姿勢は試験の重要ポイントです。
ここでは、実際の過去問を用いて、正答の根拠と学習の着眼点について解説します。
出典:[介護福祉士国家試験]過去の試験問題:公益財団法人 社会福祉振興・試験センター
出典:<領域:人間と社会> 人間の尊厳と自立
出典:第37回介護福祉士国家試験の合格基準及び正答について
問題1「アドボカシーの視点から適切な対応」
問題1では、介護福祉職がアドボカシーの視点からどのように対応すべきかが問われました。正答は選択肢4「希望を言い出しにくい利用者の意思をくみ取り、その実現に向けて働きかける」です。
これは、権利擁護の重要なポイントである「本人の思いを代弁し、行動につなげる」姿勢を示しています。
他の選択肢は、説明不足や本人不在の判断、単なるレクリエーションへのすり替えにとどまっており、アドボカシーの本質である「利用者の声を支える」点が欠けていました。
問題2「自立支援と利用者の思いを尊重する姿勢」
問題2では、脳梗塞後遺症のあるAさんが「今日は腕が痛いので車いすを押してほしい」と依頼した場面が出題されました。
正答は選択肢5「依頼する理由を、まず考えてみることが大切」です。
自立支援は介護の重要な視点ですが、強制は本人の尊厳を損ないます。利用者がなぜその行動を望んでいるのかを理解しようとする姿勢が、アドボカシーの実践に直結します。
単に「自立を維持する」だけでなく、「本人の思いをくみ取る」ことが支援において重要だといえるでしょう。
試験から学べるアドボカシーのポイント
この2問から学べるのは、アドボカシーの実践は「利用者の声を尊重すること」に尽きるという点です。
試験では「介護者の効率性」や「家族の意向」ではなく、あくまで本人の希望が中心に据えられます。
また、自立支援は重要ですが、強要せず理由を丁寧に確認する姿勢が求められます。
アドボカシーの観点を意識すれば、試験対策だけでなく現場でのケアの質も高まります。本人の意思を起点に考えることが、介護福祉士に欠かせない判断基準といえるでしょう。
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介護福祉における自治体のアドボカシーの活動事例
介護福祉の現場では、自治体が権利擁護を支える仕組みを整備しています。
ここでは、入院者訪問支援や福祉サービス苦情解決といった具体的な取り組みを紹介します。
利用者が安心して声を上げられる環境づくりの現状をまとめたのでぜひチェックしてみてください。
【入院者訪問支援事業】48自治体が実施予定
入院者訪問支援事業(精神保健福祉法第35条の2)は2024年度(令和6年度)時点で、67自治体(都道府県、指定都市)のうち48自治体が実施予定となっています。
この事業は、精神科病院に入院している全ての精神障害者の権利擁護のためのアドボケイトとして機能することを目的としており、入院者の意思や希望を代弁し、適切な医療・福祉サービスにつなげる役割を担っています。
外部からの面会交流を確保する仕組みとして機能し、患者が声を上げづらい状況を補う権利擁護の基盤となっています。
入院者訪問支援事業は、精神保健福祉法第35条の2に基づき規定されています。
【福祉サービスの苦情解決】年間5,000件超の相談対応
都道府県社会福祉協議会の運営適正化委員会には、2023年度(令和5年度)に苦情5,168件・相談5,080件(計10,248件)が寄せられました。
分野別では高齢分野877件(17.0%)が中心で、特養や訪問介護に関する苦情も多く見られます。第三者機関による調整・調査を通じて、利用者の権利を守る制度的アドボカシーが実践されています。
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介護福祉における企業のアドボカシーの活動事例
企業もまた、当事者の声をサービスや製品に取り入れる形でアドボカシーを実践しています。
ここでは、認知症イノベーションアライアンスや観光業でのユニバーサル対応など、利用者参加型の取り組み事例を紹介します。生活の質や社会参加を支える工夫を見ていきましょう。
【認知症イノベーションアライアンス】当事者148人が参画
経済産業省が推進する「認知症イノベーションアライアンス」では、2024年(令和6年)12月時点で当事者148人、家族16人、支援者47人が参加し、企業と共に製品・サービス開発を進めています。
例として、アデッソ株式会社とBLG八王子によるデジタル日めくりカレンダー、豊島株式会社と認知症カフェでの衣類・靴の改良などがあります。
利用者の声を直接反映させることで、より使いやすい商品やサービスが生まれています。
【観光業でのユニバーサル対応】京都・株式会社小谷常
京都の旅館業者株式会社小谷常は、認知症のある人やその家族と協議し、客室案内の視認性向上、脱衣かごへの名前表示、スタッフ間の情報共有などを実施しています。
旅行や外出の不安を軽減し、権利擁護と生活の質向上を同時に実現しています。
出典:認知症フレンドリーな 取り組みの効果|世界認知症審議会(WDC)
出典:オレンジイノベーション・プロジェクト ~認知症当事者とつくる
出典:2024年度 認知症の人と家族の会京都府支部
出典:大阪・関西万博きょうと推進委員会認証事業認証事業一覧
