老人ホーム

ユニット型特養とは?従来型との違いや費用、メリット、入居条件を徹底解説!

高齢者と職員たちが楽しく笑っている

「ユニット型特養」とは、全室個室・少人数制の「ユニットケア」を取り入れた特別養護老人ホームです。入居者の尊厳を大切にし、生活リズムや嗜好に合わせた個別ケアを行うことで、家庭的な雰囲気の中で暮らせる点が特徴です。

一方、従来型特養との違いが分かりにくく、費用や入居条件、待機期間などに不安を感じる方も少なくありません。

この記事では、ユニット型特養の仕組み・メリット・デメリット・費用相場・入居条件を厚生労働省の公的データをもとにわかりやすく解説します。

従来型との比較表や、入居を検討する際の注意点、よくある質問も掲載しているので、施設選びの参考にしてください。

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廊下に車椅子が存在してる様子
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ユニット型特養とは?

ユニット型特養とはユニット型特別養護老人ホームの略称で、厚生労働省が推進する「ユニットケア」の理念を取り入れた介護施設です。

各ユニットは「原則としておおむね10人以下とし、15人を超えないものとする」の少人数で構成されており、入居者一人ひとりに個室が用意されています。入居者は一人ひとり個室で生活しながら、共同生活室(リビング)や食堂などの共用スペースで他の入居者と交流します。

集団生活の中でも、生活リズムや好みを尊重した支援が行われます。家庭に近い雰囲気の中で過ごせるよう工夫されており、「個別ケア」と「自分らしい暮らし」の両立を目指す点が大きな特徴です。

こうした環境により、従来型の画一的なケアに比べて、入居者の尊厳や生活の質(QOL)を重視した支援が可能になります。

出典:ユニットケアについて|厚生労働省
出典:個室ユニット型施設の推進に関する検討会報告書|厚生労働省
出典:資料1-1基本指針の構成について|厚生労働省

木の小さな家の模型
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ユニット型特養と従来型特養の違い

ユニット型特養と従来型特養は、居室構造や生活単位、ケア方針に大きな違いがあります。

ユニット型は「全室個室」「少人数単位の生活」を基本とし、入居者一人ひとりの生活リズムや希望に合わせた個別ケアを行うのが特徴です。

一方、従来型は多床室中心の集団生活です。食事・入浴・起床などのスケジュールが画一化されやすい傾向があります。以下の表で主な違いを比較したのでぜひチェックしてみてください。

項目

ユニット型特養

従来型特養

居室構造

全室個室

多床室中心(2〜4人)

生活単位

原則としておおむね10人以下、15人を超えないもの

大人数での集団生活

ケア体制

個別ケア(生活リズムや嗜好に合わせた支援)

画一的なケア(共通スケジュールで運営)

生活環境

家庭的な雰囲気・プライバシー確保

共有空間中心・プライバシー制限あり

費用傾向

やや高め(個室分の居住費が上乗せ)

比較的安価(多床室分の居住費)

法的基準

介護保険法施行規則で「1ユニット15人以下」と規定

特に制限なし

出典:ユニットケアについて
出典:介護保険法施行規則(第75条の14)
出典:個室ユニット型施設の推進に関する検討会報告書|厚生労働省

居室構造の違い(個室vs相部屋)

ユニット型特養は全室個室が基本で、各居室が共同生活室(リビング)に隣接する構造です。介護保険法施行規則では「15人を超えないものとする」と規定されています。

2024年改正で『主たる所属ユニットを定めつつ、必要に応じたユニット間異動が可能』と明記されました。

一方、従来型特養は2〜4人の多床室が中心で、プライバシーの確保が難しく、共有空間での生活が主体となります。

個室中心のユニット型では、入居者の生活リズムや嗜好を尊重しやすい環境が整っていると言えるでしょう。

出典:介護保険法施行規則(第75条の14)

