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- 認知症介護のスキルを高めたい介護職員専門的な知識と実践スキルを体系的に学べる研修で、現場での対応力やケアの質を向上させたい方に最適です。
- キャリアアップやリーダー職を目指す介護職員研修修了後はリーダーや管理者職へのステップアップが可能。
- 介護施設で認知症ケアの責任者・計画作成担当になる人実務経験と研修で得られる知識を活かし、施設内の認知症ケア計画作成やチーム指導、加算要件の達成に貢献できます。

認知症介護実践者研修とは
認知症介護実践者研修は、認知症ケアの質を向上させるための専門研修です。
厚生労働省の指導のもと、各都道府県が実施主体となり、介護現場で一定の経験を積んだ職員が受講対象となります。
この研修の目的は、認知症の方の行動・心理症状(BPSD)や生活背景を深く理解し、本人の尊厳を守りながら適切なケアを実践できる人材を育成することです。
カリキュラムは、認知症の基礎知識からアセスメント、ケア計画の立案、家族支援、チームアプローチ、地域連携まで幅広く、講義・演習・実習が組み合わされています。
出典:令和7年度 認知症介護実践研修(実践者研修・実践リーダー研修)/大阪府(おおさかふ)ホームページ [Osaka Prefectural Government]
研修の目的と背景
認知症介護実践者研修は、厚生労働省が示す方針に基づき、都道府県や指定研修機関によって実施される公的な研修制度です。
目的は、認知症のある方が尊厳を保ちながら生活できるよう、介護職員に専門的な知識と技術を身につけてもらうことにあります。
近年は、認知症高齢者の増加に伴い、施設や在宅サービスにおいても専門性の高いケアが強く求められています。
そのため、事業所の人員配置基準や介護報酬加算の要件として研修修了が義務付けられるケースも多く、職員一人ひとりのキャリア形成だけでなく、事業所運営においても欠かせない制度となっています。
研修の種類
認知症介護実践者研修には段階的なカリキュラムが用意されており、経験や役割に応じて受講内容が異なります。
研修名 | 内容・目的 | 主な対象者 | 実施方法 |
---|---|---|---|
認知症介護基礎研修 | 認知症ケアの基礎知識・心構えを学ぶ | 初任者・介護職全般 | eラーニング中心 |
認知症実践者研修 | 実践的なスキル習得(講義+自施設実習) | 実務経験2年以上の介護職 | 集合+オンライン+実習 |
認知症実践リーダー研修 | チームケアを指導できるリーダー育成 | 実務経験5年以上の職員 | 講義+実習 |
認知症管理者研修 | 事業所運営・人材育成の知識習得 | グループホーム・小規模多機能の管理者 | 講義+演習 |
認知症介護基礎研
まず「認知症介護基礎研修」では、認知症ケアの基本姿勢や初歩的な対応方法を学びます。
次に「認知症介護実践者研修」では、実際の現場で必要とされる観察力・コミュニケーション技術・実習を通じたケアの応用を習得します。その上で「認知症介護実践リーダー研修」では、チームリーダーとして部下を指導・育成しながらケアの質を高める力を養います。
さらに「認知症対応型サービス事業管理者研修」や「開設者研修」「小規模多機能型サービス等計画作成担当者研修」など、管理者・経営者層を対象にしたプログラムも設けられています。このように、基礎から指導者まで体系的に学べるのが大きな特徴です。
受講対象者
対象となるのは、主に介護保険施設や在宅サービス事業所で働く介護職員です。基礎研修は資格の有無を問わず、現場で認知症の方と接する職員なら広く受講可能です。
研修名 | 主な対象者 |
---|---|
基礎研修 | 資格不問、現場で認知症ケアに関わる介護職員 |
実践者研修 | 認知症介護基礎研修修了者、実務経験2年以上の介護職員 |
実践リーダー研修 | 認知症の人の介護に関する実務経験が5年以上の方 |
管理者研修 | 認知症対応型サービス事業の管理者 |
開設者研修 | 小規模多機能やグループホームの代表者 |
計画作成担当者研修 | 介護支援専門員(ケアマネジャー) |
一方、実践者研修やリーダー研修は、概ね5年以上の従事経験を有し、ケアチームのリーダーや、リーダーになることが予定されている方。また、実践者研修を修了し1年以上経過している方や介護福祉士・看護師・社会福祉士などの有資格者も対象に含まれます。
