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要介護3の認定を受けた家族がいる方
要介護2・4との違いに迷っている方
在宅介護と施設入居で悩んでいる方
ケアプランやヘルパーの利用など具体的な情報を探している方
今後の生活設計・費用に不安を感じている方
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要介護3とはどんな状態か
ここでは、要介護3の認定基準や生活状況、認知症との関係について解説します。
要介護2や要介護4とどう異なるのか、実際に必要となる支援内容を具体的に把握するための参考になります。
要介護3の基準と認定条件
要介護3は、介護保険制度における要介護度の中間に位置し、日常生活において常時の介助が必要となる状態を指します。
厚生労働省の要介護認定基準によると、起床・就寝・移動・食事・排せつ・入浴などの複数の生活動作において、全面的な介助または見守りが必要とされるケースが多く、心身の状態としては「中等度の障がい」に該当します。
認定は、市区町村が実施する要介護認定の流れに基づき、以下のプロセスで決定されます。
- 一次判定:認定調査員による基本調査(74項目)と特記事項をもとに、要介護認定基準時間を算出し、コンピュータによる一次判定を行います。
- 二次判定:主治医意見書の内容を含め、介護認定審査会が総合的に審査・判定します。
「要介護3の認定基準は、厚生労働省が定める『要介護認定等基準時間』が70分以上90分未満またはこれに相当する状態です。
なお、この基準時間は、介護の必要性を測るための判定指標であり、実際の介護時間や1日に必要な介護時間とは異なります。実際には、約3,500人の高齢者に対して行われた『1分間タイムスタディ・データ』に基づく推計値です。
日常生活で必要な介助内容
要介護3に認定される方は、日常生活において常時の介助が必要とされ、複数の生活動作において自力での遂行が困難です。
具体的な支援内容は次のとおりです。
項目 | 内容 |
|---|---|
移動や立ち上がり | 歩行や立ち上がりの際には常に支えが必要で、転倒防止のため見守りや補助を行います。 |
排泄介助 | トイレの使用は一人で行うことが困難であり、移動や動作の介助が不可欠です。 |
入浴や更衣 | 入浴や衣服の着脱は介助者の支援を伴って行われることが多く、一連の流れをサポートする必要があります。 |
食事介助 | 配膳や食器の操作が難しく、場合によっては食事そのものの介助を要します。 |
このように、要介護3の生活は常時の介助と見守りを前提としており、本人の安全を守りながら尊厳を重視した支援が不可欠です。
認知症との関連と問題行動の例
要介護3では、認知症の症状が介護の必要性に大きく影響するケースが多く見られます。厚生労働省の要介護認定においても、認知機能の状態は判定の重要な要素の一つです。
中等度以上の認知機能障がいがみられる場合、次のような症状や行動が日常生活に支障を及ぼします。
症状・行動 | 内容 |
|---|---|
見当識障がい | 日時や場所、人の認識ができなくなります。 |
反復行動 | 同じ質問や要求を繰り返します。 |
介助拒否 | 入浴や排泄の介助を拒みます。 |
興奮・不安 | 理由なく大声を出したり、不安や怒りを表します。 |
これらは「BPSD(認知症の行動・心理症状)」と呼ばれ、介護者の負担が増加する大きな要因となります。
そのため要介護3の認知症ケアでは、専門的な理解と個別の対応が欠かせません。
利用者一人ひとりの症状や背景を理解し、適切なコミュニケーションや環境調整を行うことが重要です。

要介護3と要介護2、要介護4の違い
要介護3は、介護度の中でも「中間」に位置づけられ、日常生活の多くの場面で常時の介助や見守りが必要となる状態です。
以下では、他の介護度との違いを比較しながら解説します。
区分 | 要介護認定等基準時間 | 状態の目安 |
|---|---|---|
要支援 | 25分以上~32分未満 | またはこれに相当する状態 |
要介護1 | 32分以上~50分未満 | またはこれに相当する状態 |
要介護2 | 50分以上~70分未満 | またはこれに相当する状態 |
要介護3 | 70分以上~90分未満 | またはこれに相当する状態 |
要介護4 | 90分以上~110分未満 | またはこれに相当する状態 |
要介護5 | 110分以上 | またはこれに相当する状態 |
※要介護認定等基準時間は実際の介護サービス提供時間を示すものではなく、認定のための判定基準です。
要介護2との違い
要介護2と3の主な違いは、必要とされる介助の範囲と認知機能の程度にあります。