ケア体制の違い

ユニット型特養では、少人数ごとに専任スタッフが配置され、入居者の生活習慣や嗜好に合わせた個別ケアを実施します。

起床・食事・入浴なども一律ではなく、利用者主体のスケジュールを尊重した支援が行われます。

一方、従来型は大人数に対して同一スケジュールを適用する画一的ケアが中心で、柔軟な対応が難しい場合もあります。

ユニット型では「生活の継続性」と「自立支援」を重視するケア体制が整えられていることが特徴です。

生活環境・プライバシーの違い

ユニット型特養では、個室と共同生活室(リビング)を組み合わせた構成により、家庭的な雰囲気とプライバシーの確保を両立しています。

少人数のため職員との関係も密になりやすく、心理的な安心感を得やすい点も特徴です。

一方、従来型は相部屋や大広間中心で、生活空間が共有されやすく、静けさや個人空間の確保が難しいケースも見られます。

厚生労働省の検討会報告書でも、ユニット型は「尊厳を重視した生活の場」として位置づけられています。


出典:個室ユニット型施設の推進に関する検討会報告書

費用・運営コストの違い

ユニット型特養は全室個室・ユニット制の設計により建築コストが高く、居住費も高めに設定される傾向があります。

また、少人数単位の運営となるため、人件費などの運営コストも上昇しやすいのが特徴です。

一方、従来型は多床室で空間効率が高く、利用者負担も比較的抑えられます。

人員配置・介護職の働き方の違い

ユニット型特養では、ユニットごとに固定配置の介護職員を設けるため、担当利用者との信頼関係を築きやすい一方、少人数夜勤などの負担が生じやすい側面もあります。

入居者一人ひとりに寄り添う生活支援中心の働き方が求められ、柔軟な対応力が必要です。

従来型はフロア全体を複数職員で分担し、分業的なケアが一般的です。

ユニット型では「チームケア」の意識が強く、家庭的な雰囲気づくりに職員も主体的に関わることが求められます。

介護部屋でベッドの隣に車椅子がある
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ユニット型特養のメリット

ここでは、ユニット型特養の主なメリットを4つの観点から解説します。ユニット型は、全室個室・少人数ケアを基本とし、入居者の尊厳と生活の継続性を重視した仕組みです。

従来型にはない「プライバシー」「個別支援」「家庭的な雰囲気」「認知症ケアへの効果」が期待される点が、国の普及方針にもつながっています。

プライバシーの確保

ユニット型特養は全室個室が基本構造であり、入居者一人ひとりに専用の生活空間が確保されます。これにより、就寝・起床・趣味・面会などを自分のペースで行うことができ、他者の生活音や視線を気にせずに落ち着いた日常を送れます。

ユニット型特養は、各ユニットが原則としておおむね10人以下(最大15人以下)の少人数で構成され、共同生活室(リビング)での交流を保ちながら、必要に応じて自室で静かな時間を過ごすことも可能です。

出典:ユニット型施設等における人材育成に関する調査研究事業報告書
出典:介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)|厚生労働省

個別ケアの充実

ユニット型特養では、ユニットごとに専任スタッフを配置し、入居者の生活習慣や嗜好に合わせた個別ケアを行います

起床・就寝時間や食事のタイミング、入浴の頻度などを一律に決めるのではなく、本人の希望を尊重した柔軟な支援計画を立てるのが特徴です。

このような「生活リズムに沿った個別支援」は、入居後の混乱やストレスを軽減し、QOL(生活の質)や介護サービスの満足度向上にもつながるとされています。


出典:個室ユニット型施設の推進に関する検討会報告書

顔なじみの関係性

ユニット型特養は、各ユニットが原則としておおむね10人以下(最大15人以下)の少人数で構成され、共同生活室(リビング)やキッチンなどの共用空間を中心に、少人数単位での生活環境が整備されている点が特徴です。