また、事業所の管理者や計画作成担当者、法人の代表者などは、それぞれの役割に応じた研修が用意されています。
自治体によっては事業所推薦が必要な場合も多く、個人での申込ができないケースもあります。まずは勤務先の研修担当や自治体窓口に確認することが大切です。

認知症介護実践者研修の受講要件
認知症介護実践者研修を受講するためには、一定の資格や実務経験が必要です。
2024年4月から認知症介護基礎研修が完全義務化され修了していることが前提ですが、介護・医療の国家資格を持っている方や、介護関連の研修を修了している方も対象となります。
これは、すでに介護や医療に関する基礎的な知識と実務経験を備えているとみなされるためです。下記のいずれかに該当すれば、受講が可能です。
区分 | 資格・研修 |
---|---|
基礎研修修了者 | 認知症介護基礎研修修了者 |
介護系資格 | 介護福祉士/介護支援専門員(ケアマネジャー)/介護職員基礎研修課程修了者/訪問介護養成研修(1級課程・2級課程)修了者 |
医療系資格 | 医師/歯科医師/薬剤師/看護師/准看護師/理学療法士/作業療法士/言語聴覚士/精神保健福祉士 |
その他介護関連資格 | 実務者研修修了者/介護職員初任者研修修了者/生活援助従業者研修修了者 |
栄養・リハ系資格 | 管理栄養士/栄養士/あん摩マッサージ師/はり師/きゅう師 など |
出典:認知症介護各研修について|認知症介護各研修について|岐阜県福祉事業団の研修サイト
介護・医療・栄養分野など幅広い資格保持者が対象となります。つまり、現場で認知症ケアに関わる職員の多くがステップアップとして受講できる研修といえるでしょう。

認知症介護実践者研修の概要
ここでは、認知症介護実践者研修の全体像を紹介します。
日程や期間、オンライン・集合形式を組み合わせた受講方法、そして基礎研修修了や実務経験などの受講条件について解説し、受講を検討する方がイメージしやすいよう整理しました。
【日程・期間】講義+自施設実習の流れ
認知症介護実践者研修は、講義と演習に加えて「自施設での実習」を組み合わせて行われます。
期間は自治体や研修機関によって異なりますが、一般的には2か月前後かけて修了するケースが多いです。
- 講義・演習:およそ6〜9日間(オンラインや集合形式)
- 自施設実習:約4〜5週間(中間振り返りを含む)
座学で得た知識をすぐに現場で活用し、その成果を報告・振り返りながら学ぶ実践的なカリキュラムが特徴です。
【受講方法】オンライン・集合研修・自施設実習
近年はICT活用が進み、多くの都道府県で オンライン(Zoomなど)と集合研修を組み合わせたハイブリッド形式が導入されています。
研修形式 | 内容 |
---|---|
オンライン研修 | 講義やグループワークをウェブ会議システムで受講 |
集合研修 | 会場に集まり、演習・ロールプレイやディスカッションを実施 |
自施設実習 | 勤務先の施設で実習を行い、報告書を提出 |
この流れにより、働きながらでも受講しやすく、現場の実務に直結した学びを深めることができます。
【受講条件】基礎研修修了や実務経験など
実践者研修は「誰でも受講できる」わけではなく、一定の条件を満たす必要があります。多くの自治体では以下が共通の要件となっています。
- 認知症介護基礎研修を修了している、または同等の知識を有する
- 介護職員として 実務経験が2年以上 あること
- 身体介護に関する基本的な知識・技術を修得していること
- 所属施設・事業所から推薦を受けていること(個人申込不可の場合あり)
これらの条件は「一定以上の実務スキルを持つ職員が、さらに専門性を高める」という趣旨に基づいています。

【令和7年度】東京都認知症介護研修のスケジュール
東京都では、認知症介護研修を年間を通じて複数回開催しています。
基礎研修から実践者・リーダー研修、管理者や開設者向けの研修まで体系的に用意されており、受講者の経験や役割に応じてステップアップできる仕組みとなっています。
研修名 | 回数 | 研修内容 | 期間・日数(標準) |
---|---|---|---|
認知症介護基礎研修 | 全20回 | eラーニング(150分程度) | 配信+オンデマンド |
認知症介護実践者研修 | 全20回 | eラーニング(450分)+講義・演習5日間+職場実習(約4週間) | 約2か月 |
