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- 認知症ケア専門士に興味がある方認知症ケアの専門知識や技術を体系的に学び、現場での対応力を高められる資格です。
- そもそもどんな資格なのか、試験内容やメリットを知りたい方試験の概要や合格率、学習のポイント、取得後のメリットなど、認知症ケア専門士の全体像をわかりやすくご紹介します。
- ケアの質を高めたい、スキルアップを目指したい専門職の方看護師・介護士・ケアマネジャーなど、現場で活躍する専門職がさらにレベルアップするためのスキル習得に最適な資格です。
- 資格を活かして昇進や転職、リーダー職を目指したい方専門性をアピールできるため、昇進やキャリアチェンジ、リーダー職を目指す際に有利になる可能性があります。

認知症ケア専門士は意味がない?意味がないと言われる理由

認知症ケア専門士とは
ここでは、認知症ケア専門士の資格概要や制定の背景、他の資格との違いについて解説します。
認知症ケアの専門性を高めたい方や、資格取得を検討している方に向けて、制度的な位置づけをわかりやすくまとめました。
資格の概要と制定の背景
認知症ケア専門士は、認知症のある方に対して、科学的根拠と倫理的配慮に基づいた専門的支援を提供できる人材を育成・認定する民間資格です。日本認知症ケア専門士公式サイトによると、以下のように明記されています。
「認知症ケア専門士」とは認知症ケアに対する優れた学識と高度の技能、および倫理観を備えた専門技術士を養成し, わが国における認知症ケア技術の向上ならびに保健・福祉に貢献することを目的として設立された 一般社団法人日本認知症ケア学会認定の資格です. |
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認定は、一般社団法人日本認知症ケア学会が行っており、主に医療・介護・福祉分野で従事する専門職が対象です。
この資格は、高齢化の進行と認知症患者の増加に伴い、現場でのケアの質向上と職種間の連携強化が求められたことを背景に、2005年に創設されました。(第1回試験実施)
資格の保有者は、認知症ケアにおける専門性の証明として評価されており、職場内での信頼性向上やキャリア形成の一助となることが期待されています。
認定団体と他資格との違い
認知症ケア専門士の認定を行うのは、一般社団法人日本認知症ケア学会です。同学会は、認知症ケアに関する実践的研究と普及活動を担っており、認定制度も学術的な裏付けに基づいて運営されています。
他の認知症関連資格には、厚生労働省や自治体が主催する「認知症介護実践者研修」や「認知症対応型サービス事業管理者研修」などがあります。
これらは介護保険サービス従事者を対象とする研修形式の資格であり、一定の受講を経て修了証が発行されます。
一方、認知症ケア専門士は試験により認定され、単位制の継続学習(更新制度)が設けられている点が特徴です。専門職としてのスキルアップを重視した制度設計となっており、実践力と理論的知識の両立が求められる資格です。
項目 | 認知症ケア専門士 | その他の認知症関連資格 (例:実践者研修など) |
---|---|---|
認定団体 | 一般社団法人日本認知症ケア学会 | 厚生労働省・自治体など |
認定方法 | 試験方式 (筆記・面接) | 講習形式 (一定の受講後、修了証を発行) |
目的 | 専門職としての知識と実践力の向上 | 現場対応の基本的なスキル習得 |
更新制度 | あり (単位制の継続学習が必要) | 基本的になし |
対象者 | 認知症ケアに関わる専門職全般 | 介護保険サービス従事者 |
特徴 | 理論と実践の両立が求められる全国資格 | 地域や事業所によって内容が異なる研修形式 |
出典:認知症ケア専門士公式サイト|一般社団法人日本認知症ケア学会

認知症ケア専門士が活躍できる職場
ここでは、認知症ケア専門士がどのような職場で活躍しているのか、また看護師や介護士としての資格の活かし方について解説します。
実際の現場で求められる役割を知ることで、資格取得後の働き方を具体的にイメージしやすくなるでしょう。
