在宅介護

訪問入浴介護とは?料金・流れ・サービス内容・注意点まで徹底解説【介護保険対応】

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「訪問入浴介護ってどんなサービス?」「料金や利用の流れが分かりにくい」と不安に思っていませんか。介護保険で利用できる訪問入浴介護は、自宅での入浴が難しい方にとっての専門スタッフによるサポートですが、仕組みや注意点が分かりにくいと感じる方も多いでしょう。

この記事では、訪問入浴介護のサービス内容や利用の流れ、料金の目安、注意すべきポイントまで分かりやすく解説します。

介護を受ける方ご本人やご家族が、適切な情報に基づいてサービスを選択し、介護負担の軽減につなげられるよう、実用的な情報をまとめました。

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    料金やサービス内容、利用までの流れを知りたい方
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    自宅での入浴を支援したい
    高齢のご家族や障がいのある方の入浴をサポートしたい方
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    介護保険サービスを上手に活用したい
    介護負担を軽減しながら在宅介護を継続したい方
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訪問入浴介護の基本とは

訪問入浴介護の概要

訪問入浴介護とは、要介護状態となった場合においても、その利用者が可能な限りその居宅において、その有する能力に応じて自立した日常生活を営むことができるよう、居宅において入浴の援助を行うことによって、利用者の身体の清潔の維持、心身機能の維持等を守るものである。

訪問入浴介護は、在宅介護サービスの一つとして重要な役割を担っています。 高齢化が進む中、日本の自宅での生活を希望する介護者やそのご家族が増えていますが、入浴は転倒や体調変化のリスクが伴うため、ご家族だけでは安全な介助が難しい場合があります。

そこで、訪問入浴介護では、専用の移動式浴槽や給湯器を備えた車両で自宅を訪問し、看護職員や介護職員が連携して入浴の介助を行います。

原則的に看護職員1名以上と介護職員2名の計3名でサービスを提供し、入浴後の健康チェックや必要に応じた医療的対応を行います。

なお、主治医の意見書に関して入浴の安全確保問題がないと判断された場合には、看護職員ではなく介護職員をもう1名加えて介護職員3名でサービスの提供が可能です。 この場合も、主治医の意見書を確認し、事業所内で正しい医療連携体制を維持することが求められます。


出典:訪問入浴介護|厚生労働省

訪問入浴介護の流れ

  • 訪問入浴介護をご利用になる場合は、まずお住まいの市区町村窓口で要介護認定の申請を行います。  


  • 要介護認定を受けた後、要介護1以上と認定された方は、居宅介護支援事業者の介護支援専門員(ケアマネジャー)に介護サービス計画(ケアプラン)の作成を依頼します。介護支援専門員(ケアマネジャー)は、利用者やご家族の希望、心身の状態を考慮して、訪問入浴介護を含むケアプランを作成します。  
  • ケアプランに基づき、訪問入浴介護事業所を選定し、サービス内容や料金について説明を受け、契約を行います。当日のサービスでは、看護職員(看護師または准看護師)1名と介護職員2名、計3名が専用車両で訪問します。※主治医の意見を確認し、身体状況に問題がなければ介護職員3名でのサービス提供も可能です。  
  • まず看護職員がバイタルサイン(体温・血圧・脈拍など)をチェックし、入浴が可能かどうかを確認します。問題がなければ浴槽を設置し、衣服の脱衣を行い、浴槽への移動をサポートします。  
  • 入浴中はスタッフが洗身や洗髪、洗顔などの介助を行い、必要に応じて爪切りや耳掃除などのケアも実施します。入浴後は再度健康チェックを行い、着替えや整容のお手伝いをします。  

  • 最後に浴槽設備を片付け、スタッフが退出してサービス終了となります。
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訪問入浴介護のメリットとデメリット

メリット

  • 利用者は自宅という慣れ親しんだ環境で訪問入浴介護を受けられるため、通所サービスのような移動負担がありません。
  • 専門スタッフが介助を行うことで、ご家族の身体的・精神的な負担を軽減できます。
  • 入浴により身体の清潔を保つことができ、リラックス効果や心身機能の維持に寄与することが期待されます。
  • 皮膚を清潔に保つことで、褥瘡(じょくそう:床ずれ)や感染症の予防につながる場合があります。
  • スタッフが丁寧に洗身・洗髪を行い、必要に応じて爪切りや耳掃除も行うため、身だしなみが整いやすくなります。
  • 専門スタッフによる対応のため、ご家族の精神的負担の軽減が期待できます