認知症介護実践リーダー研修 | 全6回 | eラーニング(330分)+講義・演習7日間+他施設実習3日間+自施設実習4週間 | 約2〜3か月 |
認知症対応型サービス事業 管理者研修 | 全6回 | 講義・演習2日間+他施設実習1日間 | 計3日 |
認知症対応型サービス事業 開設者研修 | 全2回 | 講義・演習1日間+他施設実習1日間 | 計2日 |
小規模多機能型サービス等 計画作成担当者研修 | 全5回 | 講義・演習2日間 | 計2日 |
このように、東京都の研修体系は介護現場の幅広い職員を対象に設計されており、知識から実践、マネジメントまで段階的に学べます。
詳細な日程や申込方法は毎回発行される最新のパンフレットに掲載されるため、必ず最新情報をご確認ください。
※注意
令和7年度の認知症介護実践者研修は現在募集終了。
令和8年度の募集は現在情報なし

認知症介護実践者研修を修了するメリット
ここでは、認知症介護実践者研修を修了することで得られるメリットを解説します。
ケアの専門性向上や待遇改善、転職・キャリアアップでの評価、さらにリーダーや管理者職へのステップアップにつながる点を整理して紹介します。
感覚に頼らない専門的な認知症ケアができる
認知症介護実践者研修では、認知症の症状や行動心理症状(BPSD)に対して科学的根拠に基づいたケアを学びます。
これにより、経験や感覚だけに頼らず、利用者一人ひとりの状態に合わせた適切な支援が可能になります。
グループワークや実習を通じて多様な事例を検討するため、利用者の尊厳を守りながら安心できる環境を整える力が身につきます。結果として、ケアの質が高まり、現場での信頼度も向上します。
資格手当・昇給など待遇面で有利になる
研修修了は、多くの介護事業所で評価されるスキルアップの証明となります。
事業所によっては「資格手当」の支給対象となり、給与が月数千円から一万円以上アップするケースもあります。
また、研修修了者が配置されることで加算要件を満たせるため、事業所側からも重宝されやすく、昇給や昇格のチャンスが広がります。
自身のモチベーションを高めるだけでなく、待遇改善にも直結する実践的な資格といえます。
キャリアアップや転職で評価される
認知症介護実践者研修を修了していることは、履歴書や職務経歴書に明記できる強みになります。
特に高齢者施設やグループホームなど認知症ケアを重視する職場では、即戦力としての評価を得やすくなります。
また、未経験や初任者研修からステップアップしてきた人にとっても、専門性を裏付ける大きなアピール材料です。
結果として、転職活動やキャリアチェンジの際に有利に働き、より希望に沿った職場選びを可能にします。
リーダー職や管理者職へのステップアップが可能
実践者研修は、さらに上位の「実践リーダー研修」や「管理者研修」へ進むための必須条件でもあります。
修了することで、将来的にユニットリーダーや施設管理者など、現場を統率する立場にキャリアを広げられます。
チームをまとめ、後輩職員を指導できる能力が求められるため、実践者研修で培った知識やスキルが大きな基盤となります。
現場での信頼を高めながら、組織運営に関わる人材へと成長できる点も大きな魅力です。
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認知症介護実践者研修の難易度と合格率
認知症介護実践者研修は、筆記試験による合否判定はなく、全日程の受講と自施設実習、課題提出を完遂できるかが修了の鍵となります。
ここでは、修了要件や未修了理由、全国調査から見える修了率の実態を紹介し、難易度の目安を解説します。
試験は難しい?修了要件と評価方法
認知症介護実践者研修に筆記試験(合否判定)は通常ありません。
評価の中心は、①全科目の受講(出席)、②自施設実習の遂行、③課題・報告書(振り返り)の提出です。
厚生労働省所管の実施主体を対象とした全国調査(2024年)によると、未修了理由の最多が「一部科目未受講(61.8%)」でした。
つまり難易度は学力試験よりも、勤務と学習を両立し全日程をやり切る継続力にあります。
研修方式は対面・オンライン・ブレンドのいずれでも実施されており、受講形態による修了要件の変更はありません。
実務経験が必要な理由
実践者研修は、講義で学んだ理論を自施設実習(約4週間前後)で検証・改善する“実装型”カリキュラムです。