病院・介護施設・地域支援センター
認知症ケア専門士は、医療・介護・地域福祉など多様な分野で専門性を活かして活動しています。それぞれの現場で、認知症のある方やその家族に対して、より質の高い支援を提供する役割が期待されています。
たとえば、医療機関では認知症疾患医療センターなどに配置され、早期診断後のケア体制構築や家族への支援を担います。
介護老人保健施設や特別養護老人ホームでは、BPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementiaの略で認知症の行動・心理症状のこと)に対する対応や、ケア技術の指導などにも関わります。
また、地域包括支援センターや初期集中支援チームの一員として、訪問による実態把握や支援計画の立案を行うこともあります。以下に職場ごとの主な役割をまとめたのでぜひチェックしてみてください。
活躍の場 | 主な役割・業務内容 |
---|---|
認知症疾患医療センター | 医師・看護師と連携し、初期診断後の生活支援計画の策定、家族への情報提供・相談支援などを行う |
介護老人保健施設・特別養護老人ホーム | BPSDへの対応、ケアの質向上、職員への実務指導やケアの個別化への助言 |
地域包括支援センター | 初期集中支援チームの一員として訪問・評価・支援調整を担い、地域での認知症対応力の底上げを図る |
このように、認知症ケア専門士は制度に基づく支援体制の中で、地域包括ケアシステムを支える重要な専門職として位置付けられています。
看護師・介護士としての資格の活かし方
認知症ケア専門士の資格は、すでに現場で働いている看護師や介護士が、より専門的で実践的な支援を行うための補完的な資格として位置付けられています。
資格取得により、エビデンスに基づいた対応が可能となり、職場内での評価向上や役割の拡大にもつながります。
看護師としての活かし方
- 認知症患者のBPSDの観察・記録・報告の質が向上
- 医師・薬剤師との連携が円滑になり、治療方針の共有に貢献できる
- 看取り期や終末期において、本人の意思や尊厳を重視した看護の実践がしやすくなる
介護士としての活かし方
- 認知症の症状に応じた個別ケアを、理論に基づいて実施できる
- 利用者や家族との信頼関係の構築において、専門的な説明が可能になる
- 職場内研修の講師やOJT(On-the-Job Training の略で職場内で実務を通じて行う教育・訓練のこと)の指導者として、他職員の育成にも関わることができる
このように、認知症ケア専門士は、単なる資格ではなく、専門職としての信頼性とケアの質を裏付ける「実践力の証」として、現場でのキャリア形成に有効に活用されています。
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認知症ケア専門士を取得するメリット
ここでは、認知症ケア専門士を取得することで得られる具体的なメリットについて解説します。
専門性の向上や就職・転職での評価、チーム医療での役割拡大など、現場で実際に活かせる利点を把握できるでしょう。
認知症ケアの専門性が向上する
認知症ケア専門士の資格は、認知症のある方に対する支援に必要な知識や技術を体系的に学べる民間資格です。
試験では、医学・福祉・心理・倫理など複数の領域が出題され、資格取得に向けた学習を通じて現場対応の幅が広がります。
また、取得後も単位制の継続教育制度があり、最新の知見を継続的に学べる仕組みとなっています。これにより、利用者一人ひとりの状態や背景に応じた柔軟で根拠のある支援が可能になります。
現場で起こりうるBPSDにも適切に対応でき、実践力の裏付けとして評価されやすい点も特徴です。
取得によって得られるスキルの例
- 認知症の種類と症状(アルツハイマー型、レビー小体型など)の理解
- BPSDへの適切な対応技術
- 家族支援と倫理的ケアの実践
- チームケアにおける連携・調整力
就職・転職において有利になる可能性がある
認知症ケア専門士は、専門的な知識と実践力を持つ証明として、医療・福祉の現場で評価される資格です。特に、高齢者施設や認知症対応型サービス事業所、地域包括支援センターなどでは、認知症ケアに特化した人材が求められるため、採用時や職場での配置にもプラスに働くことがあります。