デメリット

  • サービスの提供時間や回数に制限があるため、希望通りのスケジュールを組めない場合があります。
  • 浴槽の設置にはある程度のスペースや設備が必要で、住居の構造によっては利用が難しいケースもあります。
  • 介護保険を利用しても自己負担が発生し、利用回数が増えると経済的な負担を感じることがあります。
  • スタッフや機材の出入りがあるため、プライバシーに配慮が必要になる場合があります。
  • 浴槽の設置や片付けに時間がかかり、ご家族の生活リズムに影響が出ることがあります。
  • 感染症や体調不良の際は入浴ができず、予定通りにサービスを利用できない場合があります。
計算機と後ろに一万円札と小さい家の木造
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訪問入浴介護の費用について

訪問入浴介護の費用は、介護保険の適用範囲や自己負担割合によって大きく変わります。利用者ごとに条件が異なるため、事前に料金体系や計算方法を正しく把握しておくことが大切です。  

介護保険を利用する場合、原則として1割〜3割の自己負担が必要です。所得や要介護度、サービス回数によっても費用が異なるため、介護支援専門員(ケアマネジャー)や事業所に確認しておきましょう。

訪問入浴介護の料金体系

訪問入浴介護の料金体系は、介護保険を利用する場合と自費で利用する場合で大きく異なります。介護保険を利用する場合、報酬は「単位」で表され、基本的に1単位=10円として計算されます(全国一律ですが、地域区分による加算があります)。  

自費利用の場合は、各事業所が独自に料金を設定しており、介護保険適用時よりも費用が高くなる傾向にあります。そのため、利用を検討する際には、介護保険の自己負担割合(1〜3割)や加算項目を含めた総額を事前に確認しておくことが大切です。

出典:介護報酬の地域加算 大阪府(おおさかふ)ホームページ

厚生労働省の基準によると、訪問入浴介護の基本報酬は1,266単位とされています。1単位=10円で計算されるため、10割負担(全額自己負担)の場合は約12,660円となります。

実際には介護保険が適用され、自己負担割合に応じて費用が変わります。1割負担であれば約1,266円、2割負担であれば約2,532円、3割負担であれば約3,798円が目安です(地域区分により多少異なります)。

出典:介護報酬の算定構造 訪問入浴介護費 |厚生労働省

【自己負担割合の判定基準】

 1割負担:65歳以上で本人の合計所得金額が160万円未満の方

 2割負担:本人の合計所得金額が160万円以上220万円未満かつ世帯の年金収入等が一定基準以下の方

 3割負担:本人の合計所得金額が220万円以上かつ世帯の年金収入等が一定基準以上の方

※満40歳~64歳の第2号被保険者は所得に関わらず1割負担

出典:一定以上所得者の負担割合の見直しについて|厚生労働省

看取り連携体制加算(2024年度新設)

2024年度の介護報酬改定により、要介護者が最終期を迎える段階(死亡日および死亡日以前30日以内)に訪問入浴介護を実施する場合、以下の要件を満たせば基本報酬に加えて64単位/回が加算されます。

  • 主治医の意見書内容を確認し、利用者の状態を把握する。
  • 訪問入浴事業所が緊急時対応方針を策定し、利用者および家族へ説明・同意を得る。
  • 訪問看護師や介護支援専門員(ケアマネジャー)などと連携し、医療のケア体制を構築する。

この手当により、最終期の期間における医療・介護連携が促進され、利用者の適切なケアと家族の支援を行います。

この他、サービス提供体制強化加算や処遇改善加算などの加算が適用される場合は、基本料金に上乗せされます。また、同一敷地内でのサービス提供など一定の条件下では、減算が適用されることもあります。地域や事業所によって細かな料金設定が異なるため、契約前に確認しておくことが大切です。

なお、訪問入浴介護は基本的に要介護1〜5の認定を受けている方が対象ですが、要支援1・2の方も条件付きで利用できる場合があります。

【要支援1・2の方も条件付きで利用できる条件】

・居宅に浴室がない場合

 ・感染症等の理由により、その他の施設の浴室利用が困難な場合  

 ・その他やむを得ない事由がある場合

※人員配置は看護職員1名+介護職員1名以上となります

2つのクエスチョンマークを抱えて悩んでいる女性
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介護保険と自費の違い