BPSDへの対応、アセスメント〜ケア計画〜振り返りまでを現場で回すため、最低限の身体介護スキルと現場経験(概ね2年以上)が前提になります。
調査でも学習効果(5点満点)は対面4.19/オンライン4.26と高評価。経験のある受講者が、実地でのトライ&エラーを通じて再現可能なケア技術へ落とし込めていることが示唆されます。
修了率・離脱率の実態
公開の公式“合格率”統計はありませんが、全国調査の未修了者の平均(1回あたり)は以下の通りでした。
研修 | 平均定員/回 | 平均未修了者/回 | 主な未修了理由 |
実践者研修 | 67.50人 | 9.07人 | 一部科目未受講(61.8%) |
実践リーダー研修 | 43.42人 | 2.42人 | 一部科目未受講(最多) |
参考:実施回数(2023年度平均)実践者4.60回/年、リーダー1.35回/年。2024年度予定は実践者4.56回/年、リーダー1.58回/年。方式は実践者で対面のみ47.3%→54.5%(’24予定)、オンライン/ブレンド50.9%→45.5%。満足度は実践者対面4.23/オンライン4.26で大差なし。
介護・福祉分野で注目される「実践者研修」。最新データによると、1回あたりの平均定員67.5人に対し、修了率は約86.6%と高水準を維持しています。
実際は充足率や途中辞退で上下しますが、“試験で落ちる”のではなく“日程・実習・提出物を完遂できるか”が修了の分岐点です。
そのため、修了に向けた具体的な対策は以下の3点です。
- 勤務シフトとの日程調整
受講日や実習期間をあらかじめ勤務表に組み込み、欠席を防ぐ。 - オンライン受講に必要な接続環境や機器の事前確認
パソコンやカメラ、ヘッドセットを整備し、接続テストを実施する。 - 自施設実習における上司や指導者との合意形成
実習の対象者・場面・記録様式について事前に確認しておく。
これらを早めに準備することで、未受講や技術的トラブルなどの離脱リスクを防ぎ、スムーズな修了につなげることができます。
認知症介護実践研修修了書をもらえないケースについて。
- 研修内容の理解が足りないと判断された場合は、課題の提出を求められたり、修了認定がもらえなかったりすることもあります。
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認知症介護実践者研修の受講費用と相場
ここでは、認知症介護実践者研修を受講する際に必要な費用の目安や、自治体・民間機関の違い、さらに費用を抑えるための助成や割引制度について解説します。
自治体実施研修(無料または低額)
東京都のように、介護職員のスキル向上を目的に受講料を無料としている場合もあります。
ただ自治体によって費用が異なるため自分が住んでいる地域の自治体のHPを事前に調べましょう。
例、東京都では受講費用が無料ですが、埼玉県では2万円、宮城県では1万3千円
また、募集定員が限られているため、申込時期を逃すと次年度まで待たなければならないこともあります。
民間研修機関(三幸福祉カレッジなど)の費用目安
民間の研修機関では、約45,000円〜50,000円前後(税込)で提供されています。
たとえば、三幸福祉カレッジが提供する認知症介護実践者研修は49,500円(税込、教材費込)です。
民間研修は日程や開催エリアが豊富で選びやすいメリットがありますが、費用は自治体実施と比べて高くなります。
費用負担を軽減する制度(助成・割引など)
費用が気になる方には、助成制度や割引制度の活用がおすすめです。
- 自治体の研修受講助成:都道府県や市区町村によっては、一定の条件で受講料の補助を受けられる。
- 事業所負担:介護事業所が職員のスキルアップを目的に研修費を全額または一部負担するケースも多い。
民間機関の割引制度:三幸福祉カレッジでは「修了生割引(20%)」や「説明会参加割引(10%)」などが設けられており、最大で1万円程度の割引が可能。

認知症介護実践者研修の受講方法と流れ
ここでは、認知症介護実践者研修を申し込む方法から受講の準備、近年拡大しているオンライン対応までを解説します。
申込方法(自治体経由/事業所経由/民間スクール)
認知症介護実践者研修の申込方法は、主に以下の3パターンです。
自治体実施の場合
各都道府県・市区町村の福祉課や長寿課が窓口となり、事業所を通じて申し込むのが一般的です。個人での直接申込は原則不可で、勤務先の推薦書や所属長の承諾が必要になる場合があります。
事業所経由の場合