厚生労働省の「要介護状態区分別の状態像」によると、要介護2では 歩行・洗身・つめ切り・薬の内服・金銭管理・簡単な調理 などに部分的な介助が必要となり、日常生活の一部において支援を受けながら自立を保っている段階です。
一方、要介護3では 寝返り・排尿・排便・口腔清潔・上衣の着脱・ズボン等の着脱 など、より広い範囲で介助が必要となります。
さらに、座位保持や立位保持、移乗や移動といった動作にも支援を要することが多く、要介護2に比べて介助の必要性が格段に増えるのが特徴です。
認知機能についても、要介護2では比較的軽度の障がいが多いのに対し、要介護3では認知症の進行に伴い、意思疎通や理解力に支障が出るケースが増えることが報告されています。
要介護3の特徴
要介護3になると、移動・排泄・入浴・更衣・食事 といった複数の生活動作において、全面的な介助や見守り が必要となります。
また、認知症の行動・心理症状(BPSD)が見られる場合もあり、介護者の負担は大きく増加します。
介護時間の目安は 1日70分以上90分未満 で、在宅介護の場合は複数人で支援を分担することもあります。
要介護4との違い
要介護3と4の違いは、身体の重度障がいと意思疎通の困難さにあります。
厚生労働省の「要介護状態区分別の状態像」によると、要介護4では、寝たきりに近い状態や手足の自由が大きく制限されることが多く、日常生活のほぼ全般で全面的な介助が必要です。
一方、要介護3では座位保持や移動が可能な場面もあり、部分的な自立が見られるのが特徴です。
意思疎通についても、要介護3では日常会話がある程度可能ですが、要介護4では認知機能の低下が著しく、会話のやり取りが困難になるケースが少なくありません。
居宅サービスの1ヶ月あたりの利用限度額
区分 | 月あたりの支給限度額(目安) |
|---|---|
要介護2 | 約198,380円 |
要介護3 | 約270,480円 |
要介護4 | 約309,380円 |
要介護2から3、そして4へと進むにつれて、自立できる範囲は徐々に減少し、常時の介助と見守りが必須となります。同時に、介護サービスに利用できる支給限度額も段階的に引き上げられます。
出典:要介護認定の仕組みと手順|厚生労働省
出典:サービスにかかる利用料 | 介護保険の解説 | 介護事業所・生活関連情報検索「介護サービス情報公表システム」
各要介護度ごとの支給限度額の比較
厚生労働省の「区分支給限度基準額の現状①」によると、要介護度ごとに1か月あたりに利用できる介護サービスの上限額(支給限度額)が定められています。
介護度が高くなるにつれて必要な介助が増えるため、限度額も段階的に引き上げられています。
具体的な支給限度額
区分 (要介護度) | 支給限度基準額 (単位数) | 金額換算の目安※ |
|---|---|---|
要介護1 | 16,765単位 | 約167,650円 |
要介護2 | 19,705単位 | 約197,050円 |
要介護3 | 27,048単位 | 約270,480円 |
要介護4 | 30,938単位 | 約309,380円 |
要介護5 | 36,217単位 | 約362,170円 |
※金額は1単位=10円として計算した目安です。実際の金額は地域区分(1級地~その他地域)により異なります。
これにより、より多くのサービスを利用できる一方で、自己負担額(1割〜3割)は上限に応じて増えるため、ケアマネジャー(介護支援専門員)による計画的なケアプラン作成が重要となります。

要介護3で利用できる介護保険サービス
要介護3に認定された方は、区分支給限度基準額27,048単位(約270,480円、2024年度)の範囲内で、多様な介護保険サービスを利用できます。
サービスは大きく分けて、自宅での生活を支える『居宅サービス』、施設に入所して受ける『施設サービス』、そして地域に根ざした『地域密着型サービス』の3つがあります。
厚生労働省の介護保険事業状況報告(2024年3月末時点)によると、要介護3の認定者数は約927,000人で、全要介護認定者の約13.1%を占めています。
自宅で受けられる居宅サービス
在宅で生活を続けながら介護を受けたい場合は、訪問系や通所系の「居宅サービス」が利用できます。
身体介護や生活援助、医療的ケア、リハビリ支援など、利用者の状態や希望に応じて柔軟に組み合わせることが可能です。
家族の介護負担を軽減しながら、落ち着いて自宅で暮らし続けるための支援を受けられます。
サービス名 | 内容 |
|---|---|
訪問介護(ホームヘルプサービス) | 食事、入浴、排泄、掃除、買い物など日常生活を支援します。 |
訪問看護 | 看護師が自宅を訪問し、健康管理や医療的処置を実施します。 |