少人数単位のため職員と入居者の距離が近く、顔なじみの関係を築きやすく、「家族のような関係性」が生まれやすい点も特徴です。

また、個室には家具や思い出の品を持ち込むこともでき、自宅に近い住環境を再現できます。

従来型の大規模集団生活と比べ、ユニット型は「自宅に近い住環境を再現できる」や「自分の居場所」を感じやすい構造になっています。

出典:令和3年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査(令和5年度調査)個室ユニット型施設の整備・運営状況に関する調査研究事業報告書
出典:個室ユニット型施設の推進に関する検討会報告書|厚生労働省

認知症ケアに配慮した環境

ユニット型特養では、少人数のユニットごとに固定配置のスタッフが継続的に関わるため、認知症のある入居者にとって馴染みのある職員が日常を支えます。

こうした安定した人間関係は、不安や混乱を軽減し、BPSD(認知症の行動・心理症状)の軽減に寄与する可能性があります。

また、全室個室の環境により過剰な刺激を避け、本人のペースで過ごせることも重視されています。

出典:個室ユニット型施設の推進に関する検討会報告書(3)ユニットケアの推進について-
出典:認知症高齢者の行動・心理症状(BPSD)を改善するための支援およびその支援における自己効力感に関する文献研究

赤鉛筆がデメリットと文字があるブロックの上に置かれている
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ユニット型特養のデメリット・課題

ここでは、ユニット型特養の導入に伴う主な課題を4つの観点から解説します。

ユニットケアは入居者の尊厳や個別ケアを重視する一方で、費用負担の増加や人員配置の難しさ、施設ごとの運営格差などの課題も指摘されています。

制度の趣旨を理解しつつ、現実的な選択を行うためにも、これらの側面を知っておくことが重要です。

費用が高い傾向がある

ユニット型特養は少人数運営・共用部面積の相対的な大きさ・固定配置などの要因から、光熱費や人件費が増えやすい傾向があります。居住費が個室区分となるため、補足給付の適用がない場合に自己負担が従来型より高くなるケースが見られます。

費用項目

ユニット型

従来型(多床室)

居住費

高め(個室区分)

低め(相部屋区分)

食費・管理費

同程度

同程度

建設コスト

高い

比較的低い

運営コスト

増えやすい傾向※

相対的に抑えやすい傾向

※運営コストは施設規模・レイアウト・人員配置方針・エネルギー対策等で差が生じます。

人員配置の負担が大きい

ユニット型特養は「ハード(建物構造)」だけでなく、「ソフト(ケアの質)」の両立が求められますが、職員の経験・研修体制・運営方針によって実践の質に差が出やすいと指摘されています。

厚生労働省の検討会でも、理念型ユニットケアを実践する施設と、形式的なユニット運営に留まる施設の格差が課題として挙げられています。

ケア方針や人材育成の取り組みを確認し、施設ごとの特色を見極めることが重要です。

出典:介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
出典:ユニット型施設等における人材育成に関する調査研究事業報告書|株式会社日本総合研究所

施設による質の差が出やすい

ユニット型特養は「ハード(建物・個室+小規模ユニット)」だけでなく、「ソフト(ユニットケアの実践)」の両立が不可欠です。

厚生労働省の検討会報告書でも、人員配置の負担や人材確保の難しさが指摘され、さらに研修受講状況やユニットリーダーの確保状況により、ユニット間で実践の質に格差が生じていることが示されています。

施設のケア方針・研修体制・人材育成の取り組みを確認し、施設ごとの特色を見極めることが重要です。

出典:令和3年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査(令和5年度調査)(3)個室ユニット型施設の整備・運営状況に関する調査研究事業報告書|厚生労働省
出典:介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)_厚生労働省

地域によって入居待機が長い場合も

ユニット型特養は全国的に整備が進んでいるものの、地域ごとに整備状況や入居待機の状況に差があります。都市部では新設施設が多い一方で、入居希望者の集中により待機期間が長期化する傾向が見られます。

逆に、地方では従来型特養が依然として主流の地域もあり、ユニット型の選択肢が限られることがあります。

また、入居優先度は要介護度や在宅生活の困難度などで判断されるため、要介護3以上でもすぐに入居できない場合もあります。

入居を検討する際は、市区町村の介護保険担当窓口で最新の待機状況を確認することが推奨されます。


出典:令和5年介護サービス施設・事業所調査の概況|厚生労働省

計算機と青い屋根の小さな家の模型
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ユニット型特養の費用相場は?自己負担額は?

