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看護小規模多機能型居宅介護(看多機)の費用はいくら?料金表・内訳・注意点まとめ

小規模多機能型居宅介護

看護小規模多機能型居宅介護(看多機)は、通い・訪問・宿泊・看護の4つのサービスを一体的に提供する在宅介護サービスです。月額定額制で利用できるため費用の予測がしやすい一方で、加算や実費負担により最終的な自己負担額は大きく変動します。

本記事では、令和6年度介護報酬改定に対応した最新の料金体系から、具体的な費用シミュレーション、利用時の注意点まで、厚生労働省の公式資料に基づいて詳しく解説します。サービス選択で失敗しないための重要なポイントを押さえ、納得できる形でサービス利用を検討していただけます。

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看護小規模多機能型居宅介護(看多機)の費用とは?

看護小規模多機能型居宅介護(看多機)の基本概念

看護小規模多機能型居宅介護(看多機)は、利用者が住み慣れた自宅で生活を続けられるよう、「通い(デイサービス)」「訪問介護」「宿泊(ショートステイ)」「訪問看護」を一体的に提供する在宅介護サービスです。

利用者の心身の状態や家族の状況に応じて、サービス内容や利用回数を柔軟に調整できるのが特徴です。これにより、利用者本人の生活リズムや希望に合わせたケアが可能となり、家族の介護負担軽減につながる場合があります。

看護小規模多機能型居宅介護(看多機)の利用料金の特徴

このサービスの料金体系は「月額定額制(包括費用)」となっており、要介護度ごとに金額が設定されています。利用回数やサービス内容に関わらず、月額費用が一定となるため、毎月の支出を予測しやすい点がメリットです。

原則として介護保険が適用され、自己負担は1割ですが、一定以上の所得がある場合は2割または3割負担となります。また、初期費用や入居一時金などは不要で、まとまった資金を準備する必要がない点も利用しやすいポイントです。

具体的な負担割合の判定基準は以下の通りです。

1割負担

・本人の合計所得金額が160万円未満の方

・合計所得金額が160万円以上220万円未満で、年金収入+その他所得が単身280万円未満(2人以上世帯346万円未満)の方


2割負担

・上記1割負担、下記3割負担に該当しない方


3割負担

・合計所得金額が220万円以上で、年金収入+その他所得が単身340万円以上(2人以上世帯463万円以上)の方


※40歳~64歳の第二号被保険者、市区町村民税非課税の方、生活保護受給者の方は所得に関わらず1割負担です。

出典:給付と負担について|厚生労働省

看護小規模多機能型居宅介護(看多機)にかかる月額費用

【1割負担の場合の月額例】

  • 要介護1:12,447単位(1割負担の場合 約12,447円~14,189円)
  • 要介護2:17,415単位(1割負担の場合 約17,415円~19,852円)
  • 要介護3:24,481単位(1割負担の場合 約24,481円~27,908円)
  • 要介護4:27,766単位(1割負担の場合 約27,766円~31,652円)
  • 要介護5:31,408単位(1割負担の場合 約31,408円~35,805円)
    ※地域区分により単価が異なります。地域区分は8区分に分かれ、1単位あたりの単価は以下の通りです。お住まいの地域の区分については、市区町村の介護保険担当窓口でご確認ください。

・1級地(20%上乗せ):11.40円

・2級地(16%上乗せ):11.12円

・3級地(15%上乗せ):11.05円

・4級地(12%上乗せ):10.84円

・5級地(10%上乗せ):10.70円

・6級地(6%上乗せ):10.42円

・7級地(3%上乗せ):10.21円

・その他(0%):10.00円

※人件費割合70%のサービスの場合

出典:令和6年度介護報酬改定における改定事項について|厚生労働省
出典:地域区分|厚生労働省

注意点

  • 月額定額制のため、利用回数が少なくても多くても日割りでの割引や増額はありません。
  • 所得によって自己負担割合が変動するため、事前に確認が必要です。
  • 実費負担や加算が重なると、最終的な支払額が想定より高くなる場合があるため、詳細は事業所や介護支援専門員(ケアマネジャー)に相談してください。