勤務先の介護事業所が取りまとめて申し込みます。特に定員が抽選になる自治体では、事業所単位で調整が行われます。
民間スクールの場合
三幸福祉カレッジなどの研修機関では、個人で直接申込が可能です。日程・エリアの選択肢が豊富な点がメリットです。
受講に必要な書類や準備物
申込や受講にあたり、以下の書類や準備物が求められるのが一般的です。
- 受講申込書(自治体指定様式やスクールの専用フォーム)
- 所属長の承諾書・推薦書(自治体研修の場合必須)
- 資格証の写し(介護福祉士や初任者研修修了証など、要件確認用)
- 実習計画書や記録様式(自施設実習を行う際に必要)
- 学習用具(筆記用具、教材、パソコン・カメラ・ヘッドセット等)
これらを事前に揃えておくことで、申込不備や研修中のトラブル回避につながります。
eラーニングやオンライン対応について
近年は、オンライン研修やeラーニングの導入が拡大しています。
研修方式 | 特徴 | メリット | 注意点 |
---|---|---|---|
eラーニング | 座学部分をオンデマンド動画で学習 | 隙間時間に学べる/移動負担がない | 自己管理が必要/実技は学びにくい |
オンライン講義 | Zoom等を利用してリアルタイム参加 | 講師や受講生と双方向で交流できる | 通信環境・機材の準備が必須 |
ハイブリッド型(ブレンド研修) | 理論はオンライン、演習・グループワークは集合研修 | 学習効果と利便性を両立できる | 会場に出向く必要がある |
オンライン受講では「通信環境の不安定さ」「PCスキル不足」が課題となるため、事前に接続テストを行い、業務シフトとも調整しておくことがスムーズな修了につながります。

認知症介護実践者研修受講後の活かし方
認知症介護実践者研修を修了すると、単なる知識習得にとどまらず、職場での役割拡大やキャリアアップ、施設運営上の評価にも直結します。ここでは、具体的な活かし方を解説します。
勤務先での役割(リーダー・計画作成担当者・管理者)
修了者は、介護現場で「認知症ケアの専門性を持つ人材」として位置づけられます。
グループホームや小規模多機能型居宅介護では、ユニットリーダーや計画作成担当者、将来的な管理者候補として期待されるケースが多く、職場内でリーダーシップを発揮しやすくなるでしょう。
また、チーム内での指導役として、新人職員や未経験者への教育に関わる機会も増えます。
キャリア形成(介護福祉士・ケアマネへのつながり)
研修修了は、介護福祉士国家試験や介護支援専門員(ケアマネジャー)へのステップアップを意識する際にも強みとなります。
認知症ケアの専門性を体系的に学んでいるため、試験勉強や実務経験での理解が深まり、キャリア形成に直結します。
さらに、リーダー研修や管理者研修の受講資格を得ることで、中長期的にキャリアの幅を広げられます。
施設運営上の人員基準・加算要件としての重要性
認知症介護実践者研修の修了者は、施設の人員配置基準や介護報酬の加算要件に関わる重要な存在です。
例えば、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)や小規模多機能型居宅介護では、研修修了者の配置が求められるケースがあります。これにより、事業所は介護報酬の加算を取得でき、経営面での安定にもつながります。
そのため事業所側からも修了者のニーズは高く、修了者本人にとっても待遇改善や役職登用のチャンスを得やすくなるでしょう。

認知症介護実践者研修修了者・認知症介護職の年間休日・働き方
ここでは、自身のキャリアプランやワークライフバランスを考慮して、自分に最適な年間休日・働き方の職場を選ぶための解説をしています。しっかりと読み込んで職場選びに役立てましょう。
年間休日の実態【介護職の勤務先別】
介護職の年間休日は、勤務先の種類や法人規模によって大きな差があります。
厚生労働省の令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要でも「勤務先による休日数の格差」が示されており、公務員系と小規模事業所では15日以上の違いが出ることもあります。
勤務先 | 年間休日の目安 | 備考 |
---|---|---|
公務員(介護関連職) | 約120日 | 週休2日+祝日休暇を確保 |
病院・福祉法人(老健・医療院など) | 105~115日程度 | 近年は115~120日を確保する法人も増加 |