介護保険を利用して訪問入浴介護を受ける場合は、要介護認定を受けていることが前提となります。原則として自己負担は1割ですが、一定以上の所得がある方は2割または3割負担となります。  

一方、介護保険が適用されないサービスや、要介護認定を受けていない方が利用する場合は、全額自己負担となり「自費サービス」として提供されます。

自費サービスは利用回数や内容の自由度が高い反面、費用負担が大きくなる点に注意が必要です。  

自費サービスの例としては、介護保険適用外の特別な入浴方法や、ご家族の希望による追加サービスなどがあります。こうした自費サービスを利用する際は、事前に見積もりを取り、サービス内容と料金をしっかり確認しておくことが大切です。

担当する人数や洗浄範囲によって料金は変動しますが、10,000〜13,000円程度が相場です。

料金は地域によって大きく異なるため、事前の確認を推奨します。

出典:介護保険外 | FAQ | 介護施設みらい
出典:公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット 訪問入浴介護の1回当たりの自己負担額(1割の場合)の目安

自己負担額の計算方法

訪問入浴介護の自己負担額は、「基本料金 × 自己負担割合(1割・2割・3割)+加算・減算+追加料金」で計算されます。  

たとえば、厚生労働省が定める基本報酬は1,266単位(10割負担で約12,660円)です。これを基準に計算すると、1割負担なら約1,266円、2割負担なら約2,532円、3割負担なら約3,798円が自己負担額の目安となります。  

※地域区分により、1級地は11.40円 / 単位で地域によって単価が異なります。

出典:地域区分について|厚生労働省

加算(サービス提供体制強化加算や処遇改善加算など)がある場合は上乗せされ、逆に条件によっては減算が適用されることもあります。また、事業所によっては交通費や特別サービス料が追加で発生する場合もあるため、総額を事前に確認しておくことが重要です。  

利用を始める前には料金明細を確認し、不明点は介護支援専門員(ケアマネジャー)や事業所に相談しましょう。

費用に関するトラブルと解決策

訪問入浴介護の費用トラブルは、事前の説明不足や契約内容の誤解から発生するケースが多く見られます。  

そのため、サービス開始前に見積もりやサービス内容の説明を受け、契約書を丁寧に確認することが大切です。特に、追加費用や加算の有無、キャンセル時の対応条件などは事前に把握しておきましょう。  

万が一トラブルが起きた場合は、まず介護支援専門員(ケアマネジャー)に相談するのが第一歩です。それでも解決が難しい場合には、市区町村の介護保険課窓口や消費生活センターなどの第三者機関に相談すると、客観的な立場から助言や対応を受けられます。  

訪問入浴介護の費用に関するトラブルを防ぐためには、疑問点や不安点をそのままにせず、事前に確認・質問することを推奨します。

タオルを抱えてる職員
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訪問入浴介護のサービス内容

訪問入浴介護では、入浴介助だけでなく健康チェックや身だしなみのサポートも受けられます。認知症対応や医療的ケアにも柔軟に対応します。

入浴介助の具体的な内容

訪問入浴介護の入浴介助では、専用の浴槽を自宅に設置し、利用者の体調や希望に合わせて以下の方法が選ばれます。  

  • 全身浴:浴槽にお湯を張り、利用者がしっかりとお湯につかれる方法です。身体全体を温め、血行促進やリラックス効果が期待できます。  

  • 部分浴:手足や上半身など、身体の一部だけを温めたり清潔にしたりする方法です。体調が優れない場合や医師の指示がある場合に選ばれます。  

  • 清拭(せいしき):タオルで身体を拭き清潔を保つ方法です。入浴が難しい場合でも衛生を維持できます。  

さらに、洗身・洗髪・洗顔、爪切り、耳掃除などの身だしなみ介助も含まれています。  

入浴前後には衣服の着脱や体位変換、浴槽への移動をスタッフが丁寧にサポートし、利用者の負担を最小限に抑えます。入浴後は体をしっかり拭き、着替えや整容の介助も行うため、清潔で快適な生活を送れるよう支援します。