看護小規模多機能型居宅介護(看多機)は、利用者や家族の生活に合わせて柔軟に利用できる一方、費用の内訳や加算、実費負担などを事前にしっかり把握しておくことが大切です。

グラフが記載されたドキュメントと計算機のイメージ
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料金表の詳細について

看護小規模多機能型居宅介護(看多機)の料金の内訳

看護小規模多機能型居宅介護(看多機)の料金体系は、「基本料金」「加算料金」「実費負担」の3つが柱です。それぞれの内容を詳しく解説します。

基本料金

基本料金は、要介護度ごとに国が定めた基準に基づいて設定されています。1割負担の場合、要介護1で12,447円~14,189円、要介護5で31,408円~35,805円が目安です。
この基本料金には、「通い」「訪問」「宿泊」「看護」のすべてのサービスが含まれており、利用回数や時間に関わらず月額で一定です。利用者やご家族は、月ごとの支出を予測しやすく、計画的に介護サービスを利用できるというメリットがあります。


加算料金

加算料金は、利用者の状態や利用するサービス内容に応じて発生します。たとえば、認知症の重度な方や、医療的な管理が必要な方、ターミナルケア(看取り)が必要な方など、個々の状況に応じて加算が適用されます。
また、サービス開始直後や退院直後など特別なタイミングでも加算が発生する場合があります。加算は複数が重複して適用されることもあり、月額費用に上乗せされます。

実費負担

実費負担は、介護保険の給付対象外となる費用です。主に食費や宿泊費、日用品費、おむつ代などが該当します。これらは利用した分だけ請求されるため、利用者ごとに月額費用が異なります。特に宿泊や食事の利用が多い場合、実費負担分が大きくなる傾向があります。

出典:令和6年度介護報酬改定における改定事項について 

宿泊費と食費の徹底解説

宿泊費

看護小規模多機能型居宅介護(看多機)では、必要に応じて「泊まり」のサービスを利用できます。宿泊費は1泊あたり1,000円~3,800円程度が相場で、地域や事業所によって幅があります。
この金額には、部屋代や水道光熱費、リネン代などが含まれることが多いですが、施設によっては別途請求されるケースもあるため、事前に確認が必要です。
また、宿泊の頻度が高い場合は、月額で1万円以上の実費負担となることも珍しくありません。

食費

食費も実費負担となり、朝食400円、昼食860円(おやつ込み)、夕食600円が一般的な目安です。
食事は「通い」や「宿泊」利用時に提供され、利用実績に応じて月額費用に加算されます。月に10回昼食を利用した場合は8,600円、20回なら17,200円といった具合に、利用回数に応じて費用が増減します。
また、特別食や療養食が必要な場合は、追加料金が発生することもあります。

その他の実費負担

  • 日用品費(ティッシュや歯ブラシ、コップなど):月数百円~1,000円程度
  • おむつ代:利用頻度や種類によって異なる(数千円~1万円超の場合も)
  • 理美容代やレクリエーション費用なども、希望に応じて別途かかることがあります。

加算制度とその影響

加算制度とは、利用者の状態やサービス内容によって、基本料金に上乗せされる追加料金のことです。主な加算とその内容を詳しく紹介します。

主な加算項目と料金(1割負担の場合)

初期加算:30単位/日
サービス利用開始から30日間のみ適用されます。新規利用者の受け入れ体制強化のための加算です。

認知症加算は令和6年度改定により区分が変更されました。

  • 認知症加算(Ⅰ):920単位/月(新設)
  • 認知症加算(Ⅱ):890単位/月(新設)
  • 認知症加算(Ⅲ):760単位/月
  • 認知症加算(Ⅳ):460単位/月

認知症の重度な方や、要介護2で認知症ランクⅡの方が対象です。認知症ランクとは認知症高齢者の日常生活自立度を判定する基準で、認知症ランクⅡには日常生活に支障を来すような症状・行動や意志疎通の困難さが多少見られても、誰かが注意していれば自立できる方が対象になります。