訪問入浴介護 | 入浴が困難な方に対し、浴槽を持ち込んで入浴介助を提供します。 |
通所介護(デイサービス) | 日中に施設へ通い、食事や入浴、機能訓練、レクリエーションを受けます。 |
福祉用具貸与・住宅改修 | 車いすや介護ベッドのレンタル、手すり設置や段差解消などの住宅改修を行います。 |
これらのサービスは、要介護度やケアプランに基づいて利用回数や内容が決められます。
在宅介護の質を高めるために、ケアマネジャーとの連携が重要です。
施設で受けられるサービス
在宅生活が難しくなった場合には、入所型の介護施設で生活支援や医療ケアを受ける選択肢があります。
施設では、入浴・食事・排泄などの介助に加えて、健康管理やリハビリ、レクリエーションなども実施されます。
医療体制やリハビリの充実度によって施設の種類が異なります。
施設名 | 内容 |
|---|---|
特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設) | 常時介護が必要な高齢者を対象に、日常生活全般の介護を提供します。 |
介護老人保健施設(老健) | 在宅復帰を目指すため、リハビリや医療ケアを含む支援を提供します。 |
介護医療院 | 長期療養が必要な方に、医療と生活支援を一体的に提供します。 |
施設サービスを利用する際は、介護度や医療ニーズ、家族の希望を踏まえて最適な施設を選ぶことが大切です。
また、費用や待機状況にも差があるため、早めの情報収集と相談が推奨されます。
地域密着型サービス
地域密着型サービスは、住み慣れた地域で落ち着いて生活を続けられるよう支援する仕組みです。
利用者の状態や家庭の状況に合わせて、通い・訪問・泊まりなどを柔軟に組み合わせられるのが特徴です。
顔なじみの職員による一貫した支援が受けられるため、安心感が高く、認知症の方にも適した環境が整えられています。
サービス名 | 内容 |
|---|---|
小規模多機能型居宅介護 | 通い・訪問・泊まりを組み合わせて柔軟に支援します。 |
グループホーム(認知症対応型共同生活介護) | 認知症の方が少人数で共同生活を営み、家庭的な環境で介護を受けます。 |
地域密着型通所介護 | 比較的小規模なデイサービスで、地域住民が身近に利用できる環境を提供します。 |
ケアプラン作成の流れ
介護サービスを利用する際には、介護支援専門員(ケアマネジャー)が中心となり、本人や家族の希望、心身の状態を踏まえてケアプランを作成します。
このプランに基づき、必要なサービスが組み合わせられ、要介護3の方でも安心して生活を続けられる仕組みになっています。
訪問・通所・短期入所サービスの概要
要介護3の方は、在宅生活を続けながら、複数の介護保険サービスを組み合わせて利用できます。以下は代表的なサービスの概要です。
サービス区分 | サービス名 | 内容 |
|---|---|---|
訪問系 | 訪問介護(ホームヘルプサービス) | ホームヘルパーが自宅を訪問し、食事・入浴・排泄など日常生活の介助を行います。 |
訪問系 | 訪問看護 | 看護師が自宅を訪問し、健康管理や医療的処置を実施します。 |
通所系 | 通所介護(デイサービス) | 日中に施設へ通い、食事・入浴・機能訓練・レクリエーションなどを受けます。 |
短期入所系 | 短期入所生活介護(ショートステイ) | 家族の休養や不在時に短期間施設へ宿泊し、介護を受けられます。 |
短期入所系 | 短期入所療養介護 | 医療的ケアが必要な方向けに、医療と介護を一体的に提供するショートステイです。 |
これらを適切に組み合わせることで、要介護3の方の自立支援と家族の介護負担軽減を両立できます。
地域密着型サービスの種類と特徴
地域密着型サービスは、要介護高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らし続けられることを目的とした介護サービスです。要介護3の方にとっても、身近な事業者による柔軟で継続的な支援が受けられる点が大きな特徴です。
代表的な地域密着型サービスは以下のとおりです。
- 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
認知症の高齢者が少人数で共同生活を送り、家庭的な環境の中で介護や生活支援を受けられるサービスです。 - 小規模多機能型居宅介護
「通い・訪問・泊まり」を一体的に提供でき、利用者の状況に応じて柔軟にサービスを組み合わせられます。
- 夜間対応型訪問介護
夜間の時間帯における見守りや緊急時の対応が可能で、一人暮らしや家族不在時の安心につながります。 - 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