特養・小規模事業所など | 105日前後 | シフト制で休日が不規則になりやすい |
出典:令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要|厚生労働省
このように、同じ介護職でも勤務先によって休日環境が大きく変わるのが現実です。
転職やキャリア形成を考える際には、給与だけでなく「年間休日」や「休暇取得のしやすさ」にも注目することが大切です。
処遇改善加算による働き方改善
処遇改善加算は給与アップだけでなく、働き方そのものを改善するための制度として機能しています。
実際に厚生労働省の令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要では「有給休暇取得しやすさ」や「研修支援」が高い実施率を示しており、職場環境の整備につながっています。
項目 | 実施率 | 内容 |
---|---|---|
有給休暇が取得しやすい環境の整備 | 78.7% | シフト調整・計画的付与など |
研修受講支援(介護福祉士・認知症ケア研修等) | 73.9% | 研修費用補助や勤務調整 |
職員の気づきを踏まえたケア内容・勤務改善 | 83.7% | やりがい・働きがいの向上 |
事故・トラブルへの対応マニュアル整備 | 81.6% | 心身の健康管理、腰痛予防も含む |
出典:令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要|厚生労働省
このように処遇改善加算の取り組みは、休日・有休の取りやすさや研修機会の確保を通じて、働きやすさややりがいを高める効果を発揮しています。研修修了者は制度活用の中心人材として期待されやすい点も特徴です。
転職時に休日数もチェックすべき理由
介護職の転職では、給与や勤務地に注目しがちですが、年間休日数や休暇制度も重要な判断材料です。
上記のデータによると、勤務先によって年間休日は105日前後から120日以上まで差があり、同じ職種でも労働環境が大きく変わります。
休日が少ないと心身の負担が蓄積しやすく、結果的に離職につながるリスクもあります。
一方、休日や有休取得を確保できる職場は、長期的に働きやすく、キャリア形成や研修受講にも前向きに取り組めるでしょう。
転職時は「休日数・休暇の取りやすさ」を求人票や面接で必ず確認し、自分のライフスタイルに合った職場を選ぶことが大切です。

認知症介護実践者研修受講後の年収
項目 | 金額・内容 | 備考 |
---|---|---|
平均給与額(介護職・常勤) | 月額 約33.8万円/年収 約405.6万円 | 厚労省「令和6年賃金構造基本統計調査」より |
資格手当 | 月額 5,000~10,000円程度 | 実践者研修修了者を配置することで加算要件を満たせる事業所も多い |
昇給・役職手当 | 年収 +20万~50万円程度 | リーダー職・管理者職に昇進することで支給 |
年収モデル | 研修修了者:380万~400万円前後リーダー・管理者:400万~450万円以上 | 経験年数・勤務先規模により差あり |
出典:施設介護員 - 職業詳細 | 職業情報提供サイト(job tag)
このデータは、認知症介護実践者研修修了者に限定した平均年収ではなく、介護職員全体の給与水準を示したものです。
介護職・常勤の平均給与額は、月額約33.8万円(年収約405.6万円)となっています。この数値は介護職全体の平均を示しており、実際の給与は事業所や地域、経験年数などによって異なります。
そのため、上記の表は「全国平均+修了者に期待できる上乗せイメージ」として参考にしてください。
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まとめ
認知症介護実践者研修は、感覚に頼らず科学的根拠に基づいたケアを実践できるように設計された重要な研修です。
受講要件や修了率には一定の基準があり、勤務シフト調整やオンライン環境の準備など事前対策が修了の鍵となります。
修了後は資格手当や昇給、キャリアアップの評価につながり、リーダー職や管理者職への道が開けます。
また、介護現場の人員基準や加算要件とも直結し、事業所にとっても価値の高い人材となります。費用や受講方法は自治体と民間で差があるため、事前に確認し最適な選択を行うことが重要です。
よくある質問
Q.認知症介護実践者研修の年間休日はどのくらいですか?