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介護福祉領域以外!アドボカシーの主な活動分野
ここでは、教育・医療・市民社会・国際協力など、介護福祉以外の分野で展開されているアドボカシーの具体例を紹介します。
法律改正や専門職団体、国際機関の取り組みを通じて、権利擁護や社会変革が進められています。
【教育分野】子どもアドボカシー
2022年(令和4年)6月に成立し、2024年(令和6年)4月1日に施行された改正児童福祉法により、「子どもアドボカシー制度」が制度化され、全国の児童相談所や福祉施設で整備が進められています。
いじめや虐待、不登校などで声を上げにくい子どもに代わり、アドボケイトが意見を聴き、代弁する仕組みが整えられています。
項目 | 内容 |
|---|---|
活動主体 | 児童相談所、学校、福祉施設、NPO |
背景 | 2024年の児童福祉法改正で制度化 |
主な内容 | いじめ・虐待・不登校などで声を上げにくい子どもの意見を聴き、代弁する |
期待される効果 | 子どもの権利保障、安心して意見を表明できる環境づくり |
【医療分野】患者アドボカシー
日本医療ソーシャルワーカー協会をはじめとする団体が、がん患者や慢性疾患の患者に対する「治療選択支援」や「意思決定支援」の取り組みを展開しています。
患者が自らの希望を表明できるようサポートする実践が進んでいます。
項目 | 内容 |
|---|---|
活動主体 | 日本医療ソーシャルワーカー協会、病院のソーシャルワーカー |
背景 | 患者が治療方針を自ら選択できる体制整備が課題 |
主な内容 | がん患者や慢性疾患患者の治療選択支援・意思決定支援 |
期待される効果 | 患者本位の医療を実現 |
【市民社会・国際分野】子どもの権利と社会運動
国際NGOのユニセフやプラン・インターナショナルは、子どもの権利条約の普及や児童労働・人身売買の撤廃を目指し、国際的なアドボカシー活動を展開しています。
また、FoE Japanをはじめとする環境団体は、気候変動政策への提言や啓発キャンペーンを通じて、SDGs達成に向けた社会変革を推進しています。
項目 | 内容 |
|---|---|
活動主体 | ユニセフ、プラン・インターナショナル、FoE Japanなど |
背景 | 子どもの権利条約の普及、気候変動や人身売買の課題 |
主な内容 | 子どもの権利擁護、児童労働撤廃、環境政策提言、啓発キャンペーン |
期待される効果 | グローバル課題解決、SDGs推進、社会意識の変革 |
出典 | ユニセフ公式サイト、プラン・インターナショナル「活動報告」、FoE Japan「気候変動政策提言」 |
出典:アドボカシー|国際NGOプラン・インターナショナル 寄付・募金で世界の子どもや女の子を支援
出典:アドボカシー活動・啓発活動|国際NGOプラン・インターナショナル 寄付・募金で世界の子どもや女の子を支援
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私たちができる小さなアドボカシーとは?
私たちができる“小さなアドボカシー”は、専門知識や特別な立場がなくても、日常生活の中で誰もが実践できる身近な社会貢献のひとつです。
アドボカシーというと政策提言や大規模な活動をイメージしがちですが、一人ひとりの小さな行動の積み重ねも大切な力となります。
ここでは、私たちが今すぐできる小さなアドボカシーについてご紹介します。
身近な人の声に耳を傾ける
小さなアドボカシーの最初の一歩は、身近な人の声に耳を傾けることだといえます。家族や友人、同僚の思いや悩みを丁寧に聴き、相手の立場に立って考えることが大切です。
安心して話せる雰囲気をつくることで、普段は言い出しにくい本音や希望を引き出せるきっかけになります。
相手を「理解しよう」とする姿勢そのものが、権利を守る力になります。特別なスキルは必要なく、日常の会話の中でも実践できる、最も身近なアドボカシーの1つです。
声をSNSや地域で発信・共有する
障がい者や高齢者、子ども、外国人など、社会的に声を上げにくい人々の意見や体験をSNSや地域活動で発信・共有することも、身近なアドボカシーです。
個人の声が社会に届くことで共感が生まれ、支援の輪が広がります。また、地域の集まりやイベントで伝えることは、直接的に理解を促す機会となります。
小さな発信でも積み重なれば社会的な意識を変える力となり、制度や環境の改善を後押しするきっかけになるでしょう。
サービスや商品の体験をフィードバックする
日常で利用する商品やサービスについて、率直な感想や改善点を伝えることもアドボカシーの一環です。消費者としての声は、企業や行政にとって重要な改善のヒントとなり、より良い仕組みづくりにつながります。
「ここが使いやすかった」「ここは不便だった」という具体的な意見が、多くの人にとって快適なサービスへと反映される可能性があります。小さな行動でも、社会の質を少しずつ向上させる力を持っています。
NPOや地域活動に参加する
募金やボランティア、イベント参加など、無理のない範囲で社会課題に取り組む団体を応援することも立派なアドボカシーです。
時間や金額が小さくても、参加や協力の積み重ねが大きな力になります。自分の得意分野や関心に合わせて関わることで、無理なく継続できる点も魅力です。