ここでは、ユニット型特養を利用する際に必要となる費用の内訳と目安を紹介します。

特別養護老人ホームは介護保険施設のため、入居一時金は原則不要で、毎月の自己負担が中心です。

費用は「介護サービス費」「居住費」「食費」「日常生活費」などで構成され、介護度や所得により異なります。

入居一時金は原則なし

ユニット型特養は、介護保険施設に分類されるため、民間の有料老人ホームのような高額な入居一時金(敷金・礼金)は原則不要です。

入居時に必要となる主な費用は以下の2点です。

  • 介護保険の認定(原則:要介護3以上)
  • 初月分の費用(介護サービス費・居住費・食費・日用品費など)

まとまった「頭金」を求められることはほとんどありませんが、一部の自治体や施設では、数万円程度の保証金や預かり金を設定しているケースもあります。(退去時に精算または返還される場合が多い)

このように、初期費用が抑えられる点がユニット型特養の大きな特徴であり、長期的な入居を前提とした経済的に安定した生活設計が可能です。

出典:介護保険制度の概要|厚生労働省
出典:施設サービス等について|厚生労働省

月額費用の目安(介護サービス費・居住費・食費)

ユニット型特養の月額費用は、介護サービス費・居住費・食費・日常生活費です。

要介護3・1割負担のケースでは、以下のような目安となります。

ユニット型特養と従来型特養の月額費用目安(要介護3・1割負担の場合)

費用項目

ユニット型特養(個室)

従来型特養(多床室)

施設サービス費の1割

約24,450円(815単位×30日=24,450円)

約22,470円(749単位×30日=22,470円)

居住費

約61,980円(2,066円/日)

約27,450円(915円/日)

食費

約43,350円(1,445円/日)

約43,350円(1,445円/日)

日常生活費

約10,000円(施設により設定されます)

約10,000円(施設により設定されます)

合計(月額)

約139,780円

約103,270円

  • 試算前提:令和6年度(2024年度)介護報酬改定/要介護3・1割負担/地域区分=1.00/加算なし/30日換算/補足給付なし。
  • 実際は施設契約・所得区分・補足給付の有無により変動します。

※居住費・食費は「基準費用額ベース」での自己負担例です。実際は施設契約・所得区分により異なります。

※「補足給付」利用者(所得・資産要件を満たす方)は、日額の負担限度額が適用され、合計8〜11万円前後まで下がるケースがあります。

※1ヶ月30日換算です。

出典:特別養護老人ホーム(ユニット型個室)利用料金表
出典:特養料金案内|ユニット型特別養護老人ホーム・高齢者グループホーム小原安立
出典:令和6年度介護報酬改定について|厚生労働省

介護度別の自己負担目安

ユニット型特養における介護サービス費(1割負担)の月額目安は、以下の通りです。

要介護度

単位数/日(改定後)

月額(概算)

要介護3

815

約24,450円

要介護4

886

約26,580円

要介護5

955

約28,650円

※算式=単位数×10円×0.1×30日。地域区分・加算で変動

出典:令和6年度介護報酬改定について|厚生労働省

負担軽減制度(補足給付・高額介護サービス費)

ユニット型特養では、所得や資産に応じて自己負担を軽減する公的制度が利用できます。代表的なのが、「補足給付」と「高額介護サービス費」の2つです。


出典:介護保険最新情報Vol.1390令和7年6月4日厚生労働省老健局介護保険計画課

①補足給付(特定入所者介護サービス費)