また、資格取得によって「学び続ける姿勢がある」「専門職として意欲が高い」と判断され、就職・転職の面接でも好印象を与える要因となります。
さらに、現場での専門性は業務の質の向上や信頼の獲得につながり、ゆくゆくはリーダー職や管理職を目指すための土台にもなるでしょう。
チーム医療・チームケアで活躍できる
認知症ケア専門士は、医療・介護の多職種が連携する現場において、専門知識を活かした調整役として高く評価されています。
特に、BPSD(行動・心理症状)への対応が必要な場面では、医師や看護師、介護士、リハビリ職、相談員などと連携し、適切なケアを進めるうえでの橋渡し的存在となります。
さらに、職場内での研修講師やOJTリーダーとして、新人職員の教育やスタッフ全体のケア力向上に貢献できるのも大きな強みです。結果的に、現場全体の認知症ケアの質を引き上げる役割も期待されています。
チームケアにおける活用例
- カンファレンスでの認知症ケア方針の提案
- 他職種スタッフへの認知症対応アドバイス
- 施設内研修や新人指導でのリーダー的役割の担い手

認知症ケア専門士のデメリットと注意点
ここでは、認知症ケア専門士の資格取得を検討する際に理解しておきたい注意点について解説します。
制度上の限界や介護報酬上の評価、取得・更新にかかる費用や時間的負担など、事前に確認すべき要素を正確に押さえましょう。
介護報酬の加算対象資格ではない
認知症ケア専門士は、日本認知症ケア学会が認定する民間資格であり、国家資格のような法的効力(業務独占・名称独占)はありません。そのため、資格がなくても現場での支援業務に従事することは可能であり、業務範囲が法制度によって明確に区別されるものではありません。
厚生労働省が定める人員配置基準や施設基準の対象資格でもなく、制度上の評価が直接的に付与されることはありません。
制度上の主な制限点
- 国家資格ではなく、法律上の業務独占は認められていない
- 介護・医療業務に必須の資格ではない
- 行政の人員配置基準や法定研修要件に該当しない
- 介護報酬の加算対象資格ではない
このように、認知症ケア専門士は「実務に活かす補完的な専門資格」としての位置づけに留まります。
資格取得・更新に費用が発生する
認知症ケア専門士の取得と維持には、経済的・時間的な負担が伴います。受験には所定の費用が必要で、合格後の認定登録費用もかかります。
資格は5年ごとの更新制であり、更新には日本認知症ケア学会が定める単位の取得(講習、学会参加など)が求められます。
忙しい医療・介護従事者にとって、学習時間の確保や受講スケジュールの調整は容易ではありません。ただし、継続学習の内容は現場の実務と直結しており、スキル向上のための有意義な投資といえる側面もあります。
取得・更新にかかる主な負担
- 受験料・登録料(1〜2万円程度)
- 更新時の単位取得に伴う講習費用・旅費など
- 継続学習に要する時間と準備
- 勤務とのスケジュール調整が必要な場合もあり

認知症ケア専門士が介護報酬加算の対象外となる理由
認知症ケア専門士は、介護保険制度上の報酬加算対象資格には該当しません。加算対象となる研修・資格は、国や都道府県が指定・実施する法定研修などに限られているため、民間資格は原則として対象外です。
たとえば、介護報酬の加算項目として認められているのは、「認知症介護実践者研修」や「認知症対応型サービス事業管理者研修」などです。
以下に、加算対象の可否をまとめた比較表を示します。
資格・研修名 | 加算対象 | 実施主体 | 補足 |
---|---|---|---|
認知症ケア専門士 | × | 日本認知症ケア学会 | 民間資格のため対象外 |
認知症介護実践者研修 | ○ | 都道府県・指定研修機関 | 介護報酬加算の要件として明記 |
認知症対応型サービス事業管理者研修 | ○ | 都道府県など | 管理者配置基準に該当する研修 |
制度上の評価や加算を期待して取得する場合は、あらかじめ制度との関係性を理解しておくことが大切です。

認知症ケア専門士になるには