出典:令和6年度介護報酬改定における改定事項について 

  • 退院時共同指導加算(600単位)
    病院から退院する際に、医師や看護師と連携して初回訪問看護を実施した場合に発生します。

  • 事業開始時支援加算 500単位
    事業開始から1年以内の事業所が対象です。

  • 緊急時訪問看護加算  600単位(Ⅰ)または574単位(Ⅱ)
    夜間や休日など、緊急時に訪問看護が必要となった場合に適用されます。

  • 特別管理加算特別管理加算(Ⅰ):500単位(月額500円~570円)、(Ⅱ):250単位(月額250円~285円)

    在宅で悪性腫瘍の管理や、在宅酸素療法、人工肛門など医療的管理が必要な場合に加算されます。

  • ターミナルケア加算 2,500単位(月額2,500円~2,850円)
    看取り期(死亡月)に2日以上のターミナルケアが実施された場合に加算されます。

  • 加算制度の影響

    加算は、利用者の状態やサービス内容に応じて複数同時に適用される場合もあり、月額費用が大きく変動する要因となります。たとえば、認知症加算と特別管理加算が同時に発生した場合、月額で1,000円以上の上乗せとなります。

また、加算の内容や金額は、国の制度改正や地域の運用ルールによって変更されることがあるため、最新の情報を事業所や 介護支援専門員(ケアマネジャー)に確認することが重要です。

出典:令和6年度介護報酬改定における改定事項について|厚生労働省
出典:看護小規模多機能型居宅介護における柔軟なサービス利用の促進|札幌市
出典:令和6年度介護報酬改定における改定事項について |厚生労働省

マルとバツとクエスチョン
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看護小規模多機能型居宅介護(看多機)の利用条件

対象者の要件

看護小規模多機能型居宅介護(看多機)を利用できるのは、原則として「要介護1〜5」の認定を受けている方です。
また、サービス事業所が所在する市区町村に住民票があることが必要です。
このサービスは地域密着型であり、利用者がその地域に住んでいることが前提となっています。
医療的ケアが必要な場合も、主治医の指示や特定疾病に該当すれば利用可能です。特定疾病とはがん末期、関節リウマチ、筋萎縮性側索硬化症など16種類の疾病を指します。

ただし、常時医療機関での治療が必要な方は対象外となる場合があります。
小規模多機能型居宅介護と異なり、「要支援1・2」の方は利用できません。

要介護認定の重要性

看護小規模多機能型居宅介護(看多機)を利用するには、原則として「要介護認定」を受けていることが条件です。
要介護認定は、市区町村の窓口で申請し、認定調査や主治医意見書に基づいて判定されます。

「要介護者」は以下に該当する方です。

・要介護状態にある65歳以上の方
・要介護状態にある40歳以上65歳未満で、特定疾病により要介護状態となった方

要介護度は「要介護認定等基準時間」により以下の通り区分されます。

・要介護1:32~50分
・要介護2:50~70分
・要介護3:70~90分
・要介護4:90~110分
・要介護5:110分以上

認定結果によって、利用できるサービスの内容や料金が決まります。
要介護度が高いほど、より多くのサービスを受けられる仕組みです。

出典:厚生労働省「要介護認定に係る法令」

利用開始までの流れ

  1. 相談・見学
    まずは地域包括支援センターや担当 介護支援専門員(ケアマネジャー)に相談し、看護小規模多機能型居宅介護事業所の見学や説明を受けます。
  2. 要介護認定の取得
    まだ認定を受けていない場合は、市区町村に申請し、要介護認定を受けます。
  3. ケアプラン作成
    利用が決まったら、事業所の介護支援専門員(ケアマネジャー)が利用者や家族と面談し、本人の状況や希望に合わせたケアプランを作成します。
    看護小規模多機能型居宅介護(看多機)を利用する場合、担当介護支援専門員(ケアマネジャー)が事業所専属の介護支援専門員(ケアマネジャー)に変更される点も特徴です。
  4. 契約・利用開始
    ケアプランに同意したら、事業所と正式に契約し、サービス利用がスタートします。
    利用開始後は、通い・訪問・宿泊・看護の各サービスを、利用者の状態や家族の希望に合わせて柔軟に組み合わせて利用できます。