居住費(家賃相当)と食費の負担を軽減する制度で、世帯全員が市町村民税非課税であり、かつ預貯金等が一定額以下の方(単身500万円〜1,000万円、夫婦1,500万円〜2,000万円)が対象です。

区分に応じて1日あたりの自己負担額が減額され、月額で数万円の軽減が受けられます。


補足給付の対象者と預貯金額の要件一覧表

利用者負担段階

補足給付の主な対象者

(※非課税年金も含む)

預貯金額(夫婦の場合)

第1段階

生活保護受給者

要件なし

第1段階

世帯全員が市町村民税非課税である老齢福祉年金受給者

1,000万円(2,000万円)以下

第2段階

年金収入金額(※)+合計所得金額80万円以下

650万円(1,650万円)以下

第3段階①

年金収入金額(※)+合計所得金額が80万円超〜120万円以下

550万円(1,550万円)以下

第3段階②

年金収入金額(※)+合計所得金額が120万円超

500万円(1,500万円)以下


社会福祉法人等による利用者負担軽減制度事業も対象となる場合があります(事業を実施していない社会福祉法人等もあります)。

出典:令和6年8月からの特定入所者介護(予防)サービス費の見直しに係る周知への協力依頼について|厚生労働省

②高額介護サービス費

介護サービス費(介護保険の自己負担分)が、1か月あたりの上限額を超えた場合に超過分が払い戻される制度です。

上限額の目安

  • 一般世帯:44,400円/月
  • 低所得世帯:15,000〜24,600円/月

両制度は併用可能で、申請により総負担を大幅に抑えることができます。手続きは、市区町村の介護保険担当窓口で行います。

出典:令和3年8月利用分から高額介護サービス費の負担限度額が見直されます|厚生労働省
出典:福岡市自己負担が著しく高額になった場合(1)高額介護(予防)サービス費の支給

水色の紙とクリップがついてる白紙
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ユニット型特養の入居条件

ユニット型特養への入居は、介護保険法に基づく要件を満たす必要があります。

ここでは、入居対象者の条件、申込み手続き、優先順位の考え方を整理します。

特別養護老人ホームは介護保険施設に分類され、要介護度や在宅生活の困難さを基準に入居の可否が判断されます。申込みは市区町村を通じて行われ、自治体が設ける「入所指針」に基づき選考が行われます。

要介護3以上が原則

特養(ユニット型・従来型を含む)への入居は、介護保険法および関連省令に基づき原則として要介護3以上の方が対象です。ただし、次のような特例入所が認められる場合もあります。

  • 家族による虐待がある
  • 認知症の症状により日常生活が著しく困難
  • 介護者の心身の事情により在宅生活が維持できない

これらの特例は、施設の入所検討委員会により判断され、要介護1・2でも入所可能となる場合があります。

また、特養は介護施設であり、日常的な医療行為が必要な方は原則入居対象外です。

医療依存度が高い場合は、介護医療院や医療機関の利用が検討されます。


出典:介護保険制度をめぐる状況について|厚生労働省

申込み手続き(市区町村経由)

特養の入居申込みは、居住する市区町村の介護保険担当窓口で受け付けています。

申込みの流れは以下の通りです。

  1. 要介護認定の取得(原則:要介護3以上)
  2. 入居申込書の提出(市区町村または施設窓口)
  3. 家族構成・生活状況・医療情報などの記入
  4. 自治体・施設による審査・優先順位の判定
  5. 入居候補者への連絡・面談・契約

複数の施設に同時申込みも可能ですが、自治体ごとに必要書類や申請方法が異なるため、事前確認が必要です。申込み後は、定期的に待機状況を確認しておくと良いでしょう。

また、自治体によっては特別養護老人ホームへの申し込みが地方自治体を通さず、施設に直接行うケースがあります。

出典:介護サービス関係Q&A|厚生労働省
出典:介護保険施設等運営指導マニュアル|厚生労働省
出典:介護保険制度の概要|厚生労働省
出典:中野区特別養護老人ホーム申込み案内 | 中野区