24時間365日、必要なタイミングで介護や看護の支援を受けられるサービスで、在宅生活の継続を強力にサポートします。
このように、地域密着型サービスは地域の介護事業者が運営し、顔なじみのスタッフによる支援が受けられる点で、利用者や家族にとって安心感のある仕組みとなっています。
サービス利用の手続きとケアプランの作成方法
介護保険サービスを利用するには、まず市区町村の介護保険課などの窓口で申請を行い、要介護認定を受ける必要があります。
認定調査や主治医意見書をもとに審査が行われ、要介護3と判定されると、介護サービスを正式に利用できるようになります。
手続きの流れ | 主な内容 | 担当機関・担当者 |
|---|---|---|
① 申請 | 本人または家族が市区町村の介護保険窓口に申請を行う | 市区町村(介護保険課など) |
② 認定調査・審査 | 認定調査員による訪問調査と、主治医意見書に基づく審査判定 | 介護認定審査会 |
③ ケアマネジャーの選任 | 地域包括支援センターまたは居宅介護支援事業所でケアマネジャーが担当に就く | ケアマネジャー(介護支援専門員) |
④ ケアプランの作成 | 利用者の希望や心身の状態に応じて、サービス内容・回数・提供時間を計画 | ケアマネジャー |
⑤ サービス契約・利用開始 | ケアプランをもとに、各介護サービス事業者と契約を締結 | 利用者・事業者 |
ケアプランは、利用するサービスの種類や頻度、提供時間などが具体的に記載された「介護サービス計画書」です。
サービス開始後も、ケアマネジャーが月1回以上のモニタリングを行い、必要に応じてプランの見直しを行います。
この仕組みにより、要介護3の方でも、自宅や施設で継続的かつ安心した支援を受けることが可能になります。

要介護3で使える福祉用具と介護リフォーム
要介護3の方は、日常生活動作が大きく制限されるため、福祉用具や住宅改修を活用して生活環境を整えることが重要です。
介護保険制度を利用することで、自己負担を抑えながら安全で快適な住まいを実現できます。
福祉用具の貸与・購入
介護保険の対象となる福祉用具には、次のようなものがあります。
- 貸与(レンタル)対象
車いす、車いす付属品、特殊寝台(介護ベッド)、特殊寝台付属品、床ずれ防止用具、体位変換器、手すり、スロープ、歩行器、歩行補助つえ、認知症老人徘徊感知機器、移動用リフトなどです。 - 特定福祉用具販売(購入)対象
腰掛便座(ポータブルトイレなど)、自動排泄処理装置の交換可能部品、入浴補助用具(浴槽用手すり・入浴用いすなど)、簡易浴槽、移動用リフトのつり具部分。
住宅改修(介護リフォーム)
介護保険では、20万円を上限に1割〜3割負担で住宅改修を行うことができます。対象となる工事には、次のようなものがあります。
- 手すりの取り付け
- 段差の解消(スロープ設置など)
- 滑り防止や移動円滑化のための床材変更
- 引き戸等への扉の取り替え
- 洋式便器への取り替え
これらの改修により、転倒防止や動作の負担軽減が図られ、要介護3の方でも自宅で安心して暮らし続けることが可能になります。
レンタル対象の福祉用具とその使い方
要介護3では、介護保険を利用して多くの福祉用具をレンタルできます。対象となる主な用具には、車いす、介護用ベッド、床ずれ防止マット、歩行器、移動用リフトなどがあります。
レンタルのメリットは、状態の変化に応じて機器を交換できる点や、購入に比べて費用が安価に抑えられる点です。
これらの用具は、日常生活動作の負担を軽減し、介護する側・される側双方の安全性と効率を高める重要な支援ツールとなります。
購入可能な福祉用具と介護保険の適用範囲
介護保険では、衛生面などの理由からレンタルに適さない一部の用具について「購入」が認められています。
購入対象となる特定福祉用具
厚生労働省が定める対象は以下のとおりです。
- 腰掛便座(ポータブルトイレ、補高便座など)
- 自動排泄処理装置の交換可能部品
- 入浴補助用具(入浴用いす、浴槽用手すり、浴槽内いす、入浴台など)
- 簡易浴槽
- 移動用リフトのつり具部分
購入費用の支給範囲
年度内(4月1日~翌年3月31日)の購入費用10万円を上限として、介護保険から費用の一部が支給されます。
自己負担割合は、利用者の所得に応じて以下のとおりです。
1割負担の方:9万円支給(自己負担1万円)
2割負担の方:8万円支給(自己負担2万円)
3割負担の方:7万円支給(自己負担3万円)
上限の10万円を超えた購入費用は、全額自己負担となります。
利用の流れ
購入の際には、市区町村への事前申請と領収書の提出が必要です。使い捨てや長期使用が前提となる用具は、レンタルよりも購入の方が合理的とされています。
この仕組みにより、要介護3の方でも自宅で安心して生活するための環境を、経済的負担を抑えながら整備することが可能です。