    看護小規模多機能型居宅介護(看多機)は、地域密着型で要介護認定を受けた方が対象となり、利用開始までには相談・見学からケアプラン作成、契約までのプロセスを経て利用が始まります。
メリットと書かれた黒板を指す指さす人
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看護小規模多機能型居宅介護(看多機)のメリット

日常生活の支援内容

看護小規模多機能型居宅介護(看多機)では、「通い(デイサービス)」「訪問介護」「宿泊(ショートステイ)」「訪問看護」を一体的に受けられるため、利用者の生活リズムや体調、家族の都合に合わせて柔軟にサービスを組み合わせることができます。


たとえば、日中はデイサービスを利用し、急な用事や体調の変化があればそのまま宿泊に切り替える、安否確認や服薬管理のために訪問介護を増やす、といった対応が可能です。

また、同じ事業所・同じスタッフが一貫してサービスを提供し、24時間365日対応の看護師配置により、急変時も速やかな医療処置が受けられます。

医療的ケアの提供

看護小規模多機能型居宅介護(看多機)の大きな特徴は、看護師による医療的ケアやバイタルチェックなどが在宅で受けられる点です。医師の指示に基づき、看護師が胃ろうやカテーテル、インスリン注射、吸引、人工呼吸器の管理など専門的な医療処置を提供します。また、急変時や体調不良時にも迅速に対応できる体制が整っており、在宅での看取りやがん末期など医療依存度が高い方も、住み慣れた自宅で継続して生活できる体制が整っています。

家族の負担軽減

看護小規模多機能型居宅介護(看多機)は、24時間365日対応可能な体制を持つ事業所が多く、夜間や緊急時にも支援が受けられます。これにより、家族は急な外出や仕事、休養が必要な場合でも対応を依頼できる体制があります。夜間・休日も訪問看護が利用可能なため、ご家族は急な外出時にも介護支援専門員(ケアマネジャー)への連絡で対応を依頼できます。また、レスパイトケア(一時的な介護負担の軽減)としても活用でき、家族全体の生活の質向上にもつながります。

看護小規模多機能型居宅介護(看多機)は、利用者本人だけでなく家族にとっても利便性の高いサービスです。医療的ケアと介護が一体となった柔軟な支援体制が、在宅生活の継続や家族の負担軽減に大きく寄与しています。

デメリットと書かれた黒板を指す指さす人
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デメリットと考慮すべき点

利用者が負担が大きいと感じる要因

看護小規模多機能型居宅介護(看多機)は、制度上は通い・訪問・宿泊・看護を柔軟に組み合わせて利用できる仕組みですが、実際には事業所のマンパワーやベッド数などの物理的な制約があります。利用者の方が希望する日時での宿泊サービス利用ができない場合があります。

看護小規模多機能型居宅介護(看多機)の定員制限は以下の通りです。

・登録定員:29人以下
・通いサービス:1日18人以下
・宿泊サービス:1日9人以下

出典:厚生労働省「 看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)」

料金面でのデメリット

看護小規模多機能型居宅介護(看多機)は、訪問看護が加わる分、従来の小規模多機能型居宅介護よりも利用料が高くなる傾向があります。さらに、加算や実費負担(食費・宿泊費・日用品費など)が重なると、月額費用が想定より高額になることも少なくありません。複数の加算や実費が加わることで、最終的な自己負担額が大きく変動する点には注意が必要です。

選択肢との比較

他の介護サービス(訪問介護、デイサービス、特養など)と比較した場合、看護小規模多機能型居宅介護(看多機)は「複数サービスを一体的に受けられる」点がメリットですが、逆に「他サービスとの併用ができない場合がある」「料金が割高」「地域密着型のため同じ自治体内でしか利用できない」といった制約も存在します。また、制度自体が複雑でわかりづらく、利用者や家族が内容を十分に理解しづらいという声もあります。サービス選択時は、自身や家族のニーズ、費用、利用可能なサービス内容を十分に比較・検討することが重要です。