優先順位の基準(介護度・在宅困難度)

入居の優先順位は、自治体が定める入所指針に基づき、以下の観点から総合的に判断されます。

判断基準

内容

介護度

要介護5・4など、支援ニーズが高い方を優先

在宅困難度

一人暮らし、介護者不在、老老介護、虐待など

緊急性

在宅生活が維持できない状況、介護者の負担限界

医療依存度

医療管理が不要な方を優先(医療行為が必要な場合は除外)


公平性確保のため、厚生労働省は自治体に対し「入所指針」の策定・運用を求めています。

出典:指定介護老人福祉施設等の入所に関する指針について(◆平成26年12月12日老高発第1212001号)

複雑の表情で悩んでる高齢者の女性
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ユニット型特養が入居待ち状態の場合どうする?

ユニット型特養は人気が高く、地域によっては申込みから入居までに数カ月〜1年以上待つこともあります。

待機期間中は、ショートステイや介護老人保健施設(老健)などの一時利用を検討しましょう。

また、複数施設への同時申込みも可能なため、候補を広げておくと良いかもしれません。市区町村の介護保険課では、最新の空き状況や優先順位の基準を確認できます。

要介護度や家庭状況の変化があれば、定期的な情報更新も忘れずに行いましょう。

ベンチに座ってる高齢者の2人
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ユニット型特養はどんな人に向いている?

ここでは、ユニット型特養の特徴を踏まえ、どのような方に向いているのかを解説します。
ユニット型は、個室・少人数制による生活支援を行うため、プライバシーや自立的な生活を重視したい方、認知症ケアの質を求める方に適しています。従来型と比較し、生活の自由度を重視したい方におすすめの施設です。

プライバシーを大切にしたい人

ユニット型特養は全室個室で、入居者一人ひとりの生活空間が確保されています。
他者と部屋を共有することがないため、就寝・着替え・面会・趣味などの時間を自分のペースで過ごせます。
「他人と同室だと落ち着かない」「自分の空間を大切にしたい」という方には特に向いています。
また、静かな環境を求める方や、周囲の生活音に敏感な方にも適しています。
プライバシーを尊重する住環境が、生活満足度の向上につながる可能性があります。

生活リズムを大切にしたい人

ユニット型特養では、起床・食事・入浴などの時間を入居者の生活リズムや嗜好に合わせて調整できます。

決められた時間に全員が一斉に行動する従来型と異なり、「朝はゆっくり過ごしたい」「食事は少なめにしたい」といった希望を尊重したケアが可能です。


日々の生活習慣を維持したい方や、慣れた生活スタイルを崩したくない方に適した環境です。

認知症ケアを重視したい人

ユニット型特養では、少人数のユニットごとに固定スタッフが関わるため、入居者にとって顔なじみの職員が日常生活を支える体制が整っています

このような「馴染みの関係」を重視した環境は、認知症の方が安心感を得やすく、混乱や不安の軽減につながるとされています。

厚生労働省のユニットケア推進資料でも、少人数・固定配置による継続的な関わりが、認知症ケアの質を高める要素として位置づけられています。

家族との関わりを重視したい人

ユニット型特養では、個室での面会や、共同生活室(リビング)での交流がしやすく、家族との時間を持ちやすい環境です。

自室に思い出の品を持ち込むことも可能で、家族の写真や家具を置くことで「自分らしい空間」を演出できます。


また、職員との連携を通じて、家族がケアに関わる機会も多く、入居後も関係性を維持しやすい点が特徴です。家族の存在を身近に感じたい方におすすめです。

出典:介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)|厚生労働省

黄色い屋根と緑色屋根の小さな家模型
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ユニット型特養と他施設の比較

ユニット型特養は、介護保険施設の中でも「終の棲家」として位置づけられた長期入居型の施設です。

一方、介護老人保健施設(老健)やグループホーム、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、目的やケア体制、費用が異なります。以下の表で、それぞれの特徴を整理します。