出典:訪問介護・訪問入浴介護 身体介護|厚生労働省

訪問看護との連携

訪問入浴介護では、医療的ケアが必要な利用者や体調不良時に、訪問看護との連携が欠かせません。  

たとえば、褥瘡(じょくそう:床ずれ)のある方や感染症リスクの高い方の場合、主治医や訪問看護師と情報を共有し、入浴方法やタイミングを調整します。これにより、利用者の安全を最優先にした入浴介助が可能になります。  

また、介護支援専門員(ケアマネジャー)や家族とも連携し、利用者の健康状態や生活状況に応じた最適なサービスを提供します。医療的な処置が必要な場合は、訪問看護師が中心となって対応し、適切な入浴環境を整えます。 

このように、訪問入浴介護と訪問看護の連携によって、利用者は在宅生活の中でも専門的で質の高い入浴サービスを受けられます。


出典:「訪問介護・訪問入浴介護(改定の方向性)」|厚生労働省

認知症対応のポイント

訪問入浴介護における認知症対応では、利用者の不安や混乱を和らげるために、特に丁寧な接し方が求められます。  

スタッフはゆっくりとした動作ややさしい声かけを心がけ、毎回できるだけ同じスタッフが担当することで利用者に信頼感の構築を促します。これにより、信頼関係が築かれ、入浴への抵抗感を減らすことができます。  

認知症の症状によっては、入浴を拒否したり、暴言や暴力的な行動が見られる場合もあります。その際は無理に進めるのではなく、利用者の気持ちを尊重し、時間帯や手順を工夫して対応します。たとえば、利用者が落ち着きやすい時間に入浴を設定したり、入浴前にゆっくり説明を行うことが有効です。  

このように、認知症対応では「信頼感の構築」と「柔軟な工夫」が重要であり、利用者が適切なサポートを受けながら入浴できる環境づくりを目指します。

黄色の背景と3つの積み木ブロック、真ん中がビックリマーク
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訪問入浴実施における注意点

訪問入浴介護を適切に利用するためには、事前に利用条件や地域ごとの対応状況を確認し、費用面やトラブル防止策についても把握しておくことが大切です。

事業所や介護支援専門員(ケアマネジャー)に相談しながら準備を進めることで、適切にサービスを受けられます。

利用条件と申請の流れ

訪問入浴介護を利用するには、原則として要介護1以上の認定を受けていることが条件となります。  

まずは介護支援専門員(ケアマネジャー)に相談し、ケアプランに訪問入浴介護を組み込んでもらいます。なお、要支援1・2の方でも「介護予防訪問入浴介護」として、条件付きで利用できる場合があります。  

申請から利用開始までの流れは以下のとおりです。 

  1. 介護支援専門員(ケアマネジャー)との面談  
  2. サービス提供事業所の選定  
  3. 契約手続き  
  4. サービス開始前の事前訪問・打ち合わせ  

利用開始までには数日から数週間かかることもあるため、早めに相談を始めることを推奨します。

介護報酬に関する基準

訪問入浴介護のサービス内容や人員配置、加算・減算などは、厚生労働省が定める介護報酬基準に基づいて決められています。  

具体的には、看護師や介護職員の配置、サービス提供の回数、利用者の状態に応じた加算(サービス提供体制強化加算や処遇改善加算など)が細かく規定されています。また、同一建物に複数の利用者がいる場合などには減算が適用されるケースもあります。  

事業所ごとに報酬や加算の適用条件が異なることがあるため、契約前に確認しておくことが重要です。最新の介護報酬改定によって基準が変更される場合もあるため、厚生労働省の情報や介護支援専門員(ケアマネジャー)からの説明を参考にすることを推奨します。

出典:訪問介護・訪問入浴介護の報酬・基準について|厚生労働省

実施地域の条件

訪問入浴介護は、各事業所ごとにサービス提供地域があらかじめ定められています。都市部では複数の事業所が対応していることが多く、選択肢も比較的豊富です。  

一方で、山間部や離島などの地域では、対応できる事業所が限られたり、サービス提供自体が難しい場合もあります。そのため、自宅が訪問入浴介護のサービス提供地域に含まれているかどうかを事前に確認することが大切です。  