カラフルなグラフが記載された資料
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収支シミュレーションの作成法

仮想プランと実際のコストの比較

看護小規模多機能型居宅介護(看多機)の費用は、基本料金に加えて加算料金や実費負担が発生するため、利用者ごとに最終的な負担額が大きく異なります。
シミュレーションを行う際は、まず利用者の要介護度に応じた「基本料金」(例:要介護3の場合、1割負担で24,481円~26,494円/月)をベースに、加算料金(認知症加算、特別管理加算、ターミナルケア加算など)を加えます。

さらに、宿泊費(1泊1,000〜3,800円程度)、食費(朝食400円、昼食860円、夕食600円など)、日用品費やおむつ代などの実費負担分を想定し、月間の利用回数に応じて加算します。
たとえば、月に5泊の宿泊と20回の昼食を利用した場合、宿泊費は5,000〜19,000円、昼食は17,200円程度の追加となります。
このように、利用頻度や加算の有無、実費負担を細かく想定して計算することで、実際の負担額を具体的に把握できます。

自己負担を減らすための工夫

  • 介護保険の範囲内でサービスを調整
    利用回数やサービス内容を介護保険の給付範囲内に収めることで、自己負担の増加を抑えることができます。

  • 市区町村の助成制度や減免措置の活用
    低所得者向けの負担軽減措置や助成金制度を活用することで、実質的な自己負担を減らすことが可能です。
    例えば、生活保護受給世帯や特定の所得区分に該当する場合、食費や宿泊費の助成が受けられることがあります。

  • 医療保険の適用条件を確認
    特定疾病や医師の指示がある場合、訪問看護部分が医療保険適用となり、介護保険料が減額されるケースもあります。

ケアプランの必要性とその作成方法

看護小規模多機能型居宅介護(看多機)を利用する際は、専属の介護支援専門員(ケアマネジャー)と相談し、利用者の心身の状態や家族の状況、希望に合わせて最適なケアプランを作成することが重要です。
ケアプランには、通い・訪問・宿泊・看護の利用頻度やタイミング、必要な医療的ケアや生活支援の内容が具体的に盛り込まれます。
介護支援専門員(ケアマネジャー)は費用面のアドバイスも行い、加算や実費負担の見通し、助成制度の利用可否なども含めて総合的にサポートします。
これにより、無理のない範囲でサービスを活用し、経済的・身体的な負担を最小限に抑えることができます。

家のミニチュアを持ち指を差し出すスーツを着た男性
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看護小規模多機能型居宅介護(看多機)を利用する際の注意点

介護支援専門員(ケアマネジャー)との関係

看護小規模多機能型居宅介護(看多機)を利用する場合、利用者には専属の介護支援専門員(ケアマネジャー)が配置されます。この介護支援専門員(ケアマネジャー)は事業所のスタッフであり、利用者や家族と面談しながら、サービス内容や利用計画(ケアプラン)の調整を行います。
従来の居宅介護支援事業所の介護支援専門員(ケアマネジャー)とは異なり、看護小規模多機能型居宅介護(看多機)を利用開始すると、その事業所の介護支援専門員(ケアマネジャー)に担当が変更となります。
そのため、以前から付き合いのあった介護支援専門員(ケアマネジャー)が担当できなくなる点や、他の介護サービス(デイサービスや訪問介護、ショートステイ)との併用が原則できなくなる点に注意が必要です。

事業者との契約内容確認

看護小規模多機能型居宅介護(看多機)を利用する際は、契約前に料金体系やサービス内容、加算の有無、実費負担(食費・宿泊費・日用品費など)についてしっかり確認しましょう。
月額の基本料金に加え、加算や実費負担が発生するため、最終的な自己負担額が想定より高くなる場合もあります。
また、利用人数には制限があり、通いは1日18人、宿泊は1日9人までと定められているため、希望する日に原則として利用できるとは限りません。
契約時には、利用可能な日数やサービス内容、キャンセル時の対応なども含めて、細かく事業所に確認することが大切です。