購入対象となる主な福祉用具(介護保険適用)
- ポータブルトイレ
- シャワーチェア(入浴用いす)
- 簡易浴槽
- すべり止めマット
- 腰掛け便座(和式から洋式への転換用)
出典:福祉用具貸与|厚生労働省
出典:サービスにかかる利用料 | 介護保険の解説|介護サービス情報公表システム|厚生労働省
一人暮らしの場合のケアプラン(介護サービス計画書)例
一人暮らしの要介護3の方は、日常生活の大部分で支援が必要となるため、複数のサービスを組み合わせたプランが多くなります。
厚生労働省の統計によると、要介護3の単身高齢者は「訪問介護(ホームヘルプサービス)」「通所介護(デイサービス)」「訪問看護」を併用するケースが目立ちます。
モデルケース
- 訪問介護(ホームヘルプサービス):週5回利用し、食事の準備・排泄介助・着替えなどを支援。
- 通所介護(デイサービス):週2〜3回通い、入浴介助や機能訓練を受ける。
- 訪問看護:週1回導入し、服薬管理や健康観察を実施。
このようなプラン(では、月額のサービス利用費が27万円前後と支給限度額に近づくケースが多く、自己負担(1割負担)は2万7千円程度になります。
そのため、ケアマネジャー(介護支援専門員)と相談し、必要性や優先度を見極めながら調整することが重要です。
支給限度額内での自己負担額と注意点
要介護3における介護保険の区分支給限度基準額は月額267,500円(市区町村によっては269,310円)と定められています。
この範囲内で利用する場合、自己負担は原則1割(一定以上の所得がある場合は2〜3割)に抑えられます。たとえば、限度額までサービスを利用した場合でも、1割負担であれば月2万6千円前後の自己負担で済みます。
ただし、限度額を超えた分については全額自己負担となるため注意が必要です。特に単身世帯やサービス利用量の多いケースでは、プランが上限に達しやすくなります。
なお、住宅改修(手すり設置・段差解消など)や福祉用具購入(ポータブルトイレ・浴槽など)については別枠で支給されるため、毎月の限度額には含まれません。
そのため、経済的負担を抑えるには、ケアマネジャー(介護支援専門員)と定期的にケアプランを見直し、必要なサービスを優先度に応じて調整することが重要です。

要介護3で入居できる施設の種類と選び方
ここでは、要介護3の方が入居できる主な高齢者施設の種類と、それぞれの特徴・注意点について解説します。
公的施設から民間施設まで幅広く比較し、自身や家族に合った選択の参考にしてください。
特別養護老人ホーム(特養)
特別養護老人ホーム(特養)は、要介護3以上と認定された高齢者が原則入居できる公的な介護施設です。
費用は介護老人保健施設(老健)や有料老人ホームと比べて自己負担が低く抑えられることが多く、また介護職員が24時間常駐しているため、日常生活全般にわたる介護を受けられる点が大きなメリットです。
一方で、入居希望者は全国的に多く、地域によっては数か月から数年単位の待機が発生するケースがあります。特に都市部では待機者数が多く、すぐに入所できるとは限りません。
また、医療体制については病院ほど整っていないため、人工呼吸器や点滴などの医療依存度が高い方には対応できない場合もあります。
そのため、入所を検討する際は、施設見学を行い、介護体制や協力医療機関との連携状況を確認することが重要です。
メリット
- 公的施設のため費用が比較的安い
介護老人保健施設(老健)や有料老人ホームと比べると、自己負担が低く抑えられます。
- 常駐スタッフによる手厚い介護
介護職員が24時間常駐しているため、日常生活全般にわたる支援を受けられます。
- 終身利用が可能な場合もある
長期的に住み続けられる体制が整っており、看取り対応を行う施設もあります。
デメリット
- 入居待機者が多い
人気が高く、地域によっては数か月から数年待ちになるケースがあります。
- 医療体制は限定的
高度な医療処置や専門的な治療は行えないため、医療依存度が高い方には不向きな場合があります。
介護老人保健施設(老健)・介護医療院・ケアハウス
これらの施設は、それぞれ目的や役割が異なります。介護老人保健施設(老健)は、在宅復帰を目指す中間施設で、医師やリハビリスタッフが配置されています。
介護医療院は、長期療養と介護が一体となった施設で、医療的ケアが継続的に必要な方に適しています。
ケアハウスは比較的自立した高齢者向けの生活施設で、軽度の介護が必要な方に向いています。いずれも入居には要介護認定が必要で、医療ニーズの高い要介護者に適しています。
出典:公益社団法人 全国老人保健施設協会 老健施設とは
出典:介護医療院|厚生労働省
出典:養護老人ホーム・軽費老人ホームについて|厚生労働省