また、地域によっては交通費が別途加算されるケースもあるため、利用前に事業所や介護支援専門員(ケアマネジャー)に確認することを推奨します。

出典:「中山間地域等におけるサービス提供の 在り方に関する調査研究事業 (結果概要)」|厚生労働省

トラブル防止のためのチェックリスト

訪問入浴介護を適切に利用するためには、契約前に以下のポイントをチェックしておくことが大切です。  

  • サービス内容(基本サービス・追加サービスの範囲)を確認しましたか?  
  • 料金体系や加算・減算、交通費の有無を確認しましたか?  
  • キャンセル時の対応や料金発生のタイミングを把握しましたか?  
  • スタッフの入退出時のマナーやプライバシー配慮について話し合いましたか?  
  • 感染症対策(手指消毒・マスク着用・機材消毒など)を確認しましたか?  
  • 緊急時の連絡体制や対応方法を確認しましたか?  
  • 疑問点や不安な点をすべて質問し、納得しましたか?  
  • 契約書や重要事項説明書を読み、不明点がないか確認しましたか?  
  • 利用開始後も困ったことがあれば相談できる窓口を把握していますか?  

このチェックリストを事前に確認しておくことで、訪問入浴介護のトラブルを未然に防ぎ、適切にサービスを利用できます。

入浴の手伝いをしている職員
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訪問入浴介護を利用する際の準備

訪問入浴介護をスムーズに利用するためには、事前の準備が欠かせません。利用者本人の健康状態を確認することはもちろん、家族や介護支援専門員(ケアマネジャー)、スタッフとの情報共有も重要です。

また、自宅のスペースや浴槽設置の可否、必要な物品の準備なども事前に整えておくことで、専門的なサービスを受けられます。

事前の準備と必要なもの

訪問入浴介護を受ける際には、浴槽を設置できる十分なスペースを確保し、電源や給排水設備が問題なく使用できるかを確認しておく必要があります。

段差の有無や床の滑りやすさ、室温の調整も重要なポイントです。特に冬場は脱衣所や浴室をあらかじめ暖めておくことで、ヒートショック(急激な温度変化による健康リスク)の予防につながります。  

準備しておくべきものは以下のとおりです。

※事業所によって異なる場合があるため、事前に確認することを推奨します。

  1. バスタオル、フェイスタオル  
  2. 着替え(下着、パジャマ、必要に応じておむつやパッド)  
  3. シャンプー、ボディソープ、スポンジ、ボディタオル  
  4. 入浴後に使用する保湿剤や軟膏、処方薬  
  5. 入浴補助用具(椅子、滑り止めマットなど)  
  6. 家族が立ち会う場合のスケジュール調整  
  7. 介護者用のエプロンや手袋、滑りにくい靴  


また、当日をスムーズに進めるために、利用者本人や家族に入浴の予定を事前に伝え、排泄や水分補給を済ませておくことも大切です。

出典:「訪問介護・訪問入浴介護の報酬・基準について」|厚生労働省

利用者の健康状態の確認

訪問入浴介護を適切に行うためには、入浴前の健康状態チェックが欠かせません。発熱や感染症、皮膚疾患の有無を確認し、血圧や脈拍が安定しているか、呼吸や食欲に異常がないかも確認することを推奨します。

体調がすぐれない場合には、無理に全身浴を行わず、部分浴や清拭に切り替えることも可能です。  

サービス当日には看護師がバイタルサイン(体温・血圧・脈拍など)を測定し、入浴が適切に実施できるか最終的な判断を行います。

入浴後も再度健康チェックを行い、体調の変化がないかを確認します。  

特に高齢者は体調の変化が急に現れることがあるため、普段と違う様子が見られた場合には、すぐにスタッフへ伝えることが重要です。

介護者とのコミュニケーションの重要性

訪問入浴介護を適切に利用するためには、利用者本人・家族・スタッフとの円滑なコミュニケーションが欠かせません。事前に要望や不安な点、体調の変化を共有し、信頼関係を築いておくことが大切です。  

特に以下の点を意識して伝えることを推奨します。

  • 入浴方法や希望するケア内容を事前に伝える  
  • 気になる症状や持病があればスタッフに伝えておく  
  • サービス中や終了後も、気づいたことがあればその都度相談する  
  • 緊急時の連絡体制や対応方法をあらかじめ確認しておく  