項目

ユニット型特養

介護老人保健施設(老健)

グループホーム

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)

入居対象

原則:要介護3以上(特例で要介護1・2も可)

要介護1以上

要支援2・要介護1〜5(認知症の方)

自立〜要介護5(重度は費用増)

目的

長期生活の場(終身入居)

在宅復帰支援(中間施設)

認知症ケア・共同生活

住まい+生活支援

居室形態

全室個室(ユニット制)

個室・多床室混在

全室個室

個室(賃貸契約)

介護体制

介護職員が24時間常駐

介護職員・看護師が24時間常駐

介護職員が24時間常駐

訪問介護を外部委託(常駐職員は安否確認・生活相談)

医療体制

嘱託医・協力医療機関による連携

医師・看護師が常駐(医療強め)

協力医療機関あり(医療行為は限定)

外部医療機関との連携

入居期間

長期(終身)

原則3〜6か月(延長可)

長期(認知症進行期)

契約による任意(短期・長期)

費用目安(月額)

約8.5〜13万円(補足給付前)

約9〜15万円

約12〜18万円

約10〜20万円

特徴

終の棲家として生活支援中心の介護

医療・リハビリ重視、在宅復帰前提

家庭的な少人数ケア、認知症専門

住まいの自由度が高く、外部サービス利用可

老健との違い

介護老人保健施設(老健)は、医師と看護職員が配置されており、病状が安定した要介護者を対象に、在宅復帰を目的としたリハビリ・生活支援を提供します。

退院後すぐの生活機能回復や、自宅での生活準備を進めたい方に適した施設です。

一方、ユニット型特養は終身入居を前提とした生活の場であり、医療体制は老健ほど手厚くありませんが、生活の自由度・居住環境の快適さに優れています。


そのため、「医療的ケアを受けながら在宅復帰を目指したい方」は老健、「長期的な住まいとして安定した生活を送りたい方」はユニット型特養が適しています。

グループホームとの違い

グループホーム(認知症対応型共同生活介護)は、認知症の高齢者が5〜9人の少人数単位で共同生活を送る施設です。

家庭的な環境の中で介護職員が24時間体制で支援し、認知症ケアに特化した専門的サポートが受けられます。

対象は要支援2または要介護1以上の認知症の方で、医療行為や重度の身体介護には対応しにくい場合があります。

一方、ユニット型特養は要介護3以上の重度者にも対応し、医療連携体制や終身利用を前提とした支援が可能です。


認知症の初期〜中期で家庭的な共同生活を望む場合はグループホーム、重度介護や長期入居を希望する場合はユニット型特養が適しています。

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)との違い

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、バリアフリー設計の賃貸住宅に、安否確認と生活相談といった基本サービスを組み合わせた居住形態です。

介護が必要な場合は、外部の訪問介護・訪問看護サービスを個別契約して利用します。

自立または軽度要介護者を主な対象としており、自由度の高い暮らしができる反面、介護度が重くなると住み替えが必要になる場合もあります。

一方、ユニット型特養は介護職員が24時間常駐し、要介護3以上の中重度者を対象に、日常生活全般の介護支援を提供します。


そのため、「自立した生活の継続」を重視する方にはサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)、「終の棲家としての介護体制」を求める方にはユニット型特養が適しています。

高齢者と職員が笑いながら廊下を歩いてる
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まとめ

ユニット型特養は、全室個室・少人数制(ユニットケア)を導入した新しい形の特別養護老人ホームです。入居者の尊厳と生活の継続性を重視し、従来型よりも個別ケア・プライバシーの確保・家庭的な雰囲気を実現できます。

一方で、費用が高くなりやすいことや、人員確保・運営の質に差が出やすいという課題もあります。入居には原則要介護3以上の認定が必要で、申込みは市区町村の介護保険窓口を通じて行います。

「プライバシーを大切にしたい」「自分の生活リズムを維持したい」「認知症ケアに重点を置きたい」と考える方には、ユニット型特養が適しています。


入居を検討する際は、自治体窓口やケアマネジャーと相談しながら、費用・ケア内容・待機状況を比較して、自分や家族に合った施設を選びましょう。

ユニット型特養に関するよくある質問

よくある質問

Q.ユニット型特養の費用はいくら?
A.