民間施設(有料老人ホーム・サ高住)
民間が運営する高齢者施設には、有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)があります。
有料老人ホームは、介護職員や看護職員の配置、充実した設備、レクリエーションなど、手厚いサービスが受けられる点が大きな特徴です。
ただし、入居一時金や月額利用料が比較的高額であり、介護付き・住宅型・自立型など施設タイプによって費用やサービス内容が異なります。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、バリアフリー対応の賃貸住宅に安否確認や生活相談といった見守りサービスが付いている住まいです。
自由度が高く、費用も比較的抑えられるのが特徴ですが、介護が必要になった場合は外部の訪問介護事業所(ホームヘルプサービス)などと個別に契約する必要があります。
そのため、入居を検討する際には、費用負担と介護体制のバランスを考慮し、自分や家族の希望する暮らし方に合った施設を選ぶことが重要です。
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要介護3における在宅介護と施設入居の比較と判断ポイント
ここでは、要介護3の方における在宅介護と施設入居の違いや、それぞれのメリット・デメリットを解説します。家族の状況や本人の希望をふまえて、最適な介護環境を選ぶための判断材料を提供します。
在宅介護でできる工夫と限界
在宅介護の最大の利点は、住み慣れた自宅で生活を続けられる安心感にあります。介護保険制度を活用すれば、訪問介護(ホームヘルプサービス)や通所介護(デイサービス)、訪問看護、さらには福祉用具のレンタルや住宅改修といった支援を受けることで、在宅生活を長く維持することが可能です。また、家族と過ごす時間を大切にできることも、心理的なメリットとして挙げられます。
一方で、在宅介護には限界も存在します。介護の中心を担う家族に身体的・精神的な負担が集中しやすいため、疲労の蓄積や健康悪化、さらには介護離職などの問題が起こりやすくなります。特に要介護3以上では介助時間が長時間に及ぶことが多く、家族だけで担うのは困難になるケースも少なくありません。
そのため、在宅介護を継続するためには、介護サービスの組み合わせや家族以外の支援体制を整えることが不可欠です。地域包括支援センターやケアマネジャーに相談し、現状に合った最適なプランを組み立てることが、無理のない介護を実現する鍵となります。
施設入居のメリット・デメリット
施設入居の最大のメリットは、24時間体制で専門職によるケアを受けられる安心感にあります。介護職員や看護師が常駐しているため、急な体調変化にも対応でき、医療や看護が必要な場合でも適切な支援を受けることが可能です。
さらに、入浴や食事の提供、レクリエーションなどの生活支援も整っており、家庭では難しいケアを包括的に受けられます。こうした環境は、家族の介護負担を大幅に軽減する効果もあります。
また、集団生活を通じて他の入居者と交流する機会が得られるため、社会的な孤立を防ぐ点も大きなメリットです。
一方で、施設入居にはデメリットもあります。まず、費用が高額になりやすい点が挙げられます。特に民間の有料老人ホームでは入居一時金や月額費用が高くなる傾向があります。さらに、家庭から施設へ移ることで環境が大きく変化し、本人にとってストレスや不安を感じる要因となる場合があります。
また、集団生活により生活の自由度が制限されることもデメリットの一つです。
そのため、施設入居を検討する際は、施設の種類・サービス内容・費用負担のバランスを比較検討し、本人や家族の希望に合った施設を選ぶことが重要です。
入居のタイミングと判断基準
施設入居を検討するタイミングは、介護者の負担が限界を超えたときや、在宅で本人の安全を確保することが難しいと判断されたときが目安になります。
具体的には、以下のような状況が代表的な判断基準になります。
- 頻繁な転倒や夜間徘徊など、事故やトラブルのリスクが高まっているとき
- 薬の飲み忘れや過量服薬など、服薬管理が困難になったとき
- 家族の体調悪化や介護離職の危機など、介護者の生活が大きく制約されているとき
また、本人の意思や家族の希望、経済的な条件をふまえ、早めに話し合いを始めて準備しておくことが大切です。余裕を持って検討を進めることで、後悔のない選択につながります。
入居を検討すべき主なタイミング・サイン
- 家族が介護による心身の限界を感じている
介護疲れや体調不良、仕事や生活への影響が大きくなっている場合。 - 転倒・誤嚥・徘徊などで在宅生活が危険になっている
本人の安全確保が在宅では難しくなっているケース。 - 認知症が進行し、24時間対応が困難になってきた