このように、訪問入浴介護における介護者とのコミュニケーションを丁寧に行うことで、利用者は適切にサービスを受けられ、家族も不安なく任せることができます。

手をつないで円になってる紙人形
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訪問入浴介護を支える職員の役割

訪問入浴介護の質は、職員の専門性とチームワークによって支えられています。看護師と介護職員が連携し、利用者一人ひとりの健康状態や希望に合わせて最適なケアを提供します。

専門的な知識と経験を持つスタッフが対応することで、専門的な入浴サービスが実現します。

職員の資格とスキル

訪問入浴介護では、看護師が利用者の健康管理や医療的ケアを担当し、介護福祉士や介護職員は身体介助や浴槽の設置・撤去を行います。  

それぞれの専門職が役割を分担し、チームとして連携することで、利用者の安全を確保しながら利用者の負担を軽減した入浴を実現します。

適切なサービスを提供するためには、看護師には医療知識や観察力、介護職員には高い介助技術や利用者への配慮力といった専門スキルが求められます。  

このように、職員の資格とスキルは訪問入浴介護の質を支える重要な要素です。

専門的なケアの特徴

訪問入浴介護では、利用者の体調や障害の程度に応じて、入浴方法や介助内容を柔軟に調整します。全身浴だけでなく部分浴や清拭なども組み合わせ、利用者の負担を最小限に抑える工夫が行われます。  

また、皮膚トラブルの予防や褥瘡(じょくそう:床ずれ)対策など、医療的な視点を取り入れた専門的なケアも重要です。皮膚の観察や体位変換の工夫により、衛生面の維持と合併症の予防をサポートします。  

利用者一人ひとりの状態を的確に把握し、最適なケアを提供することが、専門的な入浴サービスにつながります。

リハビリとの連携

訪問入浴介護は、入浴を単なる清潔保持ですが、リハビリの一環として活用することもあります。

必要に応じ理学療法士(PT)や作業療法士(OT)と連携し、リハビリ的な視点を取り入れることで、利用者一人ひとりの身体機能に合わせた支援が可能になります。たとえば、入浴中に軽い運動やストレッチを取り入れることで、身体機能の維持・向上や生活の質(QOL)の改善につながります。  

このように、訪問入浴介護とリハビリを組み合わせることで、安全性と身体的負担の軽減を両立させながら、利用者の自立支援を後押しすることができます。

出典:「訪問介護(1) 20分未満の身体介護の見直しの概要」|厚生労働省

白い計算機と青い線のグラフと小さい家の模型
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訪問入浴介護の今後の展望

日本の高齢化は今後さらに進行し、それに伴い訪問入浴介護の需要も一層高まると見込まれています。

特に、要介護高齢者や自宅での生活を希望する人が増える中で、訪問入浴介護は生活の質(QOL)を維持するために欠かせないサービスです。  

一方で、サービスの質を高めながら人材を確保することが大きな課題となっています。看護師や介護職員の人手不足が深刻化する中、働きやすい職場環境の整備やICT・福祉機器の活用による効率化が求められます。  

今後は、地域包括ケアシステムの中で訪問入浴介護がどのように位置づけられるかも重要なポイントです。地域の医療・福祉・行政と連携し、利用者が在宅生活を継続できる体制づくりが期待されています。

出典:令和6年版高齢社会白書 第1章第1節 高齢化の状況|内閣府

訪問入浴介護の需要増加の背景

日本は高齢化率が世界でも最も高い水準にあり、今後も要介護者や寝たきり高齢者の増加が見込まれています。特に「自宅で最期まで暮らしたい」「施設ではなく住み慣れた環境で過ごしたい」と考える家庭が増えており、在宅介護のニーズが年々高まっています。

その中で、入浴は単なる清潔保持だけでなく、リフレッシュや心身機能の維持にもつながる重要な生活行為です。しかし、身体的負担が大きいため家族だけでの介助は難しく、専門スタッフによる訪問入浴介護の役割はますます重要になっています。

こうした背景から、訪問入浴介護は在宅生活を支える中核的なサービスとして需要が拡大しており、今後も地域包括ケアの中で欠かせない存在となっていくでしょう。

出典:65歳以上人口割合の推移|厚生労働省

介護サービスの未来と訪問入浴

今後の介護サービスは、ICTの活用によるサービスの質向上や効率化、多職種連携や地域包括ケアシステムの中での役割拡大が期待されています。

訪問入浴介護も、より利用者一人ひとりに合わせた細やかなサービス提供が求められるようになります。一方で、人材確保やサービスの質向上が大きな課題となっており、業界全体での取り組みが必要です。