ユニット型特養の費用は、補足給付なし(基準費用額ベース)で約12〜17万円が目安です。

補足給付あり(所得段階に応じた負担限度額適用)の場合は約8.5〜11万円程度まで下がるケースがあります(いずれも要介護3・1割・地域区分1.00・加算なし・30日換算の例)。

出典:介護保険施設等における居住費の負担限度額が令和6年8月1日から変わります|厚生労働省
出典:介護保険制度の概要|厚生労働省
出典:介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)高齢・介護

Q.従来型とユニット型特養はどちらが安い?
A.

従来型特養の方が費用はやや安い傾向にあります。理由は、多床室(相部屋)が中心で居住費が抑えられるためです。

施設種別

月額目安

特徴

ユニット型特養

約12〜17万円

全室個室/個別ケア中心

従来型特養

約8〜13万円

多床室中心/費用を抑えやすい


ただし、ユニット型はプライバシーの確保・家庭的な環境・個別ケアの実践など、生活の質(QOL)が高いことから、費用差に見合う価値があると評価されています。

Q.ユニット型特養に入居するにはどうすればいい?
A.

ユニット型特養を含む特別養護老人ホームへの入居は、市区町村の介護保険担当窓口を通じて申込みます。手続きの流れは以下の通りです。

  1. 要介護認定の取得(原則:要介護3以上)
  2. 入居申込書の提出(希望施設・生活状況などを記入)
  3. 自治体・施設による審査・優先順位の決定
  4. 空室発生後に入居案内・面談

なお、要介護1・2でも在宅生活が著しく困難な場合は、特例で入居が認められるケースがあります。

Q.ユニット型特養は入居までどれくらいかかる?
A.

入居までの期間は、地域や施設の混雑状況によって大きく異なります。特に都市部や人気施設では、半年〜1年以上待機することも珍しくありません。入居の優先順位は以下を基準に決定されます。

  • 要介護度(要介護4〜5が優先)
  • 在宅困難度(独居・介護者不在・虐待・老々介護など)
  • 緊急性(在宅生活の維持が困難な場合)

複数施設への同時申込みや、自治体への定期的な確認が推奨されます。

Q.介護職として働くならどんな違いがある?
A.

ユニット型特養では、少人数ユニットごとに職員が固定配置され、入居者の生活リズムに沿った個別ケアを実践します。

日常生活支援を中心とした包括的なケア業務が中心で、入居者との関係性を深めやすい環境です。

一方、従来型特養では、フロア全体を複数の職員で分担し、効率的・分業的なケアが行われます。

そのため、「一人ひとりに寄り添うケア」を重視する人はユニット型、「チームで多人数を支える」スタイルを望む人は従来型が向いています。

豊富な臨床経験と高度な専門資格を活かし、医療・介護分野における正確で信頼性の高い情報監修を行っています。
監修者

海野 和看護師

この記事の監修者情報です

2006年に日本消化器内科内視鏡技師認定証を取得し、消化器系疾患の専門的な知識と技術を習得。2018年にはNCPR(新生児蘇生法専門コース)の認定を取得し、緊急時対応のスペシャリストとしての資格を保有。さらにBLS(HeartCode®BLSコース)を受講し、基本的生命維持技術の最新知識を習得。豊富な臨床経験と高度な専門資格を活かし、医療・介護分野における正確で信頼性の高い情報監修を行っています。

【保有資格】

日本消化器内科内視鏡技師認定証(2006年取得)
NCPR(新生児蘇生法専門コース終了認定証)(2018年取得)
BLS(HeartCode®BLSコース)受講済み

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