ここでは、認知症ケア専門士になるために必要な受験資格や実務経験、資格取得の流れ、更新制度について解説します。制度の全体像を理解することで、計画的に学習を進め、資格取得後の維持にも備えることができるでしょう。
受験資格と実務経験の要件
認知症ケア専門士は、国家資格の有無にかかわらず、認知症ケアに関する実務経験が3年以上あることが基本要件とされています。対象分野は医療・福祉・保健・教育・行政など幅広く、重要なのは、認知症のある方との直接的な関わりを含む職務経験があるかどうかです。
受験申請時には、所定の様式に基づく「業務従事証明書」を勤務先から発行してもらい、提出する必要があります。
主な受験資格の要件
- 医療・福祉・保健・教育・行政分野における職務経験が3年以上あること
- 認知症のある方への直接支援に関わる業務経験を有すること
- 国家資格の保有は必須ではないが、職務内容の証明が必要
- 業務従事証明書の提出が必要(勤務先の記入・押印あり)
これらの条件を満たすことで、認知症ケア専門士認定試験への出願が可能となります。
資格取得までの流れと必要な手続き
認知症ケア専門士の資格を取得するには、受験申請から登録まで複数のステップを踏む必要があります。
試験は年1回の実施で、書類審査や筆記・面接などが課されるため、事前に流れを把握しておくことが大切です。
- 受験申請書の提出
所定の申請書類と、業務従事証明書を提出します。 - 書類審査
受験資格に該当するかどうか、書類内容が審査されます。 - 一次試験(筆記)
認知症の基礎知識、倫理、多職種連携などに関する選択式筆記試験が行われます。 - 二次試験(記述・面接)
一次試験合格者に対し、記述式試験と個別面接が実施され、実践的知識や思考力が問われます。 - 合格発表・登録手続き
すべての試験に合格後、登録料を納付することで、正式に認知症ケア専門士として認定されます。
試験のスケジュールや申請手続きの内容は年度ごとに変わる場合があります。
受験を検討している方は、一般社団法人日本認知症ケア学会の公式サイトで最新情報を必ず確認しましょう。
資格更新制度と単位取得の方法
認知症ケア専門士の資格には5年ごとの更新制度が設けられており、更新には実務の継続と所定の単位取得が必要です。更新時には、勤務継続を証明する書類と単位取得記録を提出します。
主な単位取得方法
- 学会主催の講習会・研修会への参加(認知症ケア技術、倫理、最新動向など)
- 学会誌・専門誌の購読および課題レポート提出
- 学会での発表、または学術論文の執筆・投稿
- 学会が認定する外部セミナー・講座への出席
※更新には5年間で合計30単位以上の取得が必要です。
この更新制度は、専門性と倫理性を持続的に高めることを目的としており、現場での実践力を維持・向上させるための重要な仕組みとされています。

認知症ケア専門士の試験概要
ここでは、認知症ケア専門士の資格試験に関する基本的な構成を解説します。
第1次試験と第2次試験の内容や評価基準、試験日程や費用まで把握することで、資格取得に向けた計画が立てやすくなるでしょう。
第1次試験(筆記)の内容と対策
第1次試験では、認知症に関する幅広い知識と基本的な実践理解が問われます。
問題形式は多肢選択式(マークシート方式)で、「医学的理解」「ケア技術」「倫理・制度」などの分野から出題されます。学会が指定する参考書籍や過去問題を活用し、実務経験と照らし合わせながら体系的に学習することが大切です。
第1次試験では、各分野で70%以上の正答率を有した受験者が合格とされており、出題範囲をまんべんなくカバーする対策が求められます。
主な出題範囲の例
- 認知症の医学的理解(中核症状・BPSDなど)
- 倫理的支援・人権擁護の基本
- チームケアにおける多職種連携
- 認知症施策や介護保険制度の基礎知識
第2次試験(論述)の評価基準
第2次試験は論述形式で実施され、実際の支援場面に対する受験者の思考力や判断力、倫理観が評価されます。
与えられた事例に対して、どのように課題を把握し、どのような支援を行うかを具体的かつ論理的に記述する力が求められます。
模範解答は設けられておらず、正解は一つではありません。現場での経験をふまえた考察力や対応方針の妥当性が重視されます。