夜間の徘徊や介助拒否など、常時見守りが必要になってきたとき。 - 訪問・通所サービスでは対応しきれなくなってきた
介護保険サービスを組み合わせても生活維持が難しい場合。 - ケアマネジャー(介護支援専門員)が施設利用を提案した場合
専門職の視点から「施設入居が適切」と判断されたとき。

要介護3でもらえるお金と支援制度
ここでは、要介護3の方が受けられる介護保険の給付や、税制優遇などの支援制度について解説します。
経済的な負担を軽減するためには、制度の内容を正しく理解し、活用することが重要です。
介護保険による給付内容と利用限度額の目安
介護保険では、要介護3に認定された方に対して、訪問介護(ホームヘルプサービス)、通所介護(デイサービス)、福祉用具レンタルなど多様なサービスが1〜3割の自己負担で利用できます。
要介護3の支給限度額は月額267,500円(市区町村によっては269,310円)で、限度額の範囲内であれば複数のサービスを組み合わせて利用できます。
限度額を超えた場合は全額自己負担になるため、ケアマネジャー(介護支援専門員)と相談しながら、サービスの組み合わせと頻度を適切に調整することが大切です。
障害者控除・医療費控除などの税制優遇と条件
要介護3の方は、一定の条件を満たせば税制面での優遇措置を受けられる場合があります。
たとえば、介護認定を受けている人を扶養している家族は「障害者控除」の対象となることがあります。
また、介護サービスの自己負担分や介護施設の費用、医療関連費用などは「医療費控除」の対象になるケースもあります。
要介護3の方も、一定の条件を満たし、市区町村から『障害者控除対象者認定書』の交付を受けた場合に限り、障害者控除の対象となる可能性があります。
重要な注意点
- 要介護認定を受けただけでは、自動的に障害者控除の対象にはなりません(国税庁)。
- 認定基準は市区町村によって異なります。
- 多くの自治体では、要介護3以上で一定の認知症または身体機能の基準を満たす場合に認定されます。
控除額(障害者控除対象者認定書の交付を受けた場合)
一般の障害者控除::所得税27万円、住民税26万円
特別障害者控除:所得税40万円、住民税30万円
申請方法
お住まいの市区町村の介護保険課または高齢福祉課に『障害者控除対象者認定書』の交付を申請してください。認定基準は自治体ごとに異なるため、事前に確認することをおすすめします。
出典:障がい者控除|厚生労働省
出典:医療費控除|厚生労働省
出典:No.1185 市町村長等の障害者認定と介護保険法の要介護認定について|国税庁
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要介護3の今後の生活設計
ここでは、介護が長期化した場合の生活設計について解説します。将来に備えて必要な準備や心構えを持つことが、本人と家族の安心につながります。
介護が長期化する場合の準備と心構え
要介護3の状態は一時的なものではなく、数年から10年以上にわたって介護が続くケースも少なくありません。
生命保険文化センターの「生命保険に関する全国実態調査」(2024年度)によると、介護期間の平均は4年7カ月です。期間別の内訳では、4~10年未満が最も多く27.9%、10年以上も14.8%となっており、長期化する傾向が見られます。
長期に備えるためには、まず介護サービスの柔軟な活用が欠かせません。ショートステイ(短期入所療養介護)や訪問介護(ホームヘルプサービス)を適切に組み合わせることで、家族の負担を軽減し、介護の継続性を高められます。また、ケアマネジャー(介護支援専門員)による定期的なケアプラン(介護サービス計画書)見直しや、地域包括支援センターへの早期相談も重要です。
さらに、介護者自身の健康管理と経済的な備えも不可欠です。体調不良や離職による生活不安を防ぐため、休養の確保や公的支援制度の利用を視野に入れると安心です。
「頑張りすぎない介護」を意識し、無理のない支援体制を築くことが、本人と家族双方にとって持続可能な介護生活につながります。

要介護3のヘルパー利用回数とケアマネとの連携
ここでは、要介護3の方が訪問介護(ホームヘルプサービス)をどれくらい利用できるのか、またケアマネジャー(介護支援専門員)とどのように連携しながらサービスを調整していくかについて解説します。
利用可能な訪問介護(ホームヘルプサービス)の回数と条件
要介護3の区分支給限度基準額27,048単位(約270,480円)の範囲内であれば、訪問介護(ホームヘルプサービス)を週に複数回利用することが可能です。
利用回数の目安
身体介護(20分以上30分未満):週3~4回程度
生活援助(20分以上45分未満):週2~3回程度