出典:「介護テクノロジーの利用促進」|厚生労働省

青空の下で職員と車椅子の高齢者が笑顔でいる
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まとめ

訪問入浴介護は、要介護者が自宅で快適に入浴できる大切なサービスです。事前の準備や情報収集をしっかり行い、適切に利用しましょう。

訪問入浴介護は、高齢化社会においてますます重要性を増しています。自宅での生活を希望する要介護者や家族にとって、清潔保持とリフレッシュの機会を提供し、家族の負担を軽減する大切な役割を担っています。

サービス利用にあたっては、介護支援専門員(ケアマネジャー)や事業所としっかり連携し、利用条件や費用、サービス内容を十分に確認することが大切です。専門的な知識と技術を持ったスタッフが、利用者一人ひとりに寄り添ったケアを提供しています。

今後もサービスの質向上や人材育成が進み、より多くの方が利用しやすい環境が整うことが期待されます。訪問入浴介護を上手に活用し、在宅生活を継続しましょう。

よくある質問

Q.訪問入浴介護の料金は自費だといくらかかりますか?
A.

厚生労働省の資料によると、訪問入浴介護を全額自己負担(自費)で利用する場合、1回あたりおよそ12,000円程度が相場とされています。

ただし、実際の料金は事業所や地域によって差があり、交通費や追加サービス料が加わるケースもあります。介護保険が適用されない場合(要介護認定を受けていない方や、保険適用外の特別サービスを希望する場合など)は、全額自費負担となります。


出典:「介護報酬の算定構造」|厚生労働省

Q.訪問入浴介護は介護保険で利用できますか?
A.

 はい。要介護1以上の認定を受けていれば、介護保険を利用して訪問入浴介護を受けることができます。

自己負担額は、介護保険の負担割合によって異なります。たとえば1割負担の方であれば、1回あたり約1,200円前後が目安です(地域や加算の有無によって変動します)。

介護保険が適用されることで、経済的な負担を大幅に軽減しながら継続的にサービスを利用できるのが大きなメリットです。

Q.訪問入浴介護とはどんなサービスですか?
A.

訪問入浴介護は、寝たきりの方や自宅での入浴が困難な方を対象に、自宅で入浴をサポートするサービスです。

看護師1名と介護スタッフ2名以上の計3名以上のチームが自宅を訪問し、組み立て式の浴槽を設置して全身浴や部分浴を行います。事前に体調チェックを行い、必要に応じて清拭に切り替えるなど柔軟に対応可能です。

身体の清潔保持に加え、入浴による温熱作用や、専門的なケアを受けられる点がメリットです。家族の介護負担を軽減できる点も大きなメリットです。

Q.訪問入浴介護の仕事はきついですか?
A.

訪問入浴介護の仕事は体力的にも精神的にも負担が大きいといわれています。

浴槽や機材の運搬・準備・片付けに伴う体力的な負担、限られた時間内で複数の利用者宅を訪問する必要があることによるスピードへのプレッシャー、さらには利用者さんの介助で腰や膝を痛めるリスクなどが挙げられます。

特に、浴槽の重さや狭い住宅での作業、体力を使う移乗介助などは、身体に大きな負担をかける要因となっています。

豊富な臨床経験と高度な専門資格を活かし、医療・介護分野における正確で信頼性の高い情報監修を行っています。
監修者

海野 和看護師

この記事の監修者情報です

2006年に日本消化器内科内視鏡技師認定証を取得し、消化器系疾患の専門的な知識と技術を習得。2018年にはNCPR(新生児蘇生法専門コース)の認定を取得し、緊急時対応のスペシャリストとしての資格を保有。さらにBLS(HeartCode®BLSコース)を受講し、基本的生命維持技術の最新知識を習得。豊富な臨床経験と高度な専門資格を活かし、医療・介護分野における正確で信頼性の高い情報監修を行っています。

【保有資格】

日本消化器内科内視鏡技師認定証(2006年取得)
NCPR(新生児蘇生法専門コース終了認定証)(2018年取得)
BLS(HeartCode®BLSコース)受講済み

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