主な評価の観点(例)
- 利用者の尊厳や人権を尊重した支援姿勢
- 倫理的課題に対する適切な判断と対応
- チームケア・多職種連携に対する理解
- 問題把握から支援方針の構築までの論理展開
- 自らの実践経験に基づく省察力・応用力
第1次・第2次試験のスケジュールと費用
認知症ケア専門士の試験は年1回実施され、春に第1次試験の申請受付が始まり、夏に第1次試験、秋に第2次試験が行われます。
合格者には登録手続きが案内され、所定の登録料を納付することで認定が完了します。受験料・登録料に加え、参考書や交通費なども自己負担となるため、全体の費用計画を立てておくことが大切です。
【2025年度の主な予定(予定)】
項目 | 内容 |
---|---|
第1次試験の実施時期 | 2025年7月13日(日) |
第2次試験の出願期間 | 2025年8月25日(月)~9月25日(木)(消印有効) |
第1次試験の結果通知投函日 | 2025年8月18日(月) |
第2次試験の結果通知投函日 | 2026年1月13日(火) |
受験料 | 【第1次試験】3,000円×受験分野数(4分野で12,000円) 【第2次試験】8,000円 |

認知症ケア専門士の合格率と難易度
ここでは、認知症ケア専門士の合格率や受験者の傾向、職種別の合格実績について解説します。
高い専門性を支える試験内容と対策の重要性についてもまとめました。試験の難易度や対策のポイントを理解することで、計画的な学習に役立てられるでしょう。
過去の合格率と受験者傾向
認知症ケア専門士の合格率は例年40〜50%前後で推移しており、一定の実務経験を前提とした中難易度の試験といえます。
受験者は介護職・看護職を中心に、医療・福祉・教育・行政など多様な分野から集まっています。出題傾向や試験制度に大きな変更は少なく、過去データに基づいた対策が有効です。
過去の合格実績
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
第20回試験(2024年) | 2,585人 | 1,182人 | 45.7% |
第19回試験(2023年) | 2,799人 | 1,440人 | 51.4% |
第18回試験(2022年) | 3,666人 | 1,998人 | 54.5% |
看護師・介護士の合格実績の比較
看護師と介護士はいずれも受験者の中核を担う職種ですが、それぞれ異なる強みがあります。看護師は医学的知識や制度理解に強みがあり、倫理的視点も評価されやすい傾向にあります。
介護士は、日々のケアを通じた実践力があり、記述式試験では支援経験を具体的に表現できる点が強みです。ただし、どちらの職種であっても体系的な知識と論理的思考が問われるため、事前の学習は必須です。
公式テキストや過去問を活用し、実務と理論の両面から備えることが求められます。
専門性が高い理由と試験対策の重要性
認知症ケア専門士の試験は、知識のみならず、実務での判断力や多職種連携の理解が求められる高度な専門資格です。
特に第2次試験の論述では、自身の支援経験をもとに倫理的配慮や対応力を論理的に表現する力が重視されます。定型的な解答ではなく、「なぜその対応をしたのか」を説明できることが合格の鍵です。
難易度が高い理由
- 【第1次試験各】分野で70%以上の正答率が必要
- 【第2次試験】実務に基づいた支援考察を記述形式で評価
- 知識と経験を融合させた「思考過程の表現」が重視される
効果的な試験対策
- 学会指定テキスト・過去問題の繰り返し学習
- 実務経験を基にした記述演習と添削
- 模擬試験や勉強会の活用
- 日頃から支援事例を記録・整理する習慣を持つ

認知症ケア専門士試験の勉強方法
ここでは、認知症ケア専門士試験の合格に向けて有効とされる勉強方法について解説します。
公式テキストや過去問題集の活用、受験対策講座、日常生活の中で行える学習法まで、多様なアプローチを紹介します。
公式テキスト・過去問題集を活用する
日本認知症ケア学会が発行する公式テキストおよび問題集は、試験対策における基本資料です。