身体介護と生活援助の組み合わせ:利用者の状況に応じて調整
注意点
- 生活援助中心型サービスを一定回数以上利用する場合、市区町村への届出が必要です(2018年10月改定)。
- 具体的な利用回数は、ケアマネジャーが本人の心身状態、家族の介護力、他サービスの利用状況などを総合的に判断して決定します。
ケアマネジャー(介護支援専門員)との連携でできるサービス調整
ケアマネジャー(介護支援専門員)は、要介護3の方の生活状況や心身の状態、家族の希望をふまえて、最適なサービスの組み合わせを提案・調整する役割を担います。
具体的には、以下のようにトータルで介護サービスの計画(ケアプラン)を設計してくれます。
- 訪問介護(ホームヘルプサービス)の回数や時間の調整
- 通所介護(デイサービス)との併用
- 訪問看護や医療機関との連携
- ショートステイ(短期入所生活介護)の活用
特に、介護度の変更や家族の介護力に変化があった場合は、速やかにケアマネジャー(介護支援専門員)へ相談することが大切です。
定期的なモニタリングや面談を通じて、本人と家族双方に無理のない支援体制を維持できるように調整が行われます。
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まとめ
要介護3は、日常生活で継続的な介助が必要となる中等度の状態ですが、介護保険制度を上手に活用すれば、本人もご家族も落ち着いて暮らしを続けることが可能です。
訪問介護(ホームヘルプサービス)や通所介護(デイサービス)、福祉用具レンタル、住宅改修など、生活に合わせた支援を組み合わせれば、在宅介護でも無理のない支援体制を整えることができます。
さらに、介護者の負担や本人の状態に応じて、特別養護老人ホーム(特養)や民間施設といった施設入居という選択肢もあります。ケアマネジャー(介護支援専門員)と相談しながら柔軟にプランを見直すことが大切です。
よくある質問
Q.要介護3でも一人暮らしは可能?
要介護3でも、一人暮らしは可能です。ただし、自立した生活を維持するには、訪問介護(ホームヘルプサービス)や訪問看護、福祉用具の導入など、複数のサービスを適切に組み合わせることが前提となります。
また、安否確認や見守り機能があるサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)への入居も選択肢の一つです。
生活全体を支えるためには、地域包括支援センターやケアマネジャー(介護支援専門員)と連携し、定期的な見直しと柔軟な支援体制の構築が重要です。緊急対応の体制もあわせて準備しておきましょう。
Q.要介護3で障がい者控除は適用される?
要介護3の方も一定の条件を満たせば障がい者控除の対象になります。
具体的には、市区町村から「障がい者控除対象者認定書」の交付を受けることで、扶養している家族が所得税・住民税の控除を受けられます。
特に認知症や身体機能の低下が認められる場合は「特別障がい者」としての控除が適用される可能性があります。
控除の有無は自治体ごとに若干異なるため、早めに市区町村の窓口やケアマネジャーに相談することをおすすめします。
出典:障がい者控除|厚生労働省
Q.施設入居はすぐにできますか?待機期間は?
入居希望者は全国的に多く、厚生労働省の調査「特別養護老人ホームの入所申込者の状況(令和4年度)」によると、特別養護老人ホームの入所待ち高齢者(要介護3以上)の人数は約25.3万人となっています。地域や施設によって待機期間は異なりますが、都市部では数ヶ月から数年単位の待機が発生するケースもあります。
重度の要介護者や介護者が不在の場合など、緊急性が高いと判断されれば優先順位が上がることもありますが、必ずしもすぐに入居できるとは限りません。
一方、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)などの民間施設であれば、比較的早く入居できる場合もあります。
入居を検討する際は、複数の施設に並行して申し込みをしておくのが現実的です。
Q.ケアプラン(サービス介護計画書)はどこで作成する?変更はできますか?
ケアプラン(サービス介護計画書)は、介護保険サービスを利用する際に必ず必要な計画書で、基本的には居宅介護支援事業所に所属するケアマネジャー(介護支援専門員)が作成します。
プランは一度作成したら固定されるものではなく、介護状態の変化や家族の状況に応じて何度でも見直し・変更が可能です。
サービスの使いにくさや負担感を感じたら、遠慮せずにケアマネジャー(介護支援専門員)へ相談することが大切です。
[介護サーチプラス]編集部
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