一般的な介護施設や事業所で働く場合、年間休日は110日~120日程度が標準的です。大手法人や公的施設では125日以上のケースもあります。シフト制勤務のため、土日祝に限らず平日休みも含まれます。
Q.研修のスケジュールや日程はどうなっていますか?
研修は各都道府県で年数回実施され、日程やカリキュラムは自治体ごとに異なります。東京都の場合、講義・演習が約5日、課題への取り組みが約1週間、自施設実習が約2週間という構成が一般的です。全体で2~3か月かかることもあり、勤務先と調整しながら参加します。
Q.受講資格や現場経験の要件は?
多くの自治体では、介護福祉士と同等程度の知識と、認知症介護の現場経験が2年以上あることが受講条件です。また、自施設での実習が行えることも必要です。勤務していない場合や経験が足りない場合は、受講できないことがあります。
Q.研修中や勤務中に希望休や有給休暇は取れますか?
シフト制勤務のため、希望休や有給休暇は事前申請や相談によって取得できる場合が多いです。ただし、繁忙期や人員体制によっては希望通りに休みが取れないこともあります。研修期間中も、日程が決まっているため、早めの調整が大切です。
Q.研修を欠席・遅刻した場合はどうなりますか?
原則として遅刻・欠席・早退は認められていません。全日程に出席し、実習も評価対象となるため、体調管理やスケジュール調整をしっかり行いましょう。やむを得ない事情がある場合は、必ず事前に相談してください。
Q.研修修了後のキャリアや待遇はどう変わりますか?
研修修了者は現場のリーダー的存在として期待され、認知症ケア加算の算定や昇給・昇格、資格手当(月3,000円〜5,000円程度)が支給される場合もあります。専門知識と実践力を活かして、より質の高いケアや家族支援、チームマネジメントなど幅広い役割を担うことができます。
Q.研修の内容やカリキュラムは?
研修は座学(講義・演習)と自施設での実習を組み合わせて行います。認知症ケアの理念や倫理、アセスメントとケアの基本、家族支援、権利擁護、地域資源の活用など多岐にわたります。実習では、学びを現場で実践し、報告書をまとめます。
Q.年間休日が多い職場を探すコツは?
求人票や採用ページで「年間休日120日以上」「有給取得率」などの記載をチェックしましょう。面接時にシフトの柔軟性や希望休の取りやすさを質問するのも有効です。福利厚生や特別休暇の充実度、口コミサイトや現場の声も参考にしてください。
Q.研修は誰でも受けられますか?
原則として、介護保険施設等に勤務し、認知症介護の現場経験が2年以上ある介護職員やケアプラン作成に携わる方が対象です。詳細は各自治体の公式サイトで最新の受講要件を確認しましょう。
Q.研修はどのくらいの頻度で実施されていますか?
各都道府県で年に数回実施されていますが、定員制のため早めの申し込みが必要です。日程や会場、カリキュラムは自治体ごとに異なるため、公式サイトや案内で最新情報を確認してください。

海野 和(看護師)
この記事の監修者情報です
2006年に日本消化器内科内視鏡技師認定証を取得し、消化器系疾患の専門的な知識と技術を習得。2018年にはNCPR(新生児蘇生法専門コース)の認定を取得し、緊急時対応のスペシャリストとしての資格を保有。さらにBLS(HeartCode®BLSコース)を受講し、基本的生命維持技術の最新知識を習得。豊富な臨床経験と高度な専門資格を活かし、医療・介護分野における正確で信頼性の高い情報監修を行っています。
【保有資格】
・日本消化器内科内視鏡技師認定証(2006年取得)
・NCPR(新生児蘇生法専門コース終了認定証)(2018年取得)
・BLS(HeartCode®BLSコース)受講済み