内容は「医学的理解」「ケア技術」「倫理・制度」など出題分野に沿って網羅されており、学習の土台となります。学会が推奨する章立てに従って読み進め、章末の確認問題で理解度をチェックしましょう。
学会発行の「過去問題集」を繰り返し活用することで、出題傾向の把握や苦手分野の把握に役立ちます。誤答の分析と復習を通じて、実践的な対応力を養うことが可能です。
受験対策講座や模擬試験を利用する
対策講座や模擬試験は、独学では補いにくい理解の深まりや出題傾向の把握に有効です。
日本認知症ケア学会や関連団体が主催する対策講座では、試験範囲の重点整理や記述対策に加え、実務経験の棚卸しや倫理的支援の考え方なども学べます。
模擬試験は、時間配分や設問形式への慣れだけでなく、自身の理解度を客観的に確認する機会になります。
講師や指導者からのフィードバックを受けることで、記述表現の質も高められます。特に第2次試験の論述対策では、自己経験の論理的な表現練習が効果的です。
アプリを活用する
日々の業務や家庭の合間に勉強時間を確保するのが難しい方は、すきま時間の活用がポイントです。
近年では、医療・福祉系資格学習向けのスマートフォンアプリが多数提供されており、用語暗記やクイズ形式で学べるものもあります。
重要語句や制度のポイントをカード化し、移動時間や待ち時間に見返す学習も効果的です。公式テキストの補助教材として、記憶定着のための自作メモやノートの活用もおすすめです。
日常の中に小さな「学びの習慣」を取り入れることが、無理のない継続と合格につながるでしょう。
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認知症ケア上級専門士とは
ここでは、認知症ケア専門士の上位資格にあたる「認知症ケア上級専門士」について解説します。
認定要件、取得の難易度、役割やキャリア上の影響を把握することで、さらなる専門性の習得を目指す方にとって有益な指針となるでしょう。
上級資格の概要と認定要件
認知症ケア上級専門士は、日本認知症ケア学会が認定する上位資格であり、高度な専門性・実践力・教育的役割が求められる人材に与えられます。
認知症ケア専門士としての継続的な実績に加え、学術的・指導的な活動実績が審査対象となります。以下は2025年時点で定められた認定要件です。
認定要件(2025年現在)
- 認知症ケア専門士としての実務経験が3年以上あること
- 専門士資格更新の有無を問わず、2020年4月1日~2025年3月31日までに30単位以上を取得していること
- 所定の「認知症ケア上級専門士研修会」を修了していること
- 以下のいずれかの発表などを筆頭者として行っていること(すべて専門士取得後に実施)
- 日本認知症ケア学会の学術集会または地域部会研修会での演題発表または事例報告
- 査読制度のある機関誌などでの論文または事例報告の発表
上級専門士の役割とキャリアアップについて
認知症ケア上級専門士は、現場での高度な支援実践に加え、チーム全体のケアの質を高めるリーダー的存在として期待されます。
研修の企画運営や他職種との連携推進、職員の指導・育成などを通じて、専門職の中核を担うことになります。
医療・福祉機関において教育担当やマネジメント職への登用が現実的になり、行政や学会活動の場で意見を求められることもあります。資格取得により、専門性の証明だけでなく、組織内外での信頼性や発言力の向上にもつながるでしょう。

認知症ケア専門士の将来性
ここでは、認知症ケア専門士が今後制度上どのように評価される可能性があるのか、また、高齢化の進展に伴い求められる社会的役割について解説します。
今後の制度改正と加算対象に含まれる可能性がある
現在、認知症ケア専門士は介護報酬の加算要件には含まれていませんが、厚生労働省が公開している令和6年度の報酬改定により、地域包括ケアの推進に向けて「認知症対応を含む支援」や「多職種連携の強化」に関する評価が拡充されました。
新設された加算要件では、地域住民との相談体制や、事例検討・研修実施など、現場で専門性を発揮できる人材の役割が重視されています。
今後、こうした制度の中で、民間資格である認知症ケア専門士が制度的に評価され、加算要件に位置づけられる可能性も十分に考えられます。
今後さらに需要が高まる