地域活動に参加することで、当事者の声を身近に知る機会が増え、自分自身の視野も広がります。行動を通じて支えることが、社会変革の基盤となります。
企業や行政に意見を届ける
アンケートやパブリックコメント、SNSなどを通じて、企業や行政に意見を届けることも重要なアドボカシーです。
日常生活で感じた不便や改善点を具体的に伝えることで、制度やサービスの見直しが進みます。
市民の声が積み重なることで、行政はより実態に即した施策を検討し、企業は利用者のニーズを反映した改善を行います。声を届けることは「小さな一票」のように社会を動かす力を持ち、誰もが参加できる身近な取り組みです。

アドボカシーを成功させるポイント
ここでは、アドボカシーを実践するうえで欠かせないポイントについて解説します。
本人を一人の人として尊重し、立場や意思を尊重しながら支えること、わかりやすい情報提供や第三者としての橋渡し役を担うことが重要です。
一人の人として尊重する
アドボカシーにおいて最も大切なのは、相手を「一人の人間」として尊重する姿勢です。施設や集団の一員として扱うのではなく、その人自身の個性や思いに向き合うことで、本音を安心して表現できる場が生まれます。
安心できる環境が整えば、普段は言い出しにくい希望や悩みも自然と伝えやすくなるでしょう。尊厳を守る姿勢は、権利擁護の出発点であり、利用者の生活の質を高めるうえで不可欠です。
本人の立場に立つ
アドボカシーでは、支援者の価値観や思い込みを押し付けるのではなく、本人の立場に立って考えることが重要です。
本人が何を望んでいるのか、どのように暮らしたいのかを丁寧に聴き取り、その意思を尊重する姿勢が求められます。
自己決定を妨げるのではなく支える立場に徹すれば、本人の自律性や主体性を守ることにつながります。
情報を分かりやすく提供する
本人が自分の意思で判断できるようにするためには、必要な情報を正しく、そして分かりやすく提供することが欠かせません。
難しい専門用語や制度をそのまま伝えるのではなく、相手の理解度や状況に合わせて丁寧に説明する工夫が大切です。
情報提供は「選択の幅」を広げ、本人が納得して意思決定できる力を支えるものです。十分な説明があって初めて、利用者は自らの権利を行使し、主体的に行動できるようになります。
第三者としての役割を意識する
本人が直接は言いにくいことを代わりに伝えたり、必要な相談先や支援機関につなぐ「橋渡し役」としての役割もアドボカシーにおいて重要です。
支援者が第三者として関わることで、身近な家族や職員には話せなかった本音が引き出される場合もあります。
代弁や仲介は本人の声を社会に届ける大切な手段であり、孤立を防ぎ、適切な支援につながるきっかけとなるでしょう。中立性と誠実さを保ちながら、本人に寄り添う姿勢が求められます。

介護保険制度改正の最新動向
2024年(令和6年)4月に介護保険制度の改正が施行され、介護報酬が1.59%引き上げられました。このうち、介護職員の処遇改善分が0.98%、その他の改定率が0.61%となっています。
この改正では、以下の点でアドボカシーの理念が反映されています。
利用者の意思決定支援の強化:ケアプラン作成時における本人の意向確認プロセスの明確化
情報開示の推進:介護サービス事業所の経営情報の報告が努力義務化
権利擁護の基盤整備:介護情報の基盤整備により、利用者が適切なサービスを選択できる環境を整備
※ただし、ケアプランの有料化や自己負担割合の引き上げは見送られました。
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まとめ
アドボカシーとは、声を上げにくい人の思いや権利を社会に届け、実現につなげるための活動です。介護福祉の現場では、権利擁護やエンパワメント、当事者主導を支える仕組みとして欠かせません。
担い手も本人、家族、専門職、仲間、第三者と多様です。自治体や企業の取り組み、教育・医療・国際分野での展開など、社会全体で広がりを見せています。
小さな行動からでも始められるアドボカシーは、誰一人取り残さない社会をつくるための重要だと言えるでしょう。
よくある質問
Q.アドボカシーとはどのような意味ですか?
アドボカシーは「擁護」「支持」「代弁」といった意味を持ち、特に自分の意見や権利を十分に主張できない人に代わり、その権利を実現するために支援・代弁を行う活動全般を指します。
Q.アドボカシーはなぜ必要とされているのですか?
アドボカシーは弱い立場にある人や、権利を十分に表現できない人の声を社会や関係者に届けることで、不利益や不平等を是正し、本人の尊厳や権利を守るために必要とされています。
Q.アドボカシーにはどのような実践例がありますか?
看護や福祉の現場では、本人が意思を表明しにくい場合の代弁、権利侵害の発見と救済、必要なサービスへの橋渡し、患者の希望や不安を汲み取ってチームに伝えることなどが活動例として挙げられます。
Q.アドボカシーを担う人(アドボケイト)の役割は何ですか?
アドボケイトは、対象者の声や思いを受け止めて社会や関係機関に伝え、本人の自立や意思決定を支援する役割を担います。
[介護サーチプラス]編集部
この記事の執筆者情報です
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