地域のサービスとの連携

看護小規模多機能型居宅介護(看多機)は地域密着型サービスであり、地域包括支援センターや医療機関、行政などとの連携が重要です。
特に、退院直後や医療的ケアが必要な場合には、主治医や病院の担当者と情報共有を行いながら、在宅生活への移行をスムーズに進める必要があります。
また、地域包括支援センターは、サービス選択や利用調整、困りごとの相談窓口としても活用できます。
地域の他の介護サービスや支援制度についても情報収集し、必要に応じて併用や切り替えを検討することで、介護支援専門員(ケアマネジャー)が定期的にケアプランを見直し、通い・訪問・宿泊・看護の組み合わせを柔軟に調整することで、自宅での生活リズムを維持できます。

病棟の廊下
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結論-看護小規模多機能型居宅介護(看多機)を選ぶべき理由-

高齢者介護の新たな選択肢の必要性

看護小規模多機能型居宅介護(看多機)は、在宅生活を続けたい高齢者やその家族の多様なニーズに応えるために生まれた新しい介護モデルです。通い・訪問・宿泊・看護を一体的に提供できるため、利用者の心身状態や家族の状況に合わせて、必要なサービスを柔軟に組み合わせることができます。
この仕組みにより、認知症や医療的ケアが必要な方でも、住み慣れた地域や自宅での生活を継続できる環境が整います。
また、顔なじみのスタッフが一貫して対応することで、利用者の不安や混乱を軽減し、きめ細やかなケアが可能です。

経済的負担を軽減する制度

看護小規模多機能型居宅介護(看多機)は、定額制(月額定額報酬)を基本とし、介護保険が適用されるため、費用が明確で家計管理がしやすい点が大きな魅力です。
要介護度に関係なく原則として利用回数や時間に制限がなく、必要なサービスを必要なだけ利用できるため、従来のサービスよりも柔軟な利用が可能です。
また、所得に応じて自己負担割合が1~3割と設定されており、市区町村による助成や減免措置も活用できる場合があります。これにより、経済的な負担を抑えつつ、サービスを受けることができます。

信頼できる介護サービスの選び方

看護小規模多機能型居宅介護(看多機)を選ぶ際には、事業所の実績や運営体制、スタッフの資格や経験、利用者や家族からの評判をしっかり確認することが大切です。
特に、医療的ケアや看取り対応が必要な場合は、看護師の配置状況や地域医療機関との連携体制も重要なポイントとなります。
見学や相談を通じて、スタッフの対応や事業所の雰囲気、サービス内容を直接確認し、自分や家族に合った信頼できる事業者を選びましょう。

花畑を歩く車いすの男性とその家族
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まとめ

看護小規模多機能型居宅介護(看多機)は、「通い(デイサービス)」「訪問介護」「宿泊(ショートステイ)」「訪問看護」を一体的に受けられる、非常に柔軟性の高い在宅介護サービスです。利用者の体調や家族の状況、生活リズムに合わせて、必要なサービスを必要なタイミングで組み合わせることができるため、在宅生活の継続を強力にサポートします。

また、料金体系は月額定額制が基本となっており、要介護度ごとに設定された金額を毎月支払う仕組みです。これにより、利用回数やサービス内容に関わらず、毎月の費用が大きく変動しないため、家計の見通しが立てやすいという大きなメリットがあります。さらに、介護保険が適用されるため、原則1割負担(所得によって2割・3割の場合もあり)で利用でき、経済的な負担も抑えやすくなっています。

ただし、加算(認知症加算、特別管理加算など)や実費負担(食費・宿泊費・日用品費など)が発生する場合があり、利用状況によっては月額費用が想定より高くなることもあります。また、所得に応じた自己負担割合も変動するため、具体的な負担額を事前にしっかりシミュレーションしておくことが重要です。