日本社会では今後ますます高齢化が進み、認知症の人やその家族を支援するニーズが大きくなると見込まれています。現時点で、認知症ケア専門士の専門的知見や支援スキルは、多様な場面で求められているのです。
特に、施設や在宅でのケアの現場においては、専門士が中心となって支援の質を高めたり、他職種と連携して包括的なケアを実践することが期待されています。
また、後進育成や地域づくりへの貢献も評価されるようになっており、将来的な制度改定や人材活用の中で、専門士の社会的な役割はさらに重要になると考えられます。
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まとめ
認知症ケア専門士は、介護・看護・医療・福祉分野で働く実務者が、認知症に関する専門的知識と実践力を体系的に深められる民間資格です。受験には実務経験が必要で、試験では幅広い知識や実践的判断力が問われるため、決して簡単な資格ではありません。
しかし、取得後は現場での信頼性が高まり、指導者やチームの中核として活躍する機会が増えるなど、キャリア形成において大きな強みとなります。
近年は制度的な評価も少しずつ進み、将来的には報酬加算や配置基準への反映が期待されています。さらに上位資格である「認知症ケア上級専門士」も設けられており、段階的なスキルアップも可能です。
高齢化が進む中、認知症ケアの質の向上が社会的課題となっている今、本資格の持つ意義と必要性はますます高まっています。自分の実務経験を活かしつつ、より専門的な支援を行いたい方は、公式テキストや認定講座を活用して計画的に学習を進め、資格取得を目指してみてはいかがでしょうか。
よくある質問
Q.認知症ケア専門士は本当に意味がある?
現場での経験を裏づける専門資格として、信頼性やケアの質を担保する材料になります。民間資格ながら、職場によっては人材評価に活かされることがあります。
Q.認知症ケア専門士は看護師や未経験者でも受験できる?
職場によって異なりますが、資格手当が支給されたり、研修担当やリーダー職などの役職に就くケースもあります。必ずしも昇進・転職が保証されるわけではありませんが、評価の一材料として活用される可能性は十分にあります。
Q.認知症ケア専門士は何ができますか?
認知症ケアの専門職として、本人支援・家族支援・職員指導など多面的な実務に活かせます。現場での質向上やチームケア推進の中心を担う役割が期待されます。
Q.認知症ケア専門士試験は難しいですか?
第1次試験は分野ごとに70%以上の正答率、第2次試験は記述式で実務力が問われるため、準備が必要です。
Q.認知症ケア専門士になると給料は上がる?
一律の昇給制度はありませんが、施設によっては資格手当や職能手当の支給対象となる場合があります。昇進・昇格につながる可能性もあるでしょう。
Q.認知症ケア専門士の合格率は?
ここ数年における認知症ケア専門士の合格率は40~55%前後で推移しています(第18~20回試験)。記述式を含むため難易度はやや高めですが、適切な準備により合格可能です。
Q.認知症ケア専門士は失効しますか?
認知症ケア専門士は5年ごとの更新制です。更新期間内に所定の30単位を取得できなかった場合、資格は原則として失効します。
ただし、やむを得ない事情がある場合は「更新保留申請」により一定期間の延長が認められる制度もあります。保留申請を行わずに更新期限を迎えると、自動的に資格が失効するため注意が必要です。

海野 和(看護師)
この記事の監修者情報です
2006年に日本消化器内科内視鏡技師認定証を取得し、消化器系疾患の専門的な知識と技術を習得。2018年にはNCPR(新生児蘇生法専門コース)の認定を取得し、緊急時対応のスペシャリストとしての資格を保有。さらにBLS(HeartCode®BLSコース)を受講し、基本的生命維持技術の最新知識を習得。豊富な臨床経験と高度な専門資格を活かし、医療・介護分野における正確で信頼性の高い情報監修を行っています。
【保有資格】
・日本消化器内科内視鏡技師認定証(2006年取得)
・NCPR(新生児蘇生法専門コース終了認定証)(2018年取得)
・BLS(HeartCode®BLSコース)受講済み