サービス利用を検討する際は、事業所の料金表や加算内容、実費負担の詳細を確認し、介護支援専門員(ケアマネジャー)や事業所スタッフとよく相談した上で、納得できる形で利用を開始しましょう。看護小規模多機能型居宅介護(看多機)は、利用者本人だけでなく、ご家族にとっても安心と利便性をもたらす新しい介護の選択肢です。自宅での生活を大切にしたい方や、医療的ケアが必要な方、家族の負担を軽減したい方には、特に適したサービスと言えるでしょう。

看護小規模多機能型居宅介護(看多機)に関する

よくある質問

Q.初期費用はかかりますか?
A.

看護小規模多機能型居宅介護(看多機)では、高額な初期費用や入居一時金などは一切必要ありません。利用開始時にかかるのは、契約書類の印紙代や、場合によっては事務手数料などの実費程度です。原則として、毎月の基本料金や実費負担のみで利用できるため、まとまった資金を準備する必要がなく、経済的な負担が軽減されます。

Q.どんな人が利用できますか?
A.

このサービスを利用できるのは、要介護1以上の認定を受けている方です。また、地域密着型サービスのため、原則として事業所が所在する市区町村に住民票があることが条件となります。要支援1・2の方は対象外となる点にご注意ください。

Q.医療的ケアが必要な場合も利用できますか?
A.

はい、利用できます。医師の指示がある場合や、特定疾病(例:末期がん、ALS、パーキンソン病関連疾患など)に該当する場合は、看護師による医療的ケアや定期的なバイタルチェックや状態確認を訪問看護で実施し、医師指示のもとインスリン注射や褥瘡(じょくそう)ケアなど医療的処置を受けられます。胃ろうやカテーテル管理、吸引、インスリン注射など、専門的な医療処置にも対応可能です。詳しくは事業所や介護支援専門員(ケアマネジャー)にご相談ください。

Q.月額費用以外にかかる費用はどのくらいかかりますか?
A.

月額の基本料金や加算料金のほかに、宿泊費(1泊1,000円~3,800円程度)、食費(朝食400円、昼食860円、夕食600円程度)、日用品費やおむつ代などの実費負担があります。これらは利用した分だけ月ごとに加算されますので、利用頻度によって月額費用が変動します。契約時に詳細な料金表を確認しておくと安心です。

Q.どのくらいの頻度で利用できますか?
A.

利用頻度やサービス内容は、専属の介護支援専門員(ケアマネジャー)と相談して作成するケアプランに基づき決定されます。通い・訪問・宿泊・看護を組み合わせ、利用者やご家族の状況や希望に応じて柔軟に調整が可能です。ただし、事業所の定員や予約状況によっては、希望通りに利用できない場合もあります。

Q.利用開始までどのくらいかかりますか?
A.

利用開始までの期間は、相談から契約・サービス開始まで通常1〜2か月程度が目安です。
まずは地域包括支援センターや事業所に相談し、見学や説明を受けた後、要介護認定の申請やケアプランの作成、契約手続きを経てサービス利用が始まります。要介護認定の取得状況や事業所の空き状況によって、期間が前後する場合もありますので、早めの相談がおすすめです。

豊富な臨床経験と高度な専門資格を活かし、医療・介護分野における正確で信頼性の高い情報監修を行っています。
監修者

海野 和看護師

この記事の監修者情報です

2006年に日本消化器内科内視鏡技師認定証を取得し、消化器系疾患の専門的な知識と技術を習得。2018年にはNCPR(新生児蘇生法専門コース)の認定を取得し、緊急時対応のスペシャリストとしての資格を保有。さらにBLS(HeartCode®BLSコース)を受講し、基本的生命維持技術の最新知識を習得。豊富な臨床経験と高度な専門資格を活かし、医療・介護分野における正確で信頼性の高い情報監修を行っています。

【保有資格】

日本消化器内科内視鏡技師認定証(2006年取得)
NCPR(新生児蘇生法専門コース終了認定証)(2018年取得)
BLS(HeartCode®BLSコース)受講